アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話   作:月光舞詐称者姫

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第二十三話 業火のカウントダウン

「オォオオオオオオオッ!」

「甘い!」

 

 腹の底から声を発しながら大上段からの打ち込み。しかしそれはスタークのスチームブレードに受け止められてしまう。

 そのままスタークの左腕の膂力だけで受け止められてしまった青年、クライムは剣を大きく弾かれ倒れ伏す。

 

「力任せに打ち掛かってどうする!?相手のパワーはお前よりも遥かに高いぞ!」

「はい、すみせまん!」

「シイッ!」

「領域を捨ててきたか!」

 

 その後、居合の体制で打ち掛かってきたブレインの攻撃を弾き、打ち合いに発展する。

 

「棒立ちのまま、的になっちゃ困るんでな!!」

 

 先程トランスチームガンの銃撃でハメ殺された経験からか、そんなことを言いながらブレインが刀を構えて打ちかかる。

 

「だが、それがなければ切り札が切れないんだろ。一体どうする?」

「こう……するのさ!」

 

 スタークが大きく剣を弾く反動を利用してくるりと回りながら後ろに下がり納刀。徐にブレインの足元を中心に広がる空間。彼の有する武技、領域。発動している間その場から動けないというデメリットを代価に、その領域内の相手の動きを精密に知覚し、彼の卓越した集中力がその剣技を必中にまで昇華させる。

 そこから放たれるのは武技〈瞬閃〉居合の体制から放たれる神速の斬撃。領域によりそれを急所への必中とする彼の必殺技

 

「〈秘剣・虎落笛(もがりぶえ)〉ッ!!」

 

 甲高い音と共に、スチームブレードが落ちる。

 

「領域の瞬時展開……か。」

「まだまだだ。消耗が激しすぎる……」

 

 刀を振り抜いた体制のまま、滝の様に汗を流しながら荒い息をするブレイン。確かに数合打ち合っただけにしては、消費が異様だ。それほどまでの極限の集中。それがおりなす領域の高速展開。戦いの中での切り札の使用。

 

「これ1発で動けませんじゃあ、流石に話にならないからな……」

「慣れねぇことやってんだから当然だ。まずは数をこなせ。そうすりゃ、次第にできる様になる。」

「あぁ、精進させてもらうよ……」

 

 スタークのアドバイスにそう頷いて力を抜く。あんなことがあった手前、ニニャに近づかない様にしているスタークは、こうして二人に稽古をつけて居たのだ。

 

「(ブレインはハザードレベルの伸びが悪い。やっぱ単純に『強くなりたい』『自分の人生を証明したい』って想いじゃ伸びねぇか。)」

 

 だが、ブレインは戦闘力の伸びこそいいが,ハザードレベルが上がりにくい。彼の持つ想いはけして負の感情とは言い難いはずだが……こういう想いに反応しやすい自分の遺伝子を打ち込むか?いやでもなぁ……と悩んでいると

 ドッガァン!という盛大な爆発音が響き渡った。見れば、王城の塔の辺りだ。ブレインは思わず刀を片手に身構えるが……

 

「あぁ……またか。」

「ラナー様……」

「ま、また……だと?それに王女様の名前を……一体どういうことだ?」

 

 スタークは呆れた様に、クライムは若干心配そうな声で言うが深刻な事態では無さそうな物言いに困惑する。

 

「いやぁ……それがだな。」

 

 ジト目で見てくるクライムからバツが悪そうに顔を逸らしたスタークにブレインは察する。あぁ、この人が原因か……と。

 

「一応見に行ってきます。」

「じゃ、俺も行くか。」

「お、おい!?説明はなしか!?待ってくれよクライム君!?」

 

 そんな二人を、ブレインは慌てて追いかけるのだった.

 

 

「ブレイン?お前もきたのか!」

「ストロノーフ!?やっぱり大事じゃないか!?」

 

 王城、塔の部屋へと続く細い道は、ブレイン達が来た時には、複数人の兵士達が抑えて、彼らと共に日焼けした肌の筋骨隆々とした巨漢、王国最強と呼ばれる戦士長、ガゼフ・ストロノーフが居た。

 アインズの配下、シャルティアに惨敗し絶望しきって居たブレインを拾った経緯から親睦を深めて居たブレインは、お前が出てくるってことは……と言うが

 

「いや、実はそうでもないんだ。ただ一応、ラナー様に万が一があってはいけないからな。」

「ラナー様に……?」

 

 黄金の王女に何かある可能性のあることなんて大事じゃないのか?と頭に無数の『?』を浮かべて首を傾げるブレインは、その先の部屋に視線を向ける。もうもうと湧き立つ黒煙で中の様子が見えなず、刀を片手に身構えるが……そこから出てきた人物達に目を向いた

 

「ど、ドワーフ!?なんでここに……」

 

 出てきたのはむさ苦しい親父顔の小人達。ドワーフ、そう呼ばれる鍛治や鉱石を扱う技術に長けた亜人種だ。失敗した、煙たい、強度が足りんかったか……と口々にいいながら煤汚れたドワーフ達が出てくる。そして……

 

「けほっ、けほっ……皆さんすみません。あの合金のままでは、どうやら強度が足りない様ですね……」

「ラナー殿下!」

「あれが……」

 

 そう言いながら現れるのは、頬を煤まみれにし、村娘の様な簡素な服装の上から白衣を着たラナー。頭にトレードマークの王冠が無ければ、あれが黄金と称えられた姫君であるとブレインの中で結び付かなかっただろう。

 

「ラナー様!」

「クライム、来てくれたのね?」

 

 その様子を見て駆け寄ってくるクライムに、彼女はパッと顔を輝かせる。

 

「はい。また、爆発ですか?」

「えぇ、残念だけど……」

「待て待て、ドワーフの爺さん連中を引き連れて何やってるんだ?いい加減俺にも説明してくれ。」

「アイテムの開発だよ。」

 

 そんな様子にブレインが問い掛ければスタークがようやく答える

 

「俺や仮面ライダーの使うアイテム。そいつの設計は結構複雑でな。それを理解できる奴を探してたんだよ。」

「それがラナー殿下だった……と言う訳か。」

 

 まさかこの王女にそんな才能があったとは……と驚くブレインを尻目にスタークは問いかける。

 

「で、どんな具合だ?」

「まだ全体の三割も理解できてません。ある程度わかる理論で実験しようとした結果、失敗してしまいました……」

「アンタでも、か……」

 

 がっかりして言うスタークにカチンと来たのかムッとした顔で言う。

 

「あ・の・で・す・ねぇ、ここに書いてある基礎的な知識どころか技術すら未知の領域なのです!」

 

 銃、エンジン、バーナーに電子機器。見たことも聞いたこともない様な薬品の数々

 

「元素とか化学式の解き方とかそう言うところからなんです!むしろ私だからこそ初歩的な事を理解出来てるんですよ!」

 

 エボルトが用意したノートに記されて居たのは天才科学者桐生戦兎の頭の中。それは仮面ライダーのアイテム開発に関連したことだけでなく、それを作るために必要な科学製品の作り方や科学、数学の理論なんかも、彼の理解できる範囲で記されている。その全てが、ラナーにとって数百年先の領域だった。

 

「俺の故郷じゃ、何百年も前に発見し、開発されていた物だからなぁ。」

 

 フシャーッ!とその物言いに吠えるラナー。だがスタークは笑みを浮かべて言う。

 

「俺の言ってる意味もわかっただろう?」

「えぇ……癪ですが、思い知りました。」

 

 その言葉にブレインとクライムは首を傾げるが、

 

「貴方は、私の世界を広げてくれた。」

 

 そうラナーは続ける。誰も並ぶものが無く、色褪せ退屈だった世界に、科学という刺激を投げ込んでくれた。理解できるからこそわかる。わかってしまえる。確かに居たのだ。この広い世界に、自分と並び立つ頭脳の持ち主がこんなにも。魔法も、武術もない。ただ頭脳だけがものを言う理論の世界。その最奥で、地球の外の技術すら利用したアイテムの開発者と使い手が笑みを浮かべている。

 ここまで辿り着いて見せろ、この理論を解き明かしてみせろと。

 

「必ず、必ず追いついて見せます。ですからその為の手伝いくらいはしていただきますよ。」

「ハッ!いい目をする様になったな。」

 

 あの満たされた、どこか空虚な目は、今やいつか届いてみせると言う渇望と、その為に全てを利用すると言うガッツ。どことなく狂気を孕んでいる様にも感じる光で満たされて居た。

 

「今のままではどのアイテムを作るにも設備が足りません。そしてその設備を作り上げるだけの素材や技術も。」

「もちろん手伝うさ。で、何を取りに行けばいいんだ?」

「それなのですが……」

「スターク様!ブラッドスターク様はいらっしゃいますか!?」

 

 そこに大慌てで駆け込んでくる兵士の言葉でラナーの依頼は遮られる。それに不機嫌そうな気配を醸し出すも、ここまでくるとは余程の緊急事態だと兵士に声をかける。

 

「どうしたのですか?そんなに慌てて……」

「し、至急、王都に残る戦略になりうる冒険者に声をかけよとの報です。」

「あん?なんだ巨大な怪物でも出たのか?」

 

 その物言いにスタークがそう問い掛ければ、兵士は冷や汗を流しながら首を横に振る。

 

「現れたのは……軍勢です!不死者(アンデット)の軍勢が、この王都を取り囲んでおります!!」

 

 その言葉に、その場にいた全員が緊張に包まれた。

 

 

「冗談だろ……」

 

 城壁から見下ろしてそれを眺めたクレマンティーヌは、思わずそう呟いた。彼女が目にしたのは、見渡す限りのアンデットの群れ。だが、問題はそこではない。

 

「ありゃ、全部魔法の武具だぞ……」

 

 どう見ても、敵は雑兵のスケルトン。だがの一体一体が装備しているのは、とてもそれに相応しいとは思えない、法国で見ても上から見た方が早いであろう上質な魔法のエンチャントされた武具。それを軍隊が標準装備として身につけている。

 明らかに雑兵の格が違う。夥しいその数もだ。こんな相手と戦えば、王国軍ではひとたまりも無い。オマケに空を見れば、この辺りにだけ暗雲が立ち込めている。

 

「第六位階魔法、〈天候操作〉(コントロール・ウェザー)?こんな魔法を使って何を……」

 

 クレマンティーヌには想像もつかないだろう。使い方によっては天変地異を巻き起こし、飢饉続きの村にこれで雨の一つでも降らせば救世主の如く扱われる大魔法を、まるで劇団が雰囲気作りの為に用意するセットか何かの様に、単なる演出として利用しているということが。

 思考すら、次元が違う。そんなアンデットの兵士たちが動き出し、クレマンティーヌは思わずトランスチームガンを取り出した。その直後、その神話の軍勢を掻き分けて現れたのは、アインズとその配下達。

 

「死者の大魔法使い(エルダーリッチ)?いや違う、あれは……」

 

 ズーラーノーン時代、一度だけ見たことがあるあの死の信奉者達の首領の姿。あの時も、その圧倒的な存在感に気圧された。だが今回は奴以上だ。

 

「死の……支配者……いや、」

 

 死の神スルシャーナ。故郷スレイン法国において信仰される六大神の一角。他の神々が天へと帰る中、1人残り法国を見守り続けたと言う偉業の守護神。まるで経典に語られるその力、その威光を闇に染めた様な、そんなオーラ。

 

「これが"上"かよ……!」

 

 天変地異を起こせる魔導士を従える訳だ。覚悟しなければならない。自分たちはとんでもない相手に喧嘩を売ったのだ。

 

「ニニャ……」

 

 真っ先に浮かんだのは、あの甘ちゃんの顔だった。迷わずフルボトルをトランスチームガンにセットする。

 

「蒸血ッ!!」

 

〈MIST…MATCH!!〉

 

 ナイトローグへと変身した彼女は、翼を広げて飛び立っていった。

 

 

「馬鹿な……あれは……あのローブは……」

 

 一方、その様子を見て居たガゼフは、そのアンデットの姿に強い既視感があった。忘れもしない。法国の秘密部隊に襲われ命を狙われた時,そこを助け、自分と襲われた村を守ってくれた救世主。仮面で顔こそ隠して居たが、その装備は間違えようがない。

 

「ゴウン……殿……」

 

 魔皇ヤルダバオト、そう名乗り青の薔薇の面々を蹂躙し、仲間にはデミウルゴスと呼ばれて居た悪魔や、王都の一部を飲み込んだ土砂災害を巻き起こし、黒いビルドに討伐されたダークエルフの少年。その親玉が、王都をめちゃめちゃにした元凶が、自分の大恩人だというのか。

 

「あいつは……!!」

「ブレイン、お前も何か知っているのか!?」

 

 同じ様に、神話の軍勢の中央を食い入る様に見つめるブレインにガゼフが声を上げる。だが、彼が見ていたのはアインズでは無かった。

 

「シャルティア……ブラッドフォールン……」

「何?」

 

 ブレインが出会い、その刀で無造作に伸ばされた指の爪すら切り落とせなかったと言う彼の絶望の象徴。それがいると言うのか?

 

「何処だ!?」

 

 ガゼフの問いに、ブレインはゆっくりと指を刺す。そこには、白い帽子とドレスで着飾った貴婦人然とした仮面の吸血鬼がいた。

 

「姿こそ変えてるが、あの気配は間違えようもない。」

 

 あんな強大な存在が部下でしかないのかと戦慄しているブレイン。ガゼフもまた、彼らの計画が理解できず、ただひたすらに冷や汗を流すのだった。

 そんな中で、中央のアインズが手を掲げれば、無数の魔法陣が光り輝く。

 

「なんだ……あの魔法は……」

 

 この王都で一番魔法に長けているであろうイビルアイですら知りもしないその光が天へと達した直後、王都の一角が炎の壁で包まれた。直後に現れるのは、無数の顔を持ち浮遊するモンスター

 

『聞ケ!汝等ニ対シ、偉大ナル御方カラオ言葉ガアル!』

『偉大ナル御方ハ対話ヲ望ンデオラレル!』

『コノ国ノ代表者、ソシテ、罪人タル仮面ライダート魔導士イビルアイ、ソノ一味ハ前ニ出ヨ!』

 

 心をかき乱す危険な声で、王国中にそう告げてくる。

 

『急ゲ!怠慢ハ偉大ナル御方ヲ怒ラセルダケト知レ!』

 

 その言葉を聞いて、ブレイン達は炎の壁を見る。王都の一角を包んだそれは、その言葉と共に建物一つを追加で飲み込んだ。遅ければ遅いほど,これを広げていくという脅しだろう。急ぐしかない。弱い人間はいつだって、選択肢が無いのだから。




今回は短めです。

クレマンティーヌはトランスチームガンを

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