アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話   作:月光舞詐称者姫

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 大変申し訳ございません。自分のミスで最後のスタークさんパートが抜けていたので再投稿です。混乱させてしまいました。
 キャラクターの過去や戦闘スタイルに関する大幅な創作物が含まれます。ご了承ください、


第十八話 超えろデッドライン

「ぬぅん!」

「ハッ!甘い甘い!そんなんじゃ、俺は愚かそこで見てる連中の相手さえ務まらないぞ。」

 

 ダインのメイスの一振りを、そう言って笑いながら避けるのは小洒落た装飾のレイピアの使い手、六腕の1人、"千殺"のマルムヴィスト。暗殺者よりの軽戦士(フェンサー)であるこの男と戦うダインは、3人の中で最も傷の数が多かった。

 

「はぁっ……はぁっ……」

「おいおいしっかりしてくれよ。こっちはアンタの為にわざわざ愛剣を鞘で縛ってやってるんだ。」

 

 あえて急所を狙わず浅いところばかりを狙うマルムヴィスト。そう言う通り、手持ちのレイピアの刃先を指で弄ぶ男の腰には、もう一本のレイピアが納められている。

 暗殺術を納めており、優れた毒武器の使い手であるマルムヴィスト。そんな彼の愛剣は、裏社会にしか出回らない様な希少かつ強力な素材を元にした猛毒の剣である。これと自身の動きをなぞる様に数瞬遅れて行動する影帽子を召喚する魔法《追影》で毒などの状態異常を高速で蓄積させるのが彼のスタイル。

 汚職貴族(スポンサー)を満足させるショーとして、マルムヴィストはあえて武器を毒のない安物に縛っていた。

 

「くぅっ……おぉっ!」

「武技は使わないのか?条件を満たさないと使えないのそれとも狙っているのか……」

 

 ペシュリアンとやり合うペテルは、盾を有する防御重視の前衛、ルクルットがスカウト職を兼任する中衛であるとして、仮面ライダーの変身者、この場にいないニニャも、元は異名がつくくらいには名の通った魔術師だ。

 ならばこの男は間違いなく、攻撃を担う前衛。獲物が重いメイスであることからも間違いないだろう。であれば有しているスキルが攻撃を当てるなどの条件を満たさないと使えないか、力を貯めて隙を晒すことになるなどの理由で使わないか、どちらかだろうと辺りをつけ、あえて無防備に歩いて近づく。

 

「どうしたどうした?こんな状況で切り札が使えないのか?」

「……………。」

「まったく、しらけるねぇ。そういうことなら仕方がない。」

 

 隙だらけーーー無論、例え不意打ちで武技を打たれようと回避の武技で躱わすつもりではいたがーーーで近づいても動かない.もはや心が折れたかとため息をついてマルムヴィストは手に持っていたレイピアを捨てる。

 

「しかたない、ここまでのショーの出演料だ。最後は我が愛剣、血薔薇の姫君(ドルン・レーヒェン)の艶と消える栄誉をあげよう。」

 

 薔薇の花弁のような衣装に複数のスパイクの付いたレイピア。刀身を毒々しく輝かせるそれは、毒と出血、二重の状態異常を発生させ、毒に蝕まれながら血を吹き出してターゲットに凄惨な死を与える。

 

「さぁ……死ねっ!」

 

 胸元を狙い突き出されるレイピア。だが決着はついたと言わんばかりに武器だけを変え、武技もスキルも使わずに繰り出されたトドメの一撃は、彼の唄う"千殺"の異名から程遠いことを、ダインは見逃さない。

 

「ぬぅん!」

「な、なにぃ!?受け止め……っ!?」

 

 手から血が吹き出す。胸元、より長く苦しめる為、心臓ではなく肺を狙った一突きを、その掌で受け止め晒すことで最低限の傷に留める。

「おぉおおおおおお!」

「な、コイツ……そのまま腕を……っ!?」

 

 グシュ、プシュッと肉の裂ける音と血が吹き出す音を咆哮でかき消しながら、ダインがさらに手を奥へと進め、棘だらけの鍔ごと、マルムヴィストの腕を掴む。それだけではない。

 

「なっ!?こ、これは……!!」

〈植物の絡み付き〉(トワイン・プラント)

「き、貴様っ!?戦士ではなく森司祭(ドルイド)だと!?」

 

 マルムヴィストの両足を、逃げられないようがっしりと植物が拘束していた。

 

「戦士ではないがこの通り、体も鍛えているのでニニャなどと比べると保有している魔力が低く、無駄撃ち厳禁なのである。」

「馬鹿な、ヒーラーが力を鍛えてどうする!?一体何を考えて……」

 

 強くなるにはどう考えても非効率。困惑しながら言うマルムヴィストにダインは一言

 

「理解し難いであろうな、帰りは手ぶらでも構わない殺し屋には。」

「は?何を言って……」

 

 マルムヴィストと自分の、根本から異なる点を口にする。彼からすれば、自分が暗殺者であることが祭司が筋肉鍛えてることを理解できないことへのアンサーになるのかから理解できない。帰りは手ぶらでも構わないとはどいうことか。

 一方でダインのアンサーは簡単だ.

 

「私はパーティー内でヒーラーだけでなく、荷物持ち(ポーター)も兼任しているのである。無論このメイスは、いざという時のニニャの護衛である。」

 

 自分に適性のある職業だった森司祭を、嫌っているわけではない。森のことならルクルットよりも詳しいという自負もある。だが術者としての才能は、ニニャに遠く及ばないことも理解していた。

 ニニャは魔法関連の異能(タレント)を有する天才だ。反面自分はどこまで行っても回復系の術者に適性があるだけの凡人だ。だからパーティーを組んだ時、身体を鍛え、自分はいざという時ニニャを守る護衛役や、荷物持ちの役をやることを名乗り出た。それが不本意でないというのは、嘘だ。

 でもそうしなければ、成長したニニャが第三位階以上の魔法や回復系の魔法まで会得した時、自分に価値がなくなってしまう気がしたから。だからニニャとは異なる道を歩もうとしたのに、気づけばニニャは仮面ライダーという、英雄級の戦士すら下す存在になっていた。

 自分を殺そうとしたクレマンティーヌに手を差し伸べる背中を見て、自分があそこに立てていたらと嫉妬しなかったと言えば嘘になる。

 あれこそこうなった自分が夢想した姿だと、そしてスターク直々に言われた、自分は仮面ライダーになれない(そこには至れない)と言われたその言葉が頭の中で反響し、絶望せずにはいられなかった。

 

「分からないだろうという話であるよ!お前に、背負う者の気持ちなど、」

 

 だが、そんなニニャが悲しむのは、決まって自分に辛い時ではなく、誰かが苦しみ、救えなかった時やそれを目にした時である。

 それを見て知った。ニニャが手に入れたのは単なる強さ、だけではないと。それを誰かの為に行使し、傷つく宿命とも呼べるような重いものを背負っていたのだ。

 ペテルも、リーダーとして重責を背負っており、それに寄り添ってきたからこそよく分かる。彼らは本当に、色々なものを背負ってる。

 

「どんなに小さなものでも、身近なものでもいい、少しでもその苦しみを肩代わりしてやりたい、そんな想いは……!」

「ふざけるな!そんななまっちょろい物にらこのマルムヴィストがやられてたまるか!!」

 

 そう言いながら彼はレイピアに力を込め、持ち手を捻る。毒を、出血を、状態異常を塗りたくるように、数を広げるように。しかし

 

「なぜ……何故毒が通じない!?」

「困りものであるな、名が売れているというのも。」

 

 六腕の1人であるマルムヴィストの名前は表社会にも恐るべき存在として聞こえてくる。特に異名の元となった、無数の刺し傷と、そこから来る毒によって殺された犠牲者の話は。

 

「馬鹿な!?コイツの毒は……」

 

 とはいえ対毒のポーションを握った程度で勝てる毒使いならば六腕に名を連ねていない。裏社会で集めた希少なアイテムと技術で作られた愛剣の毒が容易くレジストされていることに疑問を呈するが、そこで気づく。

 

「まさかお前、トブの大森林で……!」

「どうやら、そこまで愚かでは無かったようであるな。」

 

 仮面ライダーの一行、そして冒険者モモンの伝説の始まりとなった、モモンによる大森林の主人、森の賢王の調伏。それにより、モンスターの危険はまだあるが、今まで阻まれて到達できなかった森深くの希少なアイテムが手に入るようになったと言う情報があった。

 その第一人者であれば、そんな素材を手に入れることは可能だろう。そして、さらにそれを形にできる人間もいる。ンフィーレア・バレアレ。クレマンティーヌも狙った希少なタレントとそれに見合う薬師としての確かな腕が彼にある。

 

「ンフィーレア氏だけの力とは思わないで欲しいであるな。お前と戦う前に飲んだ中位耐毒(ミドル・レジスポイズン)のポーションは、私が彼の薫陶の元、調合したのであるから。」

「なっ!?」

 

 純粋な戦士であるペテルは、同じく純粋な戦士であるクレマンティーヌから学ぶ事は多い。ルクルットも、その健脚を求めて教わっている。

 だがドルイドの技とパワーのダインは、クレマンティーヌから学ぶことが全くと言っていいほど無いのだ。だから、彼が強くなる為に選んだのは、ンフィーレアだった。

 貴方の知恵を力にしたい。その頼みに、彼は目を輝かせ、笑って了承してくれた。彼の有する森の知識と薬の知識が噛み合うことも多く、気づけばダインは、薬を調合できる森司祭として、チームの中で一番の成長を遂げていた。それを単独で忍び込み、帰りはさっさと姿を消す暗殺者であり、仲間の1人のサキュロントを落ち目の雑魚と笑う彼に、理解できるはずも無し。

 

「受けるがいい、これは……」

「ひっ!?」

「その重みの一撃である!」

 

 その言葉と共に振り下ろされる、ゴリラフルボトルを握りしめた強拳。先程までの余裕はどこはやら、レイピアを取り落とし足が抑えられてることすら忘れて逃げようとするが、出来るはずもなく、醜い声と共に地面に顔面が叩きつけられた。

 

「純粋な強さなど、我々は誰も求めていないのである。」

 

 レイピアを引き抜き、返り血を拭って出血を癒すポーションを飲みながら、ダインは言う。

 

「ただ己の力をひたすら高めるだけが、全てでは無いのであるよ。」

 

 仲間のために、仲間と共に、それを重んじる者と軽んじる者。どちらが立っているかは、最初から明白であった。

 

 

「なかなかやるな。俺の剣先より速い物などそうありはしないと思っていたが、お前の目はこれ以上を知っているようだ。」

 

 一方で,全身をフルプレートで包む騎士、"空間斬"のペシュリアン。今ここにいる4人の六腕の中で唯一、相手を侮っていない男にペテルは冷や汗をかいていた。

 ウルミ。ペシュリアンが扱うのは、そう呼ばれる細長く鞭のようにしなる刀、いや斬撃属性の鞭とでも言うべき代物だ。精密な制御でこちらの急所や足の健などを狙ってくるその斬撃をペテルが盾や剣で弾けていたのは、一重にクレマンティーヌの特訓の賜物である。

 漆黒聖典第九席次〈疾風走破〉その異名の如く、その気になればビルドの一部フォームすら上回る彼女のスピードは、神速と評してもいいペシュリアンのウルミを越える。模擬戦用に木で作られたエストック

幾度となく突かれ、アザだらけになりながら、ペテルは大きな成長を遂げた。

 

「いいだろう、ならば本気を出すとしよう。」

 

 そう言ってペシュリアンは自分の頭上で弧を描くかのようにウルミを振るう

 

「……油断はしていないんじゃなかったのか?」

「あぁ。だが同時に、冒険者としては無名と言っていいお前にこれを出すことになるとは思っていなかった。」

 

 ヒュンヒュンと振るわれるウルミが空を切る音が、次第に大きく、重くなってくる。

 

「なにせ、この世にはこいつの使い方を勘違いしてる奴が多すぎる。」

「(まずい、近づいて先に叩くか?いや、ここは……!)」

 

 その音はまるで猛獣の嗎かなにかのよう。焦りながらも、迎撃しようとすればその瞬間、頭上から攻撃が降り注ぐと、盾を構えて地面を踏み締める。

 

「これを出した相手の数さえ手足の指より少ないが、これを使って生きてた奴はゼロくらいのものだ.」

 

 そう言いながら振り下ろす。

 

「武技」

 

 空間斬、ウルミを操り局所を裂くペシュリアンの技を讃えてつけられたその異名の他に、かつて彼には通っていた名前がある。八本指に入る前、命からがら逃げ出したならずものの語りから、名付けられたその異名。

 突然アジトを襲った黒騎士が、鞭のような剣を振えば、仲間たちの喉や胸が同時に切り裂かれ、まるで力を溜めるように空中で振り回した後振り下ろせば、

 

「〈落雷閃〉」

「武技〈要塞〉ッ!!」

 

()()()()()()()()と共に、頭が二つに分たれたと。 振り下ろされるそれを、ペテルが受け止めた直後、確かに雷のような轟音が轟いた。

 

「ぐうぅうううう!」

 

 凄まじい破壊力の一撃を止めたペテルの腕がビリビリと震える。だが、先ほどよりも格段に速い一撃を、武技で受け止めることに成功した.〈要塞〉で攻撃をパリィした場合、相手の構えを大きく崩す。そこを狙って……そう思った瞬間、ペテルの修行で育てられた視界が捉えたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

「えっ?」

 

 思わずこぼれたそんな声。咄嗟に腕を動かす。またしても響いたのは、雷のような轟音だった。

 

「……まさか二発目に剣を間に合わせるとはな。今ので殺せなかったのは、お前が2人目だ。」

「ぐっ…………あぁああああああああ!?」

「だが、その状態ではもう戦えまい。」

 

 防御に使った剣はあまりのダメージに砕け散り、さらに剣を握っていた右腕の肉をざっくりと切り裂いた。斬られた、それを理解した直後響いてくる激痛と吹き出す鮮血に悲鳴を上げる。

 盾を手放さなかったのは、クレマンティーヌとの修行の中で意識を手放しても盾を手放すなと、手放した時がお前の死だと教え込まれて来たからだった。

 

「「ペテル!?」」

 

 ちょうど戦いを終えた2人も、仲間の惨状に悲鳴をあげる。

 

「マルムヴィストは即死、エドストレームも致命傷か……」

 

 倒れ伏す六腕の仲間を見て、ペシュリアンはそう判断する。

 

「このっ……」

「おい、お前達。」

 

 ルクルットの弓をウルミで弾き、ペシュリアンは周囲の警備部門に所属するならずもの達に呼びかける

 

「こいつらを始末しろ。トドメを指した奴を、次の六腕にしてやる。」

 

 その言葉に歓声が上がる。

 

「なら俺が次の六腕だぁ!」

「いや俺だ!退け!」

「まぐれでマルムヴィストさん達に勝ったっていってもこの数なら勝てねぇだろ!」

「一生付いて行きますよペシュリアンさぁん!」

 

 己の獲物を手に、歓喜に狂いながら迫り来る殺し屋達。そこで門を破り、ペテル達と共に来た者たちも戦列に加わる。

 

「ルクルット達を守れ!」

「おうさ、楽して多分働くぞテメェら!」

「ジャイアントキリングなんかしやがって、これで貸し借りナシだぞオラァ!」

「強くなった秘訣は酒場でたっぷり語ってもらうぜ!」

 

 口々に声を挙げながら、やって来た連中と相対するが、ペテルの元には警備部門の連中が壁となって近づけない。

 

「やはりこいつらに次の六腕は荷が重いな。」

「どういう……ことだ……?」

 

 ため息をついて首を振るうペシュリアンに、ペテルは意味がわからないと言うように問いかける、

 

「あぁ、すまない。自分の頭で完結させて口に出さないのが俺の悪い癖だ。一つずつ答えよう。」

 

 ウルミで足元の舗装された岩道を叩き、ヒビを入れて見せてから

 

「今のがこの武器の本来の使い方だ。最も俺が六腕に入り、"空間斬"と通り名を改めてから忘れられて久しいがな。」

 

 蛇のようにうねる刃先を制御して、ピンポイントで敵を切り裂く。そんなのは単に技術だ。そも、ウルミとは鞭の派生武器に分類しても良いものである

 

「つまり最大の武器は遠心力を利用した速さと威力を乗せた一打。普通なら鞭で事足りるが達人の使うウルミはその重さを斬撃に変える。」

 

 そしてその斬撃の速度は音を超え、ソニックヴームを発生させながら敵を切り裂く。その時、まるで雷が落ちたような音が轟く。

 

「さらにこいつの一撃を〈要塞〉などのカウンター系の武技で弾いても、弾かれた衝撃が俺まで届かず、弾かれた勢いで暴れるこいつの軌道を操った第二打が、タンクにトドメを刺す。

 賞金稼ぎ時代"盾殺し"で通っていた俺の必勝の一撃だ。」

「そんな……」

 

 アダマンタイト級とされる敵の情報は集めていた。だが聞いたこともないその話に、ペテルは顔を青ざめさせる

 

「運がないな。お前が俺と戦うことになったのは、消去法なんだろう。」

「ッ……!」

「やはりな。タンクのお前はマルムヴィストやエドストレームとは相性が悪すぎる。

 いや、マルムヴィスト相手なら勝機はあったかもしれんが、俺を相手に勝機がないのはそこのドルイドも一緒だな。」

 

 そしてアンデットのデイバーノックは、倒すのが一番の面倒な相手な上、魔法攻撃が他の味方に着弾する恐れがあるためクレマンティーヌが誘導している。ペテルになかった相手はペシュリアンしかいなかった。

 

「だがお前は見事だ。今の一撃を受けて、剣こそ砕けたが手足が全てくっついている。」

 

 そこは素直に称賛しようと、彼は言う。

 

「盾を捨てろ、そうすれば、お前は楽に殺してやる。」

「お前、は……?」

「残りの2人は仲間の仇だ。楽には殺さない。」

「驚いたな……そんなふうに思う心が、あったのか……」

 

 仲間のことを出されて黙っていられないペテルがそう言うと

 

「マルムヴィストは、見栄っ張りでな。下戸のくせに酒の席ではしこたま飲んで、いつも酔っ払っては醜態をさらしている、結構可愛い奴なのさ。」

「何……?」

「エドストレームは最近肌年齢を気にし始めている。殺し屋が主婦みたいに野菜パックとかを試している姿は,意外と面白いぞ。」

「ま、待て……」

「サキュロントはあれこれ言われているが、幻影に隠れている小心者なりに、頭を回してもがいている。手札を増やそうと色々試している姿は、案外好感が持てるものだ。」

「さっきから何を……」

 

 ペラペラと喋るペシュリアンにペテルが困惑する。

 

「俺にとって、あいつらは大切な仲間だったと言うことだ。」

 

 ペシュリアンはそう言った。

 

「あいつらは別にそうは思っていなかったのかもしれない。人を人とも思わないような、殺されて当然の極悪人だったのも否定しない。だがそれが俺があいつらを殺されて何も思わない理由にはなり得ない。

 金が欲しいだの強くなりたいだのと言った理由もなく、ゼロに負けて誘われて、流されるまま裏社会に足を踏み入れた俺にとって、こいつらは唯一の仲間で、居場所だった。」

 

 それを壊されたのだから黙っていられない。そう言うペシュリアンに、ペテルも立ち上がり応える

 

「なら……答えは分かるだろ。」

「後悔するなよ。」

 

 こちらも仲間を傷つけると予告されておいて黙ってなどいられない。立ち上がり、盾を構えるペテルを前に、再びペシュリアンはウルミを振り回す。

 

「(さっきので分かった、奴の武技は、無条件で使えるものじゃない。)」

 

 恐らく、必要なのは一定以上のスピード。そしてそれは、ウルミを高速で振り回して高めた、極限の状態でなければならない。

 

「(けど、頭上で振り回してるウルミ自体はいつでも振り下ろせる。)」

 

 もしチャージを中断させようと突っ込めば、頭上から刃先の急襲を許すことになる。両手で盾を構えられればあるいはだが、今のペテルにそれを防ぐ術はない。

 

「(なら……っ!)」

 

 盾の裏でフルボトルを握り込み、ゆっくりと振る。

 

「そうか、それに賭けるか。」

「(受け止める、奴の渾身の一撃を……〈要塞〉以外の方法で……!)」

 

 ペテルが覚悟を決めている間に、ペシュリアンのウルミの速度が最高到達点へと達する。

 

「なら、終われ。武技」

「来い、ペシュリアン!」

 

 上空の剣先が、落ちる

 

「〈落雷閃〉」

 

 放たれるのは、終わりの一撃。仲間の為にと無謀な道を突き進む勇者に彼なりに敬意を表した、全力の一撃。それをペテルは

 

「はぁああああああ!」

 

 武技を使わず、ダイヤモンドの輝きを放つ盾で受け止めた。

 

「なにっ!?」

 

 凄まじい轟音、フルボトルの力を持ってしても、一旦集中の膂力に耐えきれず二つに盾が割れる。だが、確かに耐えた。割れた盾の片割れを手に、ペテルが賭ける。彼が選んだボトルは、ダイヤモンド。彼の武器である防御をより高めるそれを、ペテルは選んでいた。

 二つに割れながらもペシュリアンの一撃を受け流し、落雷閃は足元の石畳を大きく割るに留まる。さらにペテルは、ペシュリアンが引き戻そうとするウルミの峰を踏みつけ引き留め、肉薄。

 

「シィッ!」

「武技……」

 

 咄嗟の反応で振るわれるウルミの根本を

 

「〈要塞〉ッ!」

「しまった!?」

 

 〈要塞〉で弾き隙を作る。そこに

 

「おぉおおおおおおお!」

 

 雄叫びを上げながら、ダイヤモンドの重みと硬さが残る割れたシールドを手に渾身の一撃を叩き込んだ。

 

「見事、だ……。」

 

 ぐしゃりと、金属と肉、骨がひしゃげる音が響き、ペシュリアンの手からウルミが落ちる。

 倒れ伏すペシュリアンは、胸をひしゃげた鎧に潰されたまま圧迫され、重症だった。片手を深く切り裂かれ、暴れるウルミに無数の切り傷を作ったペテルも重症だが、立っているのは確かに、ペテルだった。

 

「一つ、聞かせてくれ……」

「はい、なんでしょうか。」

 

 絶え絶えの呼吸でそう言うペシュリアンに、ペテルが答える

 

「俺は、俺の仲間を思う気持ちは、間違いなく本物だったはずだ。」

「えぇ、その気迫をしっかりと感じました。」

「なら、何故負けた?俺には、何が足りなかった……?」

 

 思えば、ゼロに負けた時と同じ問いを繰り出した。あの時は、俺の方が力があった。それだけだと答えられたが、ペテルは違った。

 

「貴方の仲間を思う気持ちは本物だったかもしれません。でも、それは俺も同じです……いえ、一つだけ違うとすれば、俺たちは互いに、互いのことを本当に思い合ってる。そこだけ、少しだけ、貴方の想いと異なっていた。」

 

 エドストレームもマルムヴィストも、六腕という環境に仕事仲間以上の感情は持っていなかっただろう。

 ペシュリアンのように大切な仲間、あるいは友という認識が相互にあれば、互いが絆で結ばれていたのなら

 

「その時は、3対3での勝負になっていたはずです。そうなっていれば、確実に勝てなかった。」

 

 独りよがりだと、笑うつもりはありませんと、そう前置きして

 

「でも、俺の仲間を守りたいと言う気持ちが、貴方の仇を討ちたいと言う気持ちに勝った。そう、俺は考えています。」

「そうか、気持ちで負けたか……」

 

 その言葉に、どこか虚しく響く、乾いた笑みをペシュリアンは残す

 

「完敗だな。」

 

 そう言って、彼は意識を手放した。

 

「馬鹿野郎!!盛大に無茶しやがって!!」

「ヒヤヒヤしたのである。」

「はは……ごめん2人とも。でも、その抱え方だと傷口がすごく痛いや……」

 

 仲間と共に殺し屋の軍団を突破し、肩を抱えたダインとルクルット、そんな2人と笑い合う、ペテルを残して

 

 

「ここか。」

 

 道中見えた悪魔や、人をムシャムシャと食べる虫、そんな怪物を避けながらやって来た部屋で、スタークは確かにフルボトルを回収する。

 

「ハリネズミ、海賊、列車、ライオン、掃除機にコミック。よくここまで集めたもんだ。これで全部か?」

「えぇ、これで全部よ。だから……」

 

 屋敷の代わりようにヒルマはすっかり怯え切っている。自分の屋敷がいつの間にかモンスターハウスに早替わりだ。無理もない。

 

「分かってる、さっさとここから……」

「逃しませんよ?」

 

 その言葉に、ヒルマは一瞬息が止まった。振り返れば、そこにいるのは金の髪に浅黒い肌、違った耳を持つ、ダークエルフの少女。否、少女の格好をした少年であった。

 

「まさか貴方がこっちに来てくれるとは思いませんでした、ブラッド・スタークさん。」

「……その格好、見覚えがあるな。あのテイマーのダークエルフの知り合いか何かか?」

 

 警戒しながら、いつぞやに戦った魔獣を連れたダークエルフ、アウラを思い出し問いかける。

 

「そういえば……姉さんとも、戦ったんですよね。、」

「姉……ねぇ。」

「ど、どういうことだい?この坊やと知り合いなのかい?」

 

 怯えるヒルマが問い掛ければ、

 

「あぁ。この騒動の現場リーダーってところか?」

「なっ!?」

 

 そうスタークが答える。屋敷に怪物を放ったのが目の前のおどおどしたあどけない少年と聞いてヒルマは震えた。

 

「でもちょうど良かった。そこの人を渡してください。」

「渡せ……ねぇ、見返りは?」

「楽に殺してあげます。」

 

 その言葉は、底冷えするほど冷たかった。

 

「本当は貴方を殺すのは僕の任務じゃないし、ナーベさんを傷つけたことは万死に値します。

 でも、その女の人を探してたので、渡してくれるんでしたら、楽に殺してあげます。」

「なるほどぉ、アインズの奴、余程あの時のことが気に食わなかった……うぉっと。」

 

 スタークがぼやいた瞬間、ダークエルフの少年、マーレが肉薄し、手に持つ杖をフルスイング。派手な音と共に壁が粉砕され、スタークが一緒に避けさせたヒルマは、魔法詠唱者のような格好をした子供が有するはずのない異様な膂力に恐怖する。

 

「アインズ・ウール・ゴウン様です。次はありません。」

「長いだろ。んで、質問の答えだが、NOだ。悪いな、チャオ♪」

 

 そう言ってトランスチームガンから煙を吹き出すスターク

 

「無駄です。この木々は、次元封鎖(ディメンショナル・ロック)の魔法が……あれ?」

 

 そう言うマーレだったが、直後、スタークの姿は消えていた。

 

「お、おかしいな……確かに発動してるんだけど……ううん、いいか。」

「マーレ様、どうなさいましたか?」

 

 一瞬オロオロしていたマーレだが、落ち着いて、やってきたプレアデスの1人、エントマに問いかける。

 

「うぅん、なんでもない。プレアデスのみんなに伝えてください、そろそろ目標が出て来るはずだって。」

「はぁい、かしこまりました。」

 

 そう言ってお辞儀をするエントマに任せ、マーレもまた、スタークの追跡に乗り出すのだった。

 

 

「やれやれ、まさか屋敷があのザマとはね。悪いことはするもんじゃねぇなぁ。」

 

 くつくつと愉快そうに笑うスタークは、荒い呼吸のヒルマの肩をバシバシと叩く。

 

「まったく、笑い事じゃないよ。でもこれで……」

 

 もう安心、そう言おうとした時だった。

 

「おっと、」

「うおっ!?なんで分かったんすか!?」

 

 今まで透明化の魔法で姿を隠していた人物からの奇襲を、スチームブレードで対応した。そのことに驚きの声をあげた仕立て人、仮面で顔を隠し、長柄の先に舵輪のような形状の刃の付いた、戦斧と杖の混合武器を払った仮面のメイドは声を上げる。

 

「蛇ってのは色々鋭いんだよ!」

 

 トランスチームガンの射撃で牽制、しかし距離を離したところに

 

二重魔法強化(ツインマキシマイズマジック)!」

「撃つ……!!」

「おっとぉ!」

 

 雷の魔法と銃弾が降り注ぎ、転がって回避する。

 

「破ァッ!」

「チィっ!」

 

 さらにトゲのついたガントレットで武装したメイドが放った叩きつけの着弾地点から飛び退く。

 

「いやぁ今のはヤバかった。」

「……そうは見えませんが。」

「そうとも言えないさ、戦闘メイドプレアデス、だったか?」

 

 服についた土埃を祓いながら姿勢を正すガントレット装備のメイド、プレアデスのまとめ役を務める長姉ユリ・アルファ

 

「えぇ、そんな事まで知ってるんすか?さてはナーちゃん、高らかに名乗っちゃったな?」

 

 やれやれと肩をすくめる戦斧とヒーラー用の杖の混合武器を構える赤髪のメイド、次女の威厳はないお気楽娘だが、その仮面の裏にサディスティックな本性を隠す、ヒーラーと戦士の二面性を持つ人狼、ルプスレギナ・ベータ。

 

「うるさいですよ、ルプー。相手はどのような手を使ってくるかわからない厄介な手合い、無駄な情報は明かさないように。」

 

 騒ぐルプスレギナを嗜めるのは、粘性のスライムとしての真体らしい柔軟対応力を有し、暗殺者としての技量と合わせて姉妹を手助けする四女、ソリュシャン・イプシロン。

 

「……命令は、遂行する。」

 

 そう言って銃を構えるオレンジ髪のメイドは、姉妹内最下位のレベルに見合わない攻撃力を有する自動人形(オートマトン)。感情と称すべきものが希薄なチームの癒し要因かつ末女にしてチーム最高のアタッカー、シズ・デルタ。

 

「ブラッド・スターク、貴方に栄誉を授けましょう。」

 

 上空から飛行の魔法で飛来した、プレアデス内最高峰のレベルを持つ魔法詠唱者にして三女、ナーベラル・ガンマがそう告げる。

 

「ナザリックが誇る戦闘部隊、プレアデスの前に塵となり消える、その栄誉を。」

「あー、一ついいか?」

 

 得意が似合うナーベラルに、スタークはヒルマを物陰に隠しながら言う

 

「遺言ですか?いいでしょう、一言だけ……」

「負けたから仲間を引き連れて来て得意げにするのってどうなんだ?」

 

 その言葉に凍る空気、固まるナーベラル、吹き出すルプスレギナ

 

「ちなみにスタークおじさんはすっごいみっともないと思うんだがそこんところ……」

「コケにするのもいい加減にしろよこのっ……下等生物がぁああああ!」

 

 直後、怒気を全開にしたナーベラルの絶叫と共に、雷の魔法が降り注いだ。




と言うわけで、ダイン氏、怒りの鉄拳制裁。ペテルの意地と雷光のペシュリアン、スタークさん絶体絶命の三本でお送りしました.
プレアデスに囲まれたスタークさん、一体どうなってしまうんでしょうか

スタークはどうする?※注意!このアンケートの結果でストーリーが分岐します 分岐によっては取り返しのつかない結末に至るのでご注意くだ

  • ニニャとンフィーレアだけを確実に逃す
  • 一か八か、全員を逃す
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