部室の場所を教えて貰った俺たちはアイドル研究部へとやってきた。
「げっ!」
丁度同じタイミングでにこが現れた。
「もしかしてアイドル研究部の部長さんですか!?」
「違うわよ!!」
その勢いのままにこは部室に入り扉を閉ざしてしまった。
「ぐぬぬ!」
「外から入るにゃ!」
凛が走り出し、俺もそれに続く。
「いた!」
どうやらにこは窓から逃げようとしていた。
「待つにゃー!」
走り出したにこを追う、俺と凛。
にこのやつ案外すばしっこいな。凛と追うがなかなか捕まらない。
「このー!」
やっと追いついた所で凛がにこに後ろから抱きつく。
しかし僅かな隙間からにこはそのホールドから抜け出した。
「捕まるわけ無いでしょ!」
さらににこは駆け出す。
隙を突かれたために見失ってしまった。
「二手に分かれよう」
一度凜と別れ、にこを探す。
「どこいったんだ」
「ぎゃーーー!!」
遠くから声が聞こえた。
この方角は・・・
「いた・・・」
場所はアルパカ小屋、にこはそこで気絶していた。
気絶したにこを部室に運び目覚めるのを待つ。
「んっ?」
「起きましたか」
「げっあんたは!?」
「失礼ですが気絶した先輩をここまで運ばせて貰いました」
「もしかしてにこの体に触ったんじゃないでしょうね!?」
「いえ、運んだのは女子ですよ」
「ふんっ!!」
その後部室に揃っている俺たちを見てふて腐れた顔をした。
「で、あんた達何のよう」
「先輩!」
「にこよ」
「にこ先輩!私たち部活動して活動するために、アイドル研究部さんと一緒になりたくて!」
「嫌よ」
「えっ?」
「嫌って言ったのよ」
「私たちはにこ先輩の邪魔をするつもりはありません、ただ認めて貰いたくて」
「いずれ現れるんじゃ無いかとは思っていたわ、でもお断り」
「なんでですか!?」
「前も言ったけど、私はあんた達のこと認めていないの」
「・・・」
「それはどうしてなんだ?」
「・・・あんた達はアイドルとしての自覚が足りないのよ」
「自覚?」
「いい?アイドルって言うのは夢を見させる物なのよ、それはスクールアイドルも同じ」
「夢ですか」
「そ、だからアイドルをするにはキャラ付が大切なのよ、それをあんた達は素のままでやって」
「キャラ付って例えばどんな感じにゃ?」
「しょうがないわね、見てなさい」
そう言うとにこは一歩下がりキメ顔を作った。
「にっこにこにー!~~~!」
繰り出されたのはにこ渾身のアピール。
おお、これが生にこにー口上か、ちょっと感動した。
「・・・」
だが場は俺の興奮とは逆に静まりかえった。
「これは・・・」
「なんというか・・・」
「痛い」
真姫の一言ににこはカチンときたのか、
「これが分からないあんた達と話すことなんて無いわ、出てって」
「いや、あの!」
「いいから出てって!」
こうなってしまった以上今は退散するしか無いだろう。
俺たちは大人しく部室から出て行った。
最後ににこの顔を見たがその顔は物寂しそうだった。
仕方が無いために今日はこれで解散。
穂乃果たちと帰宅するために校門から出ようとした。
「その様子だとダメやったみたいやね」
「副会長」
俺たちの様子を見かねてか希が声をかけてきた。
「はい、ハッキリと断られてしまいました」
「諦めるしか無いのかな」
「実はね」
希はそう切り出すと、にこが過去にスクールアイドルをやっていたこと。
だが周りとの温度差でうまくいかなかった。
それからにこは孤立していることを教えてくれた。
「そんなことがあったんですね・・・」
「にこ先輩・・・」
「さて、ウチの話を聞いて穂乃果ちゃん達はどうする?」
「・・・海未ちゃん、ことりちゃん、私は諦めたくない!」
「穂乃果ならそう言うと思っていましたよ」
「でもどうしよう?」
「私たちがスクールアイドル大好きだって事、それに本気だって事を伝えよう!」
「にこっちは強敵だよ」
「だからこそ、にこ先輩には認めて貰いたい!」
「ふふっ」
希が嬉しそうな顔で笑った。
「よーし!帰ったら作戦会議だ!」
その勢いのまま穂乃果は走り出していった。
「穂乃果ちゃん待ってー!」
「雨が降っているんです、気をつけてください!」
海未とことりが続く。
「キミはいかなくていいん?」
「副会長はにこ先輩のことも想っているんですね」
「・・・にこっちはウチの大切な友達やからね」
「そうですか」
「昔ウチが出来なかったことをキミ達に任せようとしているのかも」
「・・・」
「まだ、遅くは無いと思いますよ」
「カードがまだその時ではないって言っとるんよ」
「わかりました、ただ俺は副会長のことも信頼していますからね」
「おっ、嬉しいこと言ってくれるやん」
「それじゃあ失礼します」
希はずっと前から俺たちの事、にこの事、色々なことを考えてくれてるんだと改めて思った。
にこ、俺たちは諦めないからな。
そして翌日の放課後、昼休みの間に作戦を決めた俺たちは先回りして部室で待機していた。
「本当にこれでいいのかにゃ?」
「うん、私はいいと思うよ」
「ま、悪くはないんじゃない?」
「来るぞ!」
「・・・」
にこが入ってきた瞬間に部屋の明かりをつける。
「「「部長、お疲れ様です!!」」」
「なっ!!」
「部長!次の曲はどうしましょうか!」
「部長!ダンスは?」
「部長!衣装はどんなのがいいでしょうか?」
「なによあんた達!」
「にこ先輩!」
いきなりの対応に困惑しているにこに穂乃果が真っ直ぐ目を見て言う。
「私たち、にこ先輩と歌いたい!踊りたい!音ノ木坂アイドル研究部、μ'sの七人として!」
俺たちが考えた作戦はにこと一緒にアイドルをやること。
にこはきっと居場所を求めているんじゃ無いかと考えて、その居場所を無理矢理にでも作ってやる。
「私たちは本気でアイドルやります!でも、それにはにこ先輩の力が必要なんです!アイドルの事、もっともっと教えてください!」
穂乃果の言葉に全員がうなずく。
「・・・」
「彼女達はまだまだアイドルしてはひよっこだ、だから矢澤先輩が彼女達にアイドルのイロハを叩き込んでくれませんか?」
「「「お願いします!!」」」
にこは一度後ろに振り向いた。そしてこちらを向いて
「・・・あんた達本気なのよね?弱音は許さないわよ!!」
「それじゃあ!」
「しょうがないからにこも一緒にやってあげるわよ!!」
「にこ先輩!!」
俺たちの想いは伝わったようだ。
誰よりもアイドルに詳しいにこの力はこの先必要になる。
「いい!これからバシバシ鍛えていくから覚悟しなさい!」
「はい!」
「それじゃあ真似しなさい!いくわよ!」
「にっこにこにー!!」
とびきり笑顔でにこは笑った。
外では雨が上がり、晴れ間が見えていた。