アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
戦闘シーンとかもそうですがあぁでもないこうでもないとやっているうちにズルズルとこんな時間になってしまいました。
次はもうちょっと早く書けるように精進します
「戦力差を覆す秘策……お前の連れてるそいつと同じアイテムか」
『あぁ、俺の故郷で仮面ライダーって呼ばれてた戦士の使うアイテムだ』
クローズドラゴンとザリュースの出会いは、種族が生き残る方法を探すため、食糧事情の改善を求めた旅の最中だった。時に助け助けられを繰り返しお互いの目標を探す旅をしていたのだ。
「人間の国やそのそばのダンジョン、時には交渉で手に入れたりもした」
「水臭ぇじゃねぇか。そんなもん今まで隠し持ってたのかよ」
そう言って笑うゼンベルに、ザリュースは首を横に振る
「普段使いするには過ぎた力だ。旅の中で俺は一度窮地を脱するために変身したことがある」
その言葉にアウラだけでなくシャースリューも驚く。
「おい、俺も初耳だぞ」
「言ってなかったからな。その時俺が持っていたとあるアイテムを求めてかの山脈からフロストドラゴンが飛来したんだ」
「ドラゴン!?」
「なんと!?」
ドラゴンとは種でいえば彼らリザードマンの始祖とも言えるような存在でありこの世界最強格の生物でも、ある。さらに強大なドラゴンに比べれば比較的に弱いフロストドラゴンでさえ英雄単騎では追い返すのがやっと。討伐ともなれば英雄級の人物がパーティー単位で求められる上に入念な準備も必要となる。
「それを追い返す程の力ということですか?」
「いや……」
スーキュの問いにザリュースは首を横に振る
「俺はフロストドラゴンを
だからこの力を封印したとザリュースは語る
「この力をそのまま持ち込めばそれを求めて必ず争いが起こる。それを避けたかった」
『普通のやつならマトモに使えねぇが、
2人の説明に納得する一同。
「それを使うほどの敵って訳か」
「アウラの話では、人間達の王国は一度仮面ライダーの力を使って撃退したらしい。なら俺達も使えるだけの力は使わないとならない」
「問題は、あたしの時みたいな代表戦じゃないってこと。仮面ライダーでしか相手できない相手をいっぱい出されたらそれだけで……」
『そこで使うのがコイツだ』
そう言ってクローズドラゴンが並べたフルボトルに目をやる。
「このフルボトルを見てなんか気づいたことはないか?」
「え?」
いきなりそんなことを言われて目を向けてみる。
「色が……誰も同じ?」
ビルドの使っていたフルボトルは色がそれぞれ異なりカラフルな印象を受けたが、このフルボトルはどれも色が統一されている。クリアなボディに茶色のキャップ。模様が銀であしらわれている
『ロストフルボトル。フルボトルをベースに作られた人工フルボトルだ』
「人工?」
まるで普通のフルボトルは人工じゃないかのような物言いに首を傾げるアウラ
『あー……あれだ、普通のフルボトルは天然のマジックアイテムなんだよ』
火星で作られただの何がベースになっているかだのといった細かい説明は省いて大雑把にわかりやすいように解説するクローズドラゴン。細かい原理は本人もよく分かっていないのは内緒だ。
『こいつを使って変身する怪人、ハードスマッシュはリスクのデケぇ形態だ。本来なら使いたくねぇけど、頭数が必要だってんなら仕方ねぇ』
「前にも言っていたな、いい思い出がない……というのは?」
『こいつはドライバーを解さず直接フルボトルの成分を身体に流し込む。その分仮面ライダーよりも負担がデカいんだ。最悪、変身の強制解除の負荷で死ぬ……なんて事もある』
実際に見てきたものの物言いだった。その言葉には確かな重みがあった。
「とても危険な力だ。今一時を凌ぐために手を出した力が、後々蜥蜴人に不和の種を撒くかもしれない。だがそれでも……」
「なぁにごちゃごちゃ悩んでやがる!」
この危険な力で、自分たちと一緒に戦ってくれないか。そんな頼みをしようとするザリュースを一括したのはゼンベルだった。
「戦って生き残るか、負けて死ぬかって話だろ?いつものことじゃねぇか!」
ロストボトルの内一本を迷わず手に取りそう声を上げる
「そうですね。どうせ死ぬなら逃げるのではなく挑んで死にましょう。」
スーキュも同様にフルボトルを手に取る。
「しぬ……ちがう」
そう口を開いたのはキュクーだ。フルボトルを手に取りながら勇んだ若手2人に言い聞かせるように言う
「まもる……ため……ぶぞく、どうほう。だいじな……だれか」
「そうね。キュクー殿の言う通りだわ」
キュクーの言葉に同調するようにクルシュもボトルを取った。
「ねぇザリュース"竜牙"での周回の時の話、覚えてる?」
いきなり投げかけられたそんな質問にザリュースは頷いた。
「忘れるはずが無い。こちらが勝ってもより強大な相手が来るのなら、命を散らせるのではなく鎖で縛られても命がある方がいいと君は言った」
このような真似はやはり反対かと問いかけてくるザリュースにクルシュは頷いた
「私個人としての意見は変わらない。でも今の私は"朱の瞳"の族長代理。部族を背負い、部族を守る為に命を賭ける大勢の者達の意志を背負って来てるもの。だから投げ出す事も弱音を吐く事ももう止める」
貴方が仮面ライダーになるのなら私もついて行くと、手に取ったフルボトルを見せる
「一緒に守りましょう、リザードマン達の明日を」
「まったく、我が弟も隅に置けんな。」
呆れたような喜ぶような、尻尾を動かしながらシャースリューもボトルを手に取る
「死ぬ覚悟はしながらも、死なない理由を持って戦場に臨むつもりだったが、ここにきてまた一つ死ねない理由が増えた」
勝って明日を見届けようぞ、各々方。そんなシャースリューの言葉に、族長達はロストボトルを握った拳を重ね合わせた。
「んでちっこいの、コイツはどうやって使うんだ?」
『それなんだがな……まずは指を出してくんねぇか?」
「指?」
「こうかしら?」
クローズドラゴンの奇妙な提案にクルシュがその指輪クローズドラゴンの前に差し出す。
『おぅ、じゃあまずクルシュからだな』
「へ?」
言うや否やだった。クローズドラゴンがバックンチョとクルシュの指に噛み付いたのは。
「きゃあああああああ!?」
「おわぁああああああ!?」
クルシュが悲鳴を上げながら腕を振り回しクローズドラゴンがぶっ飛ばされたのは当然の結末といえよう。
「あのときは……びっくり、した……」
目の前に立つ白と黒の縞模様の怪物、名をゼブラハードスマッシュ。シマウマロストフルボトルを利用したキュクーが変身したその姿は殺人鬼の爪を寄せ付けない。
「えぇまったく!」
〈切り裂きジャック〉の相方
「いきなり指を噛まれて『変身に必要な
ザリュースもその窮地を乗り切る時にやったらしい。なんでもクローズドラゴンの中に有しているとある成分を使うんだとか。詳細を聞けば企業秘密とばかされたがいまはそんなこ他を気にしている場合では無い。
「でも……ほんとうに、すごい……ちから」
「えぇ、これほどの敵が赤子の手を捻るようとは……」
どちらもモンスターとしてのレベルは35といったところ。この数値はスーキュやキュクーの倍近くあるといえばその脅威が伝わるだろうか。人類最高峰の戦士であるクレマンティーヌでも苦戦するレベルだ。それがまるで相手にならない
ゼブラハードスマッシュの拳が〈屍蒐集家〉を吹き飛ばしシザーズハードスマッシュの斬撃が〈切り裂きジャック〉を切り刻む
「ですが、今この形態でもあれに勝てるかと言われれば、少々疑問が残りますね」
「うん……でも、たぶん……ざりゅーす、かつ。くるしゅ、も」
蜥蜴人からしたら絶望の戦力を前に、不思議と負ける気はしなかった。
「オラァ!どうしたどうしたぁ!?」
太く大きな翼の様な両腕で〈死の騎士〉の盾を殴りつける黄色いずんぐりとしたスマッシュ、ゼンベルがフクロウフルボトルで変身したオウルハードスマッシュを前にじりじりと〈死の騎士〉は後退していく。
レベルは35程度であっても『どんなな強力な攻撃でも必ず一度HP1で耐える』という食いしばり効果を有しており中位アンデッド作成のスキルで作るアンデッドの中でも重宝している。ここまでゼンベルの猛攻を耐えているのもその硬さ故だ。だが今のゼンベルからすれば……
「ハッ!やっぱ強くてもアンデッドだなぁ!」
物足りない。高いのはステータスだけだ。アンデッドらしく思考と動きが鈍く、技と呼べる様なものは殆どない。変身前のザリュースの方が剣の切れ味は鋭かった。
「ま、肩慣らしにはちょうどいいぜ。ハァッ!」
胸元で両手をクロスさせ力を貯める。形成されたイエローのエネルギー球が盾を構えた〈死の騎士〉に直撃し大きな隙を作る。そのままそこに飛びかかったゼンベルのラリアットが〈死の騎士〉の頭部を跳ね飛ばしそのアンデッドの体力を削り切った
別のポイントではシャースリューが受け持っていた〈死の騎士〉が剣を取り落として倒れ伏す
「おぅ、そっちも終わったか」
「あぁ、だがザリュースの言う通り、この姿は感覚が狂うな」
二刀の武器であるラプチャーシザースを背中に収める青い装甲のスマッシュ、スタッグハードスマッシュとなったシャースリューはそう言う。
「確かに、あのちっこいのに指を噛まれりゃこんだけ強くなるってんなら俺の武者修行は一体なんだったんだってなっちまうわな。」
ゼンベルも、シャースリューの言葉にそう同調する。
「戦いが終わればこいつをどうするのか、慎重に相談して決めなければな」
「ハッ!むちゃくちゃ気の早ぇこと言うじゃねぇか」
シャースリューの言葉を聞いたゼンベルはそう笑う。
「それだけ余裕ができているということだ。デスナイトとかいったか、このモンスターを相手にしながらそんなことを考えられるだけの余裕がな」
そういって陣地の方を見る。櫓の上ではアウラとクローズドラゴンがこの戦いの顛末を見守っていた。
「養殖にフルボトルにあの子の助言。外から来たものに蜥蜴人は救われてばかりだな」
村から出るものを排斥し、沼地に籠り外から隠れる。今まで自分達はそうやって生きてきた。実際奴隷種族として扱われるエルフ同様、法国などの亜人をよく思わない社会からすれば自分たちは歓迎されない事だろう。それが分かっているからこそ、無用な争いを避ける為にそうして生きてきた。その結果、今自分たちの手ではどうにもならない濁流に飲まれつつある。
「ま、心配になるのは分かるぜ。力が足りねぇってのは歯痒いモンだ」
そう言いながらずんぐりとした丸いオウルハードスマッシュの腕をゼンベルは見る。彼の左手の指は一本欠けている。かつて"鋭剣"族との縄張り争いでそこの族長に敗れ失った者だ。強くなる為部族を離れたゼンベルはそれだけ多くの勝利と敗北を経験している。失わない負けもあれば失う負けもあったのだろう。
「だからこそ、俺たちで挑むんだろ?お前がそう言ったんじゃねぇか」
「あぁ……そうだったな」
ゼンベルの言葉にいかんな、と苦笑するシャースリュー。そんな時だった
ーーーーア"ア"ア"ア"ア"ーーーー
嘆く様なうめくような声が聞こえてきたのは。振り返ればそこではアンデッドに殺された蜥蜴人達が生ける屍となって起き上がってきた
「まったくふざけてやがるな、アンデッドって奴は」
「彼らが置いて行った身体を乗っ取ったか」
本来ならばこれほど早く死体がアンデッドになる事はない。だがこの世界の基準では強大な部類に入る中位アンデッド4体に上位、最上位のアンデッドともなれば周囲に満ちる瘴気は格段に濃い物になる。
それ故に生まれたリザードマンゾンビ達を背後から襲う2体のハードスマッシュ
「ここは我らにお任せを!」
「ふたりは、えんご……に」
ゼブラとシザーズ、それぞれの力を使ってリザードマンゾンビを引きつける。
「すまねぇ!」
「恩に着る!」
こうして2人は1人
「あの総大将を倒してくる。ここを頼めるか」
お前にしか頼めないと、そんなザリュースの殺し文句に頷いてしまった自分の選択を、クルシュは若干後悔していた
「(強い……ただのアンデッドじゃないのは分かってたけど、それ以上に厄介……!)」
騎馬に跨り空を自在に駆ける禍々しい騎士。一方クルシュが変身しているのは赤い装甲の輝く2枚のシールドを有したスマッシュ、キャッスルハードスマッシュだ。その防御力は確かな自慢かつ、レーザーによる砲撃能力も備えている。
「やぁあああっ!」
口元から放たれるカタプルタキャノンによるレーザー攻撃。それを鎧の籠手を利用して弾き、逆に魔法による攻撃を上空から放ってくる。両肩のシールド、グランドランパートを前方に展開しそれを受け止めればこんどはその槍を手に突っ込んでくる。
「このっ!」
盾で初撃を受け止める。速度の乗った一撃にふらつきながらも反撃の拳を繰り出すが、その攻撃はするりと〈蒼褪めた乗り手〉をすり抜けてしまう。これが厄介とクルシュが称する所以だ。高い魔法耐性を持つ鎧を有する実体と、物理攻撃を受け付けない幽体を自在に切り替えられる。
一方で幽体の時は鎧の魔法耐性を失うようだが、物理攻撃を一切よせつけなない。近接戦になれないクルシュは苦戦を強いられていた
「(相手が近づいてくる回数が増えてきてる。このアンデッドには知性がある……!)」
それも死者に近い鈍ったそれではなく、ちゃんとした戦略眼を備えている。今のクルシュ単体では、スペックのおかげでやや劣勢といったところだが
『ここを頼めるか』
「私は……」
またしても突撃を仕掛ける〈蒼褪めた乗り手〉に向き直りながら、ザリュースから言われた言葉がフラッシュバックする。
「託されたんだッ!!」
「!?」
今まで腰を落とし、盾を展開していた守りの構えから一転、突っ込んでくる〈蒼褪めた乗り手〉に逆に突撃をかます。予想外のその攻撃に、キャッスルハードスマッシュの硬さと重さに槍が弾かれ、〈蒼褪めた乗り手〉が耐性を崩す。
「物理ダメージを上げるために実体になっていたのが仇になったわね!」
クルシュの言葉に不味いと〈青褪めた乗り手〉は焦る。この怪物は自分を騎馬から引き摺り下ろすつもりだ。咄嗟に幽体へと姿を変えるがここでクルシュが力を込めていたのは引き摺り下ろすことに使う腕ではなく、口元のカタプルタキャノンであることに気づいた。嵌められた。そう気づいた時にはもう遅い。
「やぁああああっ!」
放たれた彼女の瞳のように赤いエネルギー弾で〈蒼褪めた乗り手〉は己の愛馬から落ちる。幽体でくらったエネルギー弾のダメージは凄まじい。だが、致命傷には至らない。上空での優位は無くなったが近接での戦いならばこちらが有利。このまま倒してくれると構えた槍を
「ラァッ!」
「!?」
飛行能力を活かして上空から飛び込んできたオウルハードスマッシュへの対処に回さなければならなくなった。
「あんな特攻じみた動きでコイツを馬から引き摺り下ろすたぁ、お前も根性あるじゃねぇか!」
「ゼンベル!」
「こちらは片付けた!奴を倒せば後は大物だけだ!」
「シャースリューさんも!」
さらにやってきたスタッグハードスマッシュに声を上げるクルシュ。そんな彼女の姿にシャースリューはフッと笑い
「よく耐えたな。流石は俺の義妹になる女だ」
「ちょっ!?こんな時に何を……!」
「あいつに頼まれたのだろう?ここを頼むと」
狼狽えるクルシュに更にそういう。状況だけ見ればザリュースとクルシュで〈蒼褪めた乗り手〉を倒してから強大な〈破滅の王〉にも2人で挑みかかった方が良かった筈だ。だが〈蒼褪めた乗り手〉と互角のクルシュは〈破滅の王〉との戦いは荷が重い。だからこそここを任せたのだろう。そんな強大な相手に愛したものを近づけさせない為に。
「あいつは自分以外の多くの者の為に命を燃やして戦える男だ。それは美徳だが、同時にあいつの事を大事に思う者を傷つける」
シャースリューなどその筆頭だろう。自分よりも優秀で高潔な自慢の弟。本来ならば族長の栄光に輝くべきなのはザリュースだったのではと何度も思い、その度にザリュースは笑って言うのだ。
「あいつを繋ぎ止めるには俺では足りん。あいつを安心させてやるのもな」
自らの命を擲つことを止めるのも、彼に俺がやらなくても大丈夫だと思わせることも出来なかった。
「だがお前なら……お前達ならそれができるかもしれんとな」
そう思ったのだと言うシャースリューは〈蒼褪めた乗り手〉を押し込むゼンベルへと視線を向けながら言う。一度刃を交えて以来、粗野なゼンベルの態度にはザリュースの物言いも思わず砕けた形になる。クルシュは言わずもがな、彼もまたザリュースが1人英雄となるのを抑える役目を有するだろう。
「それを言うなら『私たち』でしょう?あなたほどザリュースが頼りにしている人間はいないわ」
だが、どこか自責の念がありそんな風に言うシャースリューも、ザリュースの頼る他でもない大切な人の1人だ。ゼンベルも水臭いこと言ってんじゃねぇと言いながらクルシュの隣に降り立つ。
「そうだったな」
フッと笑ったシャースリューもクルシュの横に立つ。赤のキャッスルハードスマッシュを中心に、両脇に立つオウルとスタッグのハードスマッシュ。その光景を遠くから捉えるクローズドラゴンの様子に気づいたアウラは首を傾げた。
「どうしたの?」
『なんでもねぇよ……ただ、ちょっとな』
彼らに取らせたボトルは選ばせたものでは無い。彼らがその手で無作為に掴み取ったものだ。
『またこの形が見れんのかって思うとちょっと嬉しくってよ』
「そっか……あんたもそうなんだね……」
もう見れないと思っていた光景だからと言うクローズドラゴン。スタークの話が正しければ、仮面ライダーは300年前の存在だ。ダークエルフの自分にとっては300年なんて大した時間じゃ無い。だが彼と、彼を使っていた人間には違ったのだろうと、自分と同じ別れを経験してきたのだろうと感じながらアウラは3人の連携で〈蒼褪めた乗り手〉を圧倒するハードスマッシュを眺めるのだった
ーーーーオォオオオオオオオン!!ーーーー
「最早第四位階などと言う次元ではないな……」
相手は間違いなく神話に出てくるような強大な怪物。本来であれば脇目も降らずに逃げ出して、なんとか命を拾えるような相手だ。だが今のザリュースには、その鎌のスピードが遅く感じる。
一撃、また一撃とその攻撃を躱せば大ぶりな下段から攻撃が来る。それに合わせてザリュースは大きく踏み込んで見せた。
金属同士がぶつかり合うような重い音が響く。グリスの足が下段からの戦鎌を踏んで止めていた。
「!?」
「やっと怪物らしからぬ声を聞けたな」
今までおどろおどろしい吠え声を上げるでしかなかった〈破滅の王〉の初めての驚愕したような雰囲気にそう言いながら左手に力を込める。吹き出すゼリーによって形成されたのは腕に装備するボトルの装入ユニットのついたガントレットのような形状の武器。名を
ノズルのようなパーツ、砲撃装置レイジングビーマーを展開し至近距離で放たれるレーザーを浴びせれば、強大なアンデッドであるはずの〈破滅の王〉がそのダメージを前によろめいた。
「ゼァアッ!」
そこに追撃のラッシュが飛ぶ右で〈破滅の王〉を抑え。鋭い近接用の杭、レイジングパイルを起動したツインブレイカーの左を捩じ込む。
「(さながらあいつの拳のようだな)」
自分は剣士であるはずなのに気分はまるでゼンベルだと内心で笑う。
ーオ"ォ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!ー
「そちらも本気……というわけか」
舐められてたまるかと〈破滅の王〉が全身から黒々とした霧を吹き出し周囲を覆っていく。|"滅亡の夜"〈ルイナス・ナイト〉。〈破滅の王〉固有のスキルにして、そのレベル70代では破格とされるステータスをさらに高める性質を持つそれは、絶えず体力を減らし続けるデメリットを加速させる諸刃の剣。
だがここで確実に
「チィッ!!」
振るわれた戦鎌。格段に増した速度に今度は受け止める余裕は無く回避する。そのミイラの様な肉体がところどころ崩れているのを見て長くは持たない形態だと察しながらもなかなか攻め込むことは出来ない
「だが退くつもりは毛頭ない!!」
大ぶりの一撃を躱して懐に飛び込む引きはがそうと押し当ててきた戦鎌の柄を逆に掴み組みあう形になる。
ーオ"ォ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!!ー
「ハァアアアアアアアアアアッ!!」
〈破滅の王〉の吠え越えに負けじと声を張り上げながら互いに押し合う。そのパワーは同等でも体格の差でやや〈破滅の王〉が有利か。徐々に斜め上からの圧力に押し込まれつつとしたその瞬間、飛来した光弾が〈破滅の王〉を揺るがせた
「ラァアアッ!」
「ゼンベル!?」
さらに上空から落下の勢いを乗せたオウルハードスマッシュの一撃が〈破滅の王〉からザリュースを引きはがした
「ザリュース!!」
「無事か、弟よ」
「兄者……それにクルシュまで……」
さらにやってくるスタッグとキャッスルの2体のハードスマッシュに思わず声を上げる
「もうほとんど片付いたわ!」
「応さ。あとはコイツだけだ」
気づかなかったと後ろを見れば、確かにもう殆どアンデッドが居ない。残ったアンデッドもスーキュとキュクーで掃討できる範囲だ。
「ぐおぉっ!?」
「ゼンベル!?」
〈破滅の王〉を引きつけていたゼンベルが大きく吹っ飛ばされて落下してくる。その様子に慌てて駆け寄るが、ダメージを受けているものの無事だ。
「なんともねぇよ。そんなことより遅くなっちまったな」
「何を言う、謝ることなど……」
「1番キツい相手をお前に任せてんのにか?」
謝るくらいさせろとゼンベルは言う
「確かに仮面ライダーになれるのはお前だけだ。だからと言ってお前が辛い部分を一人で背負う道理など無い」
もっと自分を大切にしろと何度も言ってきた言葉で、だが今は旅人と族長、別々の立場ではなく同じただ一人の戦士として隣に立つシャースリューが言う。
「そうよ、今ここなら私達がいるんだから頼るくらいはして欲しいわ」
夫婦だもの、と普段は照れて震えて前に進めないクルシュも、踏み込みながら前に出る。そんな光景に思わず目頭が熱くなる。ザリュース・シャシャは賢い。賢いが故に自分が犠牲になることで誰かが救えるならそれでいいと考えるし、そんな自分だからこそ親しい人間というものをあまり作らずにいた
そんな自分の事をこんなにも大切に思ってくれる者たちに囲まれている、それがたまらなくうれしかった。
「3人とも……すまん」
「で、勝算はあるのかよ」
ゼンベルの質問に、目の前で構える〈破滅の王〉を見て考える。
「奴の能力向上は己の命を削る諸刃の剣だ。渾身の一撃を叩き込めれば、おそらくそれで決着する」
「なら簡単だな、我々で隙を作る。お前はそこに一撃を叩き込めばいい」
「……行けるのか?」
グリスとハードスマッシュの間には大きな力の差が開いている。ハードスマッシュで苦戦する相手でも、グリスならば簡単に倒すことが出来るレベルにはだ。
「私たちの力を高めた全力の一撃なら……」
クルシュの言葉に一瞬迷う。任せていいのか、そんな思考が頭をよぎりかけて、それは野暮だと首を横に振って打ち消した
「頼む」
その短い言葉を待っていたと言わんばかりに三人が笑う
「っしゃあ!いっちょかましてやるとするかぁ!」
両腕の翼を広げ飛び立つオウルハードスマッシュ。回り込むように飛翔する敵を叩き落さんと戦鎌を構える〈破滅の王〉にまっすぐ切り込むのはスタッグハードスマッシュの役目だ
「“
魔法剣士であるシャースリューのMPをこれでもかとつぎ込んだ魔法陣が輝き沼地の泥が〈破滅の王〉を抑え込む鎖として襲来する。
しゃらくさいと言わんばかりに戦鎌の薙ぎ払いでそれを振り払う〈破滅の王〉
「オォオオオオオオオオ!!」
「ゼラァッ!!」
しかし鎌を振りぬいた隙だらけの状態で、すかさずそこから来るスタッグと回り込んで突貫してくるオウルの挟撃の対処を迫られる。そうして二人に気を取られたところに
「やぁああああああああ!」
キャッスルの一点に力を集中させたレーザー砲撃が〈破滅の王〉直撃し体制を崩す
「「「はぁあああああああああっ!!!」」」
そこを三方向から取り囲み、翼を広げたオウルハードスマッシュがイエローのオーラを、正面に剣を構えたスタッグハードスマシッュがブルーのオーラを、盾を前面に構えたキャッスルがレッドのオーラを、それぞれ纏って一斉に突撃する。
ーオ"ォ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"オ"!?ー
「今だ!」
「決めろ!」
「ザリュース!」
あまりのダメージに思わず武器を取り落とす〈破滅の王〉その光景を見た三者三様の呼び声に、思わず口元に笑みが溢れた
「ありがとう!」
スクラッシュドライバーのレバーを力を込めて倒し、内部のゼリーを充填させる。助走をつけて飛び上がったグリスの両肩の噴射口から噴き出すゼリーを利用して加速する彼が放つ必殺技
咆哮と共に進むザリュースのキックを前に、戦鎌を落とした破滅の王は防御のために両腕をクロスしガードの体制を取る
「貫けぇえーーーーッ!!」
ザリュースの咆哮と共にそのライダーキックが〈破滅の王〉に衝突する
数瞬の拮抗の後、鎧を砕き腐肉を穿ち、グリスの一撃が〈破滅の王〉に大穴を穿つ。沼地の泥で飛沫を上げながら着地したグリスの背後で数瞬たった後、〈破滅の王〉は爆散した。
「勝った……のか」
「当たり前じゃねぇか」
その光景に思わずそう呟いたシャースリューにゼンベルが言う。
「ザリュース」
ドライバーからスクラッシュゼリーを取り外し変身を解除するザリュースに、同じく元の姿に戻ったクルシュが声をかける
「示してくれる?部族のみんなに」
「あぁ、そうだな」
クルシュの言葉にそう頷くと、腰に刺していた"凍牙の苦痛"を引き抜き天高く掲げてみせる
「我らの勝利だ!!」
ーーーオォオオオオオオオオオ!!ーーー
その光景に固唾を飲んで見守っていた蜥蜴人達は、沼地全体を轟かすような時の声を上げるのだった。
「(これが仮初であることは分かっている)」
アウラから聞いた守護者とやらは、おそらく今の敵を凌駕する程の強大な相手だ。それを彼女の話から理解している以上、次はこんな風に簡単にはいかないだろう。
「(だが、それでも守ってみせるさ。だから祝おう。)」
次なる破滅に備える為、隣を駆ける仲間達と共に。そっとその身を寄せてくるクルシュを、掲げた手とは反対の手で強く抱き寄せ、ザリュースはその胸に誓うのだった
「コキュートス様」
「……エントマカ」
その光景を同じようにナザリックの陣地から魔法で眺めていたコキュートスは、そばに控えていたプレアデスの一人、エントマの声に振り返る
「アインズ様がお呼びです。これよりナザリックにて軍議を開くと」
「承知シタ」
仮面ライダー。王都に続きここでも彼らの目的を邪魔された。アウラが敗れ王国から一度退いた以上、ナザリックにこれ以上敗北の汚泥を被せることは許されない。
「伝説ノ戦士……仮面ライダー」
必ずや討ち取って見せよう、ナザリック随一の武人として御身に勝利を捧げよう、その誓いを胸にコキュートスは開かれた転移の門へと入っていくのだった