アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
これから大学が始まり部活との板挟みで忙しくなりそうで、小説を書く余裕のある時間が減るため投稿スペースが落ちるかもしれません。
よってこのエピソード、第二十七話から、毎週月曜日の午後8:00を投稿日とする週一投稿にシフトいたします。ご理解ご協力のほどよろしくお願いします。
「う……あ……」
起きあがろうとしたが、その体重を支えるだけの力も出ない。あぁそうか、私は負けたのか。たた仰向けに倒れ、空を向いたまま、アウラは悟った。
「マーレの……言う通りだったなぁ……」
内気で引きこもり体質で、おどおどしているがしっかりとしており頼り甲斐のある最愛の弟。あの子が居なければ満足に仇一つ討てやしない。悔しい、悲しい、だが心のどこかで『これでいい』と感じる自分が居る。
これで、アインズ様は軍を引く。王国を滅ぼす必要はない。あんな光景を、より凄惨な光景で塗りつぶす必要もない。そんなことを思っていると視界に影がさした。真っ黒い影。そこに輝くオレンジとグレーの複眼はタカの翼とガトリング銃口を模している。そこでアウラは悟った。あぁ、やるんだなと。自分のことも、弟みたいに。
「いいよ。」
不思議と、そんな言葉が溢れた。抵抗しなければとか、こんなところで死なないとか、そんな気持ちが湧いてこないのだ。
「きっと出し尽くしたからかな。心の力を全部、あんたを倒すためだけに、一滴残らず」
そして負けた。仲間に牙を向くほどに研ぎ澄まされた復讐心が破れ去った。意識のない相手に、行動パターンを読み解き、それを打ち破る秘策すら用意したのに、破壊の化身はその上を行ってきた。それはきっと、殺意の塊だからじゃない。そんな姿に成り果ててでも皆んなを守ると言う強い想い。
それに、負けたのだ。それならまぁ、このままマーレと同じ場所は逝くのも、悪くはないのかもしれない。ゆっくりと持ち上げられた足が、こちらの顔を踏み砕かんとするのを見て目を瞑る。
「(あぁ、でも、やっぱり……)」
そうして最後、今際の際の走馬灯が見せたのは
「(悔しいな)」
後悔ばかりだったなぁと、嘆きながらその瞬間を待つ。
「〈不落要塞〉」
だが、直後聞こえてきたのは
「え……?」
己の肉を、ビルドのブーツが踏み砕く音ではなく
「よぅ、調子よさそうだな……ニニャ。」
それを己の武技で受け止める、ナイトローグの姿だった。
「なん……ない……」
敵のはずの自分を、紙一重で守り抜く。その光景に、困惑して言葉が出てこない。なぜ自分を庇うのか、そのまま殺せばいいんじゃないのか、"なんで"が湧き上がるのが止まらない。
「起き上がれる……ならとっくにやってるか。じゃあそこでポーションでも咥えて見てなさい。」
それだけ言って、ニニャの方へと向き直るクレマンティーヌは、この決闘の前にスタークに呼び出された時のことを思い出していた。
「なんだよ、こんな時に呼び出して。」
「なに、一つ忠告をしておいてやろうと思ってな。」
「忠告だ?」
その言葉に、呼び出された王城内の一角でトランスチームガンを取り出すクレマンティーヌ
「お前は忠告される側じゃないのか?ブラッドスターク。もしニニャに何かあれば……」
「それだ。」
だが銃口を突きつけて繰り出した言葉を遮りながらスタークが指さしたのも、そのトランスチームガンだった。
「元々そいつを回収したら、誰に渡すかは悩んでいたんだがな。」
「別の奴に渡すから返せってか?」
「時と場合によっては、な。」
煙に巻くようなその物言いに、クレマンティーヌは眉を顰める。
「何が言いたい?」
「お前がそいつに依存してるんじゃないかって話だよ。」
「依存……?」
降って湧いた力だろうと、立派な力だ。それを使うことの何が悪いと言おうとして、スタークは言いたいのはそうじゃないと首を横に振る。
「随分とここに馴染んだみたいじゃないか。そんなもの握って、ニニャの奴の代わりになるだなんて息巻くくらいには。」
「お前、なんでそのことを……」
「ニニャが話してたよ。随分と嬉しそうにな。」
「……あのバカ。」
そう吐き捨てるクレマンティーヌの表情は、どこかまんざらでもなさそうだ。その様子に内心ほくそ笑みながら
「気持ちがいいよなぁ。誰かの為に戦い、仲間を育て、守った奴からお礼を言われる。」
毒を撃ち込む
「そんな自分に酔っ払うのは。」
「ッ!!」
図星だ。やはりなとエボルトは内心でほくそ笑む。
「お前と俺は良く似てる。あれこれ取り繕っちゃいるが、一番得意なことは壊すことだ。」
その言葉にクレマンティーヌは何も言わない。そんなことはよく理解している。だから私は……
「誰かの、ニニャの為に戦う……
根っこのところはズーラーノーンのいた頃と変わっちゃいない。心の底で、『ここにいてもいい』と言える価値が自分からなくなるのを恐れている。」
だから
だがヒーローの隣というその場所に立つには、あまりにも自分に資格がない。最近力を振るう度に、夢を見る度に、事あるごとにそれを思い知らされる。
「結局は自分の為だ。そんな感情でハザードレベルは上がらない。その手に入れた力には限界がある。」
そしてそれは、これからあのアインズ級の敵と渡り合うのには力不足という領域で訪れる。ナイトローグになったところで誰も守れず、戦いを仮面ライダーに任せきりにするのなら、いよいよ自分の
「そんな未来が見え透いてるなら、さっさと返してもらって、別のことに利用した方がいいだろう?」
「…………」
「ま、あとはお前次第ってことだな。チャオ♪」
お決まりのセリフで去っていくブラッドスタークに、クレマンティーヌは何も言わずに立ち尽くしていた。
「その通りだよ、あたしは身勝手で、利己的で、命を何とも思わず踏み躙れる最低の
今更多少の善行を成したところで、誰かの為に戦ったところでその罪は消えやしない。事あるごとに変身したりトランスチームガンを取り出す様になったのは、自分という戦士の力量への自信の欠如に他ならない。だとしても
「けど違う。全部が言い訳なわけじゃない。全部誤魔化しの建前なんかしゃない……!」
回想から現実へと引き戻され、目の前のビルドと対峙する。もはや倒れ伏したアウラなど眼中になく、現れた次の敵を倒さんと襲いかかるハザードフォームは圧倒的だ。こちらが拳を1発振るう前に、それを弾き反撃の拳を叩き込むまでやってみせる。ナイトローグのパワーでは、片腕を押さえつけることすらままならない。だがそれでも
「あんたを、こんな最悪の人間の同類にしたくないって……そう思ったのは本当だ……!」
そしてそう思えるほどに、彼らを愛おしい仲間だと思えてしまったのも。こんなのも所詮、思いやりではなく己のエゴなのだろうか。だとしても
「もう嫌なんだよ!あたしの気持ちに目を逸らすのは!!」
この気持ちすら、ハザードに敵わないからと逃げてしまったら、今度こそクレマンティーヌは、己の手で自分を殺してしまう。だから
「止まれぇえええええええ!!」
疾風走破、能力向上、能力超向上と、無技を重ねがけして極限まで強化。こちらに向かってくるビルドを前に、クレマンティーヌもまた駆け出す。
拳の間合いまで近づき、放たれるビルドの一撃を〈流水加速〉と〈超回避〉の合わせ技でギリギリで回避する。生半可な一撃は防がれるか躱わされる。なら、こちらが取るのは
自爆上等のゼロ距離射撃。至近距離からの一撃をベルトに、そこに装着されたハザードトリガーに向けて放つ。反撃の拳がくると予想していたのだろう、ガードを狙っていたビルドはその一撃をモロに受けて吹き飛ぶ。そしてそのベルトから外れたハザードトリガーが、音を立てて地面に落ちた。赤い光と共にビルドの装甲が霧散し、傷だらけのニニャの姿が露わになる。
「ニニャ……」
「ナイトローグ……いや、クレマンティーヌさん……」
そう言うニニャの目は、問いを投げかけていた。あなたが止めてくれたのかと。
「馬鹿野郎。」
その問いに、私は首を振る。
「今の私はミカンだろ。」
「そうですか……そうでしたね……ミカンさん」
「あん?」
「ありがとうございます。」
「……ハッ。」
ニニャの言葉にクレマンティーヌは笑う、また皮肉をぶつけてやろうとしたところで
「済みましたかえ?」
「ッ!!」
背後から声が聞こえた直後、振り抜かれた
「なっ…………」
その光景を中継で見ていた面々は息を呑む。中でも、下手人の名前を知るブレインは、一際驚いていた。
「シャルティア……ブラッドフォールン……」
「……なに?」
白い服に鍔広帽子、仮面で顔を隠したシャルティアが、獲物たるランスを振り抜いていた、その光景に。
「何故!?代表戦は……」
「なぜと問いたいのはこちらです。」
声を上げたレエブン侯に、アルベドはそう言い放つ。
「決着はついたと言うのにアウラを殺そうとするとは。」
「アウラには、死に至る一撃を受けた時、瀕死の状態で耐える秘宝を持たせていた。」
アルベドの糾弾に、アインズが続ける。そんな凄まじい、蘇生の秘宝に匹敵する伝説級のアイテムがあるのかと騒めくものがいる中、アインズはそれが発動したと、淡々と続ける。
「決着の時、ただでさえアウラは死にかけていたのだ。それひあまつさえ戦いが終わってから無惨に殺そうなど……」
『アインズ様…………?』
その言葉に困惑したのは、リ・エスティーゼ王国の面々だけではない。アウラもだ。
「なにを……言ってるんですか?」
淡々と罪を告げる様に言うアインズ達の物言いから察せられる。シャルティアはハザードを見て慌てて配置した訳じゃない。いつでも自分がハザードに殺されない様庇える様に、
これら
「それじゃあまるで……王国を攻め滅ぼすことが最初から決まっていた様な……」
「何を言ってるでありんすか、おチビ。」
その言葉にシャルティアが不思議そうな声をあげる
「
「「「!?!!!??!?」」」
その言葉に、その場にいた3人は言葉を失う。アインズの言葉に盲目的に従う彼らは、アインズが死ねと命じれば迷わずその命を絶つだろう。そしてそれと同じ様に、アインズが死ねと言った人間を容赦なく殺すだろう。元より踏み潰す虫程度の認識でしかないのだ、わざわざ理由づけすんのもめんどくせぇと言う認識のものも少なくないだろう。だがこれは、これでは……
「あ、アインズ様!!」
アウラは思わず叫んでいた。
「
『アウラ……貴方は自分が何を言ってるのか分かっているのかしら?』
あの日怒りのままに鞭を振るった時に聞こえた声よりも落ち着いていた。だが、あの時よりも恐ろしく感じる声に、アウラは冷や汗を流す。
『元はと言えば貴方がしくじったのよ?その失態をアインズ様直々に拭ってくださると言うのに、今の言葉はどう言う意味かしら?』
その問いに、言葉に詰まる。
『軍を退けというのはつまり、負けを認めろと言うことかしら?栄光あるナザリック、誇り高きアインズ・ウール・ゴウンが、腐敗した下等生物の小国に対して?』
アウラは何も言えない。今の言葉がその要求を意味してしまうことを、アウラは理解している。
『待ってというのはどういうことかしら?貴方は、プレアデスの彼女達を……それだけじゃない。マーレを殺した仇を、この場で見逃せと、そう言うの?』
「ッ!!」
その言葉に、自分の体が震える。自分は許そうとしているのか?そんな訳ないと言おうとして、あの時、負けた時、このまま死んでもいいと思えてしまった事を思い出す。
「あたし、あたし……は……」
「馬鹿、やめろニニャ!!」
そこで、クレマンティーヌの怒号に似た声を聞き、思わず振り向く。そこでは自分との戦いのダメージを蓄積し、ハザードを使っての強制変身解除で少なくないダメージを負ったニニャが、今一度腰元のビルドドライバーにボトルをセットしようとしていた
「変身解除した後強引に再変身なんてしたら、お前の身体がもたないんだぞ!?」
「それでも、ここでクレマンティーヌさんを殺させるわけには……」
「馬鹿野郎!あいつらの目的はお前だ!ここに残るならお前じゃなくてあたしなんだよッ!!」
今この瞬間、問答の間にもナイトローグはシャルティアの圧倒的な戦闘能力に嬲られボロボロだ。その状態でもなお、二人はお互いのために叫んでいる。
「(あぁそうだ、あの時、負けていいと思えたのは……)」
起き上がったアウラは、矢筒から一本の矢を引き抜き、そのきらりと光る鏃を、自分の喉元に当てる。
「おチビ!?」
『アウラッ!?』
シャルティアとアインズから声が上がる。
「アインズ様……軍を退いてください。」
『アウラァッ!!!』
魔法の通信でアルベドの怒号が響き渡る。
『庇うと言うの!?この下等生物共を、貴方の弟の仇を……!』
「決闘の条件!あたしが勝てば王国は罪人をおとなしく引き渡しあたしが負ければアインズ様は軍を退く。まずはこの約束を果たさなければ、ナザリックの名前に泥を塗ることになります。」
アルベドの声を無視してアウラはアインズに直接願う。だがその物言いはさらにアルベドの怒りに油を注いだ。
『ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞアウラァッ!!下等生物に敗北した恥晒しの分際でナザリックの名前を語ってんじゃ』
「泥に塗れるのはあたしだけでいい!」
脇目も振らず、淑女としての態度をかなぐり捨てて叫ぶアルベドの言葉を、アウラはそう言って遮った。
「負けたのも、軍を退かなきゃならないのも、みすみすコイツらを見逃すことになるのも、全部あたしの責任だ!なによりも……こんなやり方で仇を討ったってマーレも……ぶくぶく茶釜様だって喜ばない!!」
その言葉は、今この場を去っている至高の41人を、自分たちを捨てたと憎むアルベドの地雷を踏み抜いた。
『このっ……!!』
『待てアルベド!!』
噴火、あるいは大爆発周囲の目も忘れてそう形容するのが相応しいキレっぷりを見せようとしたアルベドを、アインズが止める、
『(そうか……そうだよな、俺としたことが目先の目標に囚われて、初心を忘れるところだった……)』
そうだ、最初にアインズ・ウール・ゴウンを拡大しようとしたのは……自分と同じ様にこの世界に転移して来た
そしてこのアインズ・ウール・ゴウンは元々、ユグドラシル内で拡大していた異業種狩りを止めるために、異業種の仲間達で作られたギルドじゃないか。自分もそこに救われ、そこに入った。なら……
『確かにこれは、アインズ・ウール・ゴウンの戦い方じゃないな。』
「アインズ様……」
『アインズ様ッ!!』
「アルベド、軍を退け。」
アルベドは歯噛みする。ここに来て主人の悪癖が出たと
『どうして……』
ポツリと出た声は、低く小さかった。だが、その場でそれを聞き取ったスタークとラナーを戦慄させる、強い怨嗟が籠っていた。どうして、自分はこんなに尽くしてるのに、こんなにも
『承知いたしました。』
そんな思考の果てに、アルベドは神話の軍勢に撤退の宣告をする。
『今回の代表戦は、そちらの勝ちだ。ひとまず讃えよう。』
アインズはそう言って立ち上がる。
『アウラを殺そうとした件に関してはら炎の壁の中から誘拐した人員を迷惑料として徴収することで手打ちとする。』
それも横暴ではと叫ぶものはならばもう一度"代表戦"をやるか?と言う言葉で黙らせられる。もう既にナザリックへと誘拐されていた人々の扱いに異を唱えるだけの気力は、アウラに残っていない。
『アウラ……帰ったら、分かっているわね?』
その言葉に無言で頷き、開かれた転移門へと消えていく。ここからアインズは打倒スタークのために様々な国への暗躍を開始し、アウラはアルベドから守護者としての権利を凍結され、アインズから言い渡された謹慎の期間に入ることになる。
王都の一角は土砂に呑まれ、人口を大きくすり減らし、最高戦力達も少なくい傷を負い、勝者とは言えないような死に体の状態からの回復と強化の期間に入り、新たな仮面ライダーの物語が幕を開ける。謹慎1日目にして、アウラのナザリック脱走という時間から始まる、長い長い一週間の物語に
クレマンティーヌはトランスチームガンを
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手に取らない