奇械姫と騎士 作:水氷(ばっかり手に入る)
えっと、今更だけど。豆腐メンタルの駄文なので大目に見てね
──アスター──
マリアネッテが生まれてから早くも数ヶ月が経った。彼女が加わった新しい日々にも少しずつ慣れてきた頃だ
朝はいつも通り鍛錬を終えてシャワーを浴びて汗を流した後、みんなと朝食。その後は庭園の手入れをするんだけど
「アスター、こっちの水やりは終わったわよ」
「うん、ありがとうマリー」
その庭園の手入れにはマリアネッテも参加するようになっていた。初日に庭園を見せて興味を持ったのだそうだ。ちなみに<マリー>っていうのはマリアネッテの愛称である。俺は愛称で呼んでるけど、じいちゃんはしっかり名前で彼女を呼んでいる
そして昼食後は3人でお茶会をする。コレは俺の提案で、出来る限り家族と長く接したいという想いから提案した。じいちゃんも歳だから、後悔のないように出来る限り思い出をつくらないと!
「どうかなマリアネッテ。コーヒーの味は?」
「そうね。だいぶ飲めるようになったわ」
「ただし砂糖入りだけどね」
「お黙り」
その後、夕食までは自由。基本的に部屋の掃除や整理だったり買い出しを頼まれたりとその日によって違うことをする。そして今日は、マリーと都まで買い出しに行く日
「いい天気だね〜。人もいっぱいだ」
「そうね...あら?」
「ん、どうしたの?」
ということで都で買い物に来ていたんだけど、その道中にマリーが路地裏の方へ視線を向けた。なにか気になる物でもあったのかと思い、俺も路地裏を覗き込むと
「にゃあ...」
「おや、猫だ」
「ネコ?このモフモフしてて可愛らしい生き物がネコなのね!わぁ...初めて見たわ!」
「首輪つけてるし、迷子かな」
「そのようね...猫ちゃん、こっちへいらっしゃい」
普段はじいちゃんと小難しい話をしてクールビューティっているマリーが、モフモフにメロメロになってる。だが哀しいかな、猫はしゃがんで近付いてきた彼女から素早く距離をとった
「あっ...」
「マリー。猫に近づくときはいくつかのポイントを把握してないと逃げられちゃうよ」
「ぅ...そうなの?」
「まずゆっくりと腰を落として猫の正面を避けて近付く。あと猫をじっと見つめ過ぎないこと。上手く近づいたら下手に触りに行かずに、猫から歩み寄るのを待つ。そうすると」
「にゃあ♪」
猫を驚かせないように実演しながらマリーへ説明すると、猫の方から歩み寄って来て、差し伸べた手の匂いを嗅いだりしたあと警戒を解いて頬擦りをしてきた。この子は飼い猫というのもあって、まだ人に慣れてるほうだな
「じゃあ、マリーもやってみて」
「えぇ...正面を避けて、見つめ過ぎず触りに行かず」
俺が説明したことを小声で復唱しながら猫に近づくマリー。動きも俺がやってた通りだし、問題なさそうだな
「にゃっ!」
「あっ」
「あれ?」
だが哀しいことに、猫はマリーが差し伸べた手に近付くことなくそっぽを向いて明確に避けた。その後、俺の方へ飛び込んで来た。そのまま猫を抱く俺を羨ましそうに見るマリーは困惑しながら口を開く
「...どうして?アスターの言う通りにしたわよ?」
「んー。あ、確か猫って機械音が嫌いだったか...な」
「...つまりそれって、
「あぁー、でも人間と同じように猫にはいろんな子がいるからさ!マリーのことが平気な子もいるよ!」
「そう、かしら...」
新たな事実判明で、明らかに悲しそうな声をするマリー。その感情の大きさは、下手したら今までで一番かもしれない。そして、今の自分にはどうしようもできない申し訳なさの気持ちと、人間として成長していることに感動している気持ちが共存するとはね。マリーといると、感情というのは複雑すぎると改めて実感するよ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ありがとお兄ちゃん、お姉ちゃん!!」
「えぇ、どういたしまして」
「次からは気をつけてね〜」
その後、無事に猫を飼い主たちのもとへ届けることが出来た。飼い主である少女の傍にはその子の両親と思われる人が頭を下げて感謝していた。因みに、マリーは別れ際まで猫をチラチラと見ては触りたそうにしていた。まぁ結局できなかったけどね
「無事に家族のもとへ届けれてよかったよ」
「そうね。でも、血は繋がってないから家族ではないんじゃない?そもそも種族も違うわ」
「例え同種族じゃなくても、俺みたいに血が繋がってなくても家族と定義できるんだよ!!」
「法での定義とはまた別の定義で家族と捉える人間の感覚というのは複雑なものね...というかあなた、やっぱりアランと血が繋がってないのね」
「あはは、その口振りだと察してた?」
「えぇ。アランと顔の輪郭とか骨格が似てない。そもそもアランは結婚もしてないじゃない。でも遠い親戚の可能性があるから今まで断言はできなかったけど、今のアスターの言葉で確信付いた感じね」
「なるほどね。では、かんたん昔話をしよう!」
そう言って、俺はマリーに語った。
数年前、俺はある人に命を救ってもらったらしい。なぜこんな言い方なのか?それは当時の俺は意識を失ってたから。その人から話を聞くと、どうやら俺はアビスの侵食によって死にそうになっていたそうだ。そして、それを治療してもらった後、その後遺症なのか、俺は記憶喪失になってしまった。それでその後、何故かじいちゃんのところで厄介になってもらえと、そして
「今に至る」
「えーっと、そのアスターを救った人には疑問に思う行動があるわね。アビスの侵食で末期のアスターをどう救ったのか、どうしてアランのもとへ届けたのか、とか」
アビスに侵された人を治療するのは方法がないわけではないけど、現状ではどこの国も難しいこととなっている。それを個人の力でなんて...彼は何者なんだろうか。じいちゃんのとこへ届けたのは、俺を世話する余裕がなかったのかもな。少なくとも命を救ってもらった俺からは文句なんて言えない
「でももし彼と出会えたなら、感謝しなくちゃね」
「えっ?俺が感謝するのはわかるけど。なんでマリーも感謝するのさ」
「当然でしょ?私はあなたのおかげでアランが教えること以外のいろんなことを知れた。さっきみたいな猫との近付き方とかもそうね」
「君ならいつかは知っていた事ばかりだよ」
「そうかもしれないわ。でも、物事を知るのは早い方がいいって思うのよ。遅かったりしたら、本来なら役立つ場面でも知らなかったからどうすることも出来なかった、なんてあるじゃない?さっきみたいな...機械音が嫌いな猫に、無意味に挑戦した私みたいにっ」
「あ、あはは」
この子まだ引き摺ってたよ。というか、それはまた違うような感じするんだけどな
「コホンっ。つまり、私の家族であるあなたを救ってくれた人を感謝したいってこと。その人がいなければ、あなたと家族になれなかったもの」
「さっき血が繋がってなければ家族ではないとか言ってたのに?」
「繋がってなくても家族と言ったのはあなたよ」
「あはは。...ありがとう、家族って言ってくれて...でも、家族なら尚更怖くなっちゃうかな」
「なにが?」
「今は、まだ自分の名前を思い出しただけで記憶喪失ということに変わりないでしょ。ここから記憶を取り戻した時、俺はどんな奴になっちゃうんだろうなって...もし、本来の俺はクズみたいなヤツだったらって思うと─」
家族を傷付けるぐらいなら、記憶喪失のままの方がずっといい。と言おうとしたところで、マリーがずっと難しい顔をしていることに気付いた。失敗した、つい暗い雰囲気になってしまった
「...」
「ごめんごめん!なんか変な感じになっちゃったや!さぁマリー、家に帰ろう!!」
「記憶喪失前のあなたも、大して変わらないわよ」
「え?」
「記憶を失った人の感情の処理システムや本来の気質は、失う前と変わらない。だから、アスターはクズみたいな人じゃないわ」
「それは...慰め?」
「さっき、私がもし
「...そっか、そうなんだっ」
「えぇ」
「ありがとうっ」
マリーの言葉で、心のどこかにひっそりとあった詰まりが解消された感じがした。彼女のその論理的な言葉には頭を悩ませていたけど、今回はその言葉に助けられちゃったな
「でも安心して、仮にあなたがクズみたいなヤツだったら矯正してあげる!人間、やりようによっては性格矯正もできるんだから!」
「ちょっと、さっきの感謝返してよ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
都への買い出しも終えて、あとは景色を眺めながら帰路につくだけでのんびりとした時間が流れる。はずだったんだけど...
「よしよし、いい子ね〜♪」
「...」
「ふふっ、モフモフ〜」
「ねぇマリー、そろそろ帰らない?」
「も、もうちょっとだけ待ってくれない?」
「そう言って、もう1時間経ちそうだよ?」
この通り、モフモフの動物に時間を取られていた。
まさかこんな早くに彼女を受け入れる動物が現れるとは、しかもウサギだよ。猫と同じように機械音が苦手な部類だけど、なんとこのウサギは例外らしいね
「素敵な毛並み〜♪夜空みたいな毛色で、瞳の色は月にも太陽にも思える色で堪らないわぁ」
「...帰ったらじいちゃんに遅くなったって謝ろっか」
結局、ここから動いたのは数十分程経ってからだった
500(厳密には約400~450)年前編は2、3話ぐらいかな...