アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
それではお楽しみください。
「スタークさん!」
声を上げ、走りながらドライバーのハンドルを回す
「変身ッ!」
「スタークさん、大丈夫ですか!?」
「ニニャ……ハハッ、一皮剥けたようだな。うっ!?」
立ち上がりながら笑うスタークだが、魔法の直撃した箇所が痛むのかそのままよろけて膝をつく。
「スタークさん、手当を……!」
「馬鹿野郎!さっさと逃げろ!コイツはスパークリングでも部が悪い!」
「そんな……!」
彼の審美眼に何度も助けられてきたスタークの言葉に、ニニャは戦慄する。だが、拳を固く握りしめ
「でも、僕はスタークさんを見捨てて逃げるなんて出来ません!」
「この野郎……嬉しいこと言ってくれるじゃあないの。」
やれやらと、立ち上がりながらスタークはトランスチームガンとスチームブレードを構える。
「仮面ライダー……僕が用があるのはそこの赤いコブラだけです。貴方はまだ、殺せと言われていませんから。」
平身低頭で非礼を謝罪して命乞いをするなら助けてあげましょうと、そういうマーレに対して首を横に振る。
「スタークさんを、見殺しにするわけにはいきません!」
「困ったなぁ。」
はぁ、とため息をつき、底冷えする様な冷たい目でこちらを見据えてドス黒い殺気を噴き出してくるマーレ。
「早く帰りたいのに、そんな風に邪魔をされたら」
そう言いながらゆっくりと杖を頭上に掲げ、紫と緑のオッドアイを闇夜に怪しく輝かせる
「もう殺すしかないじゃないですか。」
「まずい、逃げろ!」
その言葉に思わずニニャが飛び上がった直後、スタークとニニャの足元から石畳を破壊しながら植物が伸びてくる。
「これは……ダインさんと同じ
「余計なことを考えるな、やられるぞ!ぐっ!?」
それぞれドリルクラッシャーとスチームブレードで荒狂う植物を防ぐが、そのまま盛大に建物に叩きつけられる。
「ただのドルイドじゃありません。僕はハイ・ドルイドのジョブをマスターしています。貴方のお仲間は精々相手を拘束できる程度の植物を生やす程度のことしか出来ませんが……」
ナザリック第六階層を姉アウラと共に守護する彼は、ナザリックの中でも珍しい人間種だ。デミウルゴスやアインズといった異形種には、種族レベルというその種族特有のレベルがあり、それを上げることで、その種族独自の能力を開花させて行くが彼は違う。
人間種故ダークエルフという種族としての職業適正やステータスの伸びやすさこそあれど種族レベルを持たない。だがその分、職業レベルで埋まる分の経験値を、他のジョブの獲得・強化に回せるという利点がある。
マーレはその幅の広さを、全て森林系の魔法詠唱者などの職業で固めている。
「その気になれば地形さえ変えられる。この王国一つ、僕の力があれば森の中に沈めることも訳ないです。」
石の飛礫が降り注ぎ、木々が打ち付け大地が隆起して怪物の様に大口を開けてくる。
周囲の建物をめちゃめちゃにしながら降り注ぎ、彼に近づくことすら叶わない。マーレ・ベロ・フィオーレ、彼に与えられた階層守護者の序列は、守護者最強と名高いシャルティアに継ぐ第二位。今のニニャは勿論、300年の研鑽を積んだエボルトも、本来の力を出さないブラッドスタークの状態では厳しい領域だった。
「それでもぉ!」
ニニャはラピッドバブルを弾けさせ、襲いかかる木々を足場に跳躍。マーレに接近するが
「
泡を吹き出し突き進むラビットタンクスパークリング渾身の正拳突きは、ふわりと甘い香りと共に広がった色鮮やかな葉と花弁によって阻まれる。
「そんな……!?」
「嫌な泡ですね、植物を傷つける。」
一方のマーレは、そう言いながら杖を振りかぶる。
「貴方なら、力一杯叩いても問題ないですよね?」
ゴウッと、魔法詠唱者の少年の細腕からは聞こえてはならない音がした。杖の一撃。ゼロが見たら鼻で笑う様な、技も駆け引きも武技もない、力任せの一撃。それが今日受けたどんな攻撃よりも、重かった。
「がっ……はっ……?」
気づいたら、その一撃を腹に受け、吹っ飛ばされて地面転がっていた。音を立てて、建物の壁をぶち抜き、土煙と爆音をあげて周囲を破壊しながら地面を転がり、大通りの石畳を大きく削りながらようやく止まった。
「そん……な……っ!?」
光と共に変身が解除され、傷だらけの体で必死に息をする。一撃、ダインより遥かに高位の魔法を使いこなすドルイドが、ナイトローグを纏ったゼロ以上の一撃を放って来る。そんな相手、正真正銘神話か何かから出てきたかのような存在だ.覚悟を決めて会得した力、ラビットタンクスパークリングが全くもって通用しない。
「だから言っただろ?やめとけってな。」
そんなニニャに、スタークがそう呼びかけて来る。
「スタークさん……」
「物事には順序って物があるんだ。お前と戦わせるには、奴らは早すぎた。」
「奴ら……敵のことを、知ってるんですか?」
ニニャの問いに、肩をすくめて答える。
「ま、以前に少しな。」
「あぁ、こんな所にいたんですね。」
その言葉に、びくりとニニャは肩を跳ねさせる。あ、変身が解除されてる。と、蟻が他の虫の死骸を運んでるところを目にした様な、そんな雰囲気で言うマーレは、ゆっくり、ゆっくりと恐怖を掻き立てるように歩いて来る。
「どうしますか?まだやりますか?今ならまだ許してあげますよ?」
笑顔でそう言って近づいて来る様に、思わず身体が平伏しそうになる。屈服して、ヒーローの使命とか何もかも放り出して、命だけでも助けてくれと泣いて詫びたい。そんな恐怖が身体を駆け巡る。
「(でも、それでも……僕は……!)」
恐怖を振り払う様に眼をぎゅっと閉じ、首を振るってマーレに向き直る。その時、目の前に赤色のアイテムが差し出された。
「これって……」
「以前、話していたアイテムさ。」
「これが……」
それは、あの黒粉を摂取した子供がニニャの腕の中で死んだ後の話だった。
『禁断のアイテム、そう呼ばれるビルドの強化パーツが、向こうの手にある』
『禁断の……アイテム……?』
『ハザードトリガー。コイツを使って変身すれば、絶大なパワーを獲得する上に、ハザードレベルも急上昇させられる。』
『禁断のアイテム、というくらいだ。当然、それだけの効果を得るデメリットがあるんだろう?』
その話を聞いていたイビルアイが問い掛ければ、スタークは頷く
『コイツの問題は、そのブーストに使われてる強化剤だ。コイツが一定以上脳に届くと……』
トントンと頭を叩いてから、握った手をパッと開く
『その刺激に耐えられなくなって意識を失っちまう。で、目に映る物全てを破壊する』
あの連中が理性を失ってたのは、あの黒粉にその強化剤が混ざってたからだろうと、そう言っていたスタークの言葉をよく覚えてる。
「八本指の使っていた……」
「あぁ。危険すぎる代物だ。正直回収したはいいが、お前に渡すのは時期尚早。そう思ってた。」
ごくりと唾を飲み込むニニャに、だが、とスタークは続ける。
「お前はスパークリングを使いこなしてみせた。ナイトローグを倒したんだろ?正直、お前一人でできるとは思ってなかった。」
「僕一人の力じゃ……勝てませんでした。みんなの力があったからです。」
スタークの言葉にそう言えば、スタークはフッと笑って
「そんなお前になら、コイツを託せる。俺は信じてるぜ、お前ならコイツの力を正しいことに使ってくれる。誰かを傷つける為じゃなく、守るためにな。」
じゃあ、あいつの相手をして来る、と言い残し、トランスチームガンを連射しながら高速移動で駆け巡り、マーレとの戦いに身を投じていくスターク。
「(そうだ、このままだとスタークさんが、それに、こんな大規模な攻撃、これ以上放っておけば王都はめちゃめちゃになる……!)」
そんなことはさせられないと、ニニャは赤いアイテム、ハザードトリガーのボタンにかかったカバーを外す。そして、ビルドドライバーの上部にセットしてボタンを押す
響いた音は、どことなく重かった。スパークリングではなく、フルボトルを取り出して振る
スーパァーベストマッチ!
ボトルをセットしてレバーを回す。ガタガタゴットンズッダンズダン、ガタガタゴットンズッダンズダン、回す度に響いてから暴力的な音と共に組み上がっていくのは、いつもと違う金属の質感に、イエローのストライプが刻まれた、プレス機の様なライドビルダー。
「(前が……見えない)」
それにはばまれ、ニニャの視界から戦うスタークとマーレが消える。その異質さに冷や汗が出る。これは禁断のアイテムだ。長時間使えば意識を失っちまう。そんなスタークの言葉がリフレインする。
「(でも、戦わなくちゃ。)」
大切な人を守れない。
「変身」
覚悟を決めて、ライドビルダーを閉じる。ビーッ!という警告音と共に閉じられたライドビルダーが、数旬の後に高い音を立てる。もしアインズが聞いていれば「電子レンジの音なんて久々に聞いたなぁ」などと考えていたかもしれない。
プレス機が開いた時、そこに居たのは
「ハハッ、早速使ったか!」
「黒い……仮面ライダー?」
ブラックハザード!ヤベーイ!
吹き出す煙と共にライドビルダーが消え、以前のカラフルな装いとは打って変わっての漆黒のボディに、ビルドを象徴とする赤と青、兎の耳と戦車の砲塔を模した複眼だけが輝いている。
仮面ライダービルド、最凶の形態、ハザードフォームだ。
「これが……禁断のアイテム……」
「呆れました。まだ力の差がわからないんですね。」
戦慄するニニャ。しかしそんな様子に、マーレは残念そうに言った。
「なら、もう死んでください。」
マーレは、普段こそおどおどしている面が目立つが、その中には冷淡かつ残忍な本性があり、時に嬉々として周りが引くような拷問を提案する残虐性を持つ。
プレアデスという大事な仲間を殺したスターク相手にその冷淡さが発揮され、普段の様相を取り払う彼は、スタークとは違いどうでもいい敵であるニニャに向けて、雑に魔法をぶっ放す。例えそれを躱して来たところで
「
ふわりと広がる花の防壁で防いで終わりだと、シールドを展開しようとして
「え?」
その壁が砕け、こちらに迫る蹴りを目にすることになった。
「ぐっ!?」
杖を盾にそれを防ぐが、腕がびりびりと震えて大きく後退する。
「凄い、この力なら……」
「調子に乗られたら……困ります!」
戦えている。そのことに喜ぶニニャに、マーレはその信じられないほどのパワーで杖を振るう。だが、先ほどの様な不意打ちじゃない以上、今のニニャなら
「(見える、攻撃が、対応できる……!)」
流石に完璧なタイミングでカウンターを叩き込むなんて該当はできないが、マーレは魔法詠唱者。ムキになって杖で殴り掛かれば、大きく隙を晒すこともある。飛び上がって杖を振り抜いたのを避けた時、マーレは空中で大きな隙を晒すことになった。
「しまっ……」
「そこだぁっ!」
すれ違いざまに裏拳を叩き込めば、今度はマーレが吹き飛ばされる番だ。二階建ての建物の壁をぶち破り、部屋の中や転がる。
追いかけようとしたニニャ。しかし、その腕に白い鞭が巻き付いた。
「これ以上マーレに酷いことしようっていうんなら、アタシが相手になるよ。」
アウラだ。どうやら彼女の担当である八本指のアジトを抑えて、最愛の弟、マーレの援護に来たらしい。
「もう一人……ぐっ!?」
警戒心を募らせるニニャ。しかしその時、視界がぐわんと揺れた。
「おーい、どうしたの?大丈夫?」
こちらを訝しむ様な、アウラの声もよく聞こえない。
「(意識が……そんな、こんなに早く……)」
ハザードフォームに圧倒的な力をもたらす強化剤、プログレスヴェイパーの負担に脳が悲鳴をあげ、意識を飛ばす。そうすれば
『目に映るものを全て破壊し出す』
そんなスタークの言葉がリフレインした直後、ニニャの手から力が抜け、だらりと下がった。
「ん?んん?」
いざマーレの援護に来てみれば、マーレをぶっ飛ばした仮面ライダーの様子がおかしい。そんな状況にもしかして具合悪いのかな?とか考えていた直後、まるで気絶する様に手から力が抜けたのだ。そして、ゆっくりとこちらを見据えて来るビルド
「何……?」
なんとも言えない不気味な空気が広がる中、突如、ビルドが腕に巻き付いたアウラの鞭を握りしめて、思いっきり引っ張った。
「おわっ!?」
同時にアウラに向けて一直線に駆け出し、引っ張られて来たアウラの腹めがけて拳を放つ。
「がっ……はっっ!?」
引っ張られて来た勢いも相まって、凄まじい衝撃がその小柄な身体に突き刺さる。あまりの衝撃に、肺に溜まった空気を吐き出してしまう。だが、それだけでは終わらない。
空いた片手をハザードトリガー上部のスイッチへ伸ばす
ガタガタゴットンズッダンズダン、ガタガタゴットンズッダンズダン。レバーを回しながら発せられる暴力的な擬音。シュールにも聞こえるそれが、まるで死刑宣告の様にアウラの耳に響く。
一時的にハザードレベルを急上昇させつつ、腕のHZデッドリーグローブと足のHZヴァニッシュエンドシューズ、二つの持つ敵を分解、霧散させ防御力を引き下げる力を最高潮に達させる。その状態の拳が、アウラの顔面に突き刺さった。
「がっ!?」
重い音を立てて拳が突き刺さり、歯が頬に当たって口の中でが切れて血の味が広がる。殴られた衝撃で、この世界の並の武器ならノーガードで受け止めてしまえるアウラの小さく軽い体は石畳を砕きながら地面をバウンドし、そこにもう一度、拳が突き刺さった。
「ぶっ!?」
一撃目から僅かに数瞬、めしゃりという音がなんの音か想像もしたくない。先ほど肺の中の空気を吐き出したことあいまって、口に血が広がりまるで溺れている様な感覚すらある。そんな中、もう一度バウンドしたアウラに、禍々しいオーラを纏った前蹴りがモロに入る
「おえっ」
ダメージに、衝撃に、最早叫ぶことすら出来なかった。衝撃でまだ夕飯を食べてない胃から透明な胃液を吐き出しながら吹き飛ばされる。
「おねえ……ちゃん……」
起き上がったマーレは、最愛の姉がまるでバスケットボールか何かの様に吹っ飛ばされていくのを見た。
「………ない。」
マーレの心が急激に冷えていく。同時に何かが燃え上がる。下を見れば、着ていた衣服はダメージを受け一部が破れ、土埃でところどころ汚れている。
自分の創造主たるぶくぶく茶釜その人が、自分達のために作ってくれた大切な衣装が。さらに自分に傷をつけ、何よりも許せないのはアウラを、最愛の姉をボロ雑巾の様にされたことだ。
「許さない認めない許さない認めない許さない認めないゆるさないみとめないゆるさないみとめないゆるさないみとめないゆるさないみとめないゆるさないみとめないゆるさないみとめない」
ブツブツブツブツとまるで呪詛の様に呟きながら、マーレは杖を構える。
「すり潰して、ズタズタにして、死ぬこともできないままぐちゃぐちゃの肉塊にして豚の餌にしてやるッ!!!
その魔法をマーレが唱えた瞬間、王都の街並みが捲れた。
その衝撃は、ヒルマの屋敷の正面で、屋敷の手下達をつまみ食いしつつナザリックへと運搬していたプレアデス最後の一人、エントマとの戦いを殺虫魔法
「マーレ……少々やりすぎですよ。」
「これも、お前の仲間の仕業なのか……?」
先ほどまで渡り合えていたエントマとは異なり、圧倒的な力を持つヤルダバオト。彼にじわじわと痛ぶられていた三人は、その光景に戦慄する。
海から離れた場所にある王都に、土の津波が発生していた。一部が隆起して暴れ回るといった話ではない。広大な地面がめくれて、建物や木々を飲み込み、粉砕しながら王都の端にある壁にぶつかり、壁を砕いで小高い山を作り上げる。その津波に飲まれそうになり、イビルアイは思わずボロボロの二人を抱えて飛翔した。
「一体どれほどの犠牲者が……」
派手な戦闘になるかもしれないと,一部の市民を避難させてはいた。だがこれほど広大な範囲、一体王都の人口の何%が犠牲になったことか、想像もしたくない。
一方のヤルダバオトも、巨大な水晶により顔を潰された
「やれやれ、一体何が……」
状況を把握していないながらも、これほど派手な真似をいったいどうして引き起こしたのか確認せねばならないと、辺りを見回すデミウルゴスの目に、金と緑の二匹のドラゴンが現れた。
「
マーレの使役する、レベル90を超える超強力なモンスター。普段は移動手段にしているそれだが、一頭がまるでなにかに押さえつけられてるかの様にバタバタともがいている。直後、まるでそれにとどめを指すかの様にもう片方の背から攻撃魔法が放たれ、その鱗を穿った。
「なぁっ!?」
今放たれたのはマーレの魔法、であれば明らかなフレンドリーファイア。さらに直後、もう一頭のドラゴンも、まるで何かに殴られたような衝撃を受けて墜落していく。
「一体……なにが……」
もはやエントマの仇を甚振っている場合ではないとヤルダバオトを名乗る悪魔、デミウルゴスは飛翔した。
「はぁっ……はぁっ……いか……なくちゃ……」
一方アウラは、ボロボロの身体で痛みに悶えていた。痛い。口の中に広がった胃液が傷口に染みてジクジクと痛む。痛い。さっきの一撃であばらでも折れたのか、胸が酷く傷んで呼吸が苦しい。痛い。顔面を殴られるという初めての経験、可愛らしい顔が歪みその痛々しさを主張する、
それでも、なんとか立ち上がる。頼りになる魔獣たちは連れてきて居ない。だがそれでも
「マーレが……戦ってる。」
偉大なるナザリック?至高の御方?アインズ・ウール・ゴウン?違う,だから立つんじゃない。ただ最愛の弟を、あんな危険な相手と戦う弟を援護しなければ、お姉ちゃんなんだものと、必死に足を動かし、進むのだった。
「マーレ、なんという……」
これほどの大惨事を引き起こせるのは強大な力を持つナザリックの中でも、範囲殲滅を最も得意とするマーレくらいだ。それを知るセバスは、王都で巻き起こる大惨事に息を呑む。
「セバス様……」
「ツアレ、ご安心ください、あなたは私が……」
「違います!」
震えるツアレを安心させようと言うセバスに、ツアレはそうじゃないと首を横にする
「セバス様、私を連れて行ってください!ニニャの、あの子の元まで!」
「しかし、場所がわからないのでは……」
「いえ、恐らく、この大災害を引き起こした者の所です!」
姉妹ゆえの第六感か、それとも先ほどの戦いを目にしてか、ツアレはそう言う!
「きっと、あの子が戦って居ます!先程よりも強大な敵と……」
「…………」
その敵が自分の同僚だと、口にすることはできなかった。
「一声、いえせめて一目、戦いを見届けられる場所に……」
「(先程発揮したあの力では……本気になったマーレが相手であれば手も足も出ないはず……)」
ツアレの言葉に、セバスは考え込む。今の仮面ライダーでは、マーレは力不足だろう。だが、そもそもマーレはプレアデスがブラッドスターク暗殺に失敗した時の後詰の役割だったはず。
では戦ってるのはブラッドスターク?いや、ツアレのこの必死さは戦ってるのがニニャだとある種の確信を持ってなければ説明がつかない。
「まさか……」
あの飄々としたコブラ男の顔がチラつく。彼が、ニニャに何かをしたのではないかと。ならば、止めに行かない訳には行かない。
「分かりました。捕まって居てください。」
「はい、セバス様!」
ツアレを抱き抱え、セバスは凄まじいスピードで駆け出した。
「おいおい、一体どうなって……」
一方、クレマンティーヌと漆黒の剣の面々も、その光景を眺めて居た。
「ありゃりゃ、こりゃお互い冷静じゃねぇな。」
「お互い?それってどう言う……」
「まさか……例のアレか!?」
その様子を見ていたスタークの様子と物言いから、まさかとクレマンティーヌが声を上げる。あの話の場には彼女たちも参加していた。故にハザードトリガーの存在を知っていたのだ
「あぁ、ハザードトリガーを使わせた。」
「……あの馬鹿ッ!」
「おいおい、どこ行くんだよ。」
思わず駆け出したクレマンティーヌを、スタークは呼び止めた。
「決まってる!止めに行くんだよ!」
「やめとけよ。ハザードは凶暴だ.お前が行ってどうにかなる相手じゃない。」
「……これがあれば、話は別でしょ。」
そう言ってクレマンティーヌが取り出したのは、トランスチームガン。スタークは、それにへぇ……と笑みを浮かべる。
「意外……でもないが聞いておくか。そいつを出してまでニニャの奴を止めたい理由はなんだ?」
「決まってんでしょ。」
奥歯を噛み締め、気に入らないという表情全開で言う。
「目に映るもの全てを破壊するビルドなんて、アタシは気に入らない。だから止める。それだけよ。」
「ハッ、素直じゃないねぇ。」
悪党らしい物言いに、スタークは笑って言う
「蒸血の意味を知ってるか?」
「蒸血の……意味?」
その言葉に首を傾げるクレマンティーヌに言う
「血が蒸発するほど燃え盛る、強い想いさ。」
「強い、想い……」
それは暗に、お前にそれがあるか?と問いかけている様で
しばらく考え込んだのち、クレマンティーヌはフルボトルを装填。目を瞑って考え込む。そして、
その言葉を口にした。
引き金を引けば、吹き出した煙が彼女の顔を表情もろとも覆い隠す。
時折輝く煙の中の影が変貌する。レザーアーマーを纏った漆黒の剣の冒険者ミカンも、ハンティングトロフィーをじゃらつかせた殺戮者クレマンティーヌも、漆黒聖典の第九席次もそこにはいない。
「行ってこい、ナイトローグ。」
スタークのその言葉に頷いた後、怪人は駆け出した。自分を化け物から人間に戻したあの少女が、今度は怪物にならないために。
「認めない認めない認めない認めない……」
墜落したマーレは、二頭のドラゴンが倒れる中、同じ様に起き上がった紫とイエローの瞳の黒いビルドに向き直る。大地を隆起させると同時に召喚した二頭のドラゴンで上空から爆撃を仕掛けようとしたマーレ。だがビルドはボトルを変え、オクトパスライトハザードフォームとなり、フューリーオクトパスを利用してドラゴンの一体に取り憑いたのだ。
そのままフューリーオクトパスで首や翼を締め上げ、マーレの乗るドラゴンに激突させようとしたので、引き剥がすために攻撃魔法を放った。だが、この世界は既に彼が居た
悲鳴をあげ墜落するドラゴンからこちらに飛んできたビルドは、そのままフューリーオクトパスを腕に巻き付け、8倍となったハザードフォームのパンチをドラゴンに見舞い墜落させたのだ。
スーパァーベストマッチ!
ガタガタゴットンズッダンズダンと、素早くボトルを切り替える
ブラックハザード!ヤベーイ!
「ヒューマンのくせにヒューマンのくせにヒューマンのくせに……!」
そう連呼しながら、ラビットタンクハザードフォームとなり向かってくるビルドに対しマーレも杖を構えて土の山の上で魔法を発動し応戦する
「倒れろ、倒れろよっ!!」
だが、その攻撃を掻い潜り、ビルドは向かってくる。この姿は、意識こそ失うが、本能のままに目に映るもの全てを破壊するのかと言えば、厳密には大きく異なる。
この姿は、脳が刺激に耐えられなくなった、意識などの敵を倒すのに不要なものを全てシャットダウンするのだ。敵を倒すという意思だけが残り、冷淡に、機械的に、最高率で敵を倒しにかかる、言わば理性の暴走とでもいうべき姿。それ故に、怒りとダメージから来る痛みで思考の鈍ったマーレの魔法の隙を掻い潜り突っ込んでいくことが可能になる。
「このっ……!」
懐に潜られた瞬間、咄嗟に出たのは杖での打撃。しかしそれに対してビルドは腕を掴み、握り潰す様にしてへし折った。
「ぐっ……あ"あ"あ"あ"あ"!?」
その痛みに、思わずマーレは杖を取り落とす。だかその腕を掴んだまま、ビルドはマーレの顔を殴りつけ、手で押さえて膝を打ちつけ、最終的に掴んだ腕を離しつつ蹴り飛ばしてみせた。
「がっ……ぐ……」
「なんだ……あれ?」
「仮面ライダー……ニニャ。いや、本当にあの少女なのか……?」
その光景にガガーランは戦慄し、イビルアイはそれがニニャ本人かすら疑ってしまう。
「馬鹿な……これではまるで……」
倒れ伏すマーレにゆっくりと近づいていくビルドの姿に、デミウルゴスは動揺を隠せない。まるでこれは、そう、本来ならば自分たちが
「蹂躙……」
「セシー……」
セバスも思わずつぶやいた。そう、蹂躙、暴虐、圧倒。この光景にはその言葉が相応しい。相手が端正な顔立ちの少年ということも相まって、思わず目を背けたくなる様な光景だった。
ゆっくりと近づいていくビルドは、そのままマーレの首を掴んで持ち上げる。
「う……あ……」
ガタガタゴットンズッダンズダン、ガタガタゴットンズッダンズダン、ハンドルが周り、音が響く。ドス黒いオーラがビルドから吹き出しその身を包んでいく
「まずい!」
「いけない!」
デミウルゴスとセバスが駆け出す。
「マーレ……!」
「クソッ!」
遅れてその光景を視認できる距離にとどいたクレマンティーヌとアウラも、その様子にこの後起こることを想像してしまい、止めるために動き出す。
ヤベーイ!
「あぐあっ!?」
紫電が走り、バチバチと火花が散りる。悲鳴をあげたマーレの体が痙攣し、力が抜ける。ビルドが離せばその身体は、重力に従いゆっくりと落ちていく
そんな中、ビルドはハンドルを回し、音を響かせる。ガタガタゴットンズッダンズダン、ガタガタゴットンズッダンズダン、殺意の旋律が収まらない
「辞めろ……!」
必死で飛翔するデミウルゴスの声も、
「やめろ……ッ!」
ツアレを守ることを止め、駆け出すセバスの声も
「ふざけんな、ふざけんなよ!」
武技を持って加速するクレマンティーヌの怒りの言葉も、
「セシー……!」
祈る様な、嘆願する様な、ツアレの呼びかけも
「やめろぉおおおおおお!」
自分の痛みを無視して駆け出すアウラの血を吐く様な叫び声も、通じない。
落下していくマーレの首筋に、一直線に伸びた足が叩き込まれる。
そのまま吹っ飛ばされて、ごろごろと地面を転がり、アウラの足元で止まった。
「あ、ああっ……!」
目の前に転がってきた、弟の変わり果てた姿に跪き、顔を抑えてアウラは絶叫する
「マーレェエエエエエエエ!?」
というわけでハザード初登場回でした。前回がスパークリングだったのに早すぎる?いやおっしゃる通り。
でも今後もスパークリングも各ベストマッチフォームもしっかり活躍させる予定ですのでご安心ください!それでは二十二話でお会いしましょう。チャオ♪
クレマンティーヌはトランスチームガンを
-
手に取る
-
手に取らない