「滉季くん!おはよう!」
深い眠りについていた気がする。
ずっと長い間夢を見ていたようなそんな感覚。
このまま起きることはないんじゃないか、そんな気さえした。
だけど、彼女の声で俺はこの世界で目覚めた。
「・・・穂乃果ちゃん??」
目が覚めて目の前にいたのは高坂穂乃果。
そう、高坂穂乃果だ。
「そうだよ!穂乃果だよ!」
元気いっぱいな声で返事をしてくれる。
「・・・!?!???」
一瞬で目が覚めた。
「起きたみたいだし、先下行ってるね!」
そう言うと穂乃果ちゃんは部屋から出て行き階段を下っていった。
「・・・え????」
目は覚めたが頭が混乱している。
何で目の前に穂乃果ちゃんが??どうして??
・・・だってあり得るはずが無い。
なぜなら高坂穂乃果はアニメのキャラクターだったからだ。
ラブライブ!
アイドルアニメとして一世を風靡した人気作。
その登場人物で主人公が高坂穂乃果だ。
俺だって大好きなアニメだったし、当時は熱中していた。
その登場人物がなぜ目の前にいたのか・・・
「痛っ!!」
刹那強烈な頭痛が襲ってきた。
「あああああああああああ!!!!!」
なんだこれ!頭の中にいろんな情報が無理矢理ぶち込まれるような感覚だ!
「はぁはぁはぁ・・・」
しばらく続いた後やっと収まった。
「俺は・・・」
先の頭痛の後、情報が勝手に頭の中に整理された。
まず、この世界はラブライブ!の世界。
俺はそこで暮らす「安藤 滉季」と言う名前の少年みたいだ。
そして高坂穂乃果とは家が隣の所謂幼なじみの関係だ。
どうして今この世界に転生?したのかは分からない。
前の俺はどうなってしまったのかも不明だ。
だが、何かのきっかけでこの世界の住人になってしまった。
俺がこの世界に来た意味は分からない。
だけど、大好きなアニメの世界に来られたことは素直に嬉しい。
しかも、穂乃果ちゃん初めμ'sの皆とも関われるかも知れないとくれば大喜びだ。
せっかく転生したんだ、どうせだったらこの世界を楽しんでやる!
一頻り自分の中で整理が付いたところで、ベットから出る。
「穂乃果ちゃんは下か」
先ほど制服姿だったことを考えれば、今日は平日。恐らく学校がある日であろう。
とりあえず着替えるかと思い、部屋を見渡すと壁に制服が掛かっていた。
「この制服は?」
掛かっていた制服は青色を基調としたブレザー。
まるで穂乃果ちゃん達が通う音ノ木坂学院の男verといった感じだ。
「??音ノ木坂って女子校じゃなかったか?」
μ'sの皆が通う学校は原作では女子校だった。
疑問に思いながら制服に着替える。
すると胸ポケットの辺りに生徒手帳が入っていることに気がついた。
「音ノ木坂学院2年2組 安藤滉季」
学生証を見るに本当に俺は音ノ木坂の生徒らしい。
「ここがラブライブ!の世界だと思っていたが、原作とは少し違うのか?」
どうやら原作とは違いがあるみたいだ。
アニメに熱中していたのも10年以上前、大体は覚えているが細かな話や設定などは忘れていることが多い。
今後も俺が知っているラブライブ!とは差異が出てくるかも知れないな。
「となると俺は・・・」
初めはこの世界は原作通りに進んでいくと思っていたが、原作とは違う展開になることもあるかも知れない。
現に俺って言う異物がいるわけだし。
μ'sの結末を知っている俺としては、なるべく最後は同じ結末を迎えて欲しいと思うがそれもどうなるかは分からないって事か。
「まぁ、なるようになるしかないか」
今そんな先のことまで考えても仕方ない。
とりあえずはこの世界に慣れること、そして穂乃果ちゃん達との交流を楽しむ事を目標としよう。
「よし、いくか」
決意を新たに、穂乃果ちゃんが待っている所へ向かった。
「滉季くん遅いよ~!」
「ごめん、ちょっと考え事をしてて」
「考え事?」
「気にしないでくれ」
「分かった!じゃあ学校いこ!海未ちゃんとことりちゃんが待ってるよ!」
「海未ちゃん、ことりちゃんか・・・」
当たり前だけど穂乃果ちゃんがいるんだから海未ちゃんとことりちゃんもいるわけで。
「それでね、新発売のパンがおいしくって~」
俺の家に迎えに来てくれた穂乃果ちゃんと共に登校する。
隣では穂乃果ちゃんがあれこれ楽しそうに話をしてくれるが、俺はまだこの状況に慣れていないためにどうしても変になってしまう。
「どうしたの滉季くん?さっきから何か変だよ?」
俺からすれば今日が初対面だが、向こうからすれば幼なじみが急におかしくなったと思っていることだろう。
正直に話してしまうか?とも一瞬考えたがそれで余計な混乱を与えても良くないと思い、なんとか普通の俺を意識する。
これから色んな人に会うんだ、この世界の俺になったからには俺であるために頑張ろう。
「穂乃果ちゃん、心配かけてごめん」
「さっきから気になってたんだけど、穂乃果ちゃんってなに?」
「へ?」
「いつもは穂乃果って呼び捨てなのに」
「・・・悪い、たまには気分を変えてみるのも良いかなって思って」
「ふーん、ちゃんづけも悪くないけど、やっぱり滉季くんには穂乃果って呼んで貰いたいな!」
「わかったよ、穂乃果」
「うん!」
そうしてしばらく歩いていると、集合場所には海未とことりが待っていた。
「遅いですよ、穂乃果滉季」
「ふたりともおはよう!」
「おはよう!海未ちゃん、ことりちゃん!」
「おはよう、海未、ことり」
穂乃果の時にも感じたが、この二人が目の前にいるっているのは不思議な感じがする。
多分だけど、穂乃果と幼なじみだったって事は二人ともそうなんだろうな。
「今日、お母さんから生徒全員に話があるみたいだけどなんだろうね?」
ことりが言った。
この時期で理事長からの話となれば、恐らく廃校の話かな。
となると今は丁度アニメの最初のところって感じか。
「わざわざ理事長からの話となると只事ではなさそうですが」
「うーん、テスト廃止とか?」
「それは穂乃果の願望でしょう・・・」
「あはは、穂乃果ちゃん勉強頑張ろうね!」
「こうきくんは何だと思う?」
「・・・さぁなんだろうな」
ここで俺がネタバレするのは違うと思ったので適当にはぐらかす。
「とにかく、聞いてみないとだな」
そんな話をしつつ、四人並んで登校する。
あぁ俺今大好きな三人と一緒にいるんだ、とても幸せな気持ちになりこの世界に来られたことに感謝した。
学校に着き自分たちの教室に入る。
「おはよー、今日もみんな一緒だね」
声をかけてきたのはヒフミの中の一人。
「うん!私たち仲良しだからね!」
穂乃果が元気よく答えた。
「俺の席はっと」
なんとなく自分の席が分かり着席。
辺りをぐるっと見渡すが、どうやら男子は俺一人だけのようだ。
(音ノ木坂は共学になっているみたいだが、男子が俺一人?)
違和感を覚え、近くの席に座ったことりに聞いてみた。
「なぁことり」
「どうしたの?」
「この学校に男子ってどれくらいいる?」
「えーと、確か3年生に二人、1年生はいなくてことりたちの学年にはこうきくんだけだよ」
「なっ!!」
教室に向かう途中男子を見かけないと思ったらまさかそんな少ないなんて・・・
「しょうがないよね、男の子は少ないんだから」
「少ない?」
その言葉に違和感を覚え聞いてみる。
「世の中には女の人ばっかりで、男の人って少ないんだよ?忘れちゃった?」
「へー・・・」
まさかまさかだった。この世界どうやら男の数が少ないらしい。
だから学校に男子が三人しかいないのか・・・
「あっ!」
「どうしたの?」
原作でも異常な位に男は登場していなかった。
もしかしてその描写をこの世界では男が少ないって形で反映したのかも知れない。
「いや、教えてくれてありがとう!」
「うん!いつでもことりを頼ってね!」
その話の後、先生がやってきて生徒達は体育館に集合するよう伝えられた。
「廃校!!!!」
体育館で理事長から伝えられた内容はこの学校が廃校になることだった。
その話に穂乃果たちは勿論、全校生徒が動揺していたと思う。
(やはりこの展開か・・・)
先に事情を知っていた俺からしても、少なからず思うことがあった。
廃校を阻止すること、まずはそれが最初の目標になるな。
「まさか廃校だなんて思いませんでした」
「私はどうすればいいんだー!」
「ことりも知らなかった・・・」
「・・・」
昼休み、中庭で四人集まって先ほどの話をする。
「まぁただ、仮に廃校になるにしても俺たちが卒業した後だとは言ってたな」
「はい、ですがこのままだと新入生の募集もなくなりそうですね」
「1年生に後輩が出来ないのは可哀想だよね」
「今すぐみんなと離ればなれにならないって分かって良かったよー!!」
穂乃果がことりに泣きついている。
(そういえば最初は絶望的な状況にあったな・・・)
この絶望的な状況から頑張るのが彼女達だ。
その姿を間近で見られるのは嬉しい。
「っと、すまんトイレ」
「いってらっしゃい!」
少し三人にしてあげた方が良いかと思い席を外す。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・・」
「・・・」
「・・・」
三人の間で沈黙が流れる。
「なんとか出来ないかな・・・」
「私たちに出来ることがあるでしょうか」
「ことり達に出来ること・・・」
「せっかく海未ちゃんとことりちゃんと"私の"滉季くんとの学校生活が」
「ええ、穂乃果とことり、それに"私の"滉季と過ごす時間が」
「穂乃果ちゃんと海未ちゃん、"ことりの"こうきくんと」
「「「・・・」」」
「うん!やっぱりなんとかしたい!」
「そうですね!」
「ことりも二人と同じ気持ちだよ!」
「ちょっといいかしら」
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トイレから戻ってくると三人の前に金髪と紫髪の女生徒がいた。
「おまたせ」
「あっ滉季くん!」
声をかけると、例の二人は俺の方をチラリとだけ見ると穂乃果達に視線を戻した。
「それじゃあ失礼するわ」
「ほなー」
「今のは?」
「生徒会長と副会長です」
「そうか」
絢瀬絵里と東條希か、この時点では敵っぽい感じだったな。
「私、やっぱりこの学校を廃校にしたくない!滉季くん、手伝って!!」
「滉季!」
「こうきくん!」
「…分かった!俺が手伝える事なら何だってするよ!」
こうして俺たちの廃校回避への動きが始まった。
俺が現れた影響で物語がどうなるかは分からない、だけど最後は彼女達が笑って終われるようにしたいと思う。
俺のこの世界での生活が始まった。