アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話   作:月光舞詐称者姫

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第十三話 砕かれたハート

 あの後、スタークのトランスチームガンによる煙ワープにより、セバスとソリュシャンの館からニニャ達は姿を消した。そしてやってきたのは……

 

「ここは……アジトではないみたいですが……」

「倉庫、であるか……?」

 

 見覚えのない荷物の積まれた倉庫だった。

 

「お尋ね者の俺らのスポンサーになってくれるって物好きな方がいてな。その方が用意してくださったスイートルームさ。感謝しろよ?」

「スポンサー?それにスイートルーム?」

 

 スタークの物言いにニニャが首を傾げると

 

「用事は終わったのか?」

「「「「ッ!?」」」」

 

 高く積まれた荷物の上から声が響く。慌ててそっちの方向を向けば

 

「貴方は……!?」

 

 その姿を見てペテルは驚いた。全身を覆うフード付きの赤いローブ。姿を隠す仮面、そこから覗くオレンジの髪。そして、その胸元で輝くプレートは、最高位冒険者、アダマンタイト級の証。

 

「イビルアイ様……!?青の薔薇の冒険者がなぜここに!?」

 

 この国に僅かしかいないアダマンタイト級冒険者チーム。そんな存在の登場に漆黒の剣の面々がざわつく。

 

「私は、そこのコブラ男に伝言を届けにきただけだ。そいつのいう、スポンサーのな。」

「ウソだろ?そんなことってあるのか?」

 

 ルクルットはいち早く察してしまった。青の薔薇のメンバーの中でも最も実力のあるイビルアイにそんなことを頼めるのは、青の薔薇のリーダー、彼らが探す四つの暗黒剣の一振り、魔剣キリネイラムの所有者であるラキュースのみ。

 つまるところラキュースと懇意にしている人物が自分達のスポンサーになると言う人間になるのだ。そんな人間など、一人しかいない。

 

「あら、お揃いでしたのね。」

 

 倉庫の扉が開き、一人の少女が若い騎士を連れて入ってくる。最高級の生地の様に輝く金髪に、愛くるしく大きな瞳。頭のてっぺんに乗る王冠のようなアクセサリー。

 

「ら、ラナー殿下!?」

「王女殿下であるか!?」

「なぜここに!?」

 

 フルネームはラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。民を慈しみ黄金と慕われる慈愛の王女が、そこに居た。驚く面々を見てくすりと笑うと

 

「初めまして、漆黒の剣の皆さん。」

 

 そう言って微笑みかけるのだった。

 

 

「はぁあああああっ!」

「やぁあああああっ!」

「ハッ!まだまだ甘ぇな!」

 

 ラビットタンクフォームに変身したニニャの拳と、ラナーの付き人クライムの剣、それに相対する紫鎧の厳つい女戦士、青の薔薇のガガーランは、クライムの大上段からの振り下ろしを回避して蹴りで吹っ飛ばし、そのままニニャの拳を受け止める。

 

「そんなっ!?」

「重ぇ、だが武技使えば受け止められねぇほどじゃねぇな。なにより……!」

 

 ズンッ!とガガーランが音が出るほど地面を踏み締めて腕に力を込める

 

「テメェのパンチは腰が入ってねぇ!」

「ぐうっ!?」

 

 反撃のパンチは、ニニャを大きく後退させた。青の薔薇の前衛を務めるこの女傑とニニャとクライムが二人がかりで戦っているのは理由がある。

 

「おいおい、こんなんじゃナイトローグに勝つなんて夢のまた夢だぞ。」

 

 そう、打倒ナイトローグだ。ナイトローグはまず間違いなく、英雄級の人間が変身している。単なる英雄級の人間では太刀打ちできない存在が敵に出てきたのだ。それを打ち破る可能性があるのは、仮面ライダー、つまりニニャの成長にかかっている。

 あの倉庫でラナーに協力を求められた漆黒の剣の面々は、そのための修行としてガガーランと戦う姿を遠く離れた窓からスタークとラナーが眺めていた。

 

『あのトランスチームシステムは、ニニャの使うライダーシステムと大きく異なる点がある。それがライダーシステムは成長するってことだ。』

 

 ナイトローグ対策会議の場で、スタークは最初にそう語った。

 

『ハザードレベルは、ライダーのスペックを決める重要な数値だ。こいつが上がれば上がるほど強くなる。

 一方のナイトローグは、追加で肉体にネビュラガスを投入したりしない限り、ハザードレベルは上がらない。』

『因みに、そのナイトローグのハザードレベルはいくつなの?』

『3.5だな。直接図ったから間違いない。』

『じゃあ、今のニニャのハザードレベルは?』

『3.4だ。だが、3.5にならば勝てるなんて思うなよ。相手はプロのインファイター。オマケにお前とは隔絶した実力差がある。』

 

 スタークの忠告に、彼らの顔が陰る。

 

『3.6でもまだ厳しいな。3.7でやっとスペックの差は埋められる。3.8で、ようやく経験の差を補って互角。』

 

 そう言いながら、手元のボトルを弄ぶ。

 

『3.9だ。3.9までお前がハザードレベルを上げることができれば、勝てる確率は格段に上がる。』

 

 だが、そこまで上げるには圧倒的に猶予がない。なによりニニャの今のメンタルは揺らいでいる。最悪、自分が倒すという手もあるが……今後に向けたことを考えるとこの場でナイトローグを倒せるほど成長してもらわないと困る。

 その点ガガーランは良い指導役になる。筋骨隆々で見るからに豪胆な女傑だが、最高位冒険者の前衛というのはパワーだけでは務まらない。

 大槌を振り回す卓越した技量も兼ね備えているのだ。今のニニャには、仮面ライダーのあまりあるパワーを利用した格闘戦の技術を培っていって貰わなくてはならない。それができる師匠というのはいるだけでとても嬉しいものだ。

 

「ほら、まだまだ行くよ、童貞!」

「はいっ!ガガーラン様!」

 

 クライムのことを童貞と呼んで可愛がっているガガーランは、強くなりたいと願う彼にも一緒に稽古をつけている。だが、

 

「むぅ…………」

「おっ、愛しの従者が言い寄られてて不満か?」

「えっ?いえ、そういうわけではないのですけど……心配というか、クライムったら、頑張るのはいいんだけどいつも無茶して怪我をして来るから、また無茶をしないか気が気ではなくて……」

 

 照れる様に早口でそう言うラナーの視線は、100%クライムに向けられている。表情からも、彼を大切に思っていることは間違い無いだろう。だが

 

「(一瞬あの雌ゴリラに本気の殺意を飛ばしてやがった。こりゃあ単なる恋愛以上の感情を仕込んでるな?評判はアテにならないねぇ。)」

 

 民を慈しみ多くの政策を提示しながらも受け入れられたのは奴隷廃止を含めたほんの僅かなもの。慈悲はあるが有能とは言い切れない。それが一般的なラナーの評価だ。だが、スタークにはそれは仮面であり、その卓越した頭脳とあえてそんな立場を演じることで本性を隠す仮面に見えた。

 

「(さて……どうするか。)」

 

 一瞬、その画面の奥の本性を知りたい気持ちに駆られる。言葉巧みにそれを引き出すことなら簡単だ。だが、今は他の問題(ニニャ)がある。それどころではないだろう。

 

「この短期間でハザードレベル3.8に達するには修行だけじゃ足りない。爆発的な意志の力が必要だ。だが……」

 

 昨日秘密裏に会ったセバスから聞いた話を思い出す。そして考え込み……

 

「賭けに、なるか。」

 

 訓練が佳境に近づいてるのを見て、スタークはその場を離れ、ニニャの元へ向かうのだった。

 

 

「おし、今日の鍛錬はここまでだな。」

「はぁっ……はあっ……ありがとう……ございます。」

「気にすんな。魔法詠唱者がよくついて来たもんだ。」

「でも……このままじゃ……」

 

 変身を解除して肩で息をするニニャに、ガガーランは顔を顰める。

 

「気持ちがわかるなんて軽率なことは言えねぇけどよ、あんまり思い詰めてるのもよくねぇぞ。」

「そう、ですね…………。」

「童貞、お前もだ。ちと肩肘張りすぎすぎだな。」

「はいっ!気をつけます!」

 

 疲れてるにも関わらず直立不動の姿勢になって言うクライムにも、そういうところだよとため息をついたガガーランは、そのままその場を去っていく。

 

「私も、そろそろ巡回に行って来ます。」

 

 クライムもまたその場を後にして、ここで休むニニャだけが訓練の場に残って居た。

 

「よう、お疲れさん。」

「スタークさん……」

 

 そこにやって来たスタークは、ニニャに提案する

 

「セバスから連絡があったんだが、お前さんの姉が目を覚ましたらしい。」

「ッ!!」

「どうだ?休憩がてら会いに行かないか?」

 

 その提案に、ニニャはあどけなさの残る顔を輝かせて食いついた。

 

「行きます!」

 

 それが、スタークの仕掛けた試練であることも知らずに。

 

 

「さてと、それじゃあ行くか。」

「それはいいんですけど……」

 

 王都の通り、そこで

 

「どうしてこんな格好なんですかぁああああ!?」

 

 薄い水色のドレスに身を包んだニニャが悲鳴をあげていた。

 

「おいおい気をつけてくれよ?今のお前は東方の離れた地の貴族イスルギ男爵の一人娘、ミソラ・イスルギなんだから。」

「その設定初耳なんですけど!?」

 

 いつものそばかすを化粧で消し、短く切り揃えられた髪の上からウィッグがつけられ、まるで別人だ。その隣で岩動総一の姿に擬態し、この街の礼服風の衣装をおしゃれに着こなした、新興家族のソーイチ・イスルギ男爵に変装したエボルトがパイプを片手にそう言う。

 

「あれ、言ってなかったっけ?」

「変装するとしか聞いてませんよ!?」

 

 スタークが呼ぶや否や出て来たメイドによってあっという間にこんな姿にされてしまったのだ。

 

「仕方ないだろ?今から行くのはソリュシャン嬢の屋敷だ。それっぽい格好じゃねぇとな。王国警備隊の見張りがある以上、迂闊に出歩くわけには行かないだろ?」

「それはそうですけど、それならもっと使用人とか……」

「それはラナー王女の御付きに言ってくれよ。そいつらのチョイスなんだから。」

 

 メイドと言っても、大半が社会勉強に来た貴族の娘などが主だ。平民を見下す者も居れば、ラナーのように慈しみを持って接する人間もいる。

 つまりは年頃の娘だ。そして、彼女達からしてみれば、飄々としていながらどこかワイルドな雰囲気を纏う中年と、普段男物の格好をしてばかりだがあどけなさの残る可愛らしい顔立ちの少女など、最高の着せ替え人形(おもちゃ)でしかなかった。

 そんな彼らの趣味と、社会勉強とは言え街をよく知らない彼女達の貴族的なファッションセンスがベストマッチ!した結果出来上がったのが、このダンディな貴族とその娘である。

 

「なんだか足元がスースーします……ー

「それ女が言うの初めて聞いたぜ。ま、普段男装して気を張ってるんだ、偶にはそう言うのを楽しめよ。」

「そうは言っても……というか、ブラッドスタークは呪いの鎧っていう設定はどこに行ったんですか……!?」

「んん?そう言えばそんなことも言ってたな。おかげでこの姿でコソコソ行動出来るわけだ、便利だろぉ?」

 

 ドヤ顔をするスターク否、惣一に騙されていた気持ちとおかげで助かっている気持ちを半々にしながら街を歩き、セバスの居る館へと赴く。

 ドアをリズミカルにノックすると

 

「お待ちしておりました。」

 

 セバスがそう言ってドアを開け、二人を中に招き入れる。

 

「申し訳ありません、客間はまだ修復中でして……」

「いえ、お構いなく。それで、姉さんは……」

 

 心配そうに本題に入るニニャに、セバスは言う。

 

「傷は治り、目も覚ましました。何もしないというのも落ち着かないと言っていたので、今はこの屋敷でメイドの真似事をさせております。」

「そうなんですね。よかった……」

 

 姉の元気そうな様子に胸を撫で下ろす。その様子をセバスは見て、ちらりと惣一に目配せをする。それに対して惣一が肩をすくめると、彼の視線が若干険しくなった。

 

「……体の傷は治りましたが、あの娼館で刻みつけられたトラウマ。つまり心の傷は癒えていないようです。接する時はくれぐれも、お気をつけて。」

「?わかり…ました……」

 

 なぜ、自分にそんな忠告をするのか。そんな疑問が一瞬頭をよぎるが,ウィッグを取り意を決してニニャは姉、ツアレの居る部屋のドアをノックした。

 

「姉さん!久しぶ……」

「ヒッ!?」

「…………え?」

 

 姉との再会に輝かせていた表情は、自分に対して拒絶の意を見せる姿に固まった。

 

「ね、姉さん!?僕だよ!セシー……」

「落ち着いてください、彼女を怖がらせてしまいます。」

 

 慌てて捲し立てながら近づこうとするのを、セバスが前に割り込んで制した。そうするとツアレは、怯えたようにセバスの背中に隠れてしまう。

 

「姉さん、その…………」

「…………ごめなさい。」

 

 絞り出すような、声だった。

 

「あの貴族の屋敷に連れてこられた頃、言われたの。逃げようなんて思うなよ。そうしたらお前の妹に"代わり"になってもらうぞって。」

「ッ!!」

 

 その言葉で察してしまった。姉がどんな仕打ちに会って来たのか。

 

「"躾"の度に、何度も何度も、それを言われたの。だからかしら、せっかく会えるって嬉しかったのに、いざ会うと辛い思い出が溢れて来て……」

「(姉妹だねぇ。)」

 

 部屋の外から会話を聞いていたエボルトは、その会話を聞いてそう考える。ニニャは以前、姉のことを想おうとすると自分や貴族に対する怒りが湧いて来てまっすぐな気持ちで見れないといっていた。

 姉も同じだったのだ。始まりはきっと、妹を守りたという純粋な思いだったのだろう。しかし、それと辛い記憶が紐づいて、妹のことを思うことすら辛いほどに、彼女の心は砕かれていた。

 

「今は……あなたの顔を見るのも、辛いの。」

「〜〜〜ッ!!」

 

 その言葉に、固く拳を握り、そのままニニャは、屋敷を飛び出して行ってしまった。

 

「……話していたのですよね?」

「あいつ自身が原因だとは、一言も言ってないがな。」

「私は確かに伝えるように言ったはずですが……」

 

 こちらを睨むセバスに対し悪いな、と悪びれもせずに肩をすくめる。

 

「こうするのが、アイツに一番効果的だと思ったんだよ。」

「効果的……ですか。」

 

 仲間へとも、弟子へ向けるとも思えない言葉に、セバスは問い返す。

 

「ナイトローグとの決戦までに、アイツには格段に成長してもらわないといけない。」

「件の、ハザードレベルのことですね?」

 

 そうだ。と頷いて惣一は言う。

 

「そのためには、爆発的な感情がいる。俺は気づいたのさ。怒り、悲しみ、絶望。そう言った感情は、ハザードレベルを上げるのに邪魔になる物じゃない。」

 

 起爆剤なんだよと、そう言う惣一の笑みは、まるで獲物を吟味する蛇のようだった。

 

「そう言う感情が強ければ強いほど、そう言う気持ちを乗り越えて誰かを守りたいと思った時に強い感情になる。

 絶望を昇華させるのさ。それでニニャのハザードレベルを引き上げる。」

「……あまり負担をかけ過ぎれば、彼女が潰れてしまうかもしれません。」

「だから?」

 

 その忠告に惣一は笑みを消さないままそう返した。

 

「俺に言わせれば、今のニニャは足りないのさ。仮面ライダーになる覚悟も、いろいろなものを乗り越えて戦う勇気も。

 そんなままで潰れちまうのなら、所詮それまでってことさ。」

 

 そうなったら次の候補を探すよ、と言って惣一は部屋を出ていく。

 

「……どこへ行かれるのですか?」

「ニニャの様子を見てくる。またナイトローグが出てこないとも限らないからな。」

 

 チャオ♪という言葉を残して、惣一はそのまま部屋から姿を消した。

 

「あの人は……なんなんですか?」

「そうですね……私の主が言うには油断ならない敵,でしょう。」

 

 ですが、私が考えるのなら……と、ツアレの問いにセバスはそちらを見ないまま返す。

 

「蛇ですね。世界すら飲み込む狡猾で強大な蛇。」

 

 その目的は、自分の腹を満たすこと。それさえ果たせれば、過程はどうでもいい。そんな存在だと。




ツアレは妹のことを思い出すと辛い記憶も芋蔓式に出て来てしまうから思い出さないようにしてるそうですね。

本編では救いになったその設定に容赦なく牙を剥いてもらう回でした

それとエボルトもしっかり悪ですよと。別にニニャに仲間意識が沸いてるとかは無いです、今の所は。

ラナー様に関しては今後の展開に悩んでおります。あの人、頭はいいけど力はないから『お前の言ってることは分かるけど気に入らんから死ね』されるとなすすべ無いんですよね
自分の目的さえ果たせればそれでよしな策謀家ではあるし、人間自体を見下してるところはあるんですけど、なんというか

 種族人間なのに頭が他の人たちとかけ離れすぎてて幼い頃からそんな状態ならそりゃ歪むし人類に失望もするわって言う納得と、失望して何もしてこなかったからこその姿だよなと言う登場が出て来て、ナザリックの連中ほど嫌いになれないんですよね。原作者様は本当にキャラクターを作るのが上手でいらっしゃる。
 ただしデミウルゴス、テメーはダメだ。

スタークはどうする?※注意!このアンケートの結果でストーリーが分岐します 分岐によっては取り返しのつかない結末に至るのでご注意くだ

  • ニニャとンフィーレアだけを確実に逃す
  • 一か八か、全員を逃す
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