「こうきくん・・・」
「お疲れ様」
「どうしたの?皆んなはもう帰ったよね」
「少しことりと話がしたくてな」
「・・・うん」
「帰りながら話そうか」
バイト終わりのことりを捕まえて一緒に帰宅する。
「遂にバレちまったな」
「いつまでも隠し通せるとは思っていなかったけどね・・・」
「まぁしょうがないところもあるな」
「うん・・・」
ことりとの話でも分かるように実は俺はことりのバイトの事を以前から知っていた。
何故知っていたかというと、それはことりがバイトに誘われて時に遡る。
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「メイド喫茶でバイト?」
μ'sを結成してしばらく経ったとき、俺はことりに相談を持ちかけられていた。
「街を歩いていたときに、スカウト?されちゃって」
「そのこと、穂乃果と海未には話したのか?」
「ううん、話していない」
「じゃあなんで俺には?」
「穂乃果ちゃんと海未ちゃんには内緒にしておきたくて、でもこうきくんには聞いてほしくて」
「・・・そうか」
本人が秘密にしておきたいというなら尊重しよう。
「ファーストライブの前の時にも、ことり弱気になっちゃたよね」
「そんなこともあったな」
「ことりは穂乃果ちゃんや海未ちゃんとは違う」
「・・・」
「でも、ことりはそんな自分を変えたいなってずっと思ってて」
「それでバイトをしてみようってわけか」
「働くことで色んな事が知れたり、大変なこととかも経験すれば成長できるんじゃ無いかなって」
「バイトか、働くって大変なんだよな」
「うん・・・だから不安もあってこうきくんに話聞いて貰いたかったんだ」
「ことりが成長するために決めたことだ、俺は応援するよ」
「こうきくん、ありがとう!」
「俺はこのことは秘密にしておけば良いんだよな?」
「穂乃果ちゃんと海未ちゃんには、ことりが自信を持てるようになったら言うつもりなの」
「分かった、力になれるかは分からないが何かあったら言ってくれ」
「それじゃあ、早速なんだけどことりの家に来て」
「じゃーん!どうかな?」
言われるがままにことりの家に来た俺にことりはある物を見せてきた。
「おお!これメイド喫茶の衣装か?」
「うん!先に貰って一度家に持ち帰ってたんだ」
目の前のことりはメイド服姿で笑顔を振りまく。
「うん、すごく似合ってる」
「ほんと!?よかった!」
「正直めちゃくちゃ可愛いと思う」
「こうきくん///」
「先に見せて貰えたのは役得だな」
「あっ!」
「?」
ことりは何かを閃くと姿勢を正し俺に向かって言った。
「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
「っ!!」
「今のどうかな・・・?」
「すっごいよかった・・・」
破壊力抜群で思わず狼狽えてしまった。
「ことりならちゃんとやれると思うよ」
「ありがとう、頑張れそうな気がしてきた!」
「穂乃果と海未にもちゃんと話せる日が来ると良いな」
「うん!」
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「メイド喫茶のお仕事は上手くいってたけど、穂乃果ちゃんと海未ちゃんには言うタイミングがなくて」
「それで先にバレちまったもんな」
「でも、よかったのかも」
「よかった?」
「いつまでも隠し通せる物でもないから、今日見つかっちゃたの」
「そうか・・・」
「穂乃果ちゃんたち、怒ってるかな?」
「いや、そんなことは無いと思う」
「ほんと?」
「ことりの話を聞いて、皆んな何かしら思うことはあったはずだ」
「・・・」
「それに、μ'sの皆んなはことりのことちゃんと尊重してくれてると思うよ」
「ならいいけど・・・」
「ともかく、切替えていこうぜ」
「・・・そうだね」
「じゃあ俺はこっちだから」
「あっ、またね」
「っと、最後に」
「?」
「ことりはちゃんと成長してるよ、俺はそう思ってる」
「・・・うん!!」
「秋葉でライブをしようと思うわ」
翌日、部室に集まった皆んなに対して絵里がそう言った。
「秋葉で?」
「ええ、秋葉で認められることが出来れば、私たちは一歩上に行けるはずよ」
「昨日えりちと話たんよ、一気に順位を上げる方法を」
「いいじゃない、秋葉でライブ!にこも賛成よ」
絵里の提案に皆んなが賛同する。
「それでなんだけど、今回は歌詞をことりさんに書いて貰おうと思うの」
「ことりがですか?」
「今回は秋葉で行う、そうなると秋葉で働いていてあの街のことをよく知っている人が書くのがいいと思うの」
「ことり、どうですか?」
「私はことりちゃんに書いて欲しい!」
「穂乃果ちゃん、海未ちゃん・・・」
「ことり、これはチャンスだぞ。ここまでことりが頑張ってきたことが発揮される機会だ」
「伝説のメイド、ミナリンスキーさんが書いた歌詞となると話題になります!」
「凛もことり先輩の書いた歌詞たのしみだにゃー!」
「ばっちり歌詞にあった曲作るわ」
「皆んな・・・」
「ことりさん、どうかしら?」
「・・・分かりました!ことりが書きます!」
「うーん・・・」
ことりが作詞を引き受けてから数日、状況は芳しくなかった。
初めての作詞となることや秋葉でのライブ等、色々と条件が難しいため思うように進んではいなかった。
「ことりちゃん、大変そうだね・・・」
「私たちも力になれれば良いのですが・・・」
「こればっかりはことりが自分で頑張るしか無いな」
「そんなー!」
「でも、確かにこのまま見ているだけって言うのも歯がゆいな」
「そう言えば、メイド姿のことりちゃんすっごく可愛かったなぁ」
「はい、とても似合っていました」
「・・・それだ!」
「?」
「穂乃果ナイス!」
ある日の放課後、今日はことりがバイトがある。
俺たちは全員でメイド喫茶を訪れていた。
「いらっしゃいませ・・・って皆んな!?」
「ことりちゃんが働くところ見に来たよ!」
「歌詞を書くにあたり、やはりことりが働く姿が何かヒントになるのでは無いかと思いまして」
「それで全員で押しかけたって訳だ」
「皆んな・・・ありがとう!」
そうして俺たちは改めてことりが働く姿を観察しに来た。
「すごいです、流石伝説のメイド!」
「お客さんに対しての意識がすごいわね」
「真姫ちゃんには無理そうにゃー」
「なによ、私にもあれくらい出来るわよ!」
流石ことり、その姿に全員が見惚れている。
「どうだったかな?」
休憩中のことりが話しかけてきた。
「すごいよことりちゃん!」
「ええ、目を見張る物があります」
「これだけ皆んなが褒めているんだ、誇って良いぞ」
「えへへ、そうかな」
見ていたが、ことりは本当に楽しそうにそしてお客さんを楽しませようとしていた。
「なぁことり」
「なにかな?」
「ことりはここで働くの好きか?」
「うん、好きだよ。制服も可愛くて、あったかい場所で、なによりお客さんの笑顔が見られるから」
「ことりちゃん、それだよ!」
「?」
「ことりちゃんが今言った気持ち、それってこの秋葉でライブするために必要な物だよ!」
「ことりが抱くその想いを、そのまま歌詞にしてみるというのはどうでしょうか」
「ことりの気持ち・・・」
「この場所をよく知ることりだから書ける歌詞、それがきっとあるはずだ」
「・・・穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ずっと黙っててごめんね」
「ことりちゃん?」
「でも今なら胸を張って言える、ここがことりの居場所なんだって!」
「なんとかなりそうだな」
「ことりちゃん、ファイトだよ!」
その後ことりは怒濤の勢いで歌詞を完成させた。
それに合わせた衣装を作り曲を作り練習し、やってきた秋葉でのライブ当日。
「ことりはこの街が好き、そんな想いを乗せて歌います。聴いてください!」
「~~~♪」
秋葉でのライブとあってかなりの人がライブを見に来てくれた。
声援もたくさんあり、大成功といっても過言ではないだろう。
μ'sの名が秋葉で広く知れ渡った日となったはずだ。
「大成功だったね!」
その日の夜、俺と穂乃果海未ことりは神社に来ていた。
「穂乃果ちゃんと海未ちゃんとこうきくんがいてくれたからだよ!」
「皆んなとならなんだって出来るよ!」
「そうですね、私たちなら」
「ああ、このまま突っ走ろう」
「ことりたち、これからもずっと一緒にいようね!」
始まりの三人との時間。
きっとこの時間はいつまでも続くと思っていた。