「グループ名も決まって、曲も出来たんだし、後は衣装だね!」
ある日の昼休み、穂乃果が言い出した。
「ことりちゃん、衣装の方はどう?」
「問題ないよ!ライブには間に合わせる」
「ことりに負担をかけて申し訳ないです」
「気にしないで!好きでやってることだから」
ことりの衣装、実際に出来上がるのが楽しみだ。
「そう言えば…」
「どうしたのですか?」
衣装の話が出たのでふと思いついたことがある。
「3人はこれからも体操服で練習するのか?」
原作だとどこかのタイミングで練習する時の格好が体操服からそれぞれの練習着に変わっていたことを思い出した。
「何か問題がありますでしょうか?」
「問題はないと思うんだが、俺のアイドルのイメージだと個人個人が特徴ある練習着を着ている様な気がしてな」
「たしかに!!」
穂乃果が衝撃を受けた様だ。
「海未ちゃん、ことりちゃん!私たちも個人の練習着でやろうよ!」
「確かにいつまでも体操服ってのも可愛くないかもね」
「そうでしょうか…」
「そうだ!今日の放課後、練習前に服買いに行こうよ!」
「賛成♪」
「まぁそれでモチベーションが上がるのなら良いですよ」
「と言うわけで滉季くんも選ぶの手伝ってね!」
「えっ、俺も?」
「もちろん!滉季くんの意見も聞きたいな!」
「ことり、こうきくんに選んで貰おうかな!」
「そう言うわけで滉季、お付き合いお願いします」
ふとした思いから、放課後服を買いに行くことが決まった。
そして放課後、俺たちは街のスポーツ用品店にやって来た。
「うわー!沢山ある!」
店の中の洋服コーナーに来るとそこには色とりどり様々な服があった。
「これだけあると迷っちゃうね」
「ですがあまり時間をかけていても仕方ありません、ほどほどで決めましょう」
「どれにしようかな〜♪」
三人はそれぞれ物色を始めた。
「滉季くんは私たちが試着したら感想言ってね!」
「分かったよ」
しばらくした後三人はそれぞれ目当ての物を見つけたのか試着室に入っていった。
「じゃーん!」
まずは穂乃果。なんと言ってもシャツに描かれている「ほ」の文字に目がいく。
これが伝説のほのTか…
「穂乃果らしくて良いと思うよ」
「やった!これにしよーっと!」
「どうでしょうか…?」
海未。ジャージみたいな感じでスポーティな感じになっている。
「動きやすそうでいいな」
「はい、機能性抜群です」
「こうきくん、どうかな?」
ことり。ミニスカニーハイと可愛らしさ全開だった。
「似合ってる。可愛いと思う」
「や〜ん♪嬉しい〜」
三人はそれぞれ納得いったのか、選んだ服をレジに持っていった。
まさか練習着を一緒に選ぶことになるとは思ってもいなかったが、こうして一番に見ることが出来たのは役得だな。
「あのー、そこの君?」
「はい?」
穂乃果たちがレジに行っている間、俺も適当に物色しているとUTXの制服を来た女生徒から声をかけられた。
「俺ですか?」
「そそ、君君。こんな所に男の子なんて珍しいねー、良かったらあたしと遊ばない?」
「えっ…」
これは所謂逆ナンと言うやつだろうか。
まさか自分がその立場になるとは思ってもいなかったために慌てる。
「君結構カッコいいしさ、あたしが楽しませてあげるよ」
「いや、あの俺は」
こう言うのには慣れていないためにオロオロしてしまった。
「滉季くん!!」
「穂乃果?」
会計が終わった穂乃果たちが俺の所に来た。
「あん?」
女生徒は穂乃果たちを睨む。
「おまたせ!…滉季くんに何の用ですか?」
「どこの誰かは知りませんが、弁えて下さい」
「ふーん、貴女UTXなんだ」
三人が凄く冷たい声で女生徒に言う。
「ちっ、女連れかよ」
それだけ言うと女生徒は去って行った。
「…滉季くん、ダメだよ穂乃果たち以外にデレデレしちゃ」
「いや、驚いただけでデレデレなんて…」
「…そっか!なら良かった!」
穂乃果はいつもの笑顔に戻った。
なんだったんだ、今の穂乃果たちは…??
「よーし!この服着て早速練習だー!」
この件には触れない方が良い気がして、スポーツ用品店を後にした。
「穂乃果、手は真っ直ぐ!」
「うん!」
穂乃果たちの新しい練習着も見慣れた頃。
ライブに向けての練習はより実戦的なものになっていた。
流石に一緒に踊るわけにはいかないので、俺は見てて気づいたことを言ったり、雑用をこなしていた。
「三人ともお疲れ」
用意しておいたスポーツドリンクを手渡す。
「大分形になって来たな」
実際初期の頃では考えられないくらい、三人は上達している。
「頑張るって決めたんだもん!」
「こうきくんに見られてると、格好悪い所は見せられないもんね」
「滉季もいつもありがとうございます」
「いや、俺なんか全然」
「あっ!」
穂乃果が何か見つけた様だ。
「西木野さん!」
「うぇ!?」
穂乃果に見つかったのは真姫。
実は真姫は曲を作ってくれた後、こうして時々穂乃果たちの事を見に来てくれる。
「練習、見に来てくれたの!?」
「別に、たまたま通りかかっただけよ…」
「来てくれてありがとうな」
「…今日もいるんですね」
「まぁな」
「ねぇねぇ!あの曲歌ってみたから聴いてよ!」
曲が出来た後に穂乃果たちは三人で実際に歌ってみた。穂乃果の音楽プレイヤーにはその音源がある。
俺も聴かせてもらったが、中々良いと思う。
「なんで私が」
「だって真姫ちゃんには聴いて欲しいんだもん!」
匿名で出した以上真姫が曲を作った事を認めることはないが、俺たちの中では深く突っ込まないことにした。
「分かりました!貸して」
穂乃果から音楽プレイヤーを受け取りイヤホンを耳に刺す。
そして再生ボタンを押した。
〜〜〜♪
「まぁ、悪くはないんじゃない」
「ほんと!?」
「でもまだ甘いわね、もっと歌い込んだ方が良いと思います」
「うん!もっともっと練習するよ!」
「じゃあ私はいきます」
「またね!」
「先輩も失礼します」
「いつでも来てくれよな」
真姫は来ると一言二言は俺と言葉を交わす。
どうやら嫌われてはいないみたいで良かった。
ライブが真近に迫った最後の休みの日。
朝練を終え夕方の練習まで一度解散となった昼過ぎ。
「ん?」
部屋にいた時に俺のスマホが鳴った。
【こうきくん、今時間あるかな?】
送り主はことりだった。
【大丈夫だけど、どうした?】
【ことりの家に来て欲しいの】
家に来てくれか、どうしたんだろうと疑問には思いつつも暇してたし向かう事にした。
「お邪魔します」
「いらっしゃい!」
玄関を開けるとことりが出迎えてくれた。
「理事長は?」
「仕事でいないよ」
「そうか、ところで俺だけか?」
「そうだよ」
珍しいな、何かある時は穂乃果と海未も一緒なことが多いのだが。
「とにかく、ことりの部屋に来て?」
言われるがままにことりの部屋に入る。
「で、わざわざ俺だけ呼び出して何の用だ?」
先ほどのやり取りでは内容は伝えられなかったので改めて聞いてみる。
「それはね!」
ことりはそう言うとクローゼットから3着の衣装を出して来た。
「衣装、出来たの!」
「おぉ!出来たのか!」
目の前には立派なアイドル衣装がある。
裁縫が得意なことりが作っただけあって、出来は素晴らしい。
「衣装、こうきくんに一番に見てもらいたかったの!」
「なるほどな」
果たして穂乃果や海未より俺が先に見て良いものかとは一瞬思ったが、ことりの好意を無碍にするのも良くない。
「いや本当にすごいよ、結局ほとんど一人で作ったんだから」
結果的に衣装に関してはことりの一人任せとなってしまった。俺が手伝うことは無かったな。
「えへん!頑張りました!」
「これを着ることりたち見るのが楽しみだな」
「!こうきくん、少しだけ部屋の外に出てもらっても良いかな?」
「?分かった」
言われるがままに一度部屋から出る。
「いいよー」
少しした後再び部屋に入る。
「っ!!」
「どう…かな?」
そこには先ほどの衣装を着たことりがいた。
「…」
「こうきくん?」
驚きのあまり固まってしまった。
「…めちゃくちゃ似合ってる」
緑色の衣装はことりによく似合っていた。
「ほんと!?よかった!」
「ビックリしたよ」
やっと再起動出来たかと思うと、次の瞬間ことりは俺の胸に抱きついて来た。
「ことり!?」
「ねぇ…ことり可愛いかな?」
「ことり…?」
「ことり、穂乃果ちゃんや海未ちゃんみたいにちゃんとアイドルやれるかな?」
穂乃果たちが引っ張っていく中で、ことりの中では不安があったのかもしれない。
今俺にできるのは精一杯の肯定だろう。
「ことりはすごく可愛いよ、大丈夫、ちゃんとアイドルだよ」
なるべく優しい声でそう言う。
「頭撫でながらもう一回言って」
「ことり、可愛いよ」
目の前にあることりの頭を撫でながら再度ことりを認める。
「っはー!うん!元気出た!」
ことりは俺から離れた。
「ごめんね、こうきくん」
「気にするな」
何はともあれことりが元気になって良かった。
抱きつかれた時は内心凄くドキドキしたが。
「この事は穂乃果ちゃんと海未ちゃんには」
「内緒にしておくよ」
「ありがとう」
とびきり可愛いことりでも不安になることがあるんだな。
これからは皆んなの事もっとよく見ていこうと思った。
「ことり、こうきくんがいないとダメになっちゃいそう」
「いつでも頼ってくれていいからな」
「うん!」
その後は着替えたことりと雑談をし、家を後にした。
帰り道、服にはことりの匂いが残っている様な気がした。