アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
「なるほど、それで俺のところに来たわけか。」
王宮の一室、そこには痩せればそれなりに整った顔になるであろう太った金髪の青年と、その隣に座る茶髪の背の高い貴族が、ラナーと惣一を前に対峙していた。方や、この王国の第二王子であるザナック、方や貴族派閥をまとめ上げ、汚職ばかりの貴族達をうまいことコントロールして王国が破綻しないように回すこの王国のフィクサー、大家族レエブン侯である。
そんな彼らと、ついにこの国の病巣である八本指を落とすため、ラナーはクライムが外回りに出かけている時に密談を行なっているのだ。
「八本指の麻薬部門、当然知っているとも。我々の兄君にも、金を落としてるらしいからな。」
「随分と深いんだな。この国の闇ってのは。」
どうせならコーヒーがあればいいんだが……とぼやきながら紅茶を啜る惣一。コーヒーの浸透していない王国の者達は首を傾げるが、この世で一番魅力的な飲み物と言って誤魔化す。
「それで、どんな奴なんだ?その麻薬部門の長ってのは。」
「名前はヒルマ・シュグネウスとか言うらしい。聞いた話だと元高級娼婦だとか。」
高級娼婦、王侯貴族などを相手する隔絶した美貌と性の技術を持った最高級の女。当然、ある程度の教養も備えてるはいえ
「そんな女が成り上がったのか?」
「どうにも、金勘定に関する知識があったそうだぞ?それに、数年前は兄上のお気に入りだった女だ。」
「なるほど、お兄様のコネクションを使って上に上り詰めたのですね……」
ラナーは落ち込むようにそう言う。腹違いで、取り巻きの貴族に囲まれ悪い話がよく聞こえてくるとはいえ、兄は兄だ。ショックを受けているようである。
そんな様子を、ザナックは冷ややかな瞳で見据えていた。
「ま、ある程度はこっちで情報を掴んでるわけだ。……お前には負けるがな。」
化物。ザナックとレエブンはラナーをそう呼んで恐れている。こうして今茶会の場を設けているのも、王宮のこの部屋から滅多に出歩かないラナーが、自分の周囲のメイドの噂話などからレエブンの王都を陰で支える功労者という立場を言い当ててみせたからだ。
「しかし、コイツの屋敷も含めて計八ヶ所を抑えるとなれば、兵力がいる。」
「我々に求めているのはそれですか……」
レエブンは暫く考え込み、口を開いた。
「では胸筋を開く前に、
そう提案すると、ラナーはその表情を。見るものの心を穏やかにするような柔和な笑みを崩す。
「おぉ、まさに幼い頃に見た貴方そっくりです!」
「(へぇ、なるほどねぇ……)」
戦慄しながらも笑みを浮かべてそういうレエブン侯、その言葉に、惣一の姿をしたエボルトはラナーを険しい表情で見据えていた。
「てっきり失われたものとばかり思っていましたが……仮面をかぶっておられたのですね。」
「えぇ、だって私は満たされていたんです。」
クライムのことか、とその恍惚とした表情に一同は当たりをつける。
「お熱いねぇ。単なる従者じゃないとは思ってたが、これほどとは。」
「あら、幻滅しましたか?」
そう言って顔を向けてくるラナーを気が早いねぇと制して
「つまりあんたは、クライムと結ばれればそれで良いわけだ。」
「はい。そうですね……ついでに首輪をつけて、どこへも行かないようにできれば最高です。」
「……愛してるん、だよな?」
そんなコメントに、ザナックがそう訝しむと
「えぇ、愛していますとも。あの犬のように縋り付いてくる姿も目も、その全てが大好きなのです。」
「………………悪いな、さっぱりわからん。」
恍惚とした表情で言うラナーの姿に冷や汗をかくザナック。その様子に、理解してもらおうとは思わないとラナーは語る。
「ただ分かってくれればそれでいいのです。私が、彼を愛していると。」
その笑顔に二人が戦慄する一方で、惣一の表情は,若干異なっていた。
その後、レエブン侯の息子とラナーの婚約の話なども話され、会談は有意義な場となった。
「それで、どうでしたか?貴方の知りたがっていた、本当の私は。」
「なるはど、なんであの場所に俺を呼んだのか分からなかったがそう言うわけか。」
エボルトがラナーの隠している側面を知りたがっていることまで見抜いていたのだ.
だからこそザナック達にはブラッドスターク自身を見せ札に、スタークこと惣一には、ラナーとしての本性を見せる形で踏み入ろうとしたのだ。
「凄まじいな。アイツらが化け物というのもよくわかる。」
おそらく洞察力など"答えを導き出す"力が強いのだろう。その気になれば完全犯罪の方法すら弾き出してしまえそうだ.いや、クライムを馬鹿にするような相手にすでに"制裁"を加えているかもしれない。
「異邦の英雄といえど、やはり私は恐ろしいですか。」
どこか虚しそうに言うラナー。
「いやまったく?凄いとは思うが別に怖くもなんともないぞ。」
「はい?」
だからこそ、直後の惣一のこの言葉に思わず固まってしまった。
「別に強がらなくとも……」
そう言いながら振り返るラナーの脳天に
「ほら、怖くないだろう。」
トランスチームガンが突きつけられていた。引き金を引けば、即座に放たれた弾丸がラナーの命を奪うだろう。
「冗談はよしてください。そんなことをすれば漆黒の剣の方々は……」
「こいつがあればどこへだって逃げられる。それに、お前も知ってるだろ?アイツらの命は俺にとっての人質にならない。お前のメイドがお前への人質にならないようにな。」
「……私が声を上げれば」
「衛兵が飛んでくる。そして見ることになるのはお前の遺体だろうな。ついでに言うと、その衛兵に俺が抑えられるのか?」
「…………………」
ラナーは冷や汗を流す。いきなり命の握られた状況に陥ってしまった.しかも自分の本性を曝け出す為、人払いをしたその先で。
「…………試しているのですか?私の頭脳を。」
「さて、どうだろうな?」
ラナーからの問いに惣一は肩をすくめる。
「……この場で私を殺せば、王国での活動が難しくなりボトルの回収に支障をきたすのでは?私を殺すことに見合うリターンがあるとは、とても思えません。」
「確かに、そうかもしれないな。」
その程度のことを導き出せればいいのか。テストはこれで終わりかと動こうとしたが
「だからこいつは気分だ。」
「は?」
トランスチームガンの銃口は下がらない。
「お前のその厄介な頭脳は、そのリスクをとってここで消しておいた方がいいかもしれない.将来俺とアンタが敵対するかもしれない。そんな気がするんでな。」
「気がする……ですって?そんな……」
「そうだ、そんな下らないその場の気分で、俺はお前を殺すことができる。そしてアンタは、頭はいいがそれを全くと言っていいほど使ってない。だから、アンタの理屈が通じない相手に命を狙われた時、何も出来ないのさ。」
惣一の言葉にラナーは冷や汗を流す。本当にこの男なら今ここでラナーの命を奪いかねない。彼女の卓越した洞察力がエボルトのそんな怪物的な本性を導き出していた。
「…………何が、望みですか?」
「ん?」
「何が望みなのですか?何か、私にやらせたいことがあるのでしょう?無ければその気分になった時点で私を殺しているはず」
その言葉に、惣一はニヤリと笑みを浮かべてトランスチームガンにボトルをセットする
ブラッドスタークへと変身を遂げた惣一は、今一度トランスチームガンの銃口をラナーへ向ける。そして言った
「俺に媚びてみろ。」
「はい?」
つまりは、命乞いをして見せろと、その言葉にラナーは困惑した。
「お前は愛しのクライム君と結ばれる為に色々考えてきたんだろ?その頭脳を活かして、俺にお前を生かしてもいいと思わせる条件を提示して見せろ。」
その言葉にごくりと唾を飲み込む。出来なければ、ここで死ぬ。クライムと結ばれるという夢を叶えられないまま。それは、嫌だ.
「ザナックお兄様が王になれば、王国でのアイテムの回収が捗るのでは?」
「王国だけか?随分と小さいな。」
スタークはラナーの提案を一蹴する。フルボトルだけで60本、その他のアイテムも多数。それが全て王国に散らばってるとはラナーも思ってない。仮面ライダーの噂が広がれば、他の国もアイテムを集めたりするだろう。人材マニアで有名な帝国の皇帝ジルクニフなどは、まず間違いなくアイテムを交渉材料にスタークやニニャに接触を図るはずだ。
そして、王国と深くつながれば、それはむしろ他国のアイテムを回収する際の足枷になる。ラナーの立場を、スタークは求めていない。
「私の名声を使えば、冒険者や国民を集められますよ。仮面ライダーになりうる人材を探すにはうってつけでは?」
「ニニャで間に合ってる。それに今すぐ仮面ライダーを完成させなきゃ行けないわけでもない。」
そんなことしなくても、一期一会に期待するさ。というスタークに歯噛みする。
「それならば王国の財宝の一部を報酬として差し出すのはどうでしょう?仮面ライダーのアイテムに勝るとも劣らない貴重な品も……」
「そう来たか。だが悪いな。それは本当に興味がない。」
目の前の男は、仮面ライダーの成長を求めてる。それ以外にも求めているものはあるのだろう。だが、それがわからない。
「私の頭脳を提供すると言うのは?あなたでは思いつかないような策も……」
「今この状況を切り抜ける方法も思いつかないのにか?説得力に欠けるな。」
ぐうの音も出ない正論だ。しかもこれを言うと言うことは、別にラナーの頭脳を必ずしも必要としてるわけじゃないということにもなる。そうなるとますますラナーに何を求めてるのかが理解できなかった。
ここに来てようやく気づく。自分はこの目の前の男の本性を、見抜けていなかったのだと。
「さて、そろそろ終わりにするか。」
トランスチームガンのトリガーに指がかかる。スタークの求めるものが何か、それを考えれば考えるほど、失敗すれば死ぬ。そんな思考が頭をよぎる。ここで死ぬ、クライムと結ばれるという、人生でたった一つ抱けた目標と言える物を果たせないまま。そんなの
「い、嫌……」
恐怖が湧いてくる。生まれて初めての状況に、得意の思考すらまともに回らなくなる。死にたくないと言う思いで思考が満たされていく。結果
「お……お願いします!なんでもします!私を使いたいことがあるのでしょう!?力になります!働きます!あなたに忠誠を誓います!だから、だからどうか……、命だけは……命だけは!助けてください!!」
自然と彼女は、スタークの前にひれ伏していた。足元に縋りついて、命だけは助けてくれと、こんなところで死にたくないと嘆願する。
「ハッハッハッ!ここに来て命乞いか。やっぱり人間はいいねぇ。」
「やっと……やっと見つけられたんです!あの子が居たから私は生きたいって思えたんです!だからお願いです!私とあの子を引き離さないでください!!」
「そんなに大事か?あのガキが。」
だがダメだ、と笑ったとスタークはそう言ってスティングヴァイパーを伸ばす。
「コイツの毒でお前の肉体をバラバラに分解して消滅させてやろう。八本指の犯行声明を残して……裏娼館あたりの人間の顔を変えて惨殺すれば王国での活動が妨げられることもなくなる。」
「ヒッ……!?」
詳細に語られる内容が想像できてしまう自身の頭の良さを恨むことになる。逃げられない死が迫ることに震えて、今まで出したこともないような声が出てしまった。
「い、嫌……嫌ぁッ!!誰か、誰か助けて!!クライム!!ラキュース!!お父様ぁ!?」
目から大粒の涙を流し、最愛の人物だけでなく普段見下して利用価値のある人間程度にしか思ってない人間にまで助けを求める。だがスタークに本性を晒す為、人払いをしたのは他でもない彼女だ。これだけ来ないところを見るとスターク自身も何かしらの工作をしていたのかもしれない。
「チャオ。」
「嫌ぁああああああ!?」
まるで別れる時のような言葉と共に伸びるスティングヴァイパーが、眼前にまで迫って……ラナーの鼻筋に触れたところで止まった。
「あぇ……?」
その瞬間、腰が抜けてその場にへたり込む。それだけじゃない。恐怖と緊張。いままでおおよそしたことのない感情に神経が誤作動を起こし、下半身の踏ん張りが効かなくなる。しょわぁという音と湿気。気づけばラナーは、へたり込んだその高級そうな絨毯の上に"水たまり"を作り、自身の衣服を濡らしていた。
「クッ……クククッ……フフッ……ハッハッハッ!フゥハッハッハッハァッッ!」
そして、その光景に大爆笑するスターク。
「ハッハッハッハ!フハッ!げほぉぇつ」
「そ、そこまで笑わなくてもいいじゃないですか!というか、やっぱり試していたんですね!?」
散々笑った果てにむせたスタークを見て、頭の回転が戻ってきたラナーは顔を真っ赤にして叫ぶ。
「いや悪い悪い。お前なんて俺が知ってる奴らに比べたらしょんべん臭いガキだと思ってたんだがまさか文字通りの意味になるとは……ククッ」
「しょんっ!?」
王宮内ではまず聞かない下品な言葉でプライドを刺激され泣き腫らした後の顔を怒りに染めて立ち上がる。
「誰がガキですか!私は……」
「そりゃ、頭はいい。だがそれだけだ。あんなふうに命を握られた局面でお前に何ができる?その結果がコレじゃないか。」
ソファーに腰掛け足を組んでそう言うスターク。それにラナーは何も言い返せなくなる。
「それは……私は……戦うなんて……」
「そうだな。そんなことしたこともないだろう。だが、コレがあれば話は違っていたんじゃないか?」
そう言ってヒラヒラと手元のトランスチームガンを掲げてみせる。これのワープ機能はすでに彼女の前で使って見せている。それに何度もニニャ達の窮地を救った実績もあるのだ。このアイテムがあれば、スタークに追い詰められる前に逃げるとも不可能では無かっただろう。だが
「たらればの話です……そんな貴重なマジックアイテム、持ってるわけが無いじゃないですか。」
「なら作ればいいじゃねぇか。」
「簡単に言ってくれますね、そんなことできるわけが……」
そう言うラナーに、フッと笑ってスタークは返す
「コイツは、魔法も
「…………なんですって?」
にわかには信じられない、だがスタークの声色は嘘を言ってる雰囲気ではなかった。
「それに、アンタが大したことないって理由は他にもある。」
「聞きましょう。」
挑発するようなスタークの物言いにラナーは乗っかった。
「お前が本気でクライムと結ばれたいのなら、お前が王になれば良かったのさ。」
「……本気で言ってるんですか?出来るわけが……」
「いいや、やれたはずだ。貴族の心身を掌握して派閥を作り、他の派閥を追い落として父親の周りを自分にとって都合のいいことを吹き込む奴で固めるなり、暗殺して王位を掠め取るなりすれば良かったじゃねぇか。」
お前にはそれができたはずだと言うスタークに、彼女は首を横に振る。
「嫌ですよ、なんでそんな」
「めんどくさいことをしなくちゃならないんだ、違うか?」
その後の言葉を言い当てられて止まる。
「ついでにもう一つ当てようか。お前、クライム以外の奴なんてどうでもいいと思ってるだろ?もっと言えば嫌ってすらいる。」
だから先程のようなことをしようとは思わなかった。幅高を形成するためにコミュニケーションを取ろうとせず、人間関係は強力な力を持つ青の薔薇の面々や大切なクライム、自分を庇護する環境を提供してくれる父親とその周りの人間程度。
「クライムと結ばれたいとか言っておきながら、王女と従者としてこうして暮らしてる今で満足して、それ以上を求めなかった。腹を満たしてヘソ天でグースカ寝てる怪物。そんな奴が怖いかよ。」
そう言うエボルトが思い出すのは、かつて自分が利用した政治家や策謀家達だ。彼らは己の野心を満たすためにこちらを利用するどころか喰らい尽くさんという野心と欲望があった。
彼らに比べればラナーなど可愛いものだ。頭の回転で言えば彼らよりも上だろうが、策謀の深さはまだまだ甘い。今までクライムを馬鹿にしたメイドを抹殺するためだとか、そう言うささやかな欲を満たすためにしかその頭脳を使っていない。ここから経験を積んでいけば彼らを超える怪物になるかもしれないが、先ほども言った通り彼女は満腹の怪物だ。
今回たまたまクライムが傷つけられて機嫌が悪いから八本指を潰す計画に乗り出したにすぎない彼女は、これ以上自分から策謀を積み重ねようと言う気概が足りていない。
「……だって、仕方がないじゃないですか。誰も、私の頭についていけないんですもの。」
拗ねるように、頬を膨らませてラナーはそう答える。
「生まれた時から、自分と同じだと思える者のいない孤独がどれほどのものか、貴方にはわからないでしょう?人間なんて、私よりも下等で、汚い何かにしか見えなかった。世界が空虚で、食事も喉を通らなかった時があります。」
この本性を知る人は、皆んなバケモノと言うんです。とラナーは続ける。
「笑えるでしょう?彼らから見ても,私は同じ人間じゃないんです。そんな奴らを、どうして好きにれるんですか?」
濁ったようなその目は、多くの"人"を見てきた。馬鹿な人も、賢い人も。だが、そのどちらにもラナーの居場所はありはしなかった。
「別に好きになれとは言わないさ。ただ、俺はこう思うんだよ。『もったいない』ってな。」
「それは、どういう……?」
その言葉に、本日何度目かも分からない困惑を体験したラナーは首をかしげた。
「言葉のままさ。確かに人間は汚い。欲深くて、愚かで、醜悪と言ってもいい。」
変わり果てた300年後の世界も、仮面ライダーとの戦いに明け暮れていたあの日々も、この世界もそれは変わらない。いつだって国や世界を滅ぼそうとするのは、人の欲望だ。
「だが、そんな人間の中から生まれるのさ。そう言って高を括っている俺を、あっと驚かせる逸材がな。」
「……クライム。」
ラナーは、スタークの言葉に思わずつぶやく。そうだ、自分と似たような、この世界に絶望しきった目。それを見て、路上で生活する孤児だった彼を拾った時、彼の目に光が宿った。
自分という存在に対する、強い畏敬にも似た感情。それを見た瞬間、ラナーの色褪せた世界にもまた、クライムという色が宿ったのだ。その顔に、スタークはパチンと指を弾いて笑う
「ビンゴ。居るじゃないのお前にも。そいつにだけ期待して、他のやつに碌な期待をしちゃいない。」
「でも、クライム以外にそんな人……」
そう言うラナーに対して、チッチッチ、と指を左右に振りながら舌を鳴らしてスタークは再びNOを突きつける。
「そりゃお前、第一印象で見限って積極的に関わろうとしないだろ?そんなんじゃ人の輝きを見るなんて夢のまた夢だ。言っただろう?大したことないとみくびってる奴ほど、あっと驚く活躍を見せつけるもんだ」
彼の知る、かつてのナイトローグの変身者などまさにそれだろう。彼にとって、最初は利用しやすい野心の強い小悪党でしかなかった。だからまさか、最終的に仮面ライダー達を圧倒していた自分を追い詰める起死回生逆転の一手を打ち込んでくる鬼札になろうとは思いもしなかった。
「人は感情豊かで、成長する。俺たちの予想なんて飛び越えて。だから人間は面白い!」
両手を広げ、エボルトは賛美する。桐生戦兎、万丈龍我、猿渡一海に氷室幻徳、そして内海成彰。かつてあの世界で仮面ライダーと呼ばれた者たちで、誰一人エボルトの予想通りになったものなど居ない。だから人間は面白いのだ、見限るなんて勿体無いと。
「クライムだけで満たされてないで、もっと色んな人間を味わってみろ、世界が変わるぞ?」
「味わう……ですか。まるで本当の怪物ですね。」
「勘違いするなよ。」
自嘲するラナーに、さらにスタークは言う。
「俺にとってはお前も変わらない。化け物だなんて言うには、お前自身も大したことが無さすぎる。」
だからもっと曝け出せ、ぶつかり合えと。
「そうすれば必ず現れるさ。お前の予想を超える反応をする、面白い人間が。」
「…………そう、でしょうか?」
「あぁその通りさ。自信を持て、お前は人間だ。ちっぽけで無力で、俺みたいなのが現れれば震えることしかできないな。」
その言葉に、少しラナーは考え込む。
「
そして、それを指して問いかけた。すると待ってましたと言わんばかりにスタークはとあるものを取り出す。
「知りたいか?ならプレゼントだ。」
「これは……冊子ですか?」
「教科書だ。この世界にはまだ無いもの、科学のな。」
科学?と首を傾げるラナー。開いてみろと、スタークに促されページをめくれば、驚かされることになる
「これは……」
難解な数式や法則、その説明。この世のものとは思えないそれは一瞬見ただけで八本指の暗号を看破するラナーにも理解の外だった。
エボルトの中には、一度乗り移ることになった天才物理学者、桐生戦兎の記憶と知識がある。全て完全に把握できているわけでは無いが、そこにあることを書き出す程度のことならば造作もない。
そうして作られたそれを理解できるものは居ないと考えていたが、ここにその論理を理解できるかもしれない人間を見つけることになった。
「コイツは、その中にある知識で作られてる。お前の頭なら、コイツを理解できるはずだ。」
「あなたの目的は……これだったのですか?」
ラナーの問いに、スタークは頷く。
「コイツを使って力を手に入れて見せろ。出来なかったらまぁ、その時はそれまでってことだ。」
「……もし、貴方の予想を超えるものを、私が作り上げたら?」
そのラナーの問いに、スタークはフッと笑い声を上げて言う。
「それでこそ人間だ。そうは思わないか?」
「……いいですね。乗りました。」
教科書を閉じ、ラナーは言う
「必ず、貴方を驚かせて見せますよ。」
「期待してるぜ。まぁその前に……」
床の"水たまり"に顔を向けて言う。
「身体を洗って掃除だな。」
「ふんっ!」
「うわっ!?やめろばっちぃ!!」
顔を真っ赤にしたラナーが、濡れたスカートでスタークを蹴り付ければ、そんな悲鳴を上げてスタークはラナーから逃げ惑うことになった。
ラナー様、エボルトの殺意を正面から浴びて失禁するの巻。自分は彼女を満腹で動こうとしない怪物として解釈しております。
この解釈に色々あるとは思いますが『怪物的な頭脳を持つけど経験自体は足りていない』というざっくりした評価に納得していただければ幸いです。エボルトおじさんの前では化け物と呼ばれようと結局人間というお話しですので
自分から彼女の琴線に触れない限り積極的に動こうとしない。人間なんてどうでもいい。そんな彼女がエボルトの人間観に触れ、科学をしることでどう変化するのか、今後の展開にご期待ください。
スタークはどうする?※注意!このアンケートの結果でストーリーが分岐します 分岐によっては取り返しのつかない結末に至るのでご注意くだ
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ニニャとンフィーレアだけを確実に逃す
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一か八か、全員を逃す