アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
ラナーとエボルトの密談の後日
「いよいよ、であるな。」
「あぁ、来ちまったな……」
ダインとルクルット、公的には指名手配犯となってしまっている彼らを含めた漆黒の剣の面々は、隠れ家にしている王宮内の倉庫で、クライム達とひと足先に作戦会議に及んでいた。
「作戦の日を早めてしまい、申し訳ありません……」
事の発端は街を巡回中のクライムが、家を破壊され法外な金を要求された報復に例の娼館へと殴り込むところに出くわし、王国最強と名高い戦士長ガゼフのライバル、ブレインと共にそれに加わった事だ。
結果、重傷を負いながらもクライムは六腕の一人、幻魔の異名を持つサキュロントを追い詰め、ブレインがそれを引き継ぐ形で倒し、八本指の奴隷部門を取り仕切る男、コッコドールを捕らえることに成功した事にある。
結果だけ見れば大戦果ではあるが、ここまで来れば八本指も本腰を入れてくる。こちらの拠点がバレたことなどを加味し、迎撃の準備を整えながら闇に潜ろうとするだろう。そうなる前に手を打たねばならない。
「皆さんには、このポイントを担当して貰おうと思います。」
ラナーがそう言って提示したのは、
「ここって……」
「はい、あの子が残した場所、私たちが襲撃しようと狙っていた八本指の拠点の一つです。漆黒の剣の皆さんには、クライムと一緒にここを制圧して貰いたいんです。」
「いいのか?お姫さん。」
その要請に、問いを投げかけたのはスタークだ。
「アンタの予想じゃ、そこは六腕が潜んでる可能性が高いんじゃなかったか?」
何故かはあえて伏せる。青の薔薇には優れた
目的は、セバスへの報復。であれば、他の六腕が出てくることは間違いない。その言葉に一同は顔を強張らせるが
「えぇ、その方が都合がいいでしょう。」
そう言って笑う姿に、全くコイツはと苦笑する。
「そうだな、何処かで暴れられるより遥かに都合がいい。」
「……どういうことですか?」
疑問に思うペテルに、スタークは爆弾を投げつける。
「六腕は、お前達が倒せってことだ。」
「「「「なっ!?」」」」
その言葉に指差されたダイン、ペテル、ルクルット、そしてそれを聞いていたニニャの表情が驚愕に包まれる
「何を言ってるんですか!?相手はアダマンタイト級の実力を持つって噂なんですよ!?」
「そこら辺ちょっと疑問だったんだが……クレマンティーヌ、その連中,本当に英雄級なのか?お前の意見でいいから聞かせてくれ、同じアダマンタイト級の青の薔薇と戦って、連中の勝ち目はどれくらいだ?」
「うーん、難しい話ね。あっちにはナイトローグがいるでしょ?それが出てくると話変わるけど……それがないならゼロね。連中じゃ青の薔薇に勝てないわ。理由は全部で三つ。」
「聞いても?」
「まず簡単な話、六腕は集団だけど戦闘集団であってパーティーじゃない。戦士であるガガーランを前衛に、ティア・ティナの2人が援護。魔法詠唱者のイビルアイが後ろから攻撃して、誰の援護にもバランスよく立ち回れるラキュースとパーティー単位で優れてるのに対して、六腕は一人一人が強くてもほぼ全員が戦士。バランスが悪いなんてもんじゃないわ。」
デイバーノックとやらは
「要するにパーティーとして組む前提じゃないのよ。個人個人の武力が"アダマンタイト級"でもパーティー単位で見れば話は違ってくるわ。それに青の薔薇にはシンプルに
クレマンティーヌもこの町で騒ぎを起こすにあたって警戒するべき戦力はズーラーノーン時代に調べてある。青の薔薇の中でもイビルアイは別格だ。飛行の魔法で空を飛び回る高軌道魔力砲大。自分でもズーラーノーンに来る前の"古巣"の装備を持ち出さなければ厳しいだろう。
他の青の薔薇の面々すら上回る彼女に比べれば、六腕の面子は言っちゃ悪いが大したことはない。それがクレマンティーヌの評価だ。
「で、二つ目は?」
「装備で負けてる。これは単純に相手が悪いわ。いくら裏社会で集めた装備があるって言ってもねぇ。」
何せ青の薔薇のリーダー、ラキュースが振るう魔剣キリネイラムは漆黒の剣が探し求めてる四つの暗黒剣の一振り、伝説級どころか神話に登場するような強大な代物だ。裏社会で装備を集めてきたと言っても正直このレベルがあるとは思えない。
「最後は?」
「油断よ。アイツら多分普段同格以上と任務で戦うことないでしょ。それがなくても、"仮面ライダーのお付き"として有名な銀級冒険者が相手なんて、まずナメてかかるか、ふざけやがってと怒るかその両方かよ。」
警備部門ということだが、彼らと同じ"アダマンタイト級"が堂々と拠点に殴り込むことは中々ないだろう。実際に彼らがアダマンタイト級冒険者を討ち取ったという話を聞いたわけでもない。
「つまり同格の人間との戦闘経験は不足してるはずよ。でもそういう奴に限って、自分は無敵と勘違いするのよね。」
だって仕方ない、全然自分と同格に出会わないのだもの。だがクレマンティーヌは知っている。自分や連中を超える怪物が、無数に存在していること。
「だから、まず間違いなく貴方達と一対一で戦うなんて言われたら連中はアンタ達を舐めるわ。それは付け入る隙になる。」
そこを突ければ、クレマンティーヌの指導のもと武技の習得に勤しんでいたりする彼らなら勝機はある。それがクレマンティーヌの評価だった。
「けど、あくまで細い道よ。負ける確率の方がどう考えても高いわ。」
「なら、舗装して太くすりゃいい。」
そう言って掲げるのはコブラロストフルボトル。
「なるほど、フルボトルを使うわけね。」
「あぁ、お前らの適正じゃスマッシュになれば理性を失うが、ボトルを振って力を引き出す程度のことは出来る。これだって思うボトルを一本持っていけ。」
「おいおい、そしたらニニャが……」
「問題ねぇよ。」
スタークの提案に、ニニャの手数が減ることを危惧するルクルット。だが問題ないとスタークは取り出したものを掲げる。
「これは……」
「今のお前のハザードレベルは3.5ナイトローグの相手をするにはちょいと力不足だ。だから、ゲタを履く。」
「ゲタ……」
「このアイテムを使え、そうすれば、ベストマッチフォームとは違う、新しいビルドになれる。その力を使いこなせれば……ナイトローグに勝てるかもな。」
「新しい……ビルド……」
フルボトルに比べて大ぶりな、缶のようなアイテムを手渡されたニニャは、その言葉に若干表情を落とす。
「チッ…………!」
その様子を見て、苦々しそうにクレマンティーヌは舌打ちした.
「(やっぱ、割り切れねぇよな。)」
その様子を見てスタークは思う。ニニャは迷っている。そんな状態ではハザードレベルの上昇も何もあったものではない。結局今のニニャのハザードレベルは3.5、求めていた3.9には遠く及ばない。それを解消するための新アイテムではあるが、もう一声、ハザードレベルの上昇が欲しいところだ。だからスタークは賭けに出る
「(俺のアドバイスで毎回覚悟決めるってのもアレだからな。今回は期待せてるぜ?)」
ラナーもそうだが、今回手を出すのはニニャの周囲の人間だ。そうした周りの成長が、仮面ライダー1人に降りかかる重荷を取り去り、より高く飛び上がる力になる。そんな未来を期待して.
「そんな、姉さんが!?」
「小麦を買いに外出した隙にでした。私がついていながら……申し訳ありません。」
ブレイン達と合流し、待ち構える4人の六腕を確認。どうするかと相談していた時、周囲を伺うセバスを見つけたのだ.何があったと問いかけた結果、知ったのが、ツアレの誘拐というわけである。
「誘拐犯がこの場所を指定してきたとなると……六腕が揃ってたのも納得だな。」
王国の中でも抜きん出た戦士であると自負するブレインが自分よりも圧倒的に強いと感じるセバスを倒すには、それほどの戦力が無くてはならないだろう。敵の思惑が見えてきたところでセバスが提案する。
「では、私が正面から入り、敵を惹きつけます。ですから皆さんは……」
「あの、すみません。」
その提案を遮ったのは,ペテルだった。
「正面の六腕なんですが、もしよければ、僕たちに任せてはいただけませんか?」
「……貴方達に、ですか?」
その言葉に、セバスは彼らを見据え、訝しげに眉を顰める。クレマンティーヌのように経験に基づいた明確な判断基準こそ持たないが、彼らがアダマンタイト級と称される裏社会の猛者相手に力不足である程度のことを見抜くことは出来る。
「おいおい、セバスさんもこう言ってるわけだし、無理に命を張ること……」
同じような感想を抱いたブレインは、セバスに任せておけばいいと言おうとするが、セバスはそんなブレインを手で制する。
「理由を伺いましょうか。なぜ、挑むのですか?」
「……意地です。」
「ほう、意地ときましたか。」
その返答を、目を瞑って噛み砕く。鋭くした眼を開き、普段は押さえている、龍人としてのオーラを発して威圧しながら言う
「先ほどお話しした通り、私達にとっても大切な人が囚われています。そんな状況で張らねばならないほど、その意地とやらは大事ですか。」
「「「はい。」」」
オーラに威圧され、冷や汗を流しながらも、それに立ち向かいそう回答する3人を見て、セバスは一言、そうですか。と言って威圧的なオーラを引っ込める。
「そこまで言うのならば、お譲りしましょう。」
「ありがとうございます。」
「お礼は結構です。辛い役回りですからね。」
チームを代表して礼を述べるペテルに、セバスはそう返す。
「ただし、それほど大事な意地であれば、張り倒さなければ許しませんよ?」
「「「当然」」」
です、だろ?である。それぞれ語尾は違えど、息を揃えて言う姿にフッと笑うと、セバスはブレイン達の元へと向かっていった.
「あの……」
だが、その選択に納得しないものが1人。
「本当に、皆んながそんな無茶をする必要があるんですか?相手は、アダマンタイト級の実力があるんですよ……?」
他でもない、ニニャだ。彼女は、自分のせいで仲間が傷つくことを恐れている。
「ただでさえ、僕のせいで……むぐっ!?」
「だから、そういうのはウザいって言ってるんだけど?」
ニニャの口元を手で押さえてクレマンティーヌは言う。
「私にも兄がいるけど死ぬほど大っ嫌いだからアンタの悩んでることは微塵も理解が出来ないんだけどさ、アンタが仮面ライダーになったことに、こっちは文句なんて一つもないのよ。」
そう言いながら彼女が思い出すのは、あの墓地での一件の後、自分をパーティーに招きたいと言ったニニャの言葉だ。
『クレマンティーヌさんと僕って、なんだか少し似てるところがあるんです。』
『『『はぁ!?』』』
その言葉に一同は驚愕し、クレマンティーヌは困惑し、スタークは爆笑した。
『何処が、アンタみたいな男装して自分を隠してる奴と……』
『戦ってて、思ったんですけど……クレマンティーヌさんって、本当に人殺しが好きなんですか?』
『…………はぁ?』
その声が上擦っていなかったか、自問自答せずには居られなかった。
『そんな訳、ないじゃない。私は人殺しが好きで、愛してて、恋してさえ……』
『なんかその言葉が自分に言い聞かせてるみたいに聞こえたんです。』
その言葉に、クレマンティーヌは押し黙る。
『ズーラノーンのことはよく分からないですけど、死者を崇拝する闇組織なんですよね?
そう言う思想にクレマンティーヌさんが共感してるようにも思えませんし、そう言う場所で"居場所"を得るなら、京楽的な殺人者っていう仮面が一番都合がいいと思うんです。』
僕ならそうします、と言うニニャの言葉にクレマンティーヌは歯噛みする。元々クレマンティーヌはスレイン法国で生まれた。実力は間違いなくある。だが上には上が居るもので、その上ばかり目を向けられ、こちらに目を向けられない日々が続いていた。
父も母も兄ばかり見て、家に居場所はなかった。全員が英雄級の領域に足を踏み入れた強さを持つ法国最強の戦闘集団、漆黒聖典に入っても、自分の上に兄がいた。クインティアの片割れ。そんな呼ばれ方が定着したのはいつからだったか。
ふざけるな。私は私だ、クヘマンティーヌだ。クアイエッセの妹じゃない。兄を通して私を見るな。そんな反骨心から、法国を飛び出した。流れ着いたズーラーノーンは、楽だった.誰も自分を法国のクアイエッセの弟として見ない。ただ、その力だけを見てくれていた。殺せる人間に価値を見出していた。だから怪物になった。要求された人間を殺して殺して殺せる、ズーラーノーンに理想的な存在になろうとした。
結局、本当の自分なんて何処にも曝け出せてないという事実に、しきりに目を逸らしながら。
『僕も一緒です。女であるなんて、そんな真実を話したら、自分の居場所が消えてしまいそうで怖かった。』
それを下らないと、一緒にするなと吐き捨てることは出来なかった。程度の違いはあれど、それは自分と同じ苦しみだ。それを否定すれば、自分が抱えていたちっぽけなものまで捨てることになりそうで、否定なんて出来なかった。
『だからきっと、貴方は僕なんです。僕は、その怖さを乗り越える自信をくれる人が居た。少しのボタンの掛け違いで、きっとあなたの様になっていた。いや、あなたほど僕は強くないから、もっと酷いことになっていたかもしれません。』
そう苦笑するニニャ。あの時スタークが居なければ、きっと死んでいただろう。夢も望みも何も成せず、誰も助けることができないまま。クレマンティーヌの欲望の捌け口として。
「だから私見捨てたくないと,アンタはそう言って私に手を差し伸べた。」
性根が腐ってる、否定しない。じゃなければ享楽的な殺人者なんて演じれない。大罪人、違いない。未遂とはいえ都市一つ滅ぼしかけたのだ。そうでなくても何人殺してきたか。積み重なった墓標は、そのまま己の罪の数だ。
だがそんな人物でも、ニニャは己と重ねてしまった。そうなれば、もう見捨てられないと。下らない同情で生かされるなら、目の前で死んで最後にちっぽけな叛逆をしてやろうかとも考えた。
「でも、やらなかった。アンタ達は……どこまで行っても私だけを見てたから。」
力も、性格も、フィルターを通さず、演じるものも生まれのしがらみも何もない、クレマンティーヌただ1人を見ていた。それを、どうしようもなく心地いいと感じてしまったから。
もしもあのまま行くところまで行けば、自分を超える強者に倒されて、散々殺してきた者として惨めな最後を迎えるか、ズーラーノーンの野望通り死で満たされた世界で、怪物として名を刻むかだったろう。
「そんな私の世界を変えたのは、他でもないアンタだ、仮面ライダーじゃない。その変身者で、冒険者のニニャだ。」
「でも、僕は……」
「いい加減にしろよっ!」
姉を守れなかった.目の前で子供が崩れ去った。そんな事態を引きずる彼女の胸ぐらを掴み、周囲の景色に顔を向けさせる
「いつまでそんなものばかり見てやがる!」
「そんなものって……!」
「そんなものだよ!見ろ、この街を!」
クレマンティーヌの言葉に反応したニニャに、改めて言う
「お前が救った街だ!私とガジットの奴の野望から!街も、その住人も、そして他でもない街も!」
「でも、そうやって救えるって思い上がった結果、僕は……」
「あぁ危険に晒したかもねぇ!けどそれは八本指を邪魔したからじゃないのか、そこに囚われてた人を救ったからじゃないのかよ!?」
「ッ!?」
クレマンティーヌの言葉に、ニニャは推し黙る。それは、自分が今まで見れていなかった部分だった.
「守れなかったものばっか見て、自分を否定すんなよ。そんなことをしたら、お前の守ってきた者まで否定されるじゃない。」
最後にそう言う。だからどうか前を向けと、自分が仮面ライダーになったことを間違いだと言うのは、その力で救ってきた大勢への裏切りだと。
「そうそう、それに、俺は正直ワクワクしてるよ。なんだか冒険譚の一部みたいで、」
「おっ、ペテルがそんなことを言うなんて珍しいじゃないの。」
「お前なぁ……」
ペテルの言葉を、ルクルットが茶化す。
「けど、分かるぜ。正直、いつか四つの暗黒剣を集めたいなんて語っちゃいたが、冒険らしい挑戦はしたことなかったからな。」
冒険者とは、その名前に反して
それをせず、自分の適性を超える高ランクの危険な依頼を取るなんて自殺行為、高額な報酬に目が眩んだ愚か者でもなければまず選択しない。
「スターク氏が来て以来、毎日が冒険である。」
まるで自分が物語の登場人物になったみたいで、それが楽しいとダインは語る。
「アンタ達ねぇ、そんな浮かれ具合で六腕の相手が務まるワケ?」
勝機を掴み損ねないでよねと、呆れた様子でクレマンティーヌは言う。
「安心なされよ、しっかりと掴んで見せるのである、ミカン殿。」
「その呼び方やめなさいって。」
冒険者として名乗ってる偽名で呼んでくるダインに文句を言うクレマンティーヌの口元は、笑っている。そんな様子を見れば
「ふふっ」
つられてニニャも、笑いたくなってきた。
「お、やっと笑ったな。」
そんな様子にルクルットも笑って言う。
「心配しなくても,俺たちはちゃんと勝ってくるよ。だからパーティーメンバー信じて,お前はお前のやることを果たせや、仮面ライダー。」
そんで、助けられてない姉貴もガキも助けてやれやと、ルクルットは拳をニニャの胸元に当てる。
「……はいっ!」
色々と変わった今でも,自分たちはパーティーで居られる。それを再確認した彼らの顔つきは、大きく変わっていた。
明かされるクレマンティーヌが仲間になった理由。他の人の二次創作とか悠木碧ボイスに毒されてるところありますが、自分は彼女のキャラクター性をニニャとかとこんな感じで解釈してます。
これからも世界観やキャラクターの造形とかにかなり独自解釈が入ることがあるのでそう言うのが苦手な方はブラウザバックをお願いします
スタークはどうする?※注意!このアンケートの結果でストーリーが分岐します 分岐によっては取り返しのつかない結末に至るのでご注意くだ
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ニニャとンフィーレアだけを確実に逃す
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一か八か、全員を逃す