にこがμ’sに加入してから数日が経ったある日。
「今日はカラオケに行くわよ!」
突然にこが言い出した。
「カラオケ?」
「そうよ、普段の練習とは別に他のスクールアイドルの曲とか歌うのも勉強になるのよ」
「一理ありますね」
人気のスクールアイドルはカラオケに楽曲があるとか。
「良いんじゃないか?皆んなの親睦会も兼ねて」
「言っとくけど遊びじゃないんだからね!」
そうして俺たちはカラオケに行く為に放課後街に繰り出した。
「何歌おっかにゃ〜」
「凛ちゃん、一緒に歌おう!」
「最近カラオケ行ってなかったから楽しみ!」
皆んなでワイワイ話しながら街を歩いていると人々から視線を集めた。
「なんか私たち見られてない?」
「えぇ、見られていますね」
「きっと滉季がいるからでしょ?」
「にこ先輩?」
「だって普段は男なんて早々見ないもの、それが女七人と一緒にいたら嫌でも視線集めるわよ」
「そういうものか…」
最近ではすっかり忘れていたが、この世界では男が極端に少なかったんだっけ。
周りをぐるりと見渡してみるが、男の姿は無かった。
「まっ、殆どは妬みの視線なんだから気にしないでいいわ」
「滉季先輩モテモテにゃー!」
若干の居心地の悪さを感じたが、それもすぐに慣れた。
やがてカラオケに到着。
八人が入れる大部屋に案内され各々の席に座った。
「滉季先輩の隣もーらい!」
俺が座るとすぐに左隣に凛が座った。
「凛ちゃん!?」
「へへ、早いもの勝ちにゃ〜」
「じゃあこっちはことりがもらうね」
右隣にはことりが座った。
「あっ!ことりちゃんずるい!」
「後で変わってあげるね」
「絶対だよ!」
俺の隣なんてどうでも良いだろうに、何故か人気になっていた。
「じゃあまずは部長のにこからね!」
颯爽とにこがマイクを持ち機械に曲を入れ始めた。
「〜〜〜♪」
「あっ!この曲!」
流れて来たのはA-RISEの曲。
「にこの美声、とくと聴きなさい!」
「〜〜〜♪」
にこがA-RISEの曲を歌うとどうなるのかと思ったが、これはこれで中々似合っていた。
「ふぅ、どうだったかしら」
「にこ先輩可愛い〜!」
「悪くないんじゃない」
「当然よ!」
にこの歌を皮切りに、それぞれが好きな曲を入れていく。
「じゃあ次私!」
穂乃果が元気一杯のアイドルソングを入れていた。
「いっくよー!」
流石穂乃果、聞いていて元気がもらえるような感じだった。
「では次は私が」
海未は最近流行りのクール系の女性ボーカルの曲を入れていた。
「あっ!アイドルソングじゃ無いじゃない!」
にこが言う。
「まぁまぁ、好きな曲歌えば良いじゃないですか」
「しょうがないわねー」
クールな歌声で海未が歌い切る。
「一人で歌うとなると緊張しました」
「ことりの番だね!」
ことりは甘々な恋愛ソングを入れた。
「ことり先輩かわいいです!」
ことりの声は脳に響くような感じがするな。
「えへへありがと〜」
「ほら真姫ちゃんも入れて!」
「分かってるわよ!」
真姫が入れたのは洋楽。
「〜〜〜♪」
真姫は英語の歌詞を流暢に歌い上げた。
「真姫ちゃんすごーい!カッコよかった!」
「そう?これくらい普通よ」
口ではそう言っているが満更でもなさそうだな。
「凛も歌うにゃ〜!」
凛は最近CMでよく聞くバンドの曲。
「〜〜〜♪」
元気溌剌と歌っている姿は実に楽しそうだった。
「凛ちゃん良かったよ!」
「次はかよちんだよ!」
「うぅ、何歌おうかな」
花陽が入れたのはこれまた人気のスクールアイドルの曲。
「〜〜〜♪」
しっかりと声が出ていて聞き入った。
「その曲選ぶなんて中々センスあるわね」
「このグループも好きなんです!」
これで一通り歌い終わったな。
皆んなそれぞれ良さがあって、聴いていて実に楽しかった。
じゃあ2週目と思っていた所、俺の前にマイクが置かれた。
「いや、俺はいいよ。皆んなで歌ってくれ」
「えー!滉季くんの歌も聴きたいよ!」
「滉季さんの歌、気になります!」
「あんたも歌いなさい、部長命令よ!」
俺が歌う必要があるのかとは思ったが、皆んなからの視線を受けて歌うしかない事に気づいた。
「分かったよ、ただ俺歌下手だからな?」
さて、何を歌うか。機械を操作しながら曲を選ぶ。
こっちの世界に来てから、音楽なんてほとんど聴いていないので選曲に迷う。
もちろん前世にあった曲はないわけで。
少し迷った後に曲を決めた。
「あれ?この曲って?」
「昔のアイドルの超有名曲よ」
数少ないこっちの世界で知っている曲だ。
女性ボーカルだが、キーを下げて歌えばなんとか歌えるだろう。
「〜〜〜♪」
「…」
「〜〜〜♪」
「…」
「〜〜〜♪」
なんとか一曲歌い切る。
下手くそなりには歌えたんじゃないだろうか。
「どう…だった?」
「…こうきくん、かっこいい…」
隣のことりが言う。
「滉季先輩、いけてるにゃ〜」
次いで凛が。
「うん!滉季くんの歌ってる所見られて良かった!」
「ですね、中々レアなところが見れました」
ダメダメだと思っていたが案外悪くないみたいで良かった、まぁお世辞は入っているだろうが。
「これで良いだろう?皆んな歌ってくれ」
「はーい!」
その後はまたそれぞれが好きな曲を歌ったり、デュエットしたりとワイワイと時間は過ぎていった。
「席変えしよう!」
途中で穂乃果がそう切り出した。
親睦会の意味もあるので、ずっと同じ席でいるのもあれって事か。
「滉季くんの隣ゲット!」
穂乃果が左隣に来た。
「よろしくね!」
「ああ」
「にこが来てやったわよ」
右隣には今度はにこが来た。
「何よその顔?」
「いや、驚いて」
「ふふーん、精々部長をもてなすことね!」
なんだかにこはご機嫌なようだった。
「次はにこの番ね!」
どうやらにこに順番が回って来たようだ。
にこが機械を操作して曲を入れる。
そして曲が流れ始めると、
「よいしょっと」
「っ!!」
にこが俺の膝の上に乗って来た。
「あんたはにこの椅子よ!大人しくしてなさい!」
その光景に皆んなが口を開けてあんぐりとしている。
「〜〜〜♪」
振り払う事も出来ず、俺はこの状態を受け入れていた。
「〜〜〜♪」
にこの意図は分からない、今分かるのはにこの柔らかさと小ぶりながらハリのあるお尻の感触だけだ。
「〜〜〜♪」
健全な男子高校生にはこの状況は生き地獄の様だった。反応してはいけない、自分にそう言い聞かせる。
空いた両手は居場所を失い空中に浮いていた。
「ふぅ、どうかしら?にこのセクシーボディーにドキドキした??」
にこは小悪魔ちっくな表情で俺に言う。
「にこ先輩、心臓に悪いですよ…」
「それじゃあドキドキしたのね!」
負けを認める事になってしまった。
「あー、楽しい!!」
「穂乃果ちゃん、顔…」
ことりが穂乃果に向けて何かを言っていた様だが耳に入ってこなかった。
「私ジュース取ってくるわね」
真姫が部屋から出ていくのが見えた。
「俺も取ってくる」
その後を追いかける様に部屋を出た。
「どうだ、楽しんでるか?」
「滉季…」
最初から少し気まずそうにしていた真姫の事が気になっていた。
「楽しいは楽しいわよ…ただ」
「ただ?」
「こういうの、慣れてなくて」
「そうなのか?」
「大勢で集まって遊ぶなんて事今までなかったから」
確かに真姫が大勢でいる所は想像つかなかった。
「嫌いか?」
「嫌いじゃない…」
「真姫もμ’sのメンバーなんだ、今後もこう言うことは増えると思うよ」
「そうね、うるさい人達だけど一緒にいたら楽しいし…」
「真姫にもこの関係を思いっきり楽しんでほしいって俺は思うよ」
「もしかして、私のことが気になって来たの?」
「お節介だったか?」
「別に…ありがと」
真姫の性格上、もしかしたらと思っての行動だったが、どうやら正解だった様だ。
「それよりも!」
今度は態度一転、語気強めで言っときた。
「さっきにこ先輩とくっついた時、デレデレしちゃって!」
「デレデレはしてない!」
「嘘!嬉しそうな顔してた!」
「俺そんな顔してたか??」
「してたわよ!」
真姫がどうしてその事について強く言ってくるのかが分からない。
「もしかして、にこが羨ましかったとか?」
軽い冗談半分で言ってみた。
「…っ!!バカ!知らない!」
真姫は顔を真っ赤にしながら部屋へと戻っていった。
「今のはキモかったな、反省しよう…」
少しタイミングずらしてから戻ろう。
部屋に戻ると丁度穂乃果の番だった。
「滉季くんおかえり!」
「おう」
俺も席に着き、穂乃果が歌い始める。
すると穂乃果が肩を寄せて来た。
「穂乃果?」
穂乃果は一瞬俺にウインクするとそのまま歌い続けた。
そしてそのまま再度席替えするまで穂乃果は俺とくっついたままだった。
(にこと言い穂乃果と言い、どうしたんだろう…)
楽しい時間はあっという間に過ぎ、退室の時間がやって来た。
「あー!歌った歌った!」
「皆んなの歌聴けて満足です!」
「楽しかったにゃー!」
荷物を持ちカラオケ屋から出る。
「偶にはこういうのもいいですね」
「だな、また皆んなで来よう」
厳しい練習の中、息抜きも大切だろう。
今日はきっと、全員が楽しんでくれたはずだ。