アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
なんか最近ずっとオーバーロード中心にシリアスやってたから戦闘描写も変身も久しぶりです。力入れて描いてたら投稿時間オーバーしちゃいました。お楽しみいただけたら幸いです。
私は今から後回しにしていた課題やってきます
「いやぁなかなかいい乗り心地じゃねぇか」
「ほんと殿様気質だよねれ
そう言いながらごろりとロロロの背中に寝転ぶゼンベルの様子をアウラは白けた目で見る。
「でも楽しそうだったね、"竜牙"の人たち」
その一方で、元は別々の部族でありながら、掟の元に一つに纏まるあの部族を見ると、どことなくそんな感想が溢れた。
「コイツが、自分の力を振り翳してごねるような奴じゃないからな」
ゼンベル・ググーという男は徹頭徹尾戦闘狂だ。己の力を高め、それを証明することで頭がいっぱい。だが同時に仲間を見下したり力に溺れたりせず、背負ったものの面倒を見る気骨を有している。めんどくせぇだの酒がいるだの言いながら話は案外真面目に聞くし、問題点だと思ったことはズバッと指摘する。良くも悪くも表裏のない人間だ。
「居心地がいいのだろう、あの部族は」
好戦的だが、全てを飲み込む戦狂いではない。よそ者が廃され苦しい思いをする事もない。強くない者の意見には何一つ耳を傾けない、なんて頑固者でもない。そんな"竜牙"の姿を、ザリュースはそう評した。
「褒めんなよ、照れるだろ?」
「お前が手放しで褒められる人間でないのも確かだけどな」
照れくさそうに言うゼンベルだが、ザリュースはぴしゃりとそう言う。惚れたメスを剥いて襲うと一度は宣言されたのだ。荒っぽく、手放しで褒められる善人でもないのは確か。
「二人とも、見えてきたわよ」
そんな二人にクルシュが告げる。既に防波堤が築かれ、弓を担いだ狩猟自慢や遠投自慢の投げ槍を担いだリザードマンなどが並んでいる。
「あそこが、一番目と言われた"
部族一の防御力を誇り、蜥蜴人四大至宝の一つ、
「戻ってきたか二人とも」
「兄者」
そんな彼らを見て村の中から出てきたシャースリュー、
「遅くなったか。“
「“
「アンタがか!ザリュースから聞いてるぜ」
嬉しそうなゼンベルの言葉にシャースリューも笑う。
「今回の旅でまたあいつに友人が増えたようだな。で、そっちの植物系モンスターは……」
「俺の惚れた雌だ。結婚も前提に……」
「〜〜〜〜ッ!」
「ふんっ!!」
真顔で兄にクルシュのことをそう紹介するザリュース。その姿に照れたクルシュとジト目のアウラの一撃が尻尾に直撃する。
「ぉおお…………」
『もう何も言わねぇ……』
「何が俺に結婚は出来ないだ。単に惚れた雌が居なかっただけじゃないか」
悶絶するザリュースに呆れるクローズドラゴンとシャースリュー。
「そろそろ斥候が戻ってくる頃だ。会議に行くぞ、他の族長達も集まってる」
「ッ!!見てきたの!?」
シャースリューの話にアウラが思わず声をあげる。
「あぁ、その結果が……」
「報告!報告!スーキュ族長が帰ってきたぞぉ!」
「ちょうど戻ってきたみたいだ。奥で話そう」
矢倉から響く声に、シャースリューはそう言うが、アウラは心配でならかった。ここのリザードマン達の隠密能力なんてたかが知れている。もし、デミウルゴスやアルベドなんかに見つかることがあれば、いやそうでなくとも……
族長が帰ってきたと言っていたし、せめて少しの人数でも無事であってくれれば……そう祈りながら向かって行き……
「あ、アンデッドだけ!?悪魔も魔獣もいなかったの!?」
「アンデッド・ビーストならばいましたが……」
黄の斑族の血が入っているらしい、特徴的な鱗模様と青いとさかを持つ"
「どう言うこと?戦争なら最低でも総大将に守護者が、そうじゃなくったって指揮官にプレアデスのだれか1人くらいは居ると思ってたのに……」
「指揮官らしき者の姿は無く、陣地にはアンデッドが5000程」
リザードマンの戦士の総数は1600程、3倍近い戦力差が見込まれる。
「多いな」
「なぁに1人で3体倒しゃいいんだろ?楽勝じゃねぇか」
そんなゼンベルの言葉を一同は白い目で見るが、アウラは真剣な顔でこの沼地周辺の地図と睨めっこしている。
「あうら、どうか、した?」
装備者の知性を奪う
「足りない……」
「なんだと?」
「戦力が足りなすぎる。上位どころか
「主力を出すまでもねぇってか」
舐めてやがる、と怒りの感情を見せるゼンベルだがそうじゃないとアウラは首を横に振った。
「兵力をあえて絞ってる。多分みんなが全力で頑張れば勝てる程度に。この程度のアンデッドなら、アインズ様は動かそうと思えば多分10万は動かせる」
「じゅうまっ!?」
その言葉に一同は絶句する。こちらは2千にも満たないのだ。文字通り桁が違いすぎる。
「だから、これはほんの1部隊。その程度の部隊しか出さないのは……ごめん、ちょっとわからない」
「……たぶん、くんれん」
そこで声を出したのはキュクーだ。装備者の知性を奪い、その分だけ固さを増す呪いの装備、白竜の骨鎧。それを纏ってもなお、その判断力は鈍ることなく、彼の統治で“鋭き尻尾”族は戦争のあと食糧事情を回復させつつある。
「訓練……だと?」
「狩猟の中若手を教育する際、小さめのその者があっさり仕留められる相手ではなく苦戦するかもしれないが、命の危険はない獲物を選びます」
その方が上達する。そういうのにちょうどよさそうな獲物を見かけた時若手に任せたりするのは、どこの狩猟班も共通だ。
「うん、たぶん、それとおなじ。ここを、ねらったのも、きっと、たまたま」
「あえて我々が勝てそうな兵力を用意することで指揮官の腕前を鍛える……ということか」
アウラの、そして彼女が連れてる魔獣の強さもよく知っている。それを相手には、厳しい戦いになること間違いないのも。
「そんな!違うよ!きっとアインズ様はなにかちゃんとした理由があってみんなを攻めようとしてるんじゃないかな!?」
単なる実験台感覚で、みんなを滅ぼそうとしてるなんてマネは……
「向こうからすれば、ちゃんとした理由なのだろうな」
忌々しそうにゼンベルが言う。
「戦の経験を積む事は優秀な将軍を育てると言う観点において重要な事だ」
「その為に関係ない種を滅ぼす戦争をしかけてくる……と言うことを除けばですか」
「舐められてるとか以前の問題だな。
腹立たしげなゼンベルの言葉にアウラが俯く。そんなナザリックの姿を想像できてしまうから、なにせ自分が昨日までそうだった。
『じゃあ、戦略は斥候が見てきた奴らより強い連中が出てくる前提で組まねぇとな』
クローズドラゴンが口を開く。
「……本当に使うんだね、クローズドラゴン」
『あぁ』
確認するように問いかけてきたアウラの言葉に頷く。
『仮面ライダーの力の出番だ』
「馬鹿ナ……」
魔法により蜥蜴人達の布陣を確認していたコキュートスは、思わずそう口にしてしまった。
「何故ダ……何故ソコ二居ル……アウラ!?」
それは本当に偶然だった。こちらの準備は万端。ならばと相手の布陣や戦士の冴えを確認しようと本陣の様子を魔法で遠視したのだ。その結果とんでもないものを見つけてしまった。ごつごつした鱗に囲われた無骨なリザードマン達の中にいては大きく目立つ美貌と体躯、その体つき。見間違えるはずもない。これからナザリックが戦争を仕掛ける場所にナザリックノ階層守護者が居た。
この情報はナザリックに響き渡りわ冒険者モモンとして依頼に発つ予定だったアインズの元まで届く。
「アルベド、もう一度言ってくれ」
感情は抑制される筈なのに声が震える。もう自分はナザリックと共にあれない。そんなアウラの書き置きの文面がフラッシュバックする。そんな筈はない。そんな筈はないのだと自分に言い聞かせながら問いかける
「アウラは……囚われているんだな?魂が傷つき弱ったところを蜥蜴人に。」
中世文明をベースに魔法を加え科学とは異なる美しい発展を遂げた人間社会と比べれば程遠い骨や木の棍棒に礫での投石を主武装とする、ギリギリで文明と言えるような石器時代の野蛮人に。
「いいえ」
その願いは打ち砕かれた。
「いいえアインズ様、アウラは蜥蜴人達の軍備を整える手伝いをしています」
気付かないわけがない。アウラがあのメッセージに。なにせトブの大森林の中に散らばる仮面ライダーのアイテムを探索し手頃な勢力を探しコキュートス達の練度を高める為の戦争を仕掛け、そのコキュートスが指揮を出す為に利用している拠点の工事を担当していたのは他でもないアウラなのだから。
蜥蜴人達の集落を攻める軍勢が自分たちだとわからないはずがないのだ。それなのに彼らに味方しこれから滅ぼす敵を前に一緒に軍備を整え、音声こそ拾えないものの語り合い笑顔を見せてすらいる。
「アインズ様、これは明確な裏切りです。ナザリックが世界を征する為の第一歩である大切な戦がめちゃくちゃになります」
「(世界征服?これはあくまでコキュートス達NPCの自分を過信しすぎなところとかを正す為の実験なんだけど……)」
何か変な勘違いをしていないかと引っかかったが今はそれどころではない。アウラが自らの意志でナザリックを裏切るなど明らかな異常事態だ。そんなことが起こるはずがない。何か理由があるはずだ。そう祈るように考えがながらその映像を見ていて、アウラの周りを飛び回る物体に目がいった。
「アレはなんだ?」
アインズの目に入ったのはクローズドラゴン。色合いや雰囲気がどことなく、あのノリの良い音を奏でる奇妙なアイテム達に似ている。ここでアインズは新たなアイテムを探す為にあちこち練り歩いているスタークが、最近トブの大森林を散策しているという話を王都で聞いたのを思い出した。
「まさか……」
アウラの魂は仮面ライダーのアイテムによって傷ついた。ナザリックではそう認識している。傷つけることができるなら修復する事もできるのではないか。手直しする魂に手を加える事も
「魂の形を歪められたのか?ナザリックと戦うように」
そう考えれば合点はいく。大暴れした地点で完全に動きを止め言動も支離滅裂だったシャルティアよりも数段高度な洗脳能力が奴らにはあるのだ。
「アインズ様……」
「分かっている。どちらにしろナザリックに仇なしているのは事実だ。」
「まずは敵の戦力を測る。コキュートスに増援を送ると伝えろ」
「かしこまりた。編成はいかがなさいますか?」
その言葉にアインズは少し考え込む。
「メインは中位のアンデッドとしよう。
告げられた言葉にアルベドは驚く。
「流石にやり過ぎではないですか?連中のレベルは精々20ほどと思われますが……」
「その20程の相手が、レベル100のNPCを打ち破ったのを忘れるな」
仮面ライダービルドハザードフォームの暴れっぷりはナザリックに深い爪痕を刻んだ。
「この程度でアウラは倒れはしない。だがこれだけの戦力があれば仮面ライダーは出て来ざるを得ないだろう」
ニニャが現在王都で活動中な以上、リザードマンの集落にいるとは考えづらい。あの
「そいつの実力を測る。勝てるならば遠慮はいらん」
そのまま踏み潰せ。そんな命令がナザリックにて下された。
宣告された当日約束の8日目、開戦の狼煙は先触れが訪れた時のような立ち込める暗雲だった。雲により陽の光が届かなくなった場所を、まるで領地であるかのようにアンデッドが進んで行く。
「来たか……」
「アインズ様……」
実際に来ると分かっていても緊張するものだ。アウラもその手に握る弓に力が入る。
「本当にいいのか?おまえだけ隠れていたとしても誰も責めんぞ」
「ありがとザリュース。でも大丈夫、あたしが居るってことは多分アインズ様にバレてるから」
「なんだと?」
その言葉に驚くザリュース。
「そういうふうに遠くを偵察できる魔法があるんだ。あたし個人を探すならかわせるけど、専門の魔術師じゃないからこの陣地を見る目は欺けない」
分かってても防ぎようがないし、音声は拾えないしこっちの奥の手まではバレてないと思うから黙ってたんだと謝りながらアウラは言う。
「だからあたしを抑える為の強力なモンスターをアインズ様は出してくるはず。それを止めないと」
「それがお前の選択か」
本当に後悔はないかとザリュースは問いかける。
「今更だよ。もうナザリックのことあれこれ話しちゃってるもん」
「そうか」
それに対する返答はこうだ。仲間を裏切る行為については今更だ。自分の保身よりも、リザードマン達を守る為に戦いたいと、そう言うアウラにザリュースは笑う
「リザードマン達よ!敵は強大で数も多い!認めよう、これは我らリザードマンの歴史が始まって以来の危機であると!」
だが同時に恐れることはないと、シャースリューの演説が始まった
「我ら5部族が歴史上初めて同盟を結び一つとなった!今我らは過去の恨みを捨て一つの部族となり、全ての蜥蜴人の祖霊が我らを見守ってくださる!」
敵を倒すぞ、祖霊に勝利を捧げる為にとシャースリューが武器を掲げ、ゼンベル達各族長もそれに合わせる。蜥蜴人達の雄叫びが沼地に響き渡った
「出陣!」
「「「「オォオオオオオオオ!!」」」」
声を上げ蜥蜴人達が陣地から隊列を組んで飛び出せば、それに対抗するかのようにアンデッド達も駆け出していく。中央ではゾンビに比べて動きの速いスケルトンの歩兵たちが戦士階級のリザードマン達とぶつかり合い、両翼から骨で動く亡霊の馬に乗ったスケルトン・ライダーたちが飛び出してくる。
「騎兵で背後を取って包囲殲滅ってところですかね」
「なら、こちらも最初の手を見せるとしよう」
とはいえ、これはこちらから繰り出す策……という訳ではないのだがとシャースリューの言葉にスーキュが笑みを浮かべる。意気揚々と前進していたスケルトン・ライダーたちの騎馬が突如何かに足を取られ転び、その衝撃でバラバラの骨へとなり下がる。
足元の見えない沼地の地面に馬や兵士が足を取られやすい筒状の落とし穴が張り巡らしてあるのだ。足の大きいリザードマン達は問題ないが、スケルトン達への効果は抜群。動きを止めたところを狩猟班を中心に編成した投石部隊が攻撃し敵の出鼻をくじく。ならばと次に出てくるのは魔獣や猛獣が死にアンデッドとなったアンデッド・ビースト。奴らに落とし穴は通用しない、このまま中央に突っ込まれ暴れられれば大損害だ。
「退却!一時退却!!」
それを確認した戦士頭の一人が声を上げ、“竜牙”と“鋭き尻尾”の腕自慢、守り自慢達を中心とした退却行動に出る。代わりに前に出てきた泥の手が、アンデッド・ビーストを粉砕した。
「スワンプ・エレメンタル!これほど早く呼べるだなんて……」
それを見たクルシュはそう喜びの声を上げる。祭司たちが儀式によって呼び出す蜥蜴人達の大戦力、強さはさっき見せた通り、並みの蜥蜴人では敵わないアンデッド・ビーストを軽々と打ち破るレベル。本来なら大規模かつ長時間の儀式を必要とする切り札だが、ここには蜥蜴人全部族の祭司が集まっている。呼べる時間も従来と比べて格段に早い。
「よし、このまま行ければ……」
ひとまずは押し返せる。そう考えている一方、ナザリック側の陣地ではコキュートスがその戦況を眺め唸っていた。
「蜥蜴人達ノ結束ヲ見誤ッテイタカ……」
今回コキュートスはこの場にて指示に徹しろという任務を受けていた。用意されたスクロール。
だが考えている間にも味方の数は減っていく。自分の過ちを恥じるのは後だ。ここは命令通りに……
「〈伝言〉」
スクロールを放り投げて魔法を発動する。命令するのは
「指揮官タル
アンデッドとリザードマン。蜥蜴人優勢とはいえ一進一退の攻防の中、
「ん?」
正面の敵に集中していた戦士達が自分たちの上方に訪れた影に気づいた時には、もう遅い。ぐしゃりと音を立てて前線のリザードマン達がアンデッド諸共降り注いだ何かに押しつぶされた。
「なっ!?」
「味方ごとだと!?」
「それだけじゃない!みんなを下がらせて!」
アウラが思わず悲鳴を上げる。
「戦士達じゃ相手にならない!今投げられたのは……」
着弾したのは肉塊。巨大な肉塊その肉体がもぞりと動き、起き上がった
「
「た、退却!たいきゃ」
ぐしゃりと、声を上げながらも仲間を守る為に残った勇気ある"鋭き尻尾"の戦士が一撃で潰れた。全身を包帯で包んだ大柄なアンデッド。
ーーーヴァアアアアアアアアア!!ーーー
ーーーヒャホホホホホホホホホ!!ーーー
さらに咆哮を上げるその巨大陰から飛び出したもう一体のアンデッドが蜥蜴人達を次々と切り刻んで行く笑みを浮かべたようなデザインの仮面を被りメスの指を持つそのアンデッドの名は……
「
このままでは戦士達が大勢犠牲になると弓を手に取るアウラ。だが、ザリュースはそれを制した
「待てアウラ、君はここに残ってその声を利用した伝来をしてくれないか」
驚くアウラに、ザリュースは言う
「あの二体、そしてその奥に潜んでいるであろう指揮官は、俺たちで倒す。お前はここで指揮官の言葉を伝えてくれ」
「……勝てるの?あの二体は単なる先鋒だよ。きっともっと強大な指揮官がいる」
「勝てるさ」
アウラの質問に、そう言ってザリュースはクローズドラゴンから託された青いドライバーを見せる
「今の俺は部族の者達を守る、仮面ライダーだからな」
「なんだ、なんなんだ奴らは!?」
武器を放り出して逃げる"竜牙"の若者は半狂乱になっていた。あっという間に大勢が死んだ。片方のデカブツはまだ動きが鈍いがもう一方がリザードマンの屍で道を作っていた。後ろを振り返っている暇はない、ただひたすらに走り逃げる。だが
ーーーヒャホホホホホホホホホ!!ーーー
「う、うわぁあああああああああ!?」
あの特徴的な笑い声が聞こえて思わず振り返ってしまい、あの笑顔の仮面と血まみれの指を見て悲鳴をあげて目を瞑り、ガキィン!という音を聞いた。
「え……?」
痛みはない。ゆっくりと目を開けるとその指は受け止められていた。白く輝くリザードマンの至宝、
「あ、あんたは……」
「無事だったか若ぇの!」
「族長ぉ!」
"鋭き尻尾"の族長キュクー、それと一緒に彼の族長であるゼンベルの声もする。
「ここは我らが引き受ける!お前達は下がれ!」
スーキュが声を上げながら得意の投石で屍蒐集家の気を引く。すると
ーーーーオォオオオオオオオオオン!!ーーーー
より一層重く、大きな雄叫びが森の奥から響いた。足跡を立て大盾を構えた
「嘘……」
思わずアウラの方からそんな言葉が溢れる。そのモンスターは第十位階魔法によって召喚される強大なモンスター。本体のレベルは70とのことだがポテンシャルはそれ以上。常に体力を減らし続けると言う弱点こそ有しているがその分破格の出力を持つ
「
「おいおいこいつは……」
「なんという……」
その威圧感にあのゼンベルですら戦慄する中、ザリュースは前に出た。その手に握るのは水色をベースとしたボディに、ビルドドライバーのハンドルとは異なりレンチのような意匠を持つイエローのレバーを有するドライバー。
名をスクラッシュドライバー、桐生戦兎がビルドドライバーを超える次世代型ドライバーとして完成させた代物だ。
「兄者の言うとおり敵は強大だ。これほどの相手すら幹部ではない召喚モンスターだというのだから恐れ入る」
そう言いながら腰元にそれを当てて装着する。それに合わせてゼンベルが、シャースリューが、クルシュが、キュクーが、スーキュが、それぞれ取り出したフルボトルを振って構えた。
「だがそれでも俺たちは乗り越える。乗り越えなければならない」
笑い、飲み、楽しむ明日を勝ち取る為に。そして大切な誰かを守る為に。そう言いながらザリュースがその手に持つのは、スクラッシュドライバー用にフルボトルの成分をゼリー状に固めたアイテム。
それをスクラッシュドライバーにセットして構える左手の人差し指と親指で銃のような形を作り、進軍してくる破滅の王へと宣戦布告の用に向ける。ビルドドライバーの陽気な声とは違う、重く力強い声が響いた
「変身」
バァン。とまるで発砲するかのように向けた指を倒し、反対の手でレバーを倒す。スクラッシュドライバーの両側からプレス機のようなパーツが押し出され、中のゼリーの成分がドライバーへと流れ込む
現れるのはライドビルダーとは異なるビーカーのようなガラス張りの空間
ザリュースを包み込んだそれに、ゼリー状の液体が注ぎ込まれて生体装甲の素体を組み上げる
最後にその素体の上からロボットフルボトルの成分をベースとしたヴァリアブルゼリーが降り注ぎ、その装甲を形成する。
リザードマンの肉体とは大きく異なる人型の身体。メタリックなゴールド装甲を有しクリアブラックのパーツで構成された頭部の奥から赤い複眼が輝くロボットの力を有するライダー。その名は
「仮面ライダーグリス」
この沼地に、新たな仮面ライダーが再誕を遂げた。
ちなみスクラッシュドライバーの変身音声を収録しているのはあの若本規夫さんです。名前じゃピンとこなくてもセルとかアナゴさんとかシャルル・ジ・ブリタニアとか言えば伝わると思います。ぜひYouTubeとかサブスクで仮面ライダーグリスの変身を見てください。めちゃくちゃいいですよ。
次回は本格的にがっつり戦闘シーン描くので多分遅くなります。本当にごめんなさい