無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
「アレク、右からさらに五体来ているぞ!」
「任せてください!ルーデウスは上空を旋回している奴らをお願いします!」
現在、私はアレクサンダー――北神三世アレクとともに、王竜王国の辺境域で任務にあたっていた。龍神オルステッドからの直接の依頼だ。
彼の予見によれば、このまま放置すれば魔物の大群が移動を開始し、将来的にシーローン共和国の重要人物を死に至らしめるという。歴史の不具合を未然に防ぐための予防保守というわけだ。
私は空中に静止したまま魔力を練り、
「『
凄まじい雷光が杖から放たれ、逃げ場のないワイバーンたちを一撃で全滅させた。地上に目を向けると、アレクもまた私の攻撃に呼応するかのように残りの魔物を瞬く間に屠り終えていた。
「流石ですね、ルーデウス!あの広域殲滅能力、何度見ても惚れ惚れします!」
「君もいい動きだったよ、アレク」
オルステッドの軍門に降って以来、アレクは別人のように礼儀正しくなった。以前の傲慢さは完全に消失し、今では極めて丁寧な物腰で私を支えてくれている。ただ、実戦における迅速な情報共有を考えれば、過剰な敬語は伝達効率を低下させるノイズでしかない。
「アレク。以前も言ったが、任務中はもっと気軽に話してくれ。私も君を『アレク』と呼ぶことにしたんだからな」
「あ……。そうでした、つい。……分かったよ、ルーデウス」
アレクはまだ幼さの残る顔で、照れくさそうに笑った。彼は根が純粋で、一度認めた相手には真っ直ぐな好意を向ける性質の持ち主だ。殺し合った仲ではあるが、友人となるのにそう時間はかからなかった。
「これでこのエリアの仕事は完了かな?」
「いや……追加の依頼が入った。次はアスラ王国の首都近郊に、強力なはぐれ赤竜が出現したらしい」
「連戦か。いいよ、すぐに向かおう」
私はアレクを抱え上げると、重力制御を併用して一気に加速した。アレクは神級剣士としての強靭な肉体を持っている。普通の人間なら気絶するか失禁するような超高速飛行でも、彼は「凄い速度だ!」と楽しそうに風を受けていた。安全面を気にしなくて済むのは、非常に助かる。
アスラ王国の王都アルス近郊。私たちは問題の赤竜を最短の手順で排除し、ようやく本日のすべての任務をコンプリートした。
「せっかくここまで来たんだ。シャンドルたちに会いに行こうか」
私はアレクを伴い、王都に拠点を置くアスラ騎士団の駐屯地を訪れた。そこには、黄金騎士団の面々――イゾルテ、ドーガ、そしてシャンドルの姿があった。
「父さん、ご無沙汰しております!」
「おお、アレクか!任務ご苦労だったな」
シャンドル――北神二世は、すっかり礼儀正しくなった息子の姿を見て、実になんとも嬉しそうに目を細めていた。アレクは父親の直球の歓迎に、少しばかり照れ臭そうに視線を逸らしている。
「ルーデウス殿、息子を正しく導いていただき、感謝する」
シャンドルから深々と頭を下げられ、私は苦笑して首を振った。
「ところで、シャンドル。……例のビヘイリルで作った『雷の長棒』はどうした?貴殿が愛用しているものかと思っていたが」
あの北神親子の激突の際、私が即席で組み上げた雷電付与の複合素材兵器。シャンドルが持つ武器としてはなかなかの傑作だった自負がある。
「ああ、あれか。……実は闘神との決戦に際して武器を損壊させてしまった母、アトーフェに貸したのだよ」
シャンドルは困ったような、けれどおかしそうな表情で付け加えた。
「母は、あの痺れる感触がえらく気に入ってしまったようでね。『これはオレにこそ相応しい獲物だ!』と言って、そのまま返してくれなくなってしまったんだ」
「……あのアトーフェが。それはなかなかの誤算だったな」
あの魔王が私の作った武器を振り回して暴れている光景を想像し、少しだけ頭が痛くなった。
「さて! 昔話もそこそこにしよう。今日は久々の再会だ、みんなで飲みに行かないか? ドーガもイゾルテも、君の武勇伝を聞きたがっている」
シャンドルの快活な誘いに、ドーガが「…………うす。楽しみ」と短く応じ、イゾルテも淑やかに微笑んで頷いた。
(……ふむ。手土産用の酒を仕入れる必要もあるし、ちょうどいい機会か)
アリエル女王への定期連絡も考えていたが、彼女に捕まるとまた数時間は「充電」に付き合わされることになる。今の縮んだ身体で彼女の情熱を受け止めるのは、少々エネルギー効率が悪いし、何より気恥ずかしい。
「分かった、付き合おう。ただし、アレクをあまり酔い潰すなよ」
私はアレクの肩を叩き、賑やかな騎士たちの輪に混じって、王都の街へと繰り出した。
案内されたのは貴族街ほど気取っていない、庶民的で賑やかな酒場だった。どうやらシャンドルの行きつけらしい。
入り口で店員から私の年齢を確認された。見た目が十歳前後の子供なのだから、無理もない。シャンドルが「この者は見た目に反して立派な成人だ、私が保証する」と苦笑まじりに説明してくれたおかげで、私たちは奥の立派な半個室へと通された。
シャンドルの音頭で乾杯する。
「今日は無礼講だ、好きなだけ飲め!」
皆、なかなかの飲みっぷりだった。アレクだけは少々不安が残る――いつでも解毒魔術をかけられるよう、意識の片隅で準備をしておくことにする。
意外だったのはイゾルテだ。凄まじい勢いでジョッキを一気に空にしていく。人族の身体で、この量は大丈夫なのだろうかと思っていると、案の定、彼女の顔はすぐに真っ赤に染まった。どうやら、余程ストレスが溜まっているらしい。
「ねぇねぇ、ルーデウス殿。……エリスとの結婚生活はどうなの?」
イゾルテが、酒の勢いに任せて絡んでくる。
「すこぶる良好だよ。アルスも元気に剣を振っているし、クリスティーナも言葉を覚えるのが早くてね。とてもよく懐いてくれていて、『パパ』と呼んでくれるんだ」
シャンドルとドーガが、微笑ましそうにその様子を見守っている。
「……いいなぁ。羨ましいなぁ……」
イゾルテはぽつりと呟くと、おかわりのエールをまたも一気に飲み干し、テーブルに突っ伏して「いいなぁー!」と叫び始めた。思っていた以上に酒癖が悪いらしい。シャンドルはそれを面白そうに眺めているが、アレクは酔っ払いの扱いに慣れていないのか、少し引いた様子で椅子を引いていた。
「イゾルテほどの器量と強さがあれば、それこそ引く手あまたなんじゃないか?」
私が何気なくそう口にした瞬間、イゾルテの肩がびくりと跳ねた。シャンドルとドーガが、揃って「あっ」という顔をする。
イゾルテはがばりと勢いよく身体を起こすと、堰を切ったように語り始めた。
「そう思うでしょう!?私だってそう思ってたのです!でもね、全然違うの!まず、私と手合わせしようとする人がいないの。剣を交えるどころか、話しかけようとした時点でみんな腰が引けちゃって!この前なんて、お見合いの席で相手の男性が、私の二の腕を見た瞬間に『……失礼、急用を思い出しました』って帰っちゃったのよ!?急用って何!? 私の二の腕に何があるのよ!」
一度堰が切れたイゾルテは止まらなかった。
「しかも、たまに勇気を出して声をかけてくれる人がいたと思ったら、決まって『僕を鍛えてください、姉御!』とか言い出すの!私は姉御になりたいんじゃない、お嫁さんになりたいの!あと、黄金騎士団の中でも私に近づいてくる人は皆無!みんな私のこと、戦友か、あるいは怖い上司枠だと思ってるのよ!」
彼女は空になったジョッキをテーブルに叩きつけるようにして置いた。
「ミリス教の教義的に、私は殿方一人しか娶れないの。……なのに、その『一人』にすら巡り会えないなんて、おかしくない!?」
凄まじい勢いで捲し立てるイゾルテに、私はただ相槌を打つことしかできなかった。
「ああ、私も貴方みたいな、強くて優しい旦那様がいれば良いのに……」
しみじみと呟くイゾルテに、シャンドルがからかうような笑みを浮かべる。
「なんだ、それならルーデウス殿に娶ってもらったらどうだ?」
「シャンドル、貴方それ、本気で言ってる?ルーデウス殿はもう四人も奥方がいらっしゃるのよ。ミリス教徒の私が割り込めるわけないでしょう……」
イゾルテはそう返すと、再びテーブルに突っ伏し、しばらくの間、くぐもった声で嘆き続けていた。やがて、その声も次第に小さくなり、静かな寝息へと変わっていく。
「……こうならないように、気をつけるのだぞ」
シャンドルが、まるで他人事のような口調でアレクに囁いた。アレクは何と反応すればいいのか分からないといった様子で、恐る恐る「は、はい……」とだけ返している。
ドーガは何も言わず、イゾルテが目を覚ました時のためにと、水の入ったジョッキを黙々と用意していた。
「……もう少し寝かせてから、解毒魔術をかけるか」
私は小さく呟き、静かに酒を口に運んだ。
イゾルテが寝入ったのを機に、話題は自然とシャンドル、ドーガ、アレクとの会話に移っていった。
まずは、オルステッドから依頼された今回の任務についてだ。アレクが楽しそうに、身振り手振りを交えて語り始める。
「いや、今回のはなかなか歯応えがありましたよ!ワイバーンの群れが三十を超える規模で、しかも三方向から同時に来たんです。僕が地上を食い止めている間に、ルーデウスが上空を一掃してくれて……あの雷魔術、真下から見ると本当に世界が終わるんじゃないかと思いました」
「地上の敵を任せられるとわかっていたから、私も遠慮なく広範囲魔術を撃てたんだ。連携としてはかなり噛み合っていたと思う」
私がそう補足すると、シャンドルは目を細めて嬉しそうに頷いた。
「ほう……。しかし、よくそこまでの剣士と息を合わせられるものだ。付き合いはまだ、そう長くないだろう」
「北神流の剣士とは、これまで戦うことが多かったからね。動きの癖は大体読めるんだ」
そう答えてから、私はふと気づいた。
「そういえば、この場には北神流しかいないな。……イゾルテは寝ているから、今はノーカウントで」
「違いない」
ドーガが短く同意する。
戦いに次ぐ戦いを潜り抜けてきた私に、シャンドルはふと興味深そうに尋ねてきた。
「ルーデウス殿。これまでで、特に印象に残っている敵はいるか?」
「一番はオルステッドだな。……今でも勝てる気がしない」
その名前を聞いた瞬間、酒で赤くなっていたアレクの顔が、一気に青ざめた。かつて散々に打ちのめされた記憶が鮮明に蘇ったのだろう。
「まぁ、列強二位ともなればそうだろうな」
シャンドルが得心したように呟く。
「他にはいるか?」
「……死ぬかと思ったという意味では、闘神だな。あれも列強三位だ」
「闘神バーディガーディ、か」
「あまりにも強すぎて、正直、今でも上手く実感が湧かないくらいだ」
「分かるぞ。私だって、あの王竜剣カジャクトをもってしても全く歯が立たなかった。あそこまで一方的にやられたのは久しぶりだったよ」
その強さを知るアレクは、信じられないといった顔でシャンドルと私を交互に見た。
「王竜剣すら通じないとは……闘神とはやはり化け物なんですね……」
「それに打ち勝ったルーデウス殿が本物の化け物だけどね」
シャンドルは腕を組み、記憶を辿るように語り始めた。
「……あの闘神の一撃は、大気そのものを叩き割る。まともに剣を合わせれば、鋼だろうと魔剣だろうと砕けるのは道具の方だ。おまけに、あの巨躯からは想像もつかないほどの速さで踏み込んでくる。……北神流の理合でいう『間合いの支配』を、力技で完全に無視してくる相手だったよ。まともにやり合えるとすれば、それこそ列強上位クラスの化け物同士だけだろうな」
ドーガが、その説明に納得したように深く頷いていた。
「……ルーデウスには他にも印象に残っている相手はいますか?」
アレクが尋ねてくる。私は少し考えてから答えた。
「他か……『孔雀剣』北帝オーベール・コルベット、だな」
三人とも、北神流として人物を知っているのだろう、それぞれに違った反応を見せた。アレクは少し複雑そうな顔をしている。
「ああ、あの人……。奇抜派の筆頭ですよね。強さは認めますけど、正直、やりすぎだと思います」
シャンドルとドーガは、揃って苦笑を浮かべた。
「だが、奴は強かったと思うよ」
私はそう言葉を続けた。
「オルステッドも言っていた。あの男が本気で逃げに徹すると、自分でも仕留めるのに苦労する、と。地味に見えて有効な技を、その一つ一つが高いレベルで揃っている。私だって戦ったのはわずか三回だが、そのうち二回は取り逃がしている。今の私でも、状況によっては危うい相手だと思う」
その評価に、アレクは意外そうな顔をした。
「あのオルステッド様から、逃げ切れる相手がいるなんて……」
よほど驚いたのだろう、彼はしばらく黙り込んでいた。
「……これほどまでに爪痕を残せるのであれば」
シャンドルが、静かに、けれどどこか敬意を込めた声で言った。
「奴も、剣士としては本望だったのだろうな」
その言葉に、場が少しだけしんみりとした空気に包まれた。
場がしんみりとしたところに、一人の女性が声をかけてきた。
冒険者風の軽装を纏ってはいるが、身のこなしから漂う気配が明らかに違う。恐らく、変装した近衛兵だろう。そもそも、北神二人と北帝、そして雷神が揃って囲む卓に平然と声をかけられるような度胸の持ち主はそう多くない。
「失礼いたします。……ルーデウス様、少々よろしいでしょうか」
聞けば、アリエル女王からの呼び出しだという。
シャンドルと私は、思わず顔を見合わせた。アレクは酔いが回っているのか、少しふらついている。
「……ルーデウス殿。アリエル陛下に、来訪を知らせていたのか?」
シャンドルが訝しげに尋ねてくる。
「いや、知らせていない」
「では、どうやって」
「恐らく、情報収集の網に引っかかったんだろう。……それにしても、いくらなんでも速すぎる」
このアスラ王都に足を踏み入れてから一日も経っていない。それでこの反応速度とは、女王の情報網の恐ろしさを改めて思い知らされる。
女王直々の呼び出しとあっては、無視するわけにもいかない。嫌な予感がひしひしとするが、ここは大人しく従うしかないだろう。
私はアレクとイゾルテに解毒魔術をかけ、二人の意識をはっきりさせてから、席を立つことにした。会計には少し多めに金を置いていく。
「アレク、今夜は私の屋敷を使っていい。明日の朝、転移陣でシャリーアに戻ろう」
そう言い残し、私はシャンドルたちに別れを告げた。
酒場の外に出ると、すでに立派な馬車が一台、静かに待機していた。最初から、確実に私を確保するつもりだったのだろう。逃げるという選択肢は初めから用意されていなかったらしい。私は大人しく、その馬車に乗り込んで王城へと向かった。
女王の私室の前まで案内される。
扉を開けた侍女に続いて中へ入ると、薄着のまま、手酌でワインを傾けているアリエルの姿があった。目がすっかり据わっている。かなり酔いが回っているようだ。見れば部屋の隅には空になったワイン瓶が二本、無造作に転がっていた。
促されるまま、私は彼女の向かいに腰を下ろす。
「……もう。アスラにいらしているなら、一言くらいお声がけくださってもよろしいのではなくて?」
アリエルは、どこか拗ねたような口調でそう言った。
「申し訳ありません。予定にはなかったのですが、急な任務が入ったもので」
「急な任務、急な任務って……ルーデウス様はいつもそう」
こどもっぽく頬を膨らませながら、アリエルはさらに続けた。
「しかも、シルフィもノルンも連れてきてくださらないし」
「シルフィは子育てで、ノルンは絵本作りで、それぞれ手が離せない時期なんです」
私が言い訳がましく答えると、アリエルは小さくため息をついた。
「……仕方ありませんわね。それでは、代わりにルーデウス様で『充電』させていただくしかありませんね」
そう言うなり、彼女はふらつく足取りでずかずかと歩み寄り、私のすぐ隣に腰を下ろした。距離が、思いのほか近い。ふわりと漂う酒精の匂いに、思わず苦笑する。
「……失礼しますね」
そう断ってから、アリエルは私をぎゅっと抱きしめてきた。
「……まぁこれくらいなら、我慢します」
私は小さく息を吐き、しばらくの間、大人しく彼女の「充電」に付き合うことにした。
だが、今日のアリエルは何かが違った。
その手つきが、普段の友情を超えた、どこか卑猥な粘り気を持って私の腹部をまさぐり始めたのだ。
「……アリエル様?」
「先日アイシャ様に聞いたのです。……幼い姿の貴方にちょっかいを出すのが、どれほど愉悦に満ちているかを」
……アイシャ! あの妹は、女王相手に何を吹き込んでいるんだ!
「世界を震わせる雷神が、こんなに愛らしい少年の姿に……。普段の凛とした瞳と、この幼い肢体のギャップ。少し意地悪なことをして、困ったような声を上げさせれば、もう堪らないと……。ふふ、ふふふふ……」
アリエルの呼吸が荒くなる。息を吐くたび、ワインの香りと彼女自身の熱気が肌に伝わってくる。
まずい。これは本気で食われる。
私は即座に魔術を編み始めた。対象を自然な眠りへと誘う『催眠魔術』だ。
だが、この魔術は精神状態が高揚している相手には浸透しにくい。効くまでに時間がかかる。
「ああ……アイシャ様の言っていたことが、今ならよく分かりますわ……!」
アリエルの手が服の中に滑り込んできた。下半身の重要な拠点を死守すべく、私は必死に防御を固める。
あろうことか、彼女は私の耳たぶを舐め、ぴちゃぴちゃと湿った音を立て始めた。
「はぁぁ、堪りません。もう我慢の限界ですわ……!」
背後から抱きしめられているため詳細は見えないが、彼女は自ら薄い衣服をパージしたらしい。背中に、柔らかく、そして熱い肌の感触がダイレクトに伝わってきた。
「(誰か、助けてくれ……!)」
ドアの前に立つ侍従に視線を送るが、彼は完璧なプロの所作で、無機質な壁の一部になりきっていた。黙認、あるいは根回し済みか。
アリエルが私をソファーに押し倒す。
彼女の口元は欲望で濡れ、艶めかしく光っていた。
その唇が、私の唇に重なろうとした、その瞬間――。
「……ふぇ?」
アリエルの身体から力が抜け、そのまま私の胸元に崩れ落ちた。
「……ふぅ。ようやく効いたか」
あそこまで興奮状態にあると、精神干渉系の魔術は著しく効率が落ちる。危うく、一線を越えられるところだった。
全裸のアリエルは、ソファの上で「すぅすぅ」と平和な寝息を立てている。
私は乱れた衣服を整え、壁際で固まっている侍従に声をかけた。
「……陛下は、お疲れのあまり眠ってしまわれたようだ。風邪を引かぬよう、着替えと毛布を頼む」
侍従は「畏まりました。今日のことは、夢であったとお忘れください」と、深々と頭を下げた。言われなくてもそうするつもりだ。
しばらく、アリエルには近づかないようにしよう。連絡は石板で十分だ。
そしてシルフィとノルン、何よりアイシャも接近禁止だ。
私は心に固く誓い、自室の屋敷へと転移したのだった。
ちょっとアダルトな回でした。
R15……で大丈夫ですよね、多分……。
イゾルテの酔っ払い口調は独自設定として解釈いただければありがたいです。