無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
私は現在、魔法大学での講師としての職務を本格的に再開している。実際に教壇に立ち、知的好奇心に溢れた学生たちと言葉を交わし、魔術の術理について議論を戦わせる時間は、思いのほか私の精神に良い刺激を与えてくれる。
今回、私が担当することになったのは雷魔術だった。先生方から、そして学長からも直々に強い要望を受けての話だ。
教壇に立ち、私は学生たちを見渡した。
「雷魔術というと、一般的には水聖級、あるいは水王級魔術の派生だと言われている」
その一言に教室の空気がわずかに沈んだ。何人かの学生が露骨に肩を落とすのが見える。聖級以上ともなれば、並の魔術師では一生かかっても届かない領域だ。
「確かに、そう聞くとハードルが高く感じるだろうな。……だが、それは半分正しく、半分は間違っている」
その言葉に、俯きかけていた学生たちの顔にわずかな希望が灯った。
「水聖級や水王級魔術が引き合いに出されるのは、あくまで『電気』という現象を感覚的に掴むための、いわば近道として便利だからに過ぎない。別の手段で『電気』という現象そのものを直接認識できるなら、その道筋にこだわる必要はない」
私はまず、前提となる知識の復習から始めることにした。水聖級魔術、水王級魔術それぞれの理論をざっと確認したあと、本題である「なぜ嵐の中で雷が生まれるのか」という話に移る。
「嵐雲の中では、無数の氷の粒と水の粒が、上昇気流と下降気流に巻き上げられながら、絶えず衝突を繰り返している。この衝突のたびに、粒同士の間でごく微小な『力』のやり取りが起きる。軽い粒はその力を帯びたまま雲の上部へ押し上げられ、重い粒は逆に力を帯びたまま雲の下部に沈んでいく」
私は黒板に、雲を模した簡単な図を描きながら続けた。
「結果として、雲の上と下では、まったく性質の異なる『力』が溜め込まれることになる。この偏りが限界を超えた瞬間――雲と雲、あるいは雲と地上との間で、その差を一気に均そうとする現象が起きる。これが、雷の正体だ」
「その『力』というのが、先生の言う『電気』なんですか?」
前列の学生が手を挙げて尋ねる。
「その通り。水の粒がぶつかり合う中で生まれるこの現象を、水聖級魔術は水を媒介にして間接的に再現しているに過ぎない。だが、この『電気』そのものを直接引き出す方法さえ分かれば、水魔術の高みを経由する必要はなくなる」
理屈だけではまだ実感が湧かないだろう。私はそう判断し、あらかじめ用意していた学習器具を机の上に置いた。
設計はいたって簡素で、非常に弱い
「触ってみろ。安心していい、後遺症もなければ、命に関わることもない」
学生たちは恐る恐る、その装置に指先を近づけていく。
パチッ――軽い音が鳴った瞬間、何人もの学生が悲鳴に近い声を上げ、慌てて手を引っ込めた。
「な、なんですかこれ……!ビリッとしました!」
「これが『電気』だ。今、君たちの指先が感じたものこそが、雷魔術の本質にあたる現象そのものだよ」
教室のあちこちから、驚きと納得の入り混じったどよめきが上がった。実際に体感を伴った学びは、座学だけの理解とは重みが違う。
「水魔術を派生させてこの現象を発生させようとすれば、それこそ聖級以上の技量が要る。だが、この『電気』という現象を直接生み出すことができれば、必要な難易度は大きく下がる」
私はそう説明を続けながら、あらかじめ用意していた羊皮紙の束を配っていく。呪文が書き込まれたそれは、ロキシーと共同で開発した『
ロキシーは無詠唱魔術こそ使えないが、詠唱に関する知見は私やシルフィをも上回る。詠唱短縮の理論を高い次元で実現している彼女の実力は、私も改めて舌を巻くほどだった。
「今、君たちの指先が覚えたばかりの『電気』の感覚を、正しく思い浮かべながらこの呪文を唱えてみてほしい。うまくいけば、
「先生、詠唱が長いです……!」
「最初はそちらの方が成功率が高いだろう。感覚さえ掴めれば短縮することも可能だ」
私はそう言って、忘れないうちにこの感覚を反復するようにと告げた。ちょうどそこで、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
今日の授業の反省と次の授業の計画を立てる。教員という職は、外からは見えない業務が多い。同僚として隣で働くロキシーが連日どれほど多忙なスケジュールをこなしていたのか、身をもって理解できたのも大きな収穫だったと言える。
「ルディ、今日の講義もお疲れ様でした」
「ロキシーも。……さあ、一緒に帰ろうか」
夕刻、仕事を終えた私たちは連れ立って自宅への道を歩き始めた。
私は蘇生後の成長期に入ってはいるものの、依然としてその体格は十歳前後の子供のままだ。歩き始めてすぐ、ロキシーが当然のような顔をして私の手を取り、ぐいと引いて歩こうとした。
「……待ってくれ、ロキシー。流石にその引き方は止めてもらえないかな」
「あら、どうしてですか?」
「子供扱いが過ぎるよ。学校の近くだ、もし学生に見られでもしたら、明日から講師としての威厳が霧散してしまう」
私が真面目な顔で抗議すると、ロキシーは少しだけ残念そうな、名残惜しそうな表情を浮かべた。けれど、私が改めて彼女の手を握り直し「普通に手を繋いで歩こう」と提案すると、彼女は一変してぱあっと顔を輝かせ、嬉しそうに私の隣に並んだ。
自宅に戻り、一通りの家事を済ませてから風呂へと向かった。
今日は帰宅が遅くなったため、浴場を使うのは私が最後だ。子供たちは既にリーリャの手によって寝かしつけられており、家の中には静かな夜の空気が流れている。
私は魔術で冷めかけた湯を最適な温度まで温め直し、広々とした浴槽に身を沈めた。
(……ふぅ。やはり、お風呂でのリラックスは重要だな)
温かな湯が、一日中講義で酷使した脳と身体の疲れを解きほぐしていく。
だが、その静寂は不意に破られた。
浴室の扉が勢いよく開き、一人の「乱入者」が姿を現した。アイシャだ。
彼女はあろうことか、服を脱ぎ捨て、タオル一枚身に着けない無防備な姿で堂々と入ってきた。
「アイシャ……。何度も言っているが、目に毒だ。少しは慎みを持ちなさい」
「いいじゃないですか。旦那様こそ、そんなに顔を赤くして。可愛いですよ?」
彼女は私の苦言などどこ吹く風で、鼻歌交じりに私の隣へと潜り込んできた。
この小さな身体になってからというもの、妻たちの反応は三者三様だった。
エリス、シルフィ、ロキシーの三人は、多かれ少なかれ私を「愛でる対象」として処理している節がある。
エリスは長男のアルスに接するような母性を見せ、シルフィはまるでゼニスのように甲斐甲かいしく世話を焼く。そしてロキシーは、かつての家庭教師時代を想起しているのか、導き手のような慈愛を持って接してくる。
だが、アイシャだけは明確に違った。
彼女の瞳の奥には、慈しみよりも、獲物を狙うオオカミのような……あるいは、極上の素材を前にした料理人のような、峻烈な熱が宿っている。
最近の彼女はボディタッチの頻度が異常に高く、正直に言えば、少々セクシャルハラスメントの領域に踏み込んでいると感じるほどだ。
アイシャ曰く、「元の姿も格好良かったけれど、今のこの体格差と可愛らしさは、私の中に新しい世界の扉を開いてしまった」のだという。
今も、彼女は湯船の中で私の身体を隅々まで堪能するように、指先で私の腕の鱗をなぞっている。
「……アイシャ。いい加減にしなさい。私は精神まで子供に退行したわけではないのだから……」
釘を刺そうと口を開いた、その瞬間だった。
柔らかな感触が、私の唇を塞いだ。
不意を突かれた接吻。
アイシャの瞳を至近距離で覗き込む。そこには冗談やいたずらの色は欠片もなく、一人の女性としての、逃れようのない情動が渦巻いていた。
「……旦那様。さっき、エリスさん、シルフィ姉、ロキシーさんとも、ちゃんと会議をして決めてきたんです」
「何を、だい?」
「この新しくなったお兄ちゃんの『はじめて』は、私に譲るって。……約束、しちゃいました」
アイシャの吐息が耳元を掠める。
……流石に、これ以上の拒絶は夫としての、そして男としての論理を欠く行為だろう。
だが、家族全員が使う浴場を、情欲の処理で汚すわけにはいかない。
「……分かった。移動しよう」
私は魔術を瞬時に励起させ、周囲の水気を一気に吹き飛ばした。
そして、嬉しそうに顔を綻ばせるアイシャを、子供の体格なりに重力操作で補佐しながら「お姫様抱っこ」で抱え上げる。
「あら。エスコートまでしていただけるなんて、光栄です」
「……後で泣き言を言っても、ストップはかけないからね」
私は彼女を抱えたまま、寝室へと向かって迷いのない足取りで廊下を進んだ。
アイシャが私の子を授かるのも、もはや時間の問題だろう。
今の私には、失われた筋肉を取り戻すという明確な課題がある。
蘇生後の身体は驚くほど身軽だが、裏を返せば圧倒的な出力不足だ。魔術に頼らずとも、せめて以前のように水神流の遣い手であることを胸を張って名乗れる程度の基礎体力を築かなければならない。……もっとも、私が使うのは槍なので、正確には剣士ではないのだが。
闘気はようやく使えるようになった。だが、それも基礎体力があってこそ初めて有効に使える力だ。土台のないところに積み上げてもいずれ崩れるだけだろう。
そんな目的もあり、私は毎朝の訓練に加えてパウロの運営する剣術道場へ通い、門下生たちに混じって泥にまみれていた。
ルードと名付けられた男も、今では毎日欠かさず顔を出している。ノルンは絵本の執筆が佳境に入っていなければ、その多くを稽古に充てているようだ。アルスは理由を問うまでもなく、いつも楽しそうに毎日通ってくる。エリスは冒険者としての依頼をこなしたり、オルステッドから回ってくる仕事を手伝ったり、傭兵団の鍛錬を見てやったりと忙しいが、シャリーアにいるときは決まって顔を見せていた。
周囲の者たちは当初、十歳前後の見知らぬ少年が紛れ込んできたと思っていたようだが、私の腕にあるエメラルドグリーンの鱗と紫に輝く竜の眼を見れば、正体がシャリーアの『雷神』であることはすぐに露見してしまった。今では皆、畏怖と好奇心が混ざったような複雑な視線を私に投げかけてくる。
「もっと足腰を粘らせろ!意識が浮いているぞ!」
パウロの野太い指導の声が響く。
「よし、ルディ。門下生たちに手本を見せてやれ」
パウロに指名され、私は木槍を手に取って道場の中央へと進み出た。この道場で槍を使っているのは、今のところ私だけだ。果たして手本になるものだろうか、と一瞬考えたが――まぁ、相手は剣で立ち向かってくるのだから、受け方を見せるという意味では十分だろう。
まずは、パウロとの立ち合いだ。
パウロは剣神流の構え。鋭く、最短距離で私の喉元を狙う一撃が放たれる。私はそれを水神流の理合に基づき、最小限の動きで受け流し、受け流し、ひたすらに衝撃を逃がし続けた。
隙を見て放った私のカウンターも、パウロは流石の経験値で的確に処理する。数分間、激しい火花の散らし合いが続いた。
正直闘気を使えなければ、この勝負はつかなかっただろう。だが、新たに人工魔力回路をインプラントした今の私は、闘気――それも龍聖闘気を纏うことができる。長年ネックだった反射神経と動体視力が底上げされ、予見眼と組み合わせれば、水神流の防御は万全に近い域にまで届く。
パウロが放った剣神流の一撃を見切り、水神流奥義『流』でそのままカウンターへと繋げる。次の瞬間、私の木槍の先端はパウロの首元にぴたりと突きつけられていた。
「……ふぅ、やるなルディ。その体格で俺の剣を捌き切るとは……最近随分と強くなっているじゃねぇか?」
「ようやく私も闘気を纏えるようになったんです。でも、父さんの剣も以前より重くなっている気がしますよ」
次に、私はノルンと向かい合った。
最近は執筆活動にリソースを割きすぎているせいか、彼女の身体の反応はわずかに遅れているように見えた。水神流の守りを固める彼女に対し、私はビヘイリルで目撃したシャンドルやドーガの術理――北神流特有の、変幻自在な揺さぶりを仕掛けることにした。
アスラ王国に赴いた際は、イゾルテ、シャンドル、ドーガの三人に稽古をつけてもらう機会がある。中でもシャンドルは別格だった。北神流の頂点に立つ男の動きは、これまで見てきたどの北神流の遣い手よりも学ぶところが多い。今この揺さぶりも彼の型を借りたものだ。
ノルンは懸命に食らいついてきたが、最後は私の木槍が彼女の首筋にぴたりと止まり、終了を告げた。
「……あ、ありがとうございます。やっぱり、兄さんには敵わないな」
「いや、受け流しの精度は上がっているよ。自信を持つといい」
そして、最後はエリスとの立ち合いだ。
彼女は「待ってました!」と言わんばかりに、全身から凄まじい闘気を発散させている。本気で挑まなければ、一瞬で意識を刈り取られるだろう。私は『予見眼』を全開にし、視界に映る未来の映像を必死に解析しながら、身体の隅々まで龍聖闘気を流し満たしていく。やがて、周りの動きがスローモーションに見え始めた。
「いくわよ、ルーデウスッ!!」
放たれたのは、嵐のような連撃だった。スローモーションに見えている景色の中でさえ、対応に困るほどの速さだ。しかも剣だけではない。殺気によるフェイント、四方から飛んでくる蹴りや拳打――気のせいではなく、エリスは間違いなく強くなり続けている。元々、剣帝と呼ばれてもおかしくないほどの実力者だったが、今の彼女はもはや神級の領域に足を踏み入れつつあるようにすら感じられた。
アルスが「頑張れ!」と目を輝かせて応援している手前、私も無様な姿は見せられないと奮起したが……。
いかに水神流が剣神流に対して相性が良いとはいえ、子供の体格によるリーチの短さとスタミナの欠如を、予見眼だけで埋めるには限界があった。交錯の後、私はエリスの剛剣に弾き飛ばされ、無様に地面を転がった。
「……完敗だ」
「ふふん、まだまだねルーデウス!修行が足りないわよ!」
悔しそうにする私を、エリスが満足げに引き起こしてくれる。アルスも「今の凄かった!」と駆け寄ってきて、非常に有意義な訓練となった。
稽古が終わり、皆が解散しようとしたその時。
一人の男が、おずおずと私に声をかけてきた。身長が二メートル近い、岩のように筋骨隆々とした大男だ。彼は子供の姿である私に対し、深々と頭を下げた。
「……失礼いたします、雷神様。私はこの近隣で鍛冶を営む者です。至高の剣を打つための術を学ぶべく、こちらの道場でお世話になっております」
男の話によれば、彼はどうしても世界で最も強いとされる伝説の剣を一目見たいのだという。
「……『王竜剣カジャクト』を見せてはいただけないでしょうか」
男の願いに、周囲の門下生たちもざわめき立った。パウロが「いいじゃないか、ルディ。滅多に拝めるもんじゃない。見せてやれよ」と背中を押すので、私は承諾することにした。
私は体内に
「せっかくだ。この剣がなぜ『最強』の一つに数えられるのか、その基本性能を紹介しよう」
まずは、カジャクトの「重さ」の制御だ。子供の私が、自分よりも大きな大剣を片手で軽々と振り回す光景に、男は信じられないといった様子で目を見開いている。
「カジャクトには重力を操作する機能がある。私にかかる重さをゼロに近づければ、この通り、羽毛のように扱える」
次に、私は男に剣を構えるよう促した。
「いいか。ゆっくりと、上から振り下ろす。しっかりと受けてくれ」
男は「任せてください」と力強く木剣を構えた。私はカジャクトをゆっくりと、彼の木剣の上へと載せた。
接触した、その瞬間。
「ぐ、ぅ……ッ!?」
男の足元の大地が沈み込み、彼は悲鳴を上げる間もなくその場に膝を突いた。
「これが基礎の第一段階。接触した対象に、仮想的な『質量』を上書きし、重圧を与える」
続けて、私は術理を反転させた。
「次はこれだ」
カジャクトから放たれる魔力が変わる。すると、膝を突いていた男の身体がふわりと地面から浮き上がった。
「な、何だ!?体が……浮かぶ!?」
男は空中で手足をジタバタと動かしたが、踏ん張るべき地面がない以上、その巨体も無防備な肉の塊に過ぎない。
最後に、私は仕上げの「応用」を見せることにした。カジャクトを再び上段に構え、魔力を限界までチャージする。剣の周囲の景色が、まるで熱気に晒された陽炎のように歪み始めた。キィィィン、という空間が軋むような不快な音が響く。
「おい、ルディ!それは流石にやりすぎだろ!」
パウロが焦ったような声を上げるが、私は冷静に制御を続けた。振り下ろす直前、私は指向性を持たせた重力波を解放した。男の頭上数センチの位置で剣を止め、峰で軽くその額を叩く。
「……ちょっとした応用だ」
重力から解放された男が地面に降り立つと、彼は腰を抜かしたまま、呆然と自らの手を見つめていた。最強の剣が放つ、物理法則そのものを書き換える力。一介の鍛冶職人である彼にとって、それは理解の範疇を超えた神の業に映ったのだろう。
「……素晴らしい。これが……これが、世界最強の剣……」
その反応に気を良くしたのか、つい私も口が滑らかになった。
「まだまだ機能はあるぞ。相手の剣をこちらの身体に届かせない『反発力』を生み出すこともできるし、剣を振らずとも局所的な重力操作だけで相手を『捩じ切る』魔術もある。転移魔術とも相性が良くてね。剣で切った箇所をそのまま『ランダム転移』させれば、理論上は『何でも切れる剣』にすることも可能だ。最終的な応用は時間操作だな。重力を極限まで圧縮すれば『時間停止』、歪みを利用すれば『時流加速』、さらには『時間遡行』すら……」
そこまで語ったところで、私は男がすっかりきょとんとした顔をしていることに気づいた。
……少し、話しすぎたか。『重力』という概念そのものへの理解が前提にある話だ、無理もない。
「まぁ、こんな感じだ。……触ってみるか?」
私はカジャクトを、そっと男の両手に持たせた。男の手は、目に見えて震えている。口からは「おおぉ……」という、感嘆とも呻きともつかない声が漏れていた。
その後、男は震える声で礼を述べ、何度も地面に額を擦り付けた。目には涙が浮かんでいた。
私はカジャクトを再び自身の中へと仕舞い、心地よい疲労感と共に道場を後にした。
魔法大学と自宅での一幕でした。
カジャクトの応用は夢が広がりますね。
老デウスも重力魔術の極致として時間遡行を思いついたのではないでしょうか?