奇械姫と騎士   作:水氷(ばっかり手に入る)

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サンドローネの本名<マリアネッテ・ギヨタン>
公式情報ですので悪しからず


第1話

 

フォンテーヌ ベリル地区 とある場所

早朝、暖かな陽の光にのどかな風が草木を揺らす平原。そこにポツンと建っている一軒家があった

 

 

「はぁっ!」

 

 

そこから少し離れたところに10代半ばの少年が剣を振り回し鍛錬をしていた。その身の熟し方から、少年の実力は同年代よりも遥かに上回っていることがわかる

 

 

「よしっ、今日はここまで!」

 

「アスター!少しいいかな?」

 

「じいちゃん?」

 

 

家から出てきた60代の高齢男性にアスターと呼ばれた少年は、タオルで汗を拭き取りながら男性のもとへと歩いていった

 

 

 

 

──アスター──

 

 

「それでじいちゃん、なんのよう?またパーツの買い出しの頼みとか?」

 

「いや、今日は買い出しはないさ」

 

「ん?」

 

 

朝の日課である鍛錬を終わらせた後、じいちゃんがいる家前まで歩いていくと、なにやら達成感を感じつつもそれ以外の感情...後悔に罪悪感?もあるような顔をしていることに気付いた

 

達成感の方はわかる。最近、作業部屋に籠って新しくなにかつくってるようだったから、それが完成したんだろう。でもそれだけなら複雑な顔なんてしない。完成した後なにかあったんだろうか?

 

 

「アスター、君に紹介したい子がいるんだ」

 

「...わかった。中にいるの?」

 

「あぁ、入りなさい」

 

 

予想的中だ。じいちゃんもいい歳だし、老後生活が便利になるようなものでもつくったのだろう。さっきの表情に関してはあとから訊こう。

それよりも今は、大抵のものは簡単につくるじいちゃんが結構な時間をかけて取り組んでたモノを、その完成品を見ようじゃないか!

 

 

「紹介しよう。僕の最高傑作の...」

 

「マリアネッテよ。その、よろしく」

 

「───」

 

 

そこに居たのは、どこからどう見ても人間にしか見えない少女。流石は世間で奇械公と呼ばれた人、機械人形も規格外すぎるね!とかいろいろ思うことがあるなか、俺が最初に思ったことはコレだ

 

あー、この前の買い出しにはオーダーメイドの女性用衣装を受け取ってたなぁ。よかったー、アレ女装用として用意されたものじゃなかったんだ

 

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

「コホン...失礼しました、 私はアスター。えっとキミの創造主である<アラン・ギヨタン>の子ども?です」

 

「はははっ。アスター、そんなに堅くならなくてもいい。彼女は今日から僕たちの家族なんだから、僕と同じように接すればいい」

 

「あはは、それもそうだね!

 

 

改めてよろしく、マリアネッテ!」

 

「えぇ、よろしく。アスター」

 

 

手を差し出した俺に少し躊躇いながらも受け入れた彼女の表情や言動などは、やっぱりとても機械人形だとは思えなかった

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「よし、昼食も終えたことだ。それじゃあ2人とも、テストも兼ねて外を歩こうか」

 

「えぇ」

 

「りょーかい」

 

 

じいちゃんはとんでもない子をつくったんだなと改めて感じる。昼食を一緒にとったとき、その動きが本当に人間味がありすぎる。じいちゃん曰く、人の脳は極めて精密な機械にすぎず、思考はその演算の産物に過ぎないという理論を参考に造ったそうだ。更に訊けば視覚や聴覚はもちろん、嗅覚も味覚も触覚もあるらしいし呼吸もする。極めつけに感情もあるのは自分の目で見ても確かだ。こうなると、人間と機械の境目なんてわからなくなってしまうなぁ

 

そんな昼食を迎えたあと、彼女とじいちゃんと一緒に庭で散歩することになった。彼女にとっては何もかもが初めてのことだし、外に出てどんな顔をするか楽しみだな

 

 

そして玄関の扉を開けてゆっくりと家から出たマリアネッテが最初に見たのは、家前の辺り一面に咲く色とりどり花たちだった

 

 

 

「...これは」

 

「家の庭の花たちはアスターが手掛けてくれたんだ」

 

「あなたが?」

 

「うん。俺の名前が花名だから、せっかくだし園芸でもしよっかなって思ってさ。気に入った?」

 

「よくわからないけど、そうね...きれいだわ」

 

「じゃあもっと近くで見てみよう!」

 

「えぇ」

 

 

俺の提案に頷いた彼女の顔はあまり変わっていなかったが、それでも楽しみだなという気持ちがあるのはなんとなく伝わった

 

 

「さぁマリアネッテ、お手をどうぞ」

 

「え?」

 

「段差がありますので」

 

「あ、ありがとう...きゃっ!」

 

「おっと」

 

 

玄関前の段差を降りて彼女をエスコートすれば、やっぱりまだ完璧に歩き慣れてないのか、段差を降りようとしてバランスを崩した。事前に予想してたこともあって、俺は彼女を危なげもなく支えることに成功

 

 

「ごめんなさいっ」

 

「いえいえ。さっ、いこうか」

 

 

ちなみにさっきからじいちゃんが口を開いてないからどうしてるのかって思って視線を向けたら、なんかすごい微笑ましい感じで俺たちを見守っていた。まぁ、寂しいとか疎外感とか感じてなくて良かったけども...

 

その後、庭園にある花を近くで眺めたり愛でたりと楽しんだ。話しているとわかったことだけど、どうやら一般的な知識やマナーは既にデータとして彼女の身体に埋め込まれてるみたいだ。見た目は十数年生きてきた少女だけど、実際は生まれて間もないっていうのはなんか赤ん坊って感じ...いや、常識的な知識があるしどちらかというと───

 

 

「...」

 

「アスター?」

 

「マリアネッテ。君の名前に正式名称とかはないの?他のマシナリーは正式名称から別の名前にしてるけど」

 

「いいえ、ないわ。少なくとも私のデータには...アランなら知ってるんじゃないかしら?」

 

「どうなのじいちゃん?」

 

「いや、正式名称はないよ。その名前も仮のモノでね、なんなら彼女自身に決めてもらおうと思っていたんだ」

 

「そ、そうなのね」

 

「...そっか。じいちゃん、次はマリアネッテにアレを聴かせてあげよう!」

 

「あぁ、わかったよ」

 

 

俺の提案に頷いたじいちゃんを先頭に庭園を歩き、石畳に1台の機械が鎮座している場所へとたどり着く

 

 

「アラン、これって」

 

「僕がつくったピアノだよ」

 

「ご飯を食べて、さっきは花を愛でた。それで次は音楽を楽しもうかなと思ってさ!」

 

「要は味覚嗅覚視覚の次は聴覚で感情モジュール等のテストをするってことね」

 

「マリアネッテ、言葉が堅いってば」

 

「どうして?私は機械人形よ。あらゆる方面で動作テストをするのはなにも不思議じゃないわ」

 

「確かにそうかもしれないけど...少なくとも俺が提案したヤツにはそんな硬っ苦しい理由なんてないよ」

 

「そうなの?」

 

「そうなの。ではじいちゃん!一曲お願いします!」

 

「はははっ、そんな期待の眼差しを向けられるほどのモノは弾けないけどね」

 

 

そう言いながら、じいちゃんはピアノを弾き始める。じいちゃんのさっきの言葉とは裏腹に、その弾いている姿は人並み以上にも思える。そして、それを聴いている彼女はどんな反応をきているのかと思って、マリアネッテの方へ視線を向ける

 

 

「見事な音色ね」

 

「それはじいちゃんの演奏というより、ピアノの音を褒めてるような?いやそれをつくったのはじいちゃんだしじいちゃんを褒めてるようなものか」

 

「一切の雑音が混じってない澄んだ音色。聞いてるだけで落ち着くというか、これが癒されるということかしら」

 

 

まだ起動して間もないからか、知識の感情と実際に体験する感情を一致させるのに時間がかかってそうだった。その様子は、まるで上手く感情表現ができない小さな子供のようだった

 

 

「ねぇ、マリアネッテ」

 

「なに?」

 

「一曲、一緒に踊ってくれませんか?」

 

「...どうして?」

 

 

まぁ、論理的で理性的に考える機械人形であるキミならそういうだろうね。全然予想の範疇だとも

 

 

「理由なんてない!」

 

「理由もないのに踊るの?」

 

「人間、理由もなく行動することはあるんだよ」

 

「理解できないわ。何の利があって─」

 

「あぁもう、そういうのはいいからさ!」

 

「っきゃ!?」

 

 

反論しようとする彼女の手を無理やり引っ張り、流れるように空いてるもう片方の手を彼女の背に回してワルツの基本姿勢の出来上がり

 

 

「ちょっと!危ないじゃない!」

 

「ごめんごめん。でもごちゃごちゃ言っててめんどくさかったから、もういいやと思って」

 

「なっ...!そもそも、私ダンスなんてまだ踊ったことないのよ!?」

 

「大丈夫だって、俺がリードするし。それにマリアネッテも基本姿勢できてるじゃん」

 

「これはっ、初期データとしてあったからで」

 

「よし、踊ろうか!」

 

「ってちょっと待ちなさい!」

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「すぅ...すぅ...」

 

「昼寝もするとは、人間との境目がわかんなくなる」

 

「色んな景色な知識、運動もしたからデータ整理として睡眠も必要なんだよ。でもこれは彼女だけに関してじゃなく、人間もそうだ」

 

 

ダンスを踊り終えた後、俺たちは家の中へと戻った。マリアネッテは椅子に座ってひと息ついてから暫く経たないうちに寝てしまった。まるで遊び疲れた子どもみたいだな...

 

彼女も眠ったし、訊くには丁度いいタイミングか

 

 

「あのさ。じいちゃん」

 

「なにかな?」

 

「どうしてマリアネッテを造ったの?」

 

「...」

 

「ただの好奇心だけじゃないよね。それだけだったら、じいちゃんの妹さんに見た目がそっくりなマリアネッテをわざわざつくらないでしょ」

 

 

俺はじいちゃんの若い頃の写真を見たことがある。その写真にはじいちゃん含めて4人写っていて、その内のひとりであるじいちゃんの妹さんとマリアネッテは、見た目がそっくりだった

 

そのことについて訊いてみると、じいちゃんは苦笑を浮かべながら口を開いた

 

 

「どこかのタイミングで訊いてくるとは思っていたが、予想よりも早かったね」

 

「...」

 

「若い頃の僕は機械のことで夢中で、たった1人の肉親である妹を疎かにしていた節があってね。そして不幸にも彼女は若くして亡くなった。だから彼女との思い出も多くはないんだ。妹との少ない思い出を形に残したいという思いから彼女を造った。でも彼女を造って名前を与えた後、すぐに後悔したよ。」

 

「それは、マリアネッテがじいちゃんの妹さんじゃないからでしょ」

 

「あぁ、彼女とマリアンはまったくの別人だって気付いてね。僕の身勝手な理由で彼女を造り上げてしまったことに、申し訳なさがでてきたよ」

 

 

それが、俺を呼んでマリアネッテを紹介する時に見せた表情の理由なんだね。理解はできたけど、俺が気になってるのはそこじゃない

 

 

「このさき、マリアネッテにはどう接するの?」

 

「もちろん家族として接するさ。ただ自由に生きてほしいし、好きなことをやらせてあげたいと考えているから、名前や生まれた日も彼女に決めてもらおうと思う。それが彼女に対するせめてもの罪滅ぼし─」

 

「それは違うよ」

 

「...っ?」

 

 

俺の反論に、じいちゃんは珍しく戸惑っていた。俺がこんな感じで強く否定するのは数年の付き合いで初めてだからだろう

 

 

「ここから言うことはマリアネッテが人間、もしくはそれと変わらない子っていう前提で言うよ」

 

「あぁ、僕もそう思っているよ」

 

「マリアネッテを造ったのはじいちゃんだ。これは言い換えると彼女の親はアラン・ギヨタンになる。親が生まれてきた子に最初にすることは、優しく抱いてあげることと、名前をつけてあげること」

 

「─」

 

「名前をつけられた子は、親から毎日それを呼ばれ続けて自分の名前と認識する。子どもは、自分は親の子どもなんだと認識して、そこは自分の居場所だと理解する

 

マリアネッテという名前が仮名だと言われたときの彼女は、戸惑いの中に寂しさや悲しみもあった。本人は自覚してないだろうけどね

 

彼女の奥底では、自分は何者なのか、居場所はあるのかっていう思いが出てきてると思う」

 

「...」

 

「名前というのは自分が何者か、ここに存在するのかを明確に出来るものだと身をもって知ってる」

 

「...はじめて君に出会ったとき、君は記憶喪失で自分の名前がわからなかったんだったね。いまの彼女は、あの時の君なのかな」

 

「うん、常識的な知識だけがあって自分を認識するモノはない。今の彼女はその時の俺とそっくり。だからさ、じいちゃん─

 

 

 

マリアネッテを名前で呼んであげてほしい」

 

 

 

多分、マリアネッテという名前は妹さんの名前を模して付けたものだと思う。そしてじいちゃんは、2人はまったくの別人だと理解して、その名前から避けている。現にじいちゃんの口からマリアネッテという名前を聞いてない。でも名前は人をつくらない、例え妹さんと同じ名前だとしても、彼女は彼女であり妹さんじゃない

 

 

「目の前に親がいるのに、その親から名前を呼んでもらえないのは寂しいと思うんだ。もしマリアネッテという名前がイヤなら、彼女に謝り倒した上で、改めて名付けてほしい。彼女に、俺たちは君の家族だと明確に認識させて欲しい」

 

「...キミは、人を見る目においては誰よりも優れている子なんだと、改めて感じるよ」

 

「それはありがとう!」

 

「はぁ...まさかひと周り以上も離れた子どもに諭されることになるとはね。人のことをしっかりと見ていない証拠だ。あのときも、彼らをしっかり見ていれば─」

 

 

「ぅん...」

 

 

話し合いがひと段落すると、椅子に座って昼寝をしていたマリアネッテが目を擦りながら起き上がった

 

 

「おはようマリアネッテ!」

 

「よく眠れたかい?...マリアネッテ」

 

「えぇ、それなりに...?」

 

 

マリアネッテは目覚めたばかりでもじいちゃんの言葉に違和感を覚えたらしい。まぁずっと名前を呼ばれなかったのに呼ばれたから戸惑いもあると思うけど

 

 

「マリアネッテ、君に謝りたいことがある」

 

「え、なにかしら?」

 

「君の名前なんだけどね。さっきは君自身に決めて欲しいと言った手前すまないが、マリアネッテでもいいだろうか?」

 

「っ!...あなたが与えた名前だもの。もちろんよ」

 

「そうか。ありがとう」

 

 

彼女に与えた名前に目を逸らさずに受け入れたじいちゃんは、どこか憑き物がとれたかのようにスッキリとした顔で微笑んでいた。そして親から名前を貰ったマリアネッテは自覚はないだろうけど、とても嬉しそうでどこか安心した表情をしていた

 

 

 

 

 

──AnotherView──

 

 

フォンテーヌ ベリル地区のとある場所にひっそりと暮らす老人と少年には、新たな家族ができました

 

 

「さて、アスター。今晩はマリアネッテの誕生祝いをするから、買い出しを頼まれてくれないかな?僕はさきに料理をしておくよ」

 

「りょーかい!めちゃウマケーキ買ってくる!」

 

「わ、私のためにそこまでしなくても」

 

「「僕(俺)がしたくてしてるんだから気にしない」」

 

「同時に言わなくてもいいじゃない...じゃあ私もなにか手伝うわ。それくらいはさせてちょうだい」

 

「じゃあアスターの買い出しを手伝ってあげてくれ」

 

「待ってよじいちゃん。ここから都はちょっと歩くしマリアネッテにとって新鮮な景色がいっぱいだよ?マリアネッテ、帰ってくる頃にはまた寝てしまうんじゃないの?」

 

「失礼ね!寝ないわよ!そんな赤ん坊みたいに頻繁に寝たりなんかしないわ!!そもそもさっき寝てたのも、大体の原因はダンスを誘ったりその最中も執拗に処理が追いつかないことするあなたが─」

 

「じゃあじいちゃん行ってくるねー」

 

「って聴きなさいよ!そして私を置いていくんじゃないわよ!!ちょっとアスター、待ちなさい!!」

 

「はははっ!あぁ、行ってらっしゃい」

 

 

新しい家族の少女の誕生を祝うために、2人は少女とともにパーティの支度を楽しくやっていきました

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「「誕生日おめでとう!マリアネッテ!!」」

 

「えぇ、ありがとう!」

 

 

はじめは家族という形だった3人は、こうしてより深く親密な家族へとなったのでした

 

 

 





1話で詰め込みすぎたと思うんですけどね。まぁ面倒事はそうそうに解決した方がいいだろと思いまして...サンドローネが目覚めて1日も経ってないけども

許して!!
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