アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
「アウラ様、ご昼食をお待ちいたしました……わん。」
自室にて謹慎。それを言い渡されたアウラに変わらず食事を運ぶのはペストーニャの仕事だ。だが、ノックした扉に返事はない。まだ寝ているのか落ち込んでいるのか、だが昨晩の夕食の時は元気こそなかったものの応対はあった。
戦いの疲労はあるだろうが、天真爛漫な彼女が朝の時間まで起きてないというのは考えにくい。それに彼女には腕時計がある。いつも愛用するぶくぶく茶釜の声が鳴る腕時計に、起床時間をセットして寝るし、決まってその時間に起きるのだと、以前話していたのを覚えてる。
「……アウラ様?」
もう一度ノックする、返事がない。いやそれどころか気配も感じない。まさか脱走?だが自分から責任は自分にある、どんな罰も受けると言ってまで王国の人々を庇ったのにその様な……ぐるぐると疑問が渦巻く中、ペストーニャは一度息を吐く。
「失礼します。」
真偽は部屋の中に入って確かめるしかない。そうして扉を開けた先、ベットは空っぽ。そして机にきらりと光るのは、かつては至高の41人にのみ許された装備品であり、今はナザリックの階層守護者達に預けられているナザリックの幹部の証、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。
「これは……」
それの下に置かれた書き置きを手に取る。『ごめんなさい、私はもうナザリックの皆んなと一緒にいられません』そんな簡素な文章が手に入る。
「セバス様!!デミウルゴス様!!どなたかいらっしゃいますか!?大変です!!」
この一大事に、ペストーニャは思わず声を張り上げるのだった。
「はぁ……はぁ……うっ……ちょっとこれマズいかな……」
そうして脱走がバレたアウラは、
ぶくぶく茶釜から授けられた大切な衣服である男物のジャケットは背中を裂かれ血を流している。
「麻痺……毒じゃなくて呪い、かなぁ。」
明らかに自分を捕縛するための部隊。クアドラシルが気づいてくれたからこの程度で済んだが、クアドラシルの防御がなければ背中を深く切り裂かれ、麻痺が蓄積し動けなくなっていただろう。
毒ならば自分のスキルで無効化できる。だがこれが呪札師の呪いとなれば話は別だ。自分のレベルであれば可能な自然治癒を待つか、アイテムを利用しないといけない。
「ポーション、ポーション飲まなくちゃ……」
とにかく止血をしなければ。腰元のカバンを探り、麻痺して震える手でポーションを掴もうとする。だが、その結果反対の手から意識がそれ、掴んでいたフェンの毛を放し、ぐらりとその背中の上から落下しそうになる。慌ててクアドラシルが自慢の舌で受け止める。いつもの若葉のような香りではなく血の匂いと味を滴らせる主人を。
「あ、クアドラシル、ありがとう。」
そう言うアウラの顔色は芳しくない。元々逃げ出した昨夜は転移した位置から一歩でも遠くに離れるためにろくに寝ていないのだ。
追われてることを理解したアウラは自身の追跡を防護する隠密スキルをレンジャーの能力により展開したので時間は稼げるだろうが、さらに動かないと行けないと逃げていたのだ。体力はとっくに限界だ。
だが所詮獣である自分たちにその状況を打開する術はない。このデカい図体ではポーションの瓶の蓋を開けて中身を飲ませることすらできない。このまま弱った主人を見守ることしかできないのかと途方に暮れていた時だった。
『急げ
そんな声が聞こえて来たのは、その時だった。
「それで、
「はい。彼らを返り討ちにした後、レンジャーの隠密スキルを使用したものと思われます。」
その言葉にアインズは困った様に息を吐いた。玉座に座り、アウラが残していたという書き置きを見る。
「『ごめんなさい、私はもうナザリックの皆んなと一緒にいられません。』か……」
その言葉にどうしてもフラッシュバックするのは、あの日のこと。ぶくぶく茶釜からユグドラシルを引退すると告げられた時だ。
『それで、モモンガちゃんにあたしの装備品とかを預かってて欲しいの。』
『任せてください。お仕事……大変なんですよね、休み取れた時とかでいいんで、もしログインするならメッセージ……』
『ごめんなさい。多分もう、皆んなとは一緒にいられないと思う。』
『またまた、そんな事分からないじゃないですか。』
あの時はそう笑って流した。実際に、ぶくぶく茶釜がユグドラシルに戻ってくることは二度と、あのサービス終了の日、直接メッセージで呼びかけたあの日すら無かったと知らなかったから。
「やはり子供は親に似るのか……」
「は?」
「いや、こちらの話だ。」
目の前で報告しているデミウルゴスに溢れてしまった独り言を、気にしないでくれと誤魔化したが、内心では抑制されても抑制されても消えない不安感があった。
メニューを見る。アウラのアイコンは、別に敵対を表してある訳じゃない。アインズから与えられた罰を無視しこの様な手紙を置いて去るなど明確な叛逆行為だと、彼女の処断を強く主張したアルベドは下がらせた。彼女もハザードフォームの攻撃を受けている。万が一殺してしまった場合、二度と蘇生できない様に……
「まさか…………」
そこまで考えて、この考えに至る。
「アウラの魂も傷ついているのか?」
かつてアインズがいた世界は、生きていくことすら辛いディストピアだ。上流階級からの理不尽で心を壊されてしまった人間だって見たことがある。だからアウラも魂が破損し心が、何処かがおかしくなってしまっているのではないか。その考えに思い至る。
「確かに代表戦の前から、シャルティアやアルベドに武器を向けたりと不安定でしたが……」
「代表戦で、体は無事だが魂がさらに傷ついてしまったのか?」
まともに戦うことすら難しい身体に。それで独自に治療方法を探すために旅に出た?自分はもう戦闘や諜報で役に立つことができないから。
「敵味方の把握が曖昧になっているのかもしれません。」
そうであれば仲間に武器を向けたり、敵である王国を庇おうとするのも納得できる。既に錯乱の兆候はあったということか。
「なんということだ……」
一見すれば筋の通っている言動に完全に失念していたと、アインズは頭を抑える。だとすれば、1人で治療法を探すなど無謀極まりない。
「なんとしてもアウラを探し出せ!大至急だ!」
「ハッ!」
アインズの言葉にデミウルゴスも力強く返事をして、足早にその場をさる。錯乱しているのならばもっと言動が支離滅裂なのではないか?敵を庇ってる時点で既に支離滅裂だ。アインズ・ウール・ゴウンの看板に傷がつくと言ったのは?
いやそもそも、傷ついているのならなおのこと1人で出て行かず部屋で休むのでは?そう言った疑問から目を背ける。
「(そうだ、彼らはこんなにも私に忠誠を尽くしてくれている。)」
「ここは……」
気がつけば、アウラは花畑にいた。白い花が咲く一面の花畑。
「フェン……?クアドラシル……?」
心配した相棒達がここまで連れてきてくれたのかと辺りを見回しながら呼ぶが、返事どころか姿もない。代わりに
「え……」
見つけたのは、自分と同じ髪色、自分の男装姿と対照的な、青の差し色の女装姿。後ろ姿だが間違いない。失ったはずの、自分の最愛の
「マーレ!!」
あぁ、これは夢かもしれない。そんな思考が頭をよぎる。だが夢でもいい。幻想でもいい。君がまだそこにいてくれるなら。花畑の中を走る何度も転びそうになりながら、最愛の弟の元へ。
「マー「どうして?」れ……?」
いきなり投げかけられた質問の意図が分からず、間の抜けた声が出る。
「どうして、お姉ちゃん。」
景色が変わる。風が吹き、雲が太陽を多い空が暗くなる。突風で花が散る中現れる、赤と青の芽をもつ漆黒の怪物。否、仮面ライダービルドのハザードフォーム。こちらに顔を見せないまま、マーレは奴を指差して問いかけてくる
「どうしてあいつを庇ったの?」
「ひっ…………!」
ぐりん。と、マーレが振り返った。マーレの首だけが振り返った。その光景に思わず息を呑んだ。
「あいつは僕を殺したのに。」
「違う!違うんだよマーレ!あたしは……」
「どう違うっていうんでありんすか。」
ごろり、と何かが転がった。ニニャの首だった。顔が恐怖に染まるアウラの前にシャルティアが歩いてくる。
「シャルティア……」
「お前が殺していれば済んでいた話でありんしょう。それをしくじったから私が出向いたというのに。」
「でもそれは……」
あんな作戦は、騙し討ちみたいな真似は……だが、シャルティアを、アインズ達の動きを止めていれば、今頃はこの夢の様にシャルティアが
「でも?」
気づけば、ぴたりと首筋に刃が当てられていた。
「分かってるでしょう?あなたは他でもないアインズ様の命令に背いたのよ。そうまでして守った物は何?」
アルベドだ。そうだ、だけどあの作戦の発案者は……
「心外だね。確かに私の発案した計画だ。」
そう思えばデミウルゴスまでもが夢に現れる。
「だがあれはアインズ様に捧げ、アインズ様が検討し、アインズ様が採用された計画だよ?まるでアインズ様が私の操り人形であるかのような物言いはやめてくれないか?」
正論だ。発案者が誰だろうと最終的に命令を下したのはアインズだ。これは、自分の行動を正当化するごまかしの言い訳に過ぎない。
「自分で書いたのだろう?自分はもうナザリックに居られないと。」
まるで罪状の書かれた紙の様に、自分の書き置きを突きつけてくる。そうだ、もはやさまざまな意味で、自分はナザリックの彼らと一緒に居られない。
「「「「お前はもはやアインズ・ウール・ゴウンの守護者じゃない。マーレの姉ですらない!!!」」」」
味方はついてきてくれた魔獣二匹だけの、ちっぽけな反逆者。マーレの死体が、アルベドが、シャルティアが、デミウルゴスが、アウラを取り囲んで突きつけてくる。目を瞑っても耳を塞いでもうずくまっても逃げられない。どうしようもない事実からは。
「うわぁあああああああ!!?!??!!?」
『おわぁあああああああ!???!!??!』
がばりとかけられていた布団を剥がしながら飛び起きる。結果、丁度頭の上の冷水で冷やした葉っぱを取り替えようとしていた何かとごちーん。と音を立てて盛大に激突した。
「痛ッ…………ここは…………?」
辺りを見回せば、簡素な木で作られた小屋の中だった。次に自分の姿に気づき……赤面する。普段は長袖の男装姿で隠れている自分の褐色の肌が見えている。この体型ではありもしない乳房は包帯で隠れているあたり、目的は治療なのだろうが、その為には上半身の服や下着は邪魔で脱がされたのだろうと思うとエルフとしてはまだまだ幼子、性や恋愛について知り始める年齢であるアウラとしてはこう、来るものがあるのだ。
ごわごわとした獣皮の毛布で体を包む様に隠す。そこまでして気付く。そういえば自分は、何かにぶつかった様な……そう思って辺りを見回すが、見つけたのは湿った大きめの葉っぱと冷水の入った桶。あれで自分の額を冷やしてくれていたであろう人物が見当たらない。あるものといえば床に転がった奇妙な色合いのトカゲのおもちゃくらいで……
『痛ってて……』
「だ、誰!?誰かいるの!?」
聞こえてきた痛みに悶える声に、声色からして明らかに男のそれと聞こえるそれに、思わず声を上げるが、姿は見当たらない。だが、そこで気付く。今このトカゲのオモチャ、カタカタと動かなかったか?と。
そう思っていたら、トカゲだと思っていたおもちゃの尻尾が動き、翼が広がる。あぁ、トカゲではなくドラゴンか。それに気づいたのも束の間。パタパタとその翼を羽ばたかせて倒れていたおもちゃが起き上がった.
『あ〜、ビックリしたぁ、いきなり飛び起きるんだもんな。ま、仕方ねぇか。』
「へ……?え……?」
その光景に目を白黒させてるアウラを尻目に、うなされてたもんな、とこちらに近づいてきたドラゴンのオモチャが話しかけてくる。
『大丈夫か?お前魔獣に囲まれてブっ倒れてたんだよ。怪我してたから俺たちの村まで連れてきたんだけどよ……」 』
「お……」
「お?」
『いやオモチャじゃねぇよ!?』
驚愕の声を上げるアウラを前に、
『いきなり失礼な奴だな……こっちにはクローズドラゴンっつう立派な名前があんだぞ!』
「それ製品名であってあんたの名前じゃないんじゃないの?」
『そうだよ!……いやそうだけどオモチャじゃねぇよ!!』
アウラの前を飛びながら講義の声を上げるオモチャ……否クローズドラゴン。確かに、飛んで人格まであるオモチャなんていうのは見たことも聞いたこともない。
むしろこのカラフルなデザインな背中に刺さったボトルは……
「ッ!!アンタ、もしかして仮面ライダーの……!」
『お、なんだ仮面ライダー知ってんのか。初めてだぜ、いきなりこんな場所に飛ばされて困ってんだけどよ……』
「近づくなッ!!!」
自慢げに言うクローズドラゴンに、そう言いながら布団から跳ね起きて距離を取る。
『お、おい急に……』
「仮面ライダーは……あたしの敵だッ!!」
『あん?そりゃ一体どういう事だよ?』
「どうした、騒がしいな。」
拒絶の意思を見せるアウラを前に困惑しながらも寄り添おうとするクローズドラゴン。その間に、新たな声が響いた。
小屋に入ってきたのは、緑のスカーフを巻いた赤に近いこげ茶の鱗特徴的な
「アンタは……」
「すまない、自己紹介が遅れたな。俺はザリュース・シャシャ。リザードマンの部族、
「旅人……?」
一度部族を離れ、外の世界に足を運んだもののことだと、そのリザードマン、ザリュースは語る。
「じゃあ、そこで仮面ライダーに?」
「仮面ライダー?
首を横に振って否定するザリュース
「君は、その仮面ライダーとなにかあったのか?」
『もしなんかあったんなら話してくれよ。こんなナリだけど多少の力は……』
「いや…………」
2人の声色からは、本当にこっちを心配してくれているのだろうと言う優しさが感じられた。そしてそれ故に仮面ライダーに、最愛の弟を殺されたのだと言うのが八つ当たりの様に感じられて、
「なんでも……ない……」
口にすることが出来なかった。
「あたしの服は……?」
「すまない、血が滲んでいて、直そうにも見たこともない素材で作られていて修復が難しかった。一応保管してあるが……」
「じゃあ、着替えてそれもらったら出てくよ。手当……ありがと。」
ひとまずはと毛布にくるまって身体を隠しながらそう言うアウラの様子に、
『おいそりゃねぇだろ。そりゃ俺たちじゃ力不足に見えるかもしんねぇが……』
そう言うクローズドラゴンを、ザリュースが手で制した。
『ザリュース……』
「言いたくないなら言わなくていい。誰しも、そう言った秘密はあるものだ。」
そうだろう?と問いかけられれば頷かないわけにはいかない。
「だがその傷でもう行くと言うのは流石に心配だ。お前を守っていた魔獣達も腹を空かせているだろう。」
「いいよ、あたしには保存食があるし、あの子達のご飯は狩りでなんとかするから……」
「そんな身体だ、少し楽をしてもバチは当たらないだろう。美味い魚が獲れる場所が近くにある。案内だけでもさせてくれ。」
どうだ?と、全く違う種族であるにも関わらずこうして手当てをして、さらにそんな提案をしてくれるザリュースの好意を無碍に出来ない。そうしてアウラは折れた。
「じゃあ……案内だけなら。」
「決まりだな。」
これが、アウラ・ベラ・フィオーラとザリュース・シャシャ、そしてクローズドラゴンの、最初の出会いだった。
ようお前ら、また会ったな。このコーナーも3回目となりつつあるエボルトだ。
本編のクローズドラゴンがなんで喋ってるのかとか色々聞きたいこともあるだろうが、俺が出てきたってことは突然、前回作者がやらかし倒したアンケートのお時間ってわけだな。
安心してくれ、俺からも言ったから今回はしっかりアンケートが載ってるはずだ。今回のお題はズバリ『帝国編について』だ。作者の頭の中には3つくらい構想があるらしいんだが、どれを採用するかで迷ってるんだと。
んでもって、その3つのルートにそれぞれイメージカラーを持たせて、その3つの色の中から読者諸君に直感で選んでもらいたいって話だ。色に関しては今回のメインにもなる
今回はこのルートに入るからバッドエンド、みたいなのも用意してないし、ほぼ直感で『この色が好き』程度の認識で選んでもらってくれたらいい。じゃ、どのルートが選ばれるか楽しみにしてるぜ。チャオ♪
帝国編ルートのイメージカラーは? 選ばれた色によって展開やボスなどが変化します。
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赤
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青
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黄