奇械姫と騎士 作:水氷(ばっかり手に入る)
マリーとプロンニアが家を去ってからはや数日、俺は今後どうするかについて整理していた
「とりあえず、まずはコレをマリーへ渡すことを考えるべきなんだが...今はまだ渡すときじゃないだろうな」
じいちゃんから渡された<マリアネッテが自身と向き合うときに使う機械>はどういうモノか、おそらくだがコレは彼女が<自身の心を受け入れる為の機械>だ。マリーは自身が機械人形であり、感情はあるけど感情を主軸にして動かないと思い込んでいる。感情で動いてる時もあるのに無駄に理論的根拠とかを並べて頑なに認めない。何故か、それは彼女の論理的思考が無駄なものだと思ってるからだ。もともと機械人形ということもあってその思考が強く出ている
心を受け入れることは、最後に見たマリーの様子だと拒絶するだろうな。いまの彼女は
「マリーが旅を一段落した後、色んなことを経験しその過程で彼女の云う誤謬を蓄積させまくった時か」
そしてその時に俺は居合わせなきゃならないんだが、コレの何が難しいのか。それはその過程が人間の寿命よりも長そうなことと、マリーが俺を避けていること。俺がなにも行動しなかった場合、マリーと次に会うのは俺が寿命間近か尽きた後だと思う。つまり、自分の手で渡すことが出来ないことを意味する。じいちゃんのあの頼み的には俺が直接渡さないといけないから、間接的に渡すのは避けたい
「まさか、俺に人間をやめろと言ってるのか?」
人間だから寿命というタイムリミットに悩まされる。ならその人間を超越してしまえばなんとかなるよ!とでも?人間を同意もなく無理やり生き長らえさせることをじいちゃんが納得するかよ!!
落ち着け...そもそもなんでじいちゃんは俺が生きてるうちにマリーに渡せると確信していたんだ?改めて言うが、じいちゃんは無理のある頼み事はしない人だ。つまり俺は渡すことができるということ。何故だ?予想している時期よりも早くベストタイミングになるのか?でもエラーの蓄積が早すぎてしまえばその分だけ負担となる。そして急激なる負担は、彼女にとって害あるものと認識して、その部分を消去するという結論にもなりそうだ。だから程よい間隔と時間で蓄積させてしまえばいいんだが、代わりに俺は寿命で死ぬ...
「あぁダメだ!!だんだん頭が痛くなってきた!」
─ダンッ!
次第に混乱した俺は思わず両手を掲げ、テーブルに向かって勢いよく振り下ろしてしまった。少しの衝撃が部屋に響き渡る
「はぁ...少し外の空気吸ってくるか」
頭を垂らして気分転換に出かけようと決めたとき、テーブルに振り下ろした両手からさっきの衝撃とは別の振動が微かに伝わってきた。しかもその振動は収まることなく、次第に大きくなってきた
「これは...まさかっ!?」
異変を察した俺は急いで最低限の荷物を鞄に放り込み武器を携え家から出た。この間も振動は収まることはなく地面を響かせ続けていた。家から出た後、すぐに敷地外へ出て周りの地形や海の様子を見る
そこには凄惨たる光景が広がりつつあった。地盤沈下や隆起による地形変動、そして海面上昇。既に都からけたたましく警報が鳴り響き、遠くの方では悲鳴が聞こえて、慣れ親しんだ穏やかな景色は様変わりしていた
「とりあえず、高いところに逃げねぇと」
海面が目の前にまで迫りつつある現状を見て、俺は高地へ避難しながら周りに逃げ遅れがいないか辺りを見渡す。幸いなことに、点々と建てられている住宅に住む人々は既に避難し始めていたのか、見渡す限りでは海面上昇から逃げている者だけだった
「ふぅ...ん、あれはっ」
逃げ遅れがいないと少し安堵したのも束の間、海面が迫ってきているにも関わらず逃げようともしない者が1人、いや1匹いた。その1匹はマリーが初めて動物を愛でることができたいつぞやのウサギとそっくりな動物だった
ウサギがいた場所は、幸いにも避難経路から少し逸れる程度のモノだった為、俺は急いでウサギのもとへ向かい辿り着く
「ほら、こんなところにいたら溺れるぞ、おいで」
「プゥ...」
手を差し伸べると、ウサギは特に警戒心を出すことはなく飛び移ってくれた。それを胸に抱き留め、再び避難に戻ろうと立ち上がり視線を正面に移すと─
一瞬、燃え上がる街並みが浮かんだ
「なんだ...いまの?」
瞬きしてしまえば、なにもなかったかのようにもとの、それでも混乱としている景色が広がっていた。俺は疑問を抱えつつも避難所に走っていった
──AnotherView──
アスターがウサギを抱えて、他の住民たちが集まっている避難場所に辿り着いた頃には、地形変動や海面上昇も一度落ち着いた。幸いにも百年前程に起こった第一次大水期よりも影響は小さかったが、まだ遅れてやってくる可能性を捨てきれないので油断ならない状況だった
「(家はもう水の中か...いや、じいちゃんが洪水対策をしてくれてたから心配ないか。まぁ地形変動でその入口は塞がれてそうだけどな)」
「キューキュー!」
「ん、そんな暴れてどうした?」
「キュー!」
「あっちになにかあるのか?」
「助けてくれぇ!!」
「なんだ?何人かこっちに走ってきてるぞ?」
アスターが暴れるウサギを宥めていると、同じく避難してきた男性が一定の方向を指さして声を上げた。その声を聞いたアスターはその男性が指した方向を凝視する。そこには数十体程の魔物から逃げる住民たちが助けを求めながらこっちに向かって来ていた
「なんで魔物が!?」
「(確かこの地区はエリナスっていう巨大魔獣を討伐した場所だってじいちゃんが言ってたな...それと関係あったりするか?)」
予想をたてるアスターだが、実際のところは半々といったところだ。当時、エリナスの出現と同時に大量の魔物も押し寄せていた。原因は出現の際に発生した複数の裂け目であり、それを通じてエリナスや魔物が押し寄せたと予測されている。その裂け目の殆どは閉じることに成功したものの、何ヶ所かは発見されずに残っていた。それが今回の災害で開かれてしまったという感じだ
「緊急信号弾は!?」
「もう撃ってある!」
「マレショーセ・ファントムはまだか!?」
「今は警察隊か特巡隊だろ!ソレもう再編されて違う役割になっただろうが!!」
「(信号弾を撃ってから時間は経ってないし、救援が来るのはまだ時間がかかりそうだな)...っおっさん!コレとこの子、預かっといてくれ!」
「えっ?いや別に構わねぇけどよ...って、おい兄ちゃん!どこ行くんだ!そっちは魔物どもが!」
逃げてくる住民を助けるため、こっちに迫り来る魔物を倒すため。鞄とウサギを手放したアスターは腰に携えた剣を抜き、避難場所を抜けて魔物が蔓延る場所へと駆ける
「...ああっ!」
「ママ!」
向かう途中、魔物から逃げている最中の人々の中から1人が足をもつらせ転んでしまった。人々は魔物から逃げるのに必死で気付かず、そばに居た子どもだけが気付き足を止めてしまっていた。この状況下で足を止めるのは自分の首を絞めるのと同じ。親子であろう2人の後ろから魔物の大群が襲いかかろうとする
「っこんの、ぶっ飛びやがれ!!」
魔物の持つ武器が親子に向かって振り下ろされる既のところで、アスターが数メートル離れたところで剣を横薙ぎし斬撃を飛ばす。親子に最も近かった数体の魔物はそれによって吹っ飛ばされた
「あれ、なんか違和感が...?」
「あ、あの...助けてくれてありがとうございます」
「いえっ、はやく子どもと一緒に逃げて!ここからは俺が護ってみせます!」
アスターは違和感を感じつつも、逃げていく親子を横目に大量の魔物と対峙する。そして剣と気持ちを持ち直して、アスターは魔物たちへ向かっていった
──アスターside──
「はぁ...はぁ...」
あれから魔物を斬っては飛ばし斬っては投げと繰り返して倒しているというのに、一向に減る気配がない。でも幸いにも原因は把握済み。大型の魔物の盾を足場に跳躍したとき、魔物が来た方向に崩れた地盤があって、その中のなんか怪しげな裂け目?みたいなのから魔物が湧いていたのを目視したからな
ソレをなんとか閉じることができれば解決する。でも問題は俺がそこまで行けるかって話だ。別に魔物と戦うだけなら簡単、日頃から鍛錬をしていたおかげか、なんか妙に身体が言う通りに動いてくれるからペースを上げれば進むことも出来る。ただ─
─はやく避難しろ!
─城内に魔物が侵入したぞ!
─なんとしても護りきれ!!
「っぁあ!さっきからなんなんだよ!!」
戦ってるうちに幻覚や幻聴が急激に増えていた。それによる頭痛や動揺で上手く前に進むことができない。あと、なんか違和感が凄いんだよ。前に進むために横薙ぎして魔物を吹っ飛ばすとき、もっと広い範囲で多くの魔物を飛ばしてる感覚があるのに、実際は数体が吹っ飛ばされるだけという事実に
─おぉ、流石は次期■■■■となるお方だ!
─茶化してないで集中して!■■たちが遠征から戻ってくるまでには片付けるよ!!
─はっ!
「ははっ、もしかして記憶喪失前の記憶か?」
いつかは思い出したらいいなとは思っちゃいたが、タイミングが悪すぎるだろうが!これじゃ戦いに集中しきれねぇ!だけど違和感の原因もわかってきたぞ。前の俺はどうやら<神の目>を使って魔物を圧倒していたみたいだ。記憶を失ったのが原因なのかわからないが、今の俺にはないけどな
「原因がわかっただけでも充分。今の俺は<神の目>なんか持たずにコイツら圧倒してやるよ」
そこから俺はペースを上げることが出来始めた。相も変わらず幻聴や幻覚─この場合は過去の俺の記憶か─が流れるけど無理やり抑え込む。幸いだったのが、本来魔物がいないところにいるみたいな幻覚を見せられるといったのがないっていうことだ。おかげで無駄に動揺しなくて済む
そうこうしているうちに、地盤沈下してできた大穴の中に裂け目がある場所に辿り着いた。もちろん道中の魔物は一掃してあるし、避難所に魔物が迫っていないのも確認済みだ
「さて、どうやって閉じようか...の前に、あたかも私が門番ですと言わんばかりの魔物がいるから、そいつ倒してから考えるか」
そう思い至った俺は、即座に大穴の中に飛び降りる。そしてその魔物...というより生命体?なんかコアっぽいやつを守るように破片?が舞ってるやつ。そんなヤツの明らかに弱点と思われるコア目掛けて、俺は剣を突き刺した
─■長、ホントですか...
─あぁ...■ー■■■は、死んだ
─巨大な龍が襲撃してきました!
─ちっ、一難去ってまた一難か!俺たちが龍を引き付けるから、その間に一般人を避難させて!
─はっ!
「うっ!?」
謎の生命体に致命傷を負わせ、ソイツからの破片で反撃を受けると同時に脳内にまた過去の記憶が断片的に流れる。しかも今度は無理に抑え込むことが出来ないほどの情報の量と質だった
─そっか...母さんたちは、逃げきれなかったんだ
─はい...
─義兄の次は家族、世界は残酷だね
─っ申し訳ございません
─なに謝ってるのさ。さぁ、龍はまだ近くを彷徨いていて何時また襲ってくるかわからない。討伐しなきゃね
─では私たちも
─先の遠征で精鋭たちの多くが死亡し団長も戦闘不能な今、これは勝ち目がないに等しい戦い。無駄に被害者を増やす訳にはいかない。俺だけでいい...大丈夫、俺は強いから
謎の生命体を倒したが、まだ裂け目は開いたままで魔物が複数出現してしまっている。それでも、俺は動かない...いや、動けない
─だからっ俺だけでいいって言ったのに...!
─...獅■騎士アスターに、■神のご加護があらんことを
─馬鹿野郎たちがっ
─グォオオッ!!
─うるせぇんだよ、魔龍がっ!!
魔物たちがこっちに向かって武器を構えて襲いかかろうとする。このままじゃやられてしまう。だが、雪崩込む記憶に身体が動かない
─もう大丈夫。ありがとう、みんなを護ってくれて
─ゆっくりと休むがいい
目の前までに迫りきた魔物が武器を振り下ろす前に、地形変動の余震なのかわからないが、地響きが鳴り響く。それに怯む魔物を苦しみながらも倒すが、揺れる足場にバランスを崩しまだ魔物がいるというのに跪いてしまう。
─侵食を治療します。あなたがいないと困りますので
─じゃあ、他のみんなも治療してっ...断るなら自害する
─ざ、斬新な脅しですね...最善は尽くしましょう
だが、残った魔物は地響きによって崩れた地盤に押し潰された。しかも幸運なことに裂け目もそれに巻き込まれた。だけど終わりじゃない。この大穴からはやく抜け出さないと俺までも地盤に潰される
─無事に処置が完了しました
─ありがとうございます
─ちなみに治療の過程で、あなたは──
─そう、ですか。じゃあ他に治療したみんなは?
─そこはご安心ください。貴方ほどに侵食されていた者はいませんでしたよ。もちろん治療済みです
「キュー!」
「お前、はっ...!」
足を震わせながらも立ち上がり、跳び上がろうと視線を上へ向ける。そこには崩れ落ちてくる地盤と共に、避難所で預けたウサギがこっちに向かって落ちてきた
どうしてウサギがこんなところに?という疑問を頭の隅において、俺は落ちてくるウサギに手を伸ばした。そして、ウサギに触れた瞬間─
視界が光に包まれた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「...あれ?」
気が付けば俺は、一面に水色の花が静かに咲き誇り、奥には月を模した巨大な石のある空間にいた
「お久しぶりです。第二の人生は楽しんでますか?」
そして、そこには一人の青年がいた
はい、ではオリキャラタグ登場です。最後にアスターがいた場所はどこなんでしょうね()
ちなみに、ハーレムとかはなしで頑張ってやっていきたい思ってます
あと自己解釈なんですが、第一次大水期と第二次大水期の間にも何度かの水害が起きたと思っています。じゃないと、第一次の時に色々変わりすぎなので...