アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話   作:月光舞詐称者姫

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 感想でのアドバイス色々とありがとうございました!

 作品の紹介文にも掲載させていただきましたが、今回から文章の誤字脱字などのチェックにAIを利用させていただきました。明確に違和感を感じるような文法は修正できたと思います。


第二十四話 罪禍のボーダーライン

「ほ、本当に行かれるのですか?ザナック殿下……」

「仕方ないだろう。兄上は八本指との取引の件で軟禁中だ。研究で忙しい我が妹に、アレを押し付けるわけにもいくまい。」

 

 部下にそう問いかけられるザナックは、そう言って肩をすくめながら、その重い体を部下と協力して馬の上へと押し上げる。

 

「せめて鎧を……」

「いらんさ。奴らも急げと言っていただろ?それに、第六位階魔法を軽々行使する存在に、鎧が意味をなすか?」

「た、多少は寿命が伸びるのでは……」

 

 伸びるのは寿命じゃなくて、苦しむ時間だよ。とザナックは内心で毒づく。

 

「(八本指を抑え、その証拠をもとに腐敗した貴族も抑える。兄上(バカ)を失脚させ、愛しの我が妹(バケモノ)はスタークのおかげでめちゃくちゃマイルドになった。)」

 

 国を建て直すのはこれからなんだと、それを訳のわからない怪物共にめちゃくちゃにされてたまるかと拳を握り震える足を殴りつける。

 

「城門の前で青の薔薇、漆黒の剣と合流する!ここから先は死地と知れ!」

 

 ここに集まった兵士たちは、腕はともかくこの沈みかけた国を建て直そうと熱い思いで集まってくれた、求心力のない自分の数少ない同志達だ。ザナックは必ず活路を開いてみせると、硬い面持ちで、馬に乗って王都を進んでいくのだった。

 

 

「やーっと見つけた。こんな所に居たとはね。」

「クレマンティーヌ……さん……」

 

 ニニャは人気のない路地裏で、その衣服を汚しながら倒れ込んでいた。あの別れから大して経っていないというのにやつれ、口元からは仄かに酸味の強い匂いがする。ストレスで嘔吐。それでも逃げて、逃げる体力も使い果たしてここに倒れ込んだ、と言った所だろう。

 

「すみませんクレマンティーヌさん、あれだけ無様を晒すなと言われたのに……」

「別に?普通でしょ。誰だって人殺しはいい気分じゃないって。」

 

 ナイトローグへの変身を解除し、そう言いながら隣にしゃがみ込む。

 

「クレマンティーヌさんも……そうだったんですか?」

「私?いや全然。私ってばほら、イカれた人殺しだから。ケラケラ笑いながらやれたわよ。」

「嘘が……下手ですね。」

「うっさい。そこは素直に『この悪魔め!』とか言えばいいのよ。」

 

 あぁ嘘だ。ニニャの前では、殺人鬼の仮面は通用しない。最初に人を殺した時?吐いたに決まってる。むしろ顔色一つ変えずに任務をこなして見せたという兄に、バケモノめと思ったくらいだ。

 

「でも、最近は割とそんな感じよ。殺した数も相手の顔も、いちいち覚えちゃ居ないくらいには慣れちゃった。」

 

 むしろ、ズーラーノーンのクレマンティーヌは率先して楽しもうとしていたくらいだ。気づけば自分がその何倍もバケモノになっていた。

 

「あんたの言った言葉、案外間違ってないのかもね。」

 

 その言葉に、ニニャは驚く。今までも若干の共感はあれど、自分からそんな風に認めてくるのは初めてだったからだ。

 

「アンタのその感情、それが完全に無くなった時、アンタは私になる。」

「…………」

 

 いや、笑いながら欲のために人を殺す享楽的な殺人鬼(クレマンティーヌ)よりももっと恐ろしい物に。誰かを守る為に誰かを殺す、そのことへの躊躇を捨て、敵を屠ることを最優先する兵器になるだろう。

 その言葉にニニャはそのマントに顔を埋める様に俯いた.

 

「でも、アンタはそうはならなかったんでしょ。私と違って仲間がいるから。」

 

 そう言ってクレマンティーヌはバットロストフルボトルとトランスチームガンを手に取る。世界が生きにくくて堪らなくて、自分は逃げた。逃げて、殺して、そうした先で、自分から仮面をかぶっていた。ニニャも同じだ。理不尽に苛まれ、逃げて、悩み、そうした先で仮面を被った。だが、転げ落ちたクレマンティーヌとは違い、仮面をかぶった先でニニャは己の幸せを見つけていた。

 だが今、彼女はその居場所に戻ることを躊躇するほどの理不尽に、苛まれ続けている。

 

〈バット!〉

 

「血が蒸発するほどの強い意志、なんて言われても、私ってばこーんな奴だし、正直ピンと来なかったよなねぇ。」

 

 でも、今は違うと彼女はいう。運命ってやつはどこまでも残酷だ。自分との戦いで解決を後回しにした姉という心のしこりを八本指との戦いでぶつけて来たかと思えば、その戦いの直後に新たな、それもとびきり辛い試練を投げ込んで来た。

 

「私は燃えている。この血を焦がして蒸発させるほどの強い怒りで。」

 

 ふざけるな、ヒーローという宿命を背負った代償とでも言うつもりか。家族を守り、仲間を守り、見知らぬ誰かを守ろうとした先で、倒した敵の仲間から飛んでくる恨み言で、なんで彼女が苦しまなくちゃならないのだ。

 クレマンティーヌは怒る。理不尽に、宿命に、それに苦しめられる仲間の姿に、

 

「蒸血」

 

〈MIST…MATCH!!〉

 

 言葉と共に引いた引き金は、いつもよりも少し重かった。

 

〈バット!……バ、バット!!〉

 

 煙の中で、感触を確かめる様に手を握ったり開いたり。ハザードレベルの上下しないはずのナイトローグの身体が、不思議と前より馴染む気がする

 

〈FIRE!!〉

 

「ごねてたら引っ張ってでも連れて行くつもりだったけど……止めよ。アンタはしばらく休んでなさい。」

「えっ?」

 

 ハザードトリガーの反動だとでも言えばいいわけは立つわ、とナイトローグは火花を散らして翼を広げる。

 

「アイツらの相手は、しばらく私とアンタのお仲間の3人でやるから。」

 

 手に入れた力を体に馴染ませて、心を落ち着かせて、そうしたら

 

「また、いつもみたいに仲間とワイワイ楽しく冒険しなさいよ。」

「ま、待って、クレマ……」

 

 呼び止めるニニャの声を無視して、ナイトローグは飛び立った。

 

「(アンタが仲間に恵まれた私だって言うのなら、私がアンタを私にさせない。)」

 

 それが今の私の戦う理由だと、多くのものへの怒りを胸に、ナイトローグは飛び去った。だがそれは、彼女に考える時間を与えただけだ。

 

「僕は……やっぱり……」

 

 心に傷を抱えた彼女の癒やし方を、クレマンティーヌはまだ知らない。壊すことしかしてこなかった彼女では、ニニャの傷は癒せない。だがそれでも、せめて……

 

 

「どうやら、アタシらはヤベェ奴の逆鱗に触れちまったみてぇだな。」

 

 ガガーランは、やれやれと言わんばかりの表情で言った。デミウルゴスとの戦いでボロボロになった体はまだ完全に治りきっていないのか、所々に包帯が巻かれている。

 

「仕方がないわ。犯罪者とは言え、魔物に持って行かれるわけには行かないもの。」

 

 リーダーのラキュースは、チームに迷惑をかけたと謝るガガーラン達をそう言って擁護する。

 

「イビルアイ、それで、敵の戦力はどれくらいなの?」

 

 敵の強さを正確に測ることのできるイビルアイのタレント、しかし、イビルアイはずっと相手を見て震えるばかりだ。

 

「恐らく……一番弱い幹部ですら、本気を出してくれば5秒と持たないだろう。」

「それは……貴方が?」

 

 ティアの問いにふるふると首を振って言う。

 

「私たち、全員でだ。」

 

 その言葉に、彼女達の表情は暗くなる。彼女が言うのなら間違い無いと、仲間に絶対の信頼を置いているからこそ、自分達の状況に絶望するしかなかった。それでも

 

「せめて、胸を張りましょう。後ろの民達を心配させてはいけないわ。」

 

 アインドラ伯爵家の娘として、最高位の冒険者として、せめて死ぬとしても勇ましく死のうと、ラキュースは覚悟を決める。

 

「もしもの時はイビルアイ、貴方だけでも転移の魔法で……」

「ふざけるな!奴らの配下を殺したのは私だ。もし首一つで許されるのなら、それは私の……」

「まぁまぁ落ち着け二人とも。まずは相手の出方を伺おうじゃねぇか。対話のために来いっつってんだから、いきなり殺しはしねぇだろうよ。」

 

 そのガガーランの提案に頷き、全員が全員、仲間の為に覚悟を決めて合流地点へと向かうのだった。

 

 

 合流予定の城門。そこでスタークはルクルット達と待ち構えていた。

 

「よう、ニニャはどうしてた?」

「いちいち聞かなくても分かってんでしょ?」

 

 一番手はクレマンティーヌだ。その物言いと一人で来たことから、ルクルット達もニニャの状況を察する。

 

「アイツはしばらく休ませないとだめよ。本当ならアンタ達も寄り添わせとかないといけないくらい。」

 

 だが、恐らく連中の大本命は仮面ライダーの命だ。本命が欠席する以上、仮面ライダーの一味からこれ以上欠席者を出すわけには行かない。忌々しそうにクレマンティーヌは言う。

 

「療養させなきゃいけないほど、とんでもない代物だったのか?」

 

 そこに現れたのは、兵を連れたザナックだ。

 

「なるほど、八本指の麻薬部門から回収されるような代物な訳だ。」

「まるで噂に聞く帝国の四騎士の一人のようだな。」

 

 王国と長らく戦争をするバハルス帝国の幹部、四騎士と呼ばれる彼らの中には、その身に宿した呪いの代償に強力な力を得て四騎士の座に座る者もいると聞く。そう言うザナックにまぁそんなところだとスタークは言う。

 

「もしこれで、偉大なる御方……アインズの機嫌を損ねちまったら……悪いな。」

「仕方がないさ。もしこのまま全面戦争になるのなら、数少ない切り札だ。伏せておけるならそれに越したことはない。」

 

 そう言うザナックだったが、その物言いに反応する者がもう一人。

 

「やはり……あれはゴウン殿なのか?」

「ストロノーフ?お前どうしてここに……」

「ザナック殿下、僭越ながら私も護衛の戦列に加わらせていただきたく存じます。」

「それは構わないんだがストロノーフ、それにスターク、お前達、あの連中と関わりがあるのか?」

 

 ペテル達も初耳だと言う態度に、スタークはどこまで話せばいいか悩む。一方のガゼフはその質問に対しストレートに答える。

 

「以前お話しした、私の窮地を救っていただいた魔導士です。」

「強大な力を持った魔導士という話だったが不死者だったのか……」

 

 元々謙虚で実直だった男だが、部下を失いながらも自分は命を拾った経験から『自分などそこまで誇れる実力はない』と言い、その話題のたびに比べては自分は足元にも及ばないと語る存在。だが、ガゼフの話では高潔な仮面で顔を隠していたが物腰柔らかく紳士的だったという話だが……

 

「それがどうして、王都をめちゃくちゃにした連中の親玉を?」

「私もそれが知りたいのです。殿下、どうか……」

「お前ほどの男に頭を下げられちゃ、了承しないわけには行かんだろうさ。」

 

 ザナックはガゼフの態度にそう応じる。

 

「時間もないしな。そろそろ行くぞ。」

 

 その号令で、合流して来た青の薔薇の面々と共に、ザナックの馬のスピードに合わせて進んでいく。兵士たちの顔も、神話の軍勢に近づくにつれ緊張で強張って行く。玉座に腰掛けるアインズ。その脇にはアルベドとデミウルゴス。コキュートスとシャルティアがそれぞれ並んでいる。

 

「リ・エスティーゼ王国第二王子、ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフだ。」

「冒険者チーム青の薔薇代表、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ!」

「冒険者チーム漆黒の剣代表、ペテル・モーク」

「王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ!ザナック殿下の護衛で参った!」

 

 国、そして彼らが罪人と名指しした者達が所属する組織の代表が口々に名乗りを上げる。だが、アインズから言葉が返ってくる前に、アルベドが口を開く

 

「アインズ様は聞く姿勢がなってないと仰せです。」

「『平伏したまえ』」

 

 アルベドの目配せでデミウルゴスが口を開く。そうすればまるで重力の壁に叩きつけられるように、クレマンティーヌとイビルアイ、ブラッドスタークを除いた面々が地面に縫い止められるかのように這いつくばることになった。

 

「な、何……これ……?」

「分からない……何かの……魔術……!?」

 

 強制的にひれ伏すことになった面々の中でガガーランのような力自慢はなんとかそれに争おうとするが、次にデミウルゴスが抵抗するなと言えば体から力が抜けて地面にへばり付くしかなくなってしまう。

 

「おいおいアインズ、こりゃ一体どういうつもりだ?」

「どうやら、姿勢だけでなく言葉遣いもなっていない模様。」

 

 スタークの問いかけに、アインズは答えない。ただアルベドがそう言って腕を上げる。その瞬間背後から飛来したモンスターを、ナイトローグへと変身したクレマンティーヌが迎撃した。

 

「手荒だねぇ。俺はなんのつもりだって質問したんだが……」

「一々言葉にしないと分かりませんか?アインズ様のお言葉を拝聴するのです。ましてや罪深い罪人ならば、平伏し地面を見据えながらそのお言葉を静かに聞くべきでしょう。」

 

 手足が刃のように鋭い蜘蛛のモンスター。名を八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)叩き落とされた彼らが起き上がってじりじりと詰め寄る中、スタークは肩をすくめる。

 

「どうも、俺の知る常識とは違うみたいだ。郷に行っては郷に従うとするかね。」

 

 あの時こちらから謝罪しろと言う要求を蹴っておきながら、白々しく跪くスタークに、アインズは一瞬不機嫌になるが、そこでザナックが声を上げる

 

「アインズ殿……済まないが、俺……私と、そこのラキュース殿とペテル殿の3人は、立って話をさせて貰えないか……?」

「ほう?」

 

 その言葉に興味を持ったのか、アインズ様に図々しく要求とは……と怒りを向けるデミウルゴスとアルベドを手で制し、クレマンティーヌの肩を借りてアインズは問いかける。

 

「何故、その3人なのだ?」

「我々は……ここに対話の為に来た。チームの、王国の代表として、国を守る為に来たのだ……!」

 

 人望も、カリスマも、武勇も知恵もない。あるのはただ、それなりに優れた政治家の手腕だけ。だがそれでも、この沈みかけた国を少しでも良くしようともがくザナックは、自分の体を縛り、跪かせようとする絶対的な力に抗いながら声を上げる。

 

「頭を下げてただひたすらに言葉を聞く。そんな物は対話じゃない。単なる通告だ。俺はそんなことを聞きにここまで来たんじゃない」

 

 対話の為に来たのだと、

 

「話をするなら、顔を上げて、こうして言葉を交わさなければならない。ひれ伏すだけでは、何もできない……!だからどうかアインズ殿!」

 

 貴方と話をさせてはくれないかと、ぶつけたその問いかけに、アインズよりも先にデミウルゴスが口を開く。

 

「恐れ多くもアインズ様に会話をさせろなどと、『今すぐ……」

「やめろデミウルゴス。」

 

 しかし、それを止めたのはアインズだった。

 

「この者達は、私と言葉を交わす資格がある。言う通りにしてやれ。」

「なんと寛大なお言葉……アインズ様のお望みのままに。では、えー……」

「ザナックだ。ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ。漆黒の剣の代表はペテル・モーク。青の薔薇の代表はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。」

「あぁそうだったね。ではその三名、」

 

 立ち上がり、口を開くことを許す。そんな言葉で、ザナック達3人は解放された。

 

「(やはり……こいつらは異常だ……)」

 

 そのやり取りで、ザナックは彼らの異常性を感じ取る。

 

「(ほとんどのアンデッドに、知性と呼べる物はおよそ無い。あるのは強力な力を持った高位のアンデッドのみ。だがそう言う奴は、大体生者を憎むか見下すかだ。連中の価値観は人間と大きく異なっている。)」

 

 おそらくラナーの頭の中も、人間というより怪物のそれに近いのだろう。だが

 

「(こいつは今、俺の気概を認めた。俺に敬意を払った……)」

 

 そんなこと微塵も考えないはずのアンデッドが。周りの悪魔やら何やらが見下して話もまともに聞かない中、こいつは人間の道理を理解している。もしかしたら化け物なのは見た目だけで、中身は人間とそう変わらないのではないかと思えてしまうくらいに。

 

「(そして、そう言ったものを全く分かっていない怪物が、その異常な行動を誉め称えている。心の底から、なんの疑問も抱かずに全肯定)」

 

 それほどまでの絶対の忠誠、いや盲信。それが絶対的な支配者を生み出す、歪な体制。だが、上位者の方が良識があるのは有り難い。彼ならば、この王国を滅ぼすことなく話を進めてくれるのでは、そう思ったのも束の間

 

「改めて名乗らせてもらおう。私はナザリック地下大墳墓が主人、アインズ・ウール・ゴウン。今回来たのは他でもない。そちらに居る3人の罪人を、こちらに引き渡してもらう為だ。」

 

 余りにも一方的な要求で頭を抱えたくなった。

 

「一応確認させては貰えないだろうか?貴方の言う罪人とは、青の薔薇のイビルアイ、漆黒の剣のブラッドスターク、そして仮面ライダービルド……漆黒の剣のニニャで間違いないか?」

「あぁ。先程も呼んだだろう?」

 

 当然と言う顔をしてるが彼女達は間違いなく先の戦いの功労者であり国の英雄だ。それを一方的に罪人と断じられても困る。そう叫びたいが叫べば待ってるのは死だ。ザナックはその言葉を飲み込んだ。

 

「一体なんの罪だ?彼女達はずっと王国の国内に居たが……」

「その王国内で活動していた、我々の大切な仲間の命を奪った罪だ。

 特にマーレ……仮面ライダーにやられたのは、まだ小さな子供だった。だが魂に傷を刻みつけられ、もはや蘇生すら叶わない。」

 

 その言葉に思うところがあったのか、クレマンティーヌが拳を握る手に力を込めた。

 

「だから彼らには、我らナザリックの元でその罪を贖うべく働いてもらいたい。」

 

 具体的な内容を聞こうか悩んだが、やめた。この怪物達の巣窟でどのような"労働"が待っているのか、想像するだけで悍ましい。

 

「(そもそも王国の国内でモンスターがそのように動き回るなど暗躍じゃないか!)」

 

 もし帝国が『王国内で自分達の間者が殺されたから殺した冒険者を引き渡せ』などと言ってきたらお前は何を言ってるんだとなるだろう。自分から貴方の国で好き勝手にしてましたと白状しているようなものだ。この男にはその自覚がないのか?いや……

 

「(白状したところで、なんの問題もないと考えているのか……?)」

 

 所詮人間。そいつらの国を闊歩して何が悪いとでも言いたげな表情だ。それに我慢できなかったのか、正義感に溢れるラキュースが声を上げる

 

「ふざけないで!貴方の仲間は、王都をめちゃめちゃにしたり、人を殺して食べたりしていたのよ!?それを捨て置いて、一方的に罪人だなんて……」

「ふざけるなよ。」

「ッ!?」

 

 低く、重い、明らかに怒りを孕んだ声。それでラキュースの抗議は封殺された。

 

「お前達も牛や羊といった命を食べているだろう。なにより人の大切な仲間を殺しておいて、自分の仲間はとられたくないとでも?随分と都合の良いことだ。」

「私たちの命は家畜も同然だとでも言いたいの!?」

「いいや、お前達はもっとタチが悪い。同じ人間を平然と虐げ食い物にする。他でもないお前達も、先の戦いで人を殺しているだろう。」

 

 玉座に座り指を刺してアインズは糾弾する。

 

「それこそ、私達が征伐に出た八本指のようにな。」

「八本指の……征伐……?」

「あぁ言っていなかったな。ことの発端は、八本指が我々の大切な物を掠め取ったことだ。」

 

 なんてことをしてくれたんだ。その言葉にザナックは天を仰いだ。得体の知れない連中に連れ去られ、行方知れずの八本指がいることはヒルマの証言や、突入時に荒らされていた八本指の拠点などから知っていた。おそらく連れ去られているのだろうと言うことも。だが連中のやらかしが発端で王国が滅亡の危機に陥るとは。

 

「そもそも、街が巻き込まれて破壊されたのは仮面ライダーとやらと戦闘したのが原因だと言う。

 つまり責めるべきは、挑む必要のない戦いを挑んだ仮面ライダーやイビルアイだ。」

 

 無茶苦茶だ。そもそも何故王国内の犯罪者を、貴方達の法で裁かねばならないのか。そもそもスタークは彼らに命を狙われていたと言う。それを守るために戦ったニニャが間違っているのならスタークに大人しく死ねと言うのか。

 

「もし嫌と言うのならそれでも構わない。しかしそれでは戦争という形になってしまうな。何百、何千、何万という王国民が死ぬことになるだろう。お前達の我儘で。」

「それは……っ!」

「『その口を閉じたまえ』アインズ様のお話の途中だ。」

 

 そんな横暴に対するラキュースの言葉はデミウルゴスに封殺される。だが

 

「なるほど、じゃあ戦争をするか。」

 

 徐にスタークが口を開く。これ以上跪くのが馬鹿らしくなったのかゆっくりと立ち上がりながら放ったその言葉に、一同が困惑する。

 

「流石はブラッド・スターク。我が身可愛さに多くの王国民を犠牲にすることに躊躇がないと見える。」

「勘違いするなよ。」

 

 その物言いに、スタークはNOを突きつけた。

 

「戦争っていうのは殺し合いだ。お前の可愛い配下が何人犠牲になると思う?」

「何をいうかと思えば……お前はマーレに手も足も出なかったのだろう?」

「だがあの雑兵メイドの連中は……」

「プレアデスだ。」

 

 スタークの物言いに、確かな怒気を孕んだ声でアインズは言う。

 

「戦闘メイドプレアデス。人の名前には敬意を払え、さもなくば……」

「そりゃ悪い、訂正させてもらうよ。ナーベちゃん達は……」

「スタークッ!!」

 

 思わず怒鳴って静止するが、もう遅い。

 

「ナーベ……だと?どう言うことだ?なぜ"美姫"の名前が……」

「おっと、こいつはいけねぇ。」

 

 スタークは慌てて口を押さえるような動作を取るがもう遅い。疑問とざわめきが広がってしまう。そこでデミウルゴスがあわてて咳払いをする。

 

「失礼だぞ!名前を正しく呼べとアインズ様がおっしゃった矢先に、殺したものをあだ名で呼ぶなど!」

「…………!あぁ、ナーベラル・ガンマのことか。確かに、同僚からナーベと呼ばれていたな。」

 

 苦しい言い訳だ。直接見たスタークが同一人物だったと証言すればそれで瓦解する。だが、

 

「なるほどなぁ。あんまりにナーベちゃんナーベちゃん呼ばれてたもんで、勘違いしてたよ。そう言う名前なのか。」

 

 それに乗っかった。それはつまり……

 

「(脅しているつもりか……)」

「(どこまでも卑怯な……)」

 

 お前達の計画をこっちは瓦解できると、暗に言っているようなものだ。だが、これはあくまで軽いジャブ。こうして心を揺らし

 

「とにかくだ、そいつらを倒した時、俺は全力の1%も出しちゃいなかったぞ?」

「「「ッ!?」」」

 

 本命を捩じ込む。その言葉に、アインズ側だけでなくザナック達からもどよめきが上がる。中でも一番激しいのはクレマンティーヌだ。

 

「まさかお前……ニニャにあのアイテムを使わせる為に……」

「さて……どうだろうな?」

 

 わざとピンチを演出していたのか?そんな問いにはぐらかすように言うスターク。そしてアインズ達には、

 

「(……どっちだ?)」

「(ハッタリだ……そうに決まっている。いや、だが……)」

 

 判別がつかなかった。マーレに圧倒されていた以上、スタークに守護者達(レベル100)程の力はない。警戒すべきはあの黒いビルドだけ。それがいままでのナザリックの見解。それが崩れるかもしれない。

 スタークのような男ならニニャにハザードトリガーを使う為にあえてピンチを演出している可能性が大いにある。実際スタークは嘘をついてない。ただ本気を出せない(エボルドライバーがない)だけだ。しかし、ここで先ほどの発言が足を引っ張る。そんな中、エボルトはニヤリと笑ってある提案を持ちかける。

 

「ま、俺らとしても王国の兵士に無駄な犠牲は出したくない。だから、どうだ?」

 

 一対一の代表戦、そこで決着をつけようじゃないか。

 

 そう言いながら笑うコブラ。この会談の勝者が誰かは、火を見るよりも明らかだった。

クレマンティーヌはトランスチームガンを

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