放課後、俺と穂乃果は真姫に改めてお願いする為に一年生の教室にやって来た。
「今度こそ!」
穂乃果が勢いよく扉を開けた。
「あれ??」
だがしかし、一年生の教室に人は残っていなかった。
「あちゃー、出遅れたかな」
「残念だがそうみたいだな」
仕方がない、明日また出直すか。
諦めて俺たちも戻ろうとした瞬間
「あの、どうしました?」
「?」
突如として声をかけられた。
穂乃果と二人声の主に振り返る。
「あぁ、俺たちは」
「うぇぇ!男の人!!」
花陽にめちゃくちゃ驚かれた。
もしかしてそっちからは俺は死角になっていたのかもしれない。
「かよちん驚きすぎにゃー」
「ご、ごめんなさい。男の人は珍しかったもので…」
凛がツッコむ。
そう言えば一年には男子はいないと言っていたな。
「話続けても良いか?」
「はい、すみません」
「俺たちは一年生の歌が上手い子を探しに来たんだが、どうやら帰ったみたいで」
「…それって西木野さんのことでしょうか?」
「多分その子だな」
「西木野さんって言うんだ!」
「西木野さんなら、多分だけど音楽室にいると思いますよ?」
「そうなのか?」
「はい、西木野さん放課後はいつも音楽室にいるって誰かが言ってました」
もしかしたらと思ったが、音楽室か。
「二人とも、教えてくれてありがとう!」
「ありがとう!」
「どういたしまして!」
凛が元気よく返事してくれた。
「俺たちはこれで」
「あの…!」
今度こそ教室から去ろうした際、花陽が大きめな声を出した。
「アイドル…応援しています」
「ほんと!ありがとう!」
「じゃあ私たちは行きますね」
「あぁ」
ヒフミ達にも言われたが、こうやって直で応援してもらえると元気がもらえるな。
教えてもらった通りに音楽室へとやって来た。
「いた!」
情報通り本当に真姫はいた。
「西木野さん!」
ピアノが一段楽したタイミングで部屋に入る。
「あなた達は…」
「やっぱり西木野さんの歌とピアノすっごく素敵だよ!」
「…それで、今度は何の用ですか?」
俺たちに対して警戒心バリバリだな。
「もう一度、曲を作ってもらえないかお願いしに来た!」
「その話は断ったはずですが」
「それでも!西木野さんにどうしても作ってもらいたいって思って!」
「…」
穂乃果の圧に面食らってる様だ。
「…私、アイドル?とかそう言う曲嫌いなんです」
「…どうして?」
「なんて言うか、ただ明るく騒いでるだけみたいって言うか。聞く事なんてありませんし」
「私も最初はそんな感じだったかな、でもね」
「…?」
「アイドルって凄いんだよ、本気でやってるアイドル達の曲って元気が貰えたり、魅了されたりするよ」
「…」
「私たち、本気なんだ。本気でアイドルやろうって思ってる。だからね、その為には西木野さんにどうしても曲作って欲しいんだ!」
「…どうしてそこまで私にこだわるんですか?」
「最初に西木野さんの歌とピアノを聴いた時、私感動しちゃって。私一瞬で大好きになったんだ。」
「…っ!!」
穂乃果のストレートな言葉を聞いた真姫は顔を背けて髪をクルクルとしている。
心なしか頬が赤い気がする。
「この人なら最高の曲が作れる、私たちにピッタリの曲がって思ったんだ!」
「そう…ですか」
「私たち、毎日神社で練習してるから一度見に来てくれないかな?私たちの本気が伝わると思うよ」
「まぁ…時間があれば…」
「その姿を見て、それでもダメだって言うならすっぱり諦めるから」
「…分かりました」
「待ってるよ!」
こう言う時の穂乃果の真っ直ぐな言葉には人を動かす力があるな。
「じゃあね!西木野さん」
話すだけ話して俺たちは音楽室を後にした。
「はい、休憩です」
「ハァハァ」
「ちょっと待って…」
夕方、日課のトレーニングをしていた。
真姫にあれだけ言ったんだ。穂乃果は苦しい中よく頑張っていると思う。
「それで、曲の方はどうなりました?」
海未が曲の行方について尋ねてくる。
「彼女、西木野さんって言うんだけど、私の気持ちは伝えたよ!」
「これでダメだったら諦めるしかないって位の押しだったな」
「そうですか、後は西木野さん次第ですね」
確か原作だったらこの時…
「休憩終わりです!もう1セットいきますよ!」
「ーーーー!!!!」
「?」
階段の方から何やら悲鳴みたいものが聞こえて来た。
「なんだろう?」
「俺見てくるよ、皆んなは練習続けてて」
「分かりしました、ではいきますよ」
鞄からある物を取り出し、声が聞こえた方へと降りて行った。
「おや、君は?」
するとそこには希と顔を赤くしている真姫がいた。
「君もこの子に用事?」
「まぁそんなところだ」
「…なんですか?」
「音楽室の時は驚かせてごめんな、ただ穂乃果の気持ちを知って欲しかったんだ」
「別に…良いですけど」
「ここに来てくれたって事は少しは興味持ってくれたってことかな」
「…」
「気になっていたんですけど、貴方はあの人たちの何なんですか?」
「俺はそうだな、お手伝いさんって所かな」
「?」
「頑張る彼女たちを応援したいってわけだ」
「そうですか…」
「そうだ、西木野さんに渡す物があるんだ」
「なんですか…?」
「はい、これ」
手渡したのは海未作の歌詞が書かれた紙。
「彼女たちはその歌詞に西木野さんが作った曲が乗るのを待っているぞ」
「…」
書かれた歌詞に目を通す真姫。
一通り読み終わった後、しばらく練習に励む穂乃果たちを眺める。
「これで失礼します」
しばらく見つめた後真姫はそのまま去って行った。
やるだけの事はやったつもりだ、後は真姫次第だな。
「副会長も何かしてくれたみたいですね」
恐らく俺の前に何か話をしてくれたんだと思う。
「別に?ウチはなにもしとらんよ」
希はあっけらかんにそう言う。
「それにしても、君もなかなか世話焼きなんやね」
「まぁ、それくらいしか俺にできる事はないので」
「君にそれだけ思ってもらえるなんて、彼女たちはええな〜」
「どこまで役に立ってるかは分からないですけどね」
「おっ?これはこれは」
「?」
「ほなウチはいくね、またね〜」
そうして希も去って行ったので俺も皆んなの元へ戻る。
「なんだったの?」
「ん?別に大した事じゃなかったよ」
先ほどのことは説明する必要はないと思い適当にはぐらかす。
「よーし!じゃあ練習まだまだやるぞー!」
後日、穂乃果の家に無記名でCDが届いた。
「いくよ」
屋上でパソコンにCDをセットする。
「〜〜〜♪」
文句なしに良い曲だ。
流石は真姫だな。
「私たちの思い、伝わったみたいだね」
「ええ、尚更頑張らなくてはいけませんね」
「うん!頑張ろう!」
三人の初ライブが近づいていた。