無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~   作:haru-ha

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【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)

以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。

【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。




第8節 魔力過循環(オーバードライブ):対人戦闘プロトコルと北神流の理不尽

Side: ルーデウス

次の朝の食卓、私は意を決してパウロに向き合った。

「父様。……城塞都市ロアの方角に、深刻な魔力的異変を感知しました」

「異変?藪から棒に何を言っているんだ。ロキシーがいなくなってから、空でも眺めるのが趣味になったのか?」

パウロは当初、子供の戯言だろうと呆れていた。だが、私の右目――疑似魔力眼(マナ・サイト)が宿した紫の輝きと、冗談を言っているようには見えない私の真剣な顔を見て、彼は持っていたパンを皿に戻し、眉間に皺を寄せた。

「……それで?お前はどうしたいんだ」

「詳しくは分かりませんが、観測される魔力の『歪み』は、私が知る最高位の術式を遥かに超える質量を持っています。このまま放置すれば、どのような災害に繋がるか予測できません。私はロアへ行き、その原因を究明したいと考えています」

「おいおい、ルディ。もうすぐゼニスもリーリャも出産を控えているんだぞ?そんなに切羽詰まったことなのか。原因究明にどれだけの時間がかかる」

「……正直に言って、分かりません。初めて観測する現象ですから。ですが、もしこれが最悪の形で爆発すれば、ブエナ村も無事では済まないでしょう。……もちろん、私の杞憂であれば、とんぼ返りしてきます」

パウロは腕を組み、沈黙した。ゼニスとリーリャも、不安げな眼差しを私に向けている。

「……お前が行って、解決できるのか?ロアにはサウロス様もギレーヌもいる。最強の守りがあるはずだ」

「それも分かりません。しかし、ロアの街にロキシー先生や私以上の魔術知識を持つ者がいないことも事実です。現場で情報も得なければ、対策すら立てられないでしょう」

「……シルフィはどうする。お前によく懐いているだろう。急にいなくなれば、あの子は泣いてしまうぞ」

パウロの指摘は、私の胸の最も痛い部分を突いた。

「……泣くでしょうね。ですが、今の私とシルフィの関係は、お互いにとって不健全な共依存になりつつあります。私が一生そばにいて守り続けることは不可能で、彼女には自立が必要です。……この別れは、彼女が一人で立つための好機だとも考えています」

私は『記憶』にある「自立できない子供」の末路を思い出していた。あのような悲劇を繰り返させてはならない。

「……この件については、少し預からせてくれ。お前をロアへやるなら、あちらの館へも連絡が必要だ」

その日の会話は、それで終わった。パウロの慎重な態度はもっともだ。だが、私の右目に見える「歪み」は、日増しにその拍動を強くしているように感じられ、私の焦燥感は限界に達していた。

返答を待つ間、私は寝食を忘れて旅の準備を進めた。

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Side: ルーデウス

パウロに相談してから数日後の朝。食事を終えると、彼はいつになく真剣な表情で私に声をかけた。

「ルディ。ちょっと表に出ろ」

パウロは無言で家の外の草原へと歩いていく。その後ろ姿からは、並々ならぬ気迫が漏れ出していた。

不意に、私の背筋にぞわっとした悪寒が走る。

疑似魔力眼(マナ・サイト)が、パウロの体内を巡る『闘気』が爆発的に高まったのを捉えた。

「――ッ!」

振り向きざま、パウロが訓練用の木剣を振り下ろしてきた。

速度と威力に特化した剣神流の剣技。不意を突かれた私には、回避する時間は残されていない。

私は本能的に土魔術を発動し、パウロの剣筋を遮るように高密度の土塊を生成したが、パウロの渾身の一撃はそれを易々と粉砕し、私はその後方へと激しく吹き飛ばされた。

「父様……!いったい、何を……っ!」

「言葉で議論しても、どうせお前には理屈で説き伏せられてしまうだろう。だから、力で測ることにした。お前の言い分を通したいなら、力で示して見せろ、ルディ!」

パウロは木剣を正眼に構え、獲物を狙う獣の瞳で私を射抜いた。

話して分かる状態ではない。私は覚悟を決め、対剣士用の戦闘態勢を展開した。

即席魔法陣(アドリブ・サーキット)多重魔術(スタック・マジック)、三重展開」

私の周囲に、光り輝く魔法陣が三層に渡って浮遊する。

私の魔力量は幼少期からの鍛錬により、今や底が見えないほどに膨大だ。だが、人族の肉体には出力限界がある。一気に魔力を放出すれば、私の体の中の回路は焼き切れるだろう。

それを解決するために編み出したのが、この外部魔法陣である。魔力を体内ではなく、体外の魔法陣で循環・保持させることで肉体への負荷を肩代わりさせる。

魔力過循環状態(オーバードライブ)……!」

体が熱を帯び、視界が白く染まる。維持できるのはわずか数分だが、この状態の私はタイムラグなしで最大威力の魔術を連続行使できる。

「行きます……!」

私は地中から無数の鋭利な『氷柱(アイスピラー)』を隆起させ、パウロに向けて全方位から射出した。同時に『強風(ウインドブラスト)』を自身へ放ち、距離を取る。

だが、パウロの機動力は想像を絶していた。彼は氷の槍を最小限の動きで叩き落とし、私が下がるよりも速い速度で距離を詰めてくる。

「追いつかせない……!」

先ほどの『氷柱(アイスピラー)』は布石だ。私は地中の水分を一気に泥濘へと変え、パウロの足元を巨大な泥沼に作り変えた。パウロの足がその沼に捕らわれる。

一瞬、『電撃(エレクトリック)』で仕留める選択肢が脳裏をよぎった。だが、この至近距離で放てばパウロを殺してしまう。逼迫した状況で手加減できるほどの精度はまだ無いのだ。身重の妻二人を残して、夫を殺すわけにはいかない。

躊躇した私は、非致死性の氷の刃で彼を無力化しようとした。

だが、パウロの動きは私の予想を超えていた。

足を取られたはずのパウロは、そのまま地面に手をつき、泥の上を転がるように超高速で前転して距離を詰めてきたのだ。

「なっ……!?」

これまでの型通りの剣術とは全く異なる、泥臭くも合理的な動き。

戸惑う私の喉元に、パウロの剣閃が迫る。

――この剣筋は剣神流のもの、受け流せる!

「水神流――『流』ッ!」

私は咄嗟に氷の剣を生成し、渾身の力で受け流した。カウンターでパウロの背中に薄皮一枚の傷を負わせたが、決定打にはならない。子どもの膂力では、闘気で固めたパウロの硬い筋肉を切り裂けなかった。

私は風の術式を身体の周囲に展開し、揚力によって上空へと逃れた。

剣が届かぬ高空からの一方的攻撃。これが対剣士の私の切り札だった。風魔術による飛行の習得には大変苦労したのだ。ただの『強風(ウインドブラスト)』では姿勢制御できない。身体に風を結界のように纏わせた状態で、更に外部から強い風を起こすことが必要なのだ。この感覚を掴むのに、何度も骨折したり転落死しかけた。まぁ、その経験のおかげで治癒魔術の無詠唱に成功したので安い代償と言えるだろう。

「……取った」

勝利を確信し、油断した瞬間だった。

視界の端で、パウロが手に持っていた剣を私に向かって「投擲」したのが見えた。

「な……っ!」

剣士の命である剣を、投擲するだと!?咄嗟に風に氷の粒を混ぜ、突風で剣を逸らそうとする。だが、その背後に気配を感じた。

「――!?……っ!」

投擲された剣を追うように跳躍したパウロが、空中で剣を掴み直し、私の死角から一撃を見舞っていた。

私の意識は、そこで暗転した。

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Side: パウロ

気絶したルディの小さな体を抱きとめ、着地する。

庭に広げられた泥沼は、ルディの意識が途切れると共に、ただの湿った土へと戻っていった。

「……まさか、北神流まで使わされるとはな。さすがは俺の息子だ」

苦笑する俺の隣に、いつの間にか呼び出しておいたギレーヌが歩み寄ってきた。

「……ルーデウスは、今年で何歳だったか」

「……もうすぐ六歳になる」

「それで、お前の北神流を引き出したか。……末恐ろしいという言葉すら生温いな」

ギレーヌの低い声に、俺は同意しかできなかった。

「ルーデウスに、北神流は見せていなかったのか?」

「ああ、今日が初めてだ。……ルディのやつ、生意気にも相手を理解して封じ込める戦い方をするからな。型のない北神流を知っていたら、俺の方が負けていたかもしれん」

冷や汗が出る。親父としての威厳を保てるのは、あと数年もなさそうだ。

「ギレーヌ。手紙に書いた通りだ。この子を……ロアへ連れて行ってくれ」

俺は腕の中のルディをギレーヌに預けた。

改めて抱き上げると、その体はまだひどく軽かった。こんな小さな体で、空の異変だの、共依存だの、重荷をすべて背負おうとしていたのか。

ギレーヌは、壊れ物を扱うように大切にルディを受け取った。

「……本当に、いいのか。ゼニスたちには」

「男の勝負の結果だ。……それに、背中に一撃もらっちまったからな」

俺は破れた服の背中を見せた。薄皮一枚だが、見事に斬られていた。ルディが成長して力を付け、あのまま剣を振り切られていたら、負けていたのは俺の方だ。

気づけば、ゼニスが駆け寄ってきて俺の背中に治癒魔術をかけていた。

「ああ、ルディ……っ!」

ゼニスとリーリャが、ギレーヌの腕の中で眠るルディに縋り付いた。

「体に気をつけて、頑張るのよ……。母様は、いつでも貴方の味方だからね!」

ゼニスが涙を流しながら、ルディの頬を撫でる。リーリャもまた、瞳を潤ませながら深々と頭を下げた。

「……いってらっしゃいませ。坊ちゃま」

俺の自慢の息子、ルーデウス・グレイラット。

彼はそのまま、ギレーヌの駆る馬車に乗せられ、不気味な歪みが渦巻くというロアの街へと旅立っていった。




ここまで読んでいただきましてありがとうございます。

対パウロ戦でした。
原作同様、手加減をしなければ勝利できていた戦いです。
しかし、『電撃(エレクトリック)』を使えば殺してしまっていた可能性が高いです。治癒魔術も中級までしか使えないので、回復も絶望的でしょう。

ロアの異変について、ギレーヌが魔力眼で異変に気付いたのは崩壊直前だったと思います。
疑似魔力眼(マナ・サイト)なら感度調整ができるので、ルーデウスはこの時点で気づけました。有能な反面、デメリットもあります。それもこれからのストーリーに加えていければと思います。
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