無職転生 ~性格改変_エンジニアリング視点での魔術構築~ 作:haru-ha
【設定について】
本作は『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』の二次創作小説です。
pixivに掲載していた小説(完結済)のセルフ転載となります。(所々、追記・修正しています)
以下の独自設定(IF設定)を含みます。
・原作と違って、元々存在していたルーデウスの自我は失われず、そこに「ある男」の記憶だけが継承されたという解釈で執筆しています。
・そのため、原作のルーデウスとは性格や口調、判断基準が異なります。
【注意事項】
・原作のストーリー改変(生存IFなど)が含まれる可能性があります。
・キャラの独自解釈、および設定の捏造が含まれます。
・原作全編のネタバレに配慮しておりません。
なんでも許せる方のみ、お進みください。
Side: ルーデウス
朝方、私はふらふらになりながらシャリーアの自宅へと向かっていた。
鉱神との武器づくりが、まさかここまで盛り上がるとは思っていなかった。
私が魔術で作り出す特殊な素材を使った鍛冶、そして出来上がった武具への
そのどちらも鉱神にとって非常に興味深いものだったらしく、気づけば夜通し作業に付き合わされていた。
最初は試練の一環だったはずなのに、いつの間にか鍛冶場全体を巻き込んだ即興の品評会のようになっていたのを思い出す。酒も出ていたな、強くて美味い酒だった。
途中、ベガリット大陸で世話になったタルハンドまで顔を出したときには、さすがに驚いた。
「久しいのう、ルーデウス。まさかこんなところで会うとはな」
そう言って豪快に笑うタルハンドさんに、私も苦笑するしかなかった。
「タルハンドさんこそ、どうしてここに?」
「儂も昔馴染みでな。ゴッドバルドの奴とは色々あったんじゃ。まぁ、その話は後にしよう。今はお前さんの鍛冶を見せてもらうとしようか」
そう言うと、タルハンドさんは腕まくりをして、あっという間に鍛冶場の輪に加わっていった。
タルハンドは鍛冶はしないと聞いていたのに、その目は職人のそれだった。
結果として、大勢の
とてつもなく疲れた。
だが、収穫はあった。
一本の剣、一本の長棒、それにオルステッドに渡す魔術具。
それらを抱えて、私はふらふらと家路をたどっていた。
シャリーアの街並みが、朝焼けに淡く染まっている。
人通りもまばらな早朝の道を歩きながら、久しぶりに家族の顔を思い浮かべると、自然と足取りが少し軽くなった気がした。
「旦那様、お帰りなさいませ」
家に入ると、リーリャが出迎えてくれた。
いつも通りの、安心する声だ。
だが、リビングを見た瞬間、私は目を疑った。
机には、パウロとルイジェルド、アレクとシャンドル、そしてルードが、それぞれ突っ伏して寝ている。
テーブルの上には空になった酒瓶が何本も転がっており、まるで嵐が過ぎ去った後のような有様だった。
オルステッドまでいた。しかもこちらは起きていて、何やら手帳に書き込みをしている。
「……何があったんですか、これ」
思わずそう尋ねると、オルステッドは手帳から顔を上げずに答えた。
「飲み会をしていた」
その一言だけだった。
表情は相変わらず無表情なのだが、なぜだろう、この上なく上機嫌なのが伝わってくる。
これまで何万年も孤独な戦いをしてきた龍神には新鮮だったのだろう。
「ペルギウスまで来ていたぞ」
「は?」
思わず間の抜けた声が出た。
甲龍王ペルギウスが、我が家の飲み会に参加していたと?
「日が昇る前には帰ったがな」
オルステッドは、まるで大したことではないかのようにそう続けた。
私は何も言えず、しばらく立ち尽くすしかなかった。
うちの父はいったいどんな一晩を過ごしたのだろうか。
「
「……それ、龍族の秘酒じゃないですか」
「うむ」
もはや突っ込む気力もない。
そのやり取りの声で目が覚めたのか、皆がのそのそと起き出す。
どいつもこいつも酷い顔色だ。
特にパウロが酷い。
「うぅ……頭が割れそうだ……」
そう呻きながら額を押さえるパウロを見て、私は苦笑しながら近づいた。
「治してあげますよ」
そう言って、解毒魔術と治癒魔術を重ねてかける。
みるみるうちに顔色が良くなっていく皆の様子を見て、少し満足した。
「おお……!生き返る……!」
パウロが感動したように呟く。
「ルーデウス、ありがとう」
アレクも律儀に礼を述べる。
シャンドルさんも軽く頭を下げてくれた。
「悪いな、ルーデウス殿。こんな顔で出迎えることになって」
「気にしないでください、慣れてます」
私はそう言いながら、次々に治癒魔術をかけていく。
最後にルイジェルドの番になったが、彼だけはさほど酷い顔色ではなかった。
「魔大陸の男は酒に強いんですね」
思わずそう言うと、ルイジェルドさんは少しだけ口の端を上げて、
「若い頃に鍛えられた」
とだけ答えた。
その一言に、なんとも言えない歴戦の重みを感じた。
シャンドルとルイジェルドの姿を見て、私は改めて尋ねた。
「お二人はなぜここに?」
「外交の途中でな。せっかくシャリーアまで来たんだ、寄らせてもらった」
シャンドルがそう答える。
ルイジェルドも頷いて、
「ちょうどノルンに会ってな。連れてきてもらった」
と、静かに付け加えた。
「
パウロが目を輝かせながら言う。
「あれは美味いですけど、度数はけっこうありますよ」
私がそう返すと、パウロは「道理で頭が割れるわけだ……」と項垂れていた。
そこへ、リーリャがしじみ汁を運んできてくれた。
「二日酔いにはこれが一番でございます」
さすが気が利く。
皆でそれをすすりながら、少しずつ人心地がついていく。
私自身は二日酔いではないが、徹夜明けなのでこの温かさは有難かった。
出汁の香りが鼻を抜けるだけで、疲労が少しほぐれていく気がした。
「オルステッド。この場で報告しても良いですか?」
そう尋ねると、オルステッドは短く頷いた。
「構わない」
承認を得たところで、私は改めて口を開いた。
「まず、鉱神から協力を取り付けることができました。試練の内容についてはアレクから報告済みだと思います」
「ああ、既に」
アレクが丁寧に頷く。
「自分の魔術で作った素材を使って鍛冶をし、できあがったものに
私は少し苦笑しながら続けた。
「『お前は人も竜もやめて
その場に笑いが起きる。
「あの偏屈が、ルーデウスをそこまで気に入るとはな」
タルハンドの声を思い出しながら、私自身も少し誇らしい気持ちになった。
「それだけではないです。
オルステッドが、無表情ながらもわずかに目を見開いたのが分かった。
「……本当か」
「ええ。理論上はいけるはずです。あとで詳しい報告書を上げます。あと、これは試作で作った携帯用魔力回復増幅器です。後で使用感を教えてください」
そういって魔術具を渡すと、オルステッドは何も言わなかったが、その沈黙が嬉しそうに感じられた。
右腕の仕事が捗ることは、彼にとって何よりの喜びなのだろう。
「酒造りまで学んできたのか?」
パウロが驚いたように聞いてくる。
「みんなテンションが上がってしまいまして。途中からは酒盛りしながら出来上がった武器について語り合う流れになったんです。ついでに酒造りについても色々学べました。今度うちでも仕込んでみようと思っています」
そう話すと、パウロは目を輝かせて、
「そりゃあいい、楽しみにしてるぞ!」
と嬉しそうに笑った。
「そういえば、タルハンドも途中で顔を出しまして」
「タルハンドが?」
パウロが目を丸くする。
「経緯はよく知らないのですが、鉱神と和解したみたいでした」
私がそう言うと、パウロは破顔した。
「あのタルハンドが、な……。良かった」
心底嬉しそうな顔だった。
昔の因縁を知る者にしか分からない、深い感慨がそこにはあるようだった。
シャンドルとアレクが、私が持っている武器に興味を示しているのが分かった。
視線が何度も、私が背負っている包みへと向いている。
「それは……」
「ちょうど良かった。二人に渡そうと思っていたものがある」
私はそう言って、荷物を抱え直した。
アレクにはすぐにでも渡そうと思っていたし、シャンドルさんにはアスラ王国に赴いた際に渡すつもりだったが、せっかくこの場にいるのなら好都合だ。
二人のために試作した武器だった。
「どうせなら庭で試してみるか」
そう言いかけたところで、
「「朝食くらい食べてください」」
リーリャとシルフィから同時にストップがかかった。
「……はい」
素直に従うしかなかった。
二人の声が重なると、逆らう気力すら湧いてこない。
せっかくなので、客人たちとともに朝食を取ることになった。
ノルンは、ルイジェルドの隣に座れることが特に嬉しかったのか、朝から終始上機嫌だった。
侍従が手際よく人数分の朝食を並べていく様子を見ながら、私は改めて我が家の賑やかさをありがたく思った。
朝食を終えて、庭に出る。
まずはアレクからだ。
両手持ちの大剣を差し出す。
「これを君に」
アレクは王竜剣カジャクトを手放してから武器に困っていた。
北神ともなれば、生半可な武器では威力も強度も不足してしまう。
いくら闘気で武器を強化できると言っても、限界というものがあるのだ。
「これは……」
アレクが受け取り、素振りをする。
ばちばちという雷の音が響いた。
「これは以前私に作ってくれた、今は母アトーフェの手にある雷棒と同じようなものか?」
シャンドルさんが尋ねる。
「それの、さらに進化系です」
私はそう答えた。
「アレク、剣に闘気を込めたまま、高速で移動してみてくれ」
「……はい?」
アレクは不思議そうな顔をしながらも、言われた通りにする。
目にもとまらぬ速さ――だが、それだけではなかった。
動き出すたびに、どんどん速度が上がっていく、限界などないかのように。
高速移動する度に、ばちばちという音が響き渡る。
そのうち、アレクの身体が淡く光り始めた。
「な……!」
その場にいた全員が目を見開いて驚いていた。
ルードなど、思わず後ずさりながら口元を手で覆っている。
アレクが足を止め、興奮した様子で私に詰め寄る。
「これは、なんなんですか!?動きが速すぎる……!」
「雷の属性を持つ大剣だ。闘気を貫通するダメージを与えられる。だが、それだけじゃない」
私は説明を続けた。
「電気が身体に作用して、闘気による身体強化をさらに高める。加えて、身体が少しずつ雷そのものに近づいていく。人の身では有り得ないほどのスピードが出せるようになるはずだ」
「身体が雷になって……元に戻れるのか?」
シャンドルが心配そうに尋ねる。
息子の身を案じる父親の顔だった。
「問題ない。一度、自分の身体で試している現象だ」
私はそう答えた。
アレクは大喜びで頭を下げた。
「ありがとう、ルーデウス!一生大切にする!」
丁寧すぎるほど丁寧な礼を受けながら、私は次にシャンドルさんの方を向いた。
「次は、シャンドルだ」
そう言って、金色に輝く長棒を差し出す。
シャンドルさんはそれを受け取り、素振りをした。
びゅん、と空気を切る音が響く。
「これは……」
「機能を説明しよう。いわば、王竜剣カジャクトの類似だ」
私は言葉を続けた。
「ただ、異なる点がある。これは自身の闘気・魔力を使用しない。特徴的なのは、相手の闘気を利用する点だ。……シャンドルにぴったりだろう?」
「ああ、申し分ない。その機能は、私への消費がないということか」
「ああ。相手が強くなればなるほど強くなる武器であり、長期戦にも向いているはずだ」
シャンドルは長棒をしげしげと見つめた。
その目には、かつて手放した剣に対する複雑な感情が滲んでいるように見えた。
「重力を用いた変則的で高速な身体操作。重さを乗せた打撃。相手が強ければ『重力破断』も使える」
私はさらに説明を重ねた。
「加えて、相手を浮遊させる機能、逆に相手に重圧を与える機能、敵の攻撃を反発させる機能も持たせた」
「なんと……」
シャンドルさんが言葉を失っている。
何度も長棒を握り直し、その重心を確かめるように振っていた。
「父さん、打ち合いしましょう!」
アレクが興奮した様子でそう誘う。
シャンドルも満更ではなさそうに頷き、二人は庭の端で構えを取った。
「手加減はいらないよ」
「望むところです」
しばらくの間、庭には激しい火花が散り続けた。
雷を纏うアレクの剣と、重力を操るシャンドルさんの棒がぶつかり合うたび、まるで小さな雷鳴が轟くようだった。
土が抉れ、木々の葉が舞い散る。
リーリャとシルフィが慌てて洗濯物を家の中に避難させていたのを、私は横目で見ていた。
オルステッドとルードは、呆れたような顔でその様子を眺めている。
「……お前はいつも規格外だな」
オルステッドがぽつりと呟く。
「鉱神と私の自信作なんですけどね」
私は少し不満げに言い返した。
実際、あの二本は自信作なのだ。
「俺には土産がないのか!?」
パウロが不満げに声を上げる。
「鉱神から土産にもらった酒がありますよ。かなり強い酒ですけど、美味いです」
そう答えると、パウロはすぐにしゅんとして、
「……酒は、しばらくいい……」
と力なく言った。
二日酔いがよほど堪えたらしい。
その隣で、ルードが小さく肩を震わせて笑いを堪えているのが見えた。
アイシャのお腹が、かなり大きくなってきていた。
そのあまりの大きさが気になり、私も一度診断してみることにした。
魔力反応が、二つ。
つまり、双子だ。
道理で腹も大きくなるわけだ、と妙に納得してしまった。
「お、お兄ちゃん……双子って……」
アイシャは目を丸くして、それから照れたように頬を緩めた。
うちでは初めての双子ということもあり、家族は皆色めき立った。
「双子ですって!」
「初めてですね、当家では」
「準備するもの、増やさなきゃ……!」
口々にそんな声が上がる。
双子の出産は大変だと聞いていたので心配していたのだが、当家には多くの子供を無事に出産してきたスペシャリストの集まりがいる。
ゼニス、リーリャ、エリス、シルフィ、ロキシー、ノルンが、それぞれ役割を分担して動いてくれた。
「私が呼吸を合わせるから」
「私はお湯の準備をします」
「わたしは治癒魔術を」
それぞれが自分の得意なことを持ち寄り、見事な連携を見せる。
まるで長年一緒に働いてきた医療班のような手際の良さだった。
手厚すぎるほどの体制に、私の出る幕は正直なところ全くなかった。
廊下をうろうろするしかできない自分が、少し情けなくもあった。
そして、結果として何の問題もなく出産は終わった。
二卵性の双子、男の子と女の子だった。
「……よかった……」
アイシャが、初産で疲れ切りながらも、幸せそうに笑っていた。
布を厳重に巻いた小さな腕で、そっとその子たちを抱く。
部屋の外で待っていた私も、報告を受けてすぐに駆けつけた。
だが――これまでに生まれてきた子供たちとは、少し違う点があった。
茶髪であることは、まぁ予想通りだった。
私は今でこそ白髪だが、元々は茶髪だったし、アイシャも赤みがかった茶髪だ。
ただ、腕には、まだ柔らかいながらも、わずかにエメラルドグリーンの鱗のようなものが見える。
爪は黒い。
そして、目が――今の私と同じ、竜の目をしていた。
……
思わず息を呑んだ。
考えたことはある可能性だ。だが、これまで子どもに竜の要素が遺伝することは無かった。
自分の身体に起きた変化が、まさか次の世代にまで受け継がれるとは。
人と見目が違うことで、将来苦労するかもしれない。
そう思うと、少し心配になった。
だが、そんな私の心配をよそに、アイシャは幸せそうだった。
「お兄ちゃんと、似た子を産めて……本当に、嬉しい」
そう言って、我が子を抱きながら、泣きながら笑っていた。
その言葉に、胸の奥が締め付けられるような気持ちになった。
不安に思っていたのは、私だけだったのかもしれない。
その姿を見ていると、私まで胸が熱くなってくる。
「アイシャ……」
私は、子を抱くアイシャごと、そっと抱きしめた。
腕の中で、赤子が小さく声を上げる。
エメラルドの鱗をした小さな手が、私の指をぎゅっと握った。
家族が、私の宝物が増えた。
アイシャの子は原作と変えました。アルスと結ばれたわけではないので、同じ子供が生まれるはずがないと思い、オリジナルキャラにしました。
アルスの物語も、今後書いていきます。