オープンキャンパスから数日後、嬉しい知らせが届いた。
「オープンキャンパスが好評だったみたいで廃校の決定は先延ばしになったわ」
ライブをした影響がどこまであったかかはさておき、学校に興味を持ってくれた中学生は結構いたようだ。
「海未ちゃん、ことりちゃん、やったね!」
「えぇ、私たちがやってきたことが無駄では無かったと言うことです」
「よかったね!」
廃校を阻止するという目標に一歩近づいたわけだ、嬉しくもなる。
「そのおかげもあって、なんと部室が広くなりました!」
今までは部室の隣の部屋は倉庫として使われていたのだが、この度我が部活用に使用許可が下りたのだ。
「これで雨の日も練習できるにゃー!」
雨天時などに練習が出来なかった問題もこれで解決。
皆んなのモチベーションも上がりより練習にも力が入る。
「浮かれているところ悪いけど、まだ廃校が決まったわけではないのよ」
「そうね、これから次第って所もあるし」
絵里と真姫が冷静に指摘する。
「よーし、それならもっともっと練習しないと!」
「頑張ります!」
「ほな練習はじめよか」
「皆んなごめん、ことりは今日は用事があって・・・またね!」
そう言うとことりは慌ただしく部室から出て行った。
「最近ことりちゃん忙しいみたいだね」
「ですね、何かあるのでしょうか」
「滉季は何か知っているの?」
「・・・いや、知らないですね」
絵里から尋ねられるが俺は知らないと答えた。
多分、それがいいと思ったから。
「50位!?」
練習の休憩中、スクールアイドルのランキングサイトを確認するとμ'sは50位まで上昇していた。
「すごいよ!一気に50位だよ!」
「オープンキャンパスでのライブも反響がありましたし、それになにより」
全員が絵里と希の姿を見つめる。
「絵里先輩と希先輩が加入してくれた影響が大きいな」
「二人とも大人っぽくて魅力がありますからね」
絵里と希はその雰囲気から新しいファン層の獲得にも繋がった。
「そう言われると照れるわね」
「ええやんえりち、よろこんどこ!」
μ'sには個性豊かな九人がいる、色々な人がファンになる土壌が出来ていた。
「それにしても50位だよ!20位までもうすぐだよ!」
「そう甘くはないんじゃない?」
「真姫ちゃん?」
「上に行けば行くほど、周りは強敵になってくる。簡単じゃ無いわよ」
「真姫の言うとおりだな、何か策を考えないと」
「それならやるべき事があるわ!」
「にこ先輩?」
「皆んな準備しなさい、街にいくわよ」
こうしてにこの一言により街に行くことになった。
「市場調査よ」
「市場調査?」
「世間でμ'sがどう思われているかなんかを肌で体感する必要があるわ」
そうして秋葉にやってきた俺たち。
にこの言うことも一理ある、地元の秋葉でμ'sがどれだけ知名度があるかなど知っておくのは必要だ。
「まずはそこのスクールアイドルショップをのぞきに行くわよ」
「へー、そんなのもあるんや」
「今スクールアイドルは大人気です!各地に専門のショップが出来ているんです!」
希に対して花陽が熱弁する。
「これはA-RISEの新商品!こっちは大阪のスクールアイドル!」
店に入るやいなや花陽は目を輝かせながら店内を物色する。
「ここに置いてある人たちは、俺たちのライバルってことか」
「これだけの数の人たちに私たちは勝たないといけないのですね」
「見てみて!」
「凛?」
「これかよちんにそっくりの人がいたにゃ!」
「・・・それ花陽じゃないのか?」
「・・・ほんとにゃー!!」
凛が持ってきた缶バッジには紛れもない花陽が写されていた。
「こっちにあったにゃ!皆んなきて!」
凛の先導により店の一角に来るとそこには
「μ'sの専用コーナー!?」
なんとμ'sの専用コーナーが出来上がっていた。
おまけに店員一押しのポップまで飾られている。
「まさかここまでとは」
「見せなさい!!」
缶バッジ、うちわ、タオルなどμ'sの面々が写された様々なグッズが陳列されていた。
「嬉しいですね、こうやって自分たちが注目されているというのは」
「入ったばっかりの私たちのもあるのね」
「このえりちなんてめっちゃええやん」
「ん~!さすがにこ、グッズでもその魅力が押えられないわ!」
「よくよこまで言えるわね・・・」
皆んなグッズをみながらワイワイと騒いでいる。
「ん?あれは・・・」
陳列棚を見渡していると、端の方に一枚の写真があるのを見つけた。
「・・・?」
どうやら隣にいた穂乃果もその写真に気づいたようだ。
(どうしてあの写真があるんだ?)
俺が疑問に思った瞬間だった。
「あの!ここに写真があるって聞いたんですけど!」
店の入口から店員に話しかけるよく聞き慣れた声が聞こえた。
「ことりちゃん?」
「っ!?」
全員が一斉にことりの姿を見た。
「ことり、その格好は?」
今のことりはメイド服を着ていた。
「・・・チガイマスヨ」
「でもことりちゃんだよね?」
「・・・ごめん!」
ことりは動揺しながらもその場から逃げ出した。
「あっ!ことりちゃん!・・・皆んな追うよ!」
「待つにゃー!」
(これは・・・もう隠しきれないな)
俺も一緒にことりを追うことにした。
「おーい、ことりちゃーん!」
「どこに行ったのでしょうか」
「俺はあっちを見に行ってみるよ」
ことりの逃げ足は速く、すぐに見失ってしまった。
「はぁはぁ、どうしよう・・・」
「見つかっちゃたな」
適当に探していると塀の隙間に隠れていることりを見つけた。
「こうきくん・・・」
「流石にもう隠しきれないな」
「うん・・・」
「この機会に話してみたらどうだ」
「そうだね」
「心配するな、俺もいるよ」
「ミナリンスキー!?」
「はい・・・」
ことりを連れてとあるメイド喫茶にやってきた俺たち。
そこでことりから話を聞くことになった。
「なにそれ?」
「知らないんですか!?ミナリンスキーさんといえば秋葉では伝説のメイドですよ!!」
「それがまさかことりだったなんて」
「教えてくれてもよかったのに!」
「ごめん・・・」
「まぁ、穂乃果落ち着け」
「それじゃあさっきの写真は?」
「店内のイベントで撮った写真が、どこかから漏れちゃって」
「でも何故ここで働いているのですか?」
「それは・・・」
ことりがちらりと俺の方を見てくる。
それに対して俺は頷いた。
「自分を変えたかったんだ」
「どういうこと?」
「ことり、自信がなかったんだ」
「・・・」
「一緒にいる穂乃果ちゃんや海未ちゃんと違ってことりには何も無い、そんな想いがあって自分を変えたくて、μ'sを始めた頃に偶然誘われてからここで働いてるの」
「ことりはすごいじゃないですか」
「ううん、そんなことない。ことりはいつも前を進む人に引っ張ってもらって、その後をついて行っているだけだから」
「ことりちゃん・・・」
皆んな何かを言いたそうな顔はしていたが、ことりの表情をみて何も言えなかったのだろう。
「このことはお母さんには秘密にしておいて欲しいな」
「・・・分かったよ」
それ以上はこの場では追求されることはなかった。
「じゃあまた明日!」
メイド喫茶を出た俺たちはことりに別れを告げる。
「まさかことりちゃんがあんなこと思っていたなんて」
「私たちはことりのことをまだまだ分かっていなかったの知れませんね」
「ことりは自分を変えたいと言っていたわ」
「?」
「私もそうだったもの」
「絵里先輩も?」
「生徒会長としての自分とそれを変えたいと思う自分、そうやって悩んでいたわ」
「そうだったんだ」
「皆んな大なり小なり自分を変えたい、もっと成長したいって思う物なのよきっと」
「そっか!」
「じゃあ私はここでね」
「はい、また明日!」
穂乃果と海未と絵里との帰り道。先ほどのことりの事で話し合っていた。
「悪い、俺も用事が出来た」
「?」
「じゃあまた明日な」
今回の件に関しては俺も一枚噛んでいた。
やはりこのまま帰ることは出来ないとなった。
「どうしたんだろう?」
「きっと、滉季には行くべきところがあるんですよ」
「はぁ・・・」
「お疲れ様、ことり」
バイトが終わる時間、店の裏口で俺はことりを待っていた。