アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
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「まったく、使えない連中だ。」
「あらら、それアンタが言っちゃうんだ。」
不死王、そう名乗る通り全身にエンチャントした炎の鎧で己を守りクレマンティーヌを寄せ付けないデイバーノック。
アンデットに弱いはずの炎のローブを纏い、近づけばそれだけで攻撃になるこの男は、正に不死者の王を自称するのに相応しい実力があるのだろう。だが、そんな男が倒れていった六腕の面々に毒づく姿に、呆れたようにクレマンティーヌが言う。
「そうであろう。六腕とは、世界各地から集められた強者の集まり。それが裏社会で集められた強力なアイテムで武装し、侵入して来た木っ端冒険者程度を仕留められんとは、使えないと言わずしてなんと言う?」
「いや、そうじゃなくて。」
獲物であるエストックを弄ぶクレマンティーヌは、デイバーノックの言葉を否定する。
「その木っ端冒険者相手に傷一つつけられてないアンタが言っちゃうんだって話。」
「強がりのつもりか?愚かな。」
クレマンティーヌの言葉に、デイバーノックは不敵に笑う。
「お前の武器は、近接武器のエストック。それでアンデットの私を倒すには、連続での攻撃しかない。だが、そんな手間をかけていれば、この炎の防壁に貴様自身が焼かれ、倒れる以外の道は存在しない。」
お前は私を倒せる方法は存在しないと。
「そしていくら避けようと体力は無尽蔵ではないだろう?」
つまり、いつかは疲れ知らずのデイバーノックより先にクレマンティーヌの限界が来て死ぬ。デイバーノックはそう言っているのだ。
「確かにね。アンタは強いわ。この国でもまともにやり合える戦士は少ないでしょうね。」
「その通り。」
「でもアンタ、
「なに?」
クレマンティーヌの挑発とも取れる物言いにデイバーノックは眉を顰める
「そのご自慢の防御であの怪物の攻撃魔法を防げるのかしら?
殺し屋らしい『戦士に優位を取れる魔法詠唱者』って点を加味しても、多分あいつには及ばないでしょ。」
「何が言いたい?それとお前になんの関係が……」
「アタシ、その気になればそのイビルアイより強いのよねぇ。」
「は?」
そう言いながら、大きく屈み、片方の指の先を地面に付け、反対の手でエストックを握る奇妙な構えを取るクレマンティーヌ。その言葉に、デイバーノックは困惑する。
「何を言って……」
「だけど最近、ずっと格下ばっかと戦っててさぁ、ブレイン・アングラウスやガゼフ・ストロノーフ、青の薔薇のガガーランとかじゃないと釣り合わないとか息巻いてたけど、いい加減そう言うほどの実力すら無いほどに落ちちゃってるんじゃ無いかって、最近負け続きで気にしてたのよね。」
だからこれは錆落とし。そう言うクレマンティーヌに、デイバーノックはブチギレる
「ふざけるなよ小娘風情がこの儂を、"不死王"デイバーノックを……」
しかし、怒りと共にクレマンティーヌを嬲り殺しにするための攻撃魔法を放とうとした瞬間、彼女の姿が掻き消える。そして気付けば、デイバーノックの腐肉の肉体が裂けていた。
「な……に……?」
一撃だけでは終わらない。そしてデイバーノックは走り抜けるクレマンティーヌの影しか捉えることは叶わず、彼女が走り抜けるたびに、鈍くなった感覚が肉体が切り裂かれたことと風の到来を告げる。
まるで斬撃の特性を持つ旋風に吹かれたかのように、どこから来るのかもわからない攻撃に防御の体制を取ることしか出来なかった。
「なんだ……」
起きてる状況を理解できず、デイバーノックは悲鳴を上げる
「何が起きている!?」
ついにはエストックで目玉を突き刺され、その視界すら奪われる
「何をしたぁ!?」
駆け抜ける彼女が巻き起こす突風に煽られ、エンチャントした炎すら掻き消えた時、デイバーノックのズタボロの手足は肉体を支えることすら出来ず、無様に転がっていた。
「あちちっ……やっぱ防具がないと上手くいかないわねぇ。」
ちりちりと、あの夥しい数の冒険者プレートで飾られたビキニアーマーではなく、漆黒の剣の手で新たに購入されたレザーアーマーをデイバーノックが纏っていた炎で焦がしながら、クレマンティーヌは加速を停止する
なんてことはない。彼女はデイバーノックにエストックを刺し、走り抜けながらそれを捻って、彼の腐肉を引き裂きながらエストックを引き抜く。これを繰り返してデイバーノックの肉体をズタズタにしていったのだ。
漆黒聖典元第9席次、その名前は伊達じゃない。今まで彼女は〈スピードこそあるが決定打のある攻撃に欠ける〉と評されて来た。実際、漆黒聖典時代は法国の有する強力な装備でそれを補っていた。だが、速度しかないということは、その速度だけで、人類最強の逸脱者達の中に並んだと言うことでもある。
風の如く駆け抜け相手を打ち破る、それを極まった俊足であれば、相性の悪い格下程度圧殺できるほどの力となる。
「ば、馬鹿な……これ程の、強さ……」
「いやぁ安心したわ。ちゃんと英雄の領域に足踏み入れてた筈なのに、鈍りすぎて落ちるとこまで落ちてたのかと思ったもの。」
あ、そうだ。と戦慄するデイバーノックに告げる
「アンタが自分のエンチャントで燃えないのは、炎に耐性を与えるマジックアイテムのおかげみたいだけど、その加護、ちゃんと体内まで届いてるのかしら?」
「ま、待っ……!」
その言葉に嘆願するデイバーノック。だがクレマンティーヌはお構いなしにフィンガースナップ。エストックに刻まれた〈火球〉の魔法を発動する。
「ぐっぎゃあぁああああああ!?」
「アッハハハハハ!いいじゃないネズミ花火みたいでもう最高!」
デイバーノックの体内に炎が放たれ、アンデットにとって弱点となる炎を口や傷口から吐き出しながら悶えるデイバーノックを見て、自虐的に笑うクレマンティーヌ。
「いやぁ、あの甘ちゃんには悪いし確かに恋してるほどかって言われるとそんな事ないかもだけど、やっぱ私はこれが好きだわ。」
笑いながらそう言うクレマンティーヌ。そう、結局自分は変わっちゃいない。仮面ライダーからのお情けで生きてるだけのクズで残忍な悪党。
殺しや拷問を自分の欲望の捌け口として行使するような人間。ただ、漆黒の剣の面々の周りが生きやすいだけの……
「そう、変わっちゃいない……筈なのよ。」
だから多分、この湧き上がってくる吐き気は、デイバーノックの腐肉の匂いのせいだと考えながら。
派手な音が響き渡り、大きく吹っ飛ばされたブラッドスタークが地面を転がる。
「ハハッ、やるねぇ。いい連携だ。」
「そりゃどうもっ!」
そう言いながら突っ込んでくるルプスレギナの戦斧を、スチームブレードで受け止める。彼女だけなら、対応はまだ簡単だ。パワーもスピードもあるが、取り回しで勝るこちらのスチームブレードでカウンターを叩き込めばいい。だが、
「そぉれ、ユリ姉!」
「破ァッ!」
「ぐぁっ!?」
こちらの反撃を飛び上がりながら交わした所に突っ込んできたユリの一撃で吹っ飛ばされる。しかしこの時踏ん張ろうとしてはいけない。その予測を、あえてその勢いを利用して地面を転がることで逃げ、彼女達前衛の後ろから飛んでくるシズの銃弾を回避する。
直後、右手で地面を叩くようにして跳ね起きるが、
「どこへいかれるのですか?」
「うぉっ!?」
気配を消した近づいて来ていたソリュシャンが、その指先を青く輝かせ、嗜虐的な笑みを浮かべながら絡みついてくる。
「素敵な装甲。きっと味わったことの無いような味なのでしょう。」
「くっ……」
「変身を解除なんてつまらない真似はなさらないでくださいね?じっくり、じっくり、普通の人よりも装甲の分だけ時間をかけて溶かして差し上げます。」
スライムである真体を広げて、じわじわとこちらを飲み込もうとするソリュシャン。
「そいつは……ごめんだな!」
指を動かし、スチームブレードを操作する。
「ぐっ、このっ!?」
迸る電撃に怯んだソリュシャンを引き剥がす。
「おー痛ってぇ、俺まで痺れちまった。」
「だったら……!」
そこにナーベラルが両腕に雷光を迸らせて襲来
「
「おいおい、またそれか?」
「
避けようと起き上がったが、迫る球の弾速は意味での魔法と比べて異様に遅い。
「そういうことかっ!」
気づいたスタークが防御の体制をとった直後、大爆発。周囲に撒き散らされる雷撃が、周りの建物を破壊しながらスタークにもダメージを与え、まだ残っていた。建物の壁に叩きつけた。
「あーあー、派手に街をぶっ壊しやがって……こんだけ暴れてりゃ、そこの女を引き渡す為に控えさせてた兵士の1人や2人来そうなものなんだがな……」
よろよろと立ち上がりながらボヤけば
「あぁ、通りで居たのですね。邪魔くさいゴミムシが。」
ナーベラルはそう答える。
「なに?」
「いやぁ、アンタが来るまで暇だったもんで。」
「いい
けらりとして言うルプスレギナと、そう言って腹部を撫でるソリュシャンの姿に、ヒルマがひゅっと息を呑む音が聞こえた。
「全く、私は捨て置いていても問題ないのではと言ったのですがね。」
リーダーのユリはそう言うが、あくまで『どうでもいい存在をわざわざ殺す必要などない』というだけで、強く止めはしなかったのだろう。
「今はあったでしょう。このヤブカに、希望などないと理解させられたのですから。」
スタークの様子を、救援が来ないこと、あるいは部下達を殺されたことによる動揺と考えたナーベラルがそう言って、
今まで散々狭い道を利用してプレアデスの内少数を相手させ続け凌いでいたスタークに、転移の魔法で背後から殴りつけ、『こう言うことも出来たが自分は手加減していたのだ』と格の違いを分からせようとしたのだ。
しかし、響いて来たのは装甲を殴りつける金属音ではなく、彼女の獲物である打撃武器と杖の混合武器を、掴んで止めた音だった。
「いや、よかったよ。」
「な、何っ!?」
「ナーベ、下がりなさい!」
こちらの連携を前に防戦一方だったのが一変、転移したナーベラルの不意打ちを防いで見せたことに、異変を察知したユリが殴りかかるが、
「そういうことなら、多分これを見せても見る奴は居ないからな。」
「なっ!?片手で?」
棘のついたガントレットによる一撃をスチームブレードで受け止められる。
「この、放せ……!」
「駄目、武器を放しなさい!」
一撃、また一撃とユリの拳をパリィするスターク。それを妨害しようと、スタークが片手で持ち手を握り抑える武器を引こうと腕に力を込めるが、スタークの重心がブレる様子はない。
その様子に憤り、さらに力を込めようとするのに気づいたユリが声を上げるが、そこに気を取られた隙を、スタークは見逃さない。
ユリの拳を弾くと同時にナーベラルの武器からスタークが手を離す。突然のことに、体制を崩すナーベラル。そのままスタークは、離した手でユリに掌底を叩き込み、さらにナーベラルの胸元に肘を打ち込む。
「なっ!?」
「がっ!?」
「よくもぉ!」
蹈鞴を踏む2人のカバーにルプスレギナが突っ込んでくるが、逆手に持ったスチームブレードで戦斧を受け流し、くるりと体を捻りルプスレギナのがら空きの腹に蹴りを叩き込む。
「ぐっ……っ!?」
火花が散るように迸る紫のオーラ。そのダメージによろめくルプスレギナ。しかし、直後、大きく目を見開きその身体が強張る。
「あっ……え?」
「やっぱ、ヒーラーが前に出るもんじゃないな。」
「ルプーーーー!?」
視線を落とせば、彼女の足に伸びるスティングヴァイパーの先端が、ルプスレギナに毒を注ぎ込んでいた。ユリの悲鳴をBGMに倒れ伏すルプスレギナを前に、その毒牙はスタークの元へと収まっていく。
「よくもぉ!」
「おいおい、お前だって散々殺したろ?」
激昂して獲物を振るうナーベラルの攻撃を、スチームブレードで受け止めながらスタークは笑う。
「俺の仲間はウッキウキで殺したのに、お前の仲間が傷つけられたらキレるのか?随分都合がいいなぁ。」
「黙れッ!我ら姉妹を、偉大なるナザリック、至高の御方、アインズ・ウール・ゴウンに使える私たちと、お前達のような
「ハハッ、いい怒りっぷりだ!」
その言葉に激昂したナーベラルの連撃を受け、弾き、避けながらスチームブレードをトランスチームガンとドッキング
「はあぁあああぐっ!?あっ!?」
「隙が突きやすいってもんだ!」
発射での連続攻撃にナーベラルが怯む。それを妨げようとシズが狙いを構えるのを見越して、ナーベラルの胸ぐらを掴みシズの射線上に掲げて見せる。
「!?」
「ぐあっ!?シズ……!?」
慌てて射撃体制に入ったのが仇になったか、狙いの修正も行動の制止も間に合わず、引き金を引いてしまう。結果発生するフレンドリーファイアという事態に撃った側も撃たれた側も動揺。
「そこで動きを止めるなよ。」
響く列車の汽笛音。ライフルから打ち出された列車型の大きな弾丸が、山なりの軌道を描き建物の上から撃ち下ろしていたシズを、建物の瓦礫ごと地面に落とした。
「シズ!?」
「ゆ、ユリ姉……」
「ルプー、どうしたの!?これは……」
「おかしいっす……毒が、毒が消えないんすよ……」
直後、か細い声で呼ぶルプスレギナの元にユリが向かえば、足首から紫色の何かが、毛細血管のようにルプスレギナに浮き上がり、彼女の表情を苦悶に歪ませていた。
必死で
「他の魔法を試しても、どうやっても、痛いのが消えてくれないっす……苦しいっすよ……ユリ姉、助けてほしいっす……」
普段刹那主義であっけらかんとした能天気な妹が、か細い声で助けを求める様子に、慌てて自分の持つナザリックから預けられた上位の回復アイテムを利用するが
「なんで、どうして……!?」
慌てるユリの手を、ルプスレギナが掴む。
「ルプー、待ってて今」
「ユリ姉……ごめんなさいっす……」
「こんな時に何を……!」
「私……ヘマしちゃったっす……!」
そんな事ない。これから取り返せばいい。そんな、いつもならルプスレギナが自分から言うような言葉が、口から出てこなかった
「ユリ姉を、ナーちゃんを、助けたくって突っ込んで……なのに……」
「貴方は何も悪くない!助けるから、大丈夫だから……ボクがなんとかするから気をしっかり持って……!」
普段は「私」として抑えている素の一人称まで曝け出して叫ぶが、ルプスレギナは苦痛に歪ませた表情で、涙を流しながら嘆く。
「私……舐めてたっす、アインズ様に、あれだけ気をつけろって言われてたのに……ナーちゃんがいて、ソーちゃんがいて、エンちゃんだけは、居ないけど……プレアデスのみんなと一緒に戦うなら、負けはしないって……でも……」
結果はこれだ。毒が治らないのにはシンプルな理由がある。これがエボルトの力で生成した、地球に存在しない毒素が利用されている。
いかに魔法と言えども、外宇宙の、それも元を辿れば異世界の産物など、この世界のことわりに当て嵌め、治癒を行える道理がない。
そんなことがユリに分かるはずもなく、幾度となく治癒を試しては失敗に終わり、頭を抱えることしか出来ない。
「ごめんなさい、ユリ姉……もっと、ちゃんと……」
出来ていれば、そんな言葉を言う前に、ルプスレギナの身体から力が抜ける
「ルプー?ルプー!?嫌っ!」
仮面を取り払い、涙を浮かべながらルプスレギナをユリが抱き抱える。だが、ルプスレギナにもはやそれに応える力はない。
「つらいっす……」
そんな言葉を残して、ルプスレギナは紫色の粒子になって消えた。
「あ、あぁっ!?」
「だいぶ持ったな。人間なら、数秒で塵になっちまうんだが……」
消えないでくれと、悲鳴をあげて霧散していく粒子を慌ててかき集めようとするユリを前に、フレンドリーファイアでダメージを受けたナーベラルを放り捨てたスタークは言う。
「お前ぇっ!」
「おっと、今度はお前か?」
激昂したソリュシャンの猛攻に、スタークはトランスチームライフルをブレードとガンに分離させて応対。
「はぁああああああ!」
そこに一泊遅れて、ユリが加わる。
「ハハっ、いいぞ、もっとお前らの底を見せてみろ!」
「調子にぃ……」
笑うスタークに、ソリュシャンはメイド服を脱ぎ捨て、青く光る粘液のようになって襲いかかる
「そんなものでえぇええええ!」
「だろうな、そうくると思ったから」
起動したスチームブレードの冷気を振り払い、飛び出した先には、トランスチームガンを構えたスタークが。
「おかわりを用意しておいた。」
そこにはすでにフルボトルが装填されている。まずい、と思った時には冷気で鈍ったからだでは避けられない領域まで攻撃が迫っていた。
ブラッドスタークの必殺技の直撃にびしゃびしゃとソリュシャンはそのスライムの肉体を撒き散らす。ぶよぶよと緩やかに蠢きながら、しかしソリュシャンは最期の力を振り絞り吠える
「ユリ……姉様!!」
「うぉおおおおお!」
「おっとぉ!」
スタークの背後から、ソリュシャンの特攻を隠れ蓑に近づいたユリだ。雄叫びを上げながら突っ込んでくる彼女に、スタークはスチームブレードを振るう。それが彼女の首を捉え、撥ね飛ばしたと思いきや身体だけでスタークをがっしりとホールド
「うぉっ!?」
「甘く見たな……ボクはデュラハンだ!」
身体から外れボールのように地面を転がる頭で吠える。
「だが、抑えるだけなら……」
「いいや十分だ、ナーベラルゥ!」
その言葉に顔をやれば、ボロボロの身体に鞭を打ち、空中に浮遊しその両手に一際大きな雷を纏わせるナーベラルの姿が見えた。
「撃てぇええええ!ボクごとぉ!」
「くっ、こいつぅ……!」
トランスチームガンを撃ち込み、スチームブレードで切り付ける。しかしそれでもユリは止まらなかった。デュラハンとはゾンビ、アンデットの一種である。
彼女はその攻撃に痛みを感じない。怯みはするが、維持と根性を総動員して耐える。ルプスレギナの言うとおりだ、自分たちは油断していた。プレアデス集結という内容の任務に浮かれてそのツケを払う羽目になった。
嗚呼なるほど、目の前の男は自分たちプレアデスの一人一人が相手をするには格の違う相手だったのだ。プレアデスの中では人間に対して明確に見下した感情を持たないユリやシズも、ナザリックを『お仕えすべき至上の物』『最優先すべき大切なもの』といった認識が存在している。
そして、多少なりともこの世界の情報を得て、この世界の人間が自分たちには遠く及ばない『弱い』種族であると言う認識も。
プライベートで出会い性格的に気にいるなら仲良くするが、任務で殺せと命じられれば容易く殺す、その程度の存在。思えばこの認識は驕りだったのだろう。
だがそれでも負けられない、プレアデスの維持がある。ルプスレギナ、ソリュシャン、シズ、自分も首を刎ねられた。だか、誰か1人でもチームが立っていれば、自分達の勝ちだ
「
「ボク達を……プレアデスを……」
「〈ハイ・ドラゴニックサンダー〉!」
「舐めるなぁあああああああッ!」
放たれるのはナーベラルの最高火力、人智どころかこの世界の最上位ですら習得しているか怪しい、第八位界魔法
竜の形を模した雷ではなく、ユグドラシルでも最上位のモンスター、正真正銘のドラゴンから放たれるブレスを再現したその一撃は、唸りをあげてスタークの元へと迫る
「はぁああああああ!」
「ぐっ……ぉおおおおおお!?」
スタークが咄嗟に胸元から2体のコブラを召喚し盾にするが、それすら押し切ってスタークに直撃し、大爆発。ユリの身体も、それに巻き込まれて灰となるのを、彼女は目撃していた。
「はぁっ……はぁっ……やっ……た?」
「やった!やったんですよユリ姉様!」
その光景に現実かどうかを一瞬疑うユリ。だが直後、空中でいつものクールぶりはどこへやら、感情を爆発させてはしゃぐナーベラルの姿が
「ついに、ついに!私達があの忌々しい下等生物に目にものを見せてやったんです!」
思い知ったかと、ザマァ見ろと、高笑いするナーベラル。その様子に眉を顰めるが、確かに、ここまでの苦戦と達成感を考えれば仕方がないかと、ユリは言う
「それじゃあ、申し訳ないんだけど、私の頭を持ってくれる?治癒で体を復活させないと……」
「あ、そうでしたね。申し訳」
ありません。そう言おうとした時、乾いた破裂音が響いた。
「あぇ?」
裏返ったような声が出たユリの、そのこめかみを横から弾丸が貫いていた。その衝撃で、ユリの頭部がボールのようにバウンドする。また一つ、また一つと破裂音が響き、その度にゴム毬の様に跳ねるユリの頭部には穴が開き、腐った血液と脳漿を撒き散らす。
身体を失った状態で弱点の頭部を無惨な姿にされ、プレアデスのメイド長、ユリ・アルファは気がつけば生き絶えていた。さらに、追加で何発か銃声が響く。
「ユリ姉様ぁあああああ!?」
その光景に、ナーベラルは思わず悲鳴をあげた
「いやぁ、驚いた。なかなかガッツあるじゃねぇか。見直したぜ。」
「ば、ばかな……」
響いてきた聞き覚えのある声に振り返れば、トランスチームライフルを構え、上空に照準を向けていたスタークが、煙の中から出てきたのだ。
装甲はいくらかダメージを負っているのか霞んでいるが、損傷らしい損傷も見受けられない姿で
「何故だ……?」
その様子に、ナーベラルは困惑を隠せない。
「何故、生きている?何故大したダメージを負っていない!?第八位界魔法だぞ……例えどんなアイテムを使っていようと……人間ごときに耐えられるはずもない!?」
「人間ごとき……ねぇ。」
「そもそもなんで急に力が上がった!?途中まで私達が勝っていた!!プレアデスが、至高の御方に造られた我々が、ナザリックの一番槍が、負けていいはずが……」
「あぁ、そっちの質問なら簡単だ。」
スタークはそう言いながらトランスチームガンとスチームブレードを分離。銃口をナーベラルに向けて言う
「本気を出した。それだけだ。」
「な……に……?」
「アンタも分かるだろ、別に今の今まで本気で戦ってた訳じゃない。だが今みたいな連携も、異形の特殊な種族との戦いも何ぶん初めてでなぁ。ついつい遊びすぎちまった。悪いな。」
肩をすくめてそう言う姿に、戦慄する
「つまりお前は……私たちの連携を見るためだけに、あんなにもやられていたふりを……」
「いやぁ実際、大したもんだ。最初はあの程度の力でいいかと思ったが、俺にここまでやらせたんだからな。
最期のに関してはマジでヤバかった。後ちょっとで変身が解除されちまうところだったよ。」
装甲がこれじゃ、分からないだろうがなと、そう言いながら掲げるのは、フルボトル。ブラッドスタークとしての力に加え、ルプスレギナに注入した毒や高速移動の様に、地球外生命体エボルトとして固有の能力を有している。
そしてその中に、人間に認識できない空間シールドを形成し、敵からの攻撃をシャットアウトするという機能がある。
とはいえ、これはフルボトルとそれを収める箱、パンドラボックスの中の成分を利用し完全体に近い領域まで到達しないと引き出せない力だ。
「この姿では、俺は本来の力の1%も出せやしない。」
ボトルの揃ったパンドラボックスがあれば、一時的にその力を引き出すことは可能だが、パンドラボックスがあればの話だ。
ここにあるのは六本のフルボトル。その中に残留するエボルトの力は、ほんの僅か
「だからコイツは賭けだった。」
咄嗟に引き出した6本分のフルボトルの力を全部バリアに行使、その結果、見事そのバリアはスタークへのダメージを抑えてくれた。
「アンタのお姉さんの身体も、いい盾になったよ。」
「……うわぁああああああああ!」
そして最期の言葉に、スタークとは違い灰になったユリの肉体に、結局味方を殺すことにしか己の魔法が役立たなかったことに、ナーベラルは吠えた。その両腕で杖を振るって殴りかかろうとして、閃いたスチームブレードで太ももを一閃。がくりと足から力が抜ける。それでも武器を振ろうとした腕も、腱を切断され武器を取り落とす。
「認めない!認めてなるものか!!お前みたいな、お前みたいな
「それなんだが……」
フルボトルをトランスチームガンにセットしながら、スタークは言う
「一つ気になったんだが、お前、俺が人間に見えてるのか?」
「ッ!?」
その質問の真実を察したナーベラルは、まさかと今までにない表情を見せた。まさか、この男は自分達と同じ様に潜り込んだ何かなのか?そしてそれを、ずっと己は見抜くこともできずに下等生物呼ばわりしていたのか?
己の過ち、とんでもないものに気づかず放置してしまっていた、その大きさに恐怖する。
「ハハッ、いいねぇその表情。審美眼のないメイドにはお似合いだ。」
「すたぁあああくぅううううううううう!」
「チャオ♪」
スタークの煽りに再び顔を歪めたナーベラルに、スタークはそう、別れの挨拶を言って、ナーベラルという怪物をさらに上からかっ喰らう怪物が、引き金を引いた
至近距離から直撃し、ナーベラルは地面を光して弾丸に数メートル引き摺られて爆散し、生き絶えた。
「ま、こんなもんか。あとは……」
「どうするんですか?」
背後から聞こえてきた声に、一瞬動きを止めたスタークはため息をつく
「おいおい、この展開前にもやったぞ?いつからそこにいたんだ?」
「ついさっきです。もし、プレアデスの皆さんがやられてるところにいたら、静観できる訳ないですから。」
振り返った先にいたのは、オドオドとした様子を取り払った少女の様なダークエルフの少年、マーレ。怒ってる。一目でそう感じるオーラに、肩をすくめて言う
「おじさん、ちょっと疲れてんだ。だから戦うなら今度にして欲しいんだが……」
「許すと思いますか?」
「だよなぁ……」
ガッカリと肩を落として、先ほどのナーベラルを遥かに変える量と規模の魔法陣を前に、トランスチームガンを構えるのだった。
一方、少し時は戻り裏口からの突入班、ブレイン達と共に入り込んだニニャを待ち構えていたのは
「まさか、仮面ライダーと老人、どちらかに表の六腕を任せると思えば、付き人だけで相手をしようとはな。」
舐められたものだ。いや、こちらが侮りすぎたか?と言うのは、全身に動物の刺青を刻んだスキンヘッドの輝くワイルドな男、ゼロ
「アタシとしてはラッキーだわぁ。あの忌々しい仮面ライダーは、絶対こっちにきて欲しいと思ってたもの。」
そう言うのは、その隣に腰掛ける女男、奴隷商コッコドール
「コッコドール?何故、釈放はまだ先じゃ……」
「書類上はね。牢屋の兵士にも、こっちの息がかかってんのよ。」
そう言って肩をすくめる姿に歯噛みするクライム。そして
「姉さん!」
「セシー…………」
2人のいる場所から少し高い場所に、両手両足を杭で固定され、磔にされたツアレだった。さらにコッコドールが指を弾けば、部屋に張り巡らされた天幕が降りて、その裏にあった檻がいくつも露わになる
「なっ……」
「これは……」
「なんか、面倒なガキがいてね、そいつが言いふらしたのよ。きっと仮面ライダーが来て助けに来てくれるって」
檻の中には、無数の子ども達が囚われていた。
「最近その噂が広がっちゃってねぇ、"教育"がやりづらいったらありゃしない。」
だからこれはショーよ、とコッコドールが言う。
「仮面ライダーを、民衆を救う
「今ここでお前を引き裂き、それを証明する。」
フルボトルを取り出して、ゼロがトランスチームガンを装填する
言葉を唱えて引き金を引けば、吹き出した煙が全身を包んでいき、笑みを浮かべたゼロの顔が見えなくなっていく。
時折輝く煙の中の影が変貌する。スキンヘッドの巨漢から、刺々しいアーマーの怪人へと。怪しげな音声と共に変貌していく
次に煙が晴れた時、そこに居るのはナイトローグ。黒い体に工業地帯の様な鉄パイプのアーマー、そこに闇夜の月の様に輝くイエローのコウモリの様なバイザーが不気味に光る
「やはりゼロが……」
「王国警備隊長……」
決定的な姿を捉えたセバスはもう十分と前に出ようとするが、それをニニャが遮った
「セバスさん、僕も、仲間達と同じ様に我儘を一つ言わせてください。」
「聞くだけ聞きましょう。」
「姉さんを、僕に助けさせて欲しいんです。」
「……理由を、伺ってもよろしいでしょうか?」
それはつまり、自分は手出しをするなと言うことだろうか。囚われている子ども達も、ツアレも、ナイトローグを倒した上で助けると言うことだろうか。
「姉さんは、今でも囚われてるんです。過去っていう見えない鎖に。」
それは自分を思い出すだけで、自分に関わる辛い記憶まで引き出されてしまうほどに。
「今の姐さんは、セバスさんに助けられて、辛かった記憶をセバスさんと、セバスさんに纏わる幸せなことで、封じ込めている状態です。」
そんな状態が『救われている』なんて口が裂けても言えやしない。ただ誤魔化しているだけだ。
「僕じゃなきゃ、駄目なんです。僕が、姉さんに纏わりついている辛い記憶を、全部取り払って助けます。」
そう言って構えるのは、ビルドドライバー。
「あなたでなければ、ツアレを救えませんか。」
「はい。」
「ではお任せしましょう、仮面ライダー。」
セバスは少し考え込んだのち、ツアレの為と引き下がる。
「ほう、2人がかりで来ないのか。」
「貴方は、僕が倒します。」
腕を組んでいうナイトローグ。ビルドドライバーを腰に装着しながら言うニニャに、フッと笑う
「どうやってだ?」
あの時は手も足も出なかったのに、そう言うローグに、ニニャは無言で取り出したアイテムを見せる
「……なんだそれは?」
「僕もわかりません。これから初めて使います。でも……」
フルボトル二本分よりも若干大きいそのアイテムを上下に振れば、中でシャカシャカとまるで液体が混じるかの様な音がする。
「ここには、多くの人がいる。理不尽に人生を、自由を、幸せを奪われて、悪意に晒され続けてきた人が!
僕は、仮面ライダーは、そう言う人たちを、助けてくれって手を伸ばして泣いてる人たちの為に戦うんです!」
あの時、クレマンティーヌもそうだった。自分を偽り、狂気の殺人者をどこか疲れながら演じて、自分に助けなど来ていいわけがないと諦めていたが、それでも心のどこかで思っていた筈だ、助けてほしいと。
ツアレも、ここの多くの子ども達も、今は黙っているが、心のどこかで言っている。誰か助けてくれと、苦しいんだと。だからそれを助ける為に、守る為に、ナイトローグを倒す。それが仮面ライダーのあるべき姿だと、そう言ってそのアイテムの上部にある、プルタブを引き開ける
カシュッ!と小気味良い音が響いた。
スタークはどうする?※注意!このアンケートの結果でストーリーが分岐します 分岐によっては取り返しのつかない結末に至るのでご注意くだ
-
ニニャとンフィーレアだけを確実に逃す
-
一か八か、全員を逃す