「でも廃校を阻止する為には何をすればいいんだろう?」
放課後、俺たちは教室で話し合いをしていた。
「音ノ木坂の強み、アピールポイントを探してみてはどうでしょうか」
「音ノ木坂の良さか…」
「伝統がある!」
「確かに伝統はありますが、それだけでは弱いと思います」
「あっ、ことり部活動の成績調べて来たよ!」
「ことりちゃんナイス!」
ことりが調べて来た部活動の成績一覧を発表する。
「悪い物ではないですが、今一押しが弱いですね」
話を聞いていた感じ、特別目立つ部活動は無さそうだった。
俺はこの先彼女達がスクールアイドルを結成する事を知っているが、ここでその提案をする事はしない。
午後の授業中に考えたのだが、俺はこの先の大体の展開を知っているとは言え、そちらに誘導や強制をする様な事はしない事にした。
この世界の彼女達の物語は彼女達自身に決めて欲しい、あくまで俺はその手伝いをする程度に留めておこうと決めた。
本来であれば存在しないはずの俺。
部外者であると言う意識がどうしても消えなかった。
「中々難しいですね…」
「廃校にしない為に、なんとかしないと!」
「とりあえず今日はこれで帰ろっか」
今この場ではこれ以上案が出なかった為に今日はこれにてお開き。
俺達は荷物を持ち下校した。
海未とことりと別れて、穂乃果と二人の帰り道。
「廃校かー」
「どうした?」
「今日いきなり言われたけど、まだ実感が湧かなくて」
「そりゃそうだろ、俺だって驚いてるし」
「私この学校大好きだから、廃校なんて嫌だよ…」
普段は明るい穂乃果が落ち込んでいる。
「まだ、決まったわけじゃない。それに皆んなで阻止しようって決めたじゃないか」
「滉季くん…」
「大丈夫だ、きっと何とかなる」
「…だよね!」
「あぁ、それに俺も穂乃果と海未とことりと皆んなで音ノ木坂を笑って卒業したい」
「私も!よーし、頑張るぞー!」
どうやら元気が出た様で良かった。
「あっ!この後家に寄ってよ、そこで作戦会議しよ!」
「了解」
「ただいまー!」
「お邪魔します」
二人して高坂家の玄関を潜る。
「おかえりなさい穂乃果、それと滉季くんもいらっしゃい」
出迎えてくれたのは穂乃果のお母さん。
ちなみに俺の母親と音ノ木坂で同級生だったみたいだ。
「おねえちゃんおかえりー」
居間に向かうと穂乃果の妹の雪穂ちゃんがいた。
「ちょっと穂乃果と話があるから、場所借りるね」
「はいはいどうぞ〜」
俺と穂乃果の姿を見て、自室に戻ろうとした雪穂ちゃん。
「あれ、雪穂それ何?」
どうやら穂乃果は雪穂ちゃんが手に持っていた物に興味を示した様だ。
「これ?UTXのパンフレット」
「ちょっと見せて!」
「いいけど、はい」
手渡されたパンフレットを読む穂乃果。
隣から俺も覗き込む。
流石大人気校のUTX、様々な分野に力を入れているのが見て取れる。
「すごい…」
「私も来年受けるしね」
「え!!雪穂そうなの!?」
その後穂乃果と雪穂ちゃんで一悶着あったが、確かに現状を考えるならUTXに進学を希望してもおかしくはないと思ってしまった。
「UTXかー」
「気になるのか?」
「うん、私達の学校と何が違うのか気になって」
「…」
「そうだ!」
「どうした?」
「実際に見に行こうよ!」
「見に行くってUTXをか?」
「うん!明日朝学校行く前に行ってみよう!」
「分かった、付き合うよ」
「決まりだね!よーし敵情視察だー!」
こうして明日はUTXの調査をする事が決まった。
「滉季くんおはよう!早く着替えて!」
そして翌日。
普段は早起きなんてしない穂乃果が珍しく早い時間に俺を起こしに来た。
それだけ気持ちも強いって事か。
「すぐに準備するから待っててくれ」
まだ眠い目を擦りながら着替えて出かける準備をする。
「さぁ、いざUTXへ!」
雪穂ちゃんから借りたパンフレットを持ってUTXへと向かう。
道中聞いたが、海未とことりには朝用事がある為先に行っててと伝えた様だ。
「うわーーーー」
そして目的のUTXへと到着した。
今一番勢いがあると言っても過言ではない学校。その佇まいからして圧倒される。
「これは凄いな」
設備も最新の物が取り入れられており未来感溢れる学校、そんな印象を抱いた。
一通り外から見られる所を見た後、正面のモニターから声が聞こえて来た。
「UTXにようこそ!」
画面に映った三人組はA-RISE。後にμ’sのライバルとなる人達だ。
「あれは…」
穂乃果はその姿を見るとパンフレットを開きとあるページを見せてきた。
「ここ書いてある人達だ」
見るとそこにはUTXの看板を背負った三人の姿が載っていた。
「すごい…」
「だな」
「あの人達、何者なんだろう」
「それは」
「何あんた、A-RISEの事知らないの??」
俺と穂乃果が話していると、穂乃果の隣にいた怪しい格好の女子から声が飛んできた。
この声と格好はにこか、正体が分かったが当然黙っている。
「A-RISE…」
「スクールアイドルのA-RISEよ、そんな事も知らないの?」
「スクールアイドル?」
「いい?スクールアイドルってのは学校で結成されたアイドルのことよ、常識よ常識!」
そうか、穂乃果はこの時点で初めてスクールアイドルの存在を知るのか。
「あっ!始まるわよ!」
画面の中のA-RISEは学校の紹介を終えて場面が変わった。
「かよちん早くするにゃ〜」
「凛ちゃん待ってー!」
多分皆んなの事を知っている俺だから聞こえたと思うが、この場に凛と花陽が来ていた事にも気づいた。
「〜〜〜♪♪♪」
すごいな、映像越しにだがそのパフォーマンスに圧倒された。
これがいずれμ’sが越えなくちゃいけない壁か。
この目で見たA-RISEはそれ程までに凄まじかった。
そして映像が終わりその場にいた人達は散り散りとなった。
にこや凛と花陽もいつの間にかいなくなっていた。
その中で穂乃果はその場から一歩も動かないでいた。
「穂乃果?」
「…これだ」
「?」
「これだよ!スクールアイドル!」
「…」
「私達が出来ることだよ!」
「スクールアイドルになりたいのか?」
「うん!これならきっと廃校を救う事が出来るよ!」
どうやら穂乃果の中で火がついた様だ。
スクールアイドルになるって言う決心がついたみたいだ。
「私、スクールアイドルになる!」
「穂乃果なら出来るよ」
「うん!だから滉季くん!協力して!」
「任せろ!」
穂乃果が自分でスクールアイドルになりたいと決めたのだ、だったら俺はその手伝いをすることが必然だろう。
「よーし、学校に着いたら海未ちゃんとことりちゃんにも伝えよう!」
「穂乃果」
「?」
「頑張れよ」
「うん!!」
その時の穂乃果は向日葵が咲いたかの様な明るさ満開の笑顔であった。
こうしてこの世界の根幹、スクールアイドルμ’sとしての第一歩が踏み出されたのであった。