アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
「やはり、仮面ライダーが出たか」
「エェ、グリス……ト名乗ッテイマシタ」
ビルドとは異なる第二の仮面ライダー。玉座の間で録画されていた先程の戦いの様子が繰り広げられていた
「やはりにわかには信じられないでありんす。あの程度の下等生物が
発動後は体格差で押していたように見えたがパワーは互角。変身することでそれほどの力を与えるアイテム
「(まるでチートだな)」
腐ってもメガコーポが作り上げたゲームだ。チーターが大暴れするなんていう事態は無かったが、レベル20程度の現地人がレベル100のアウラやそれに匹敵する〈破滅の王〉を相手取れる変身アイテムなどユグドラシルの世界では常軌を逸した代物としか思えない。
「(仮面ライダーとなることで膨大な職業レベルが与えられるのか?いやいや外付けのレベルブーストなんてそれこそ反則だ。ユグドラシルのシステムとは考えられない)」
300年前、ブラッド・スタークの故郷で生み出されたアイテムという話は間違いではないのか。
「そうだブラッド・スターク。奴の様子はどうなっている」
「明日、またアイテム散策のため王都を発つとの話を王国内部に潜む
デミウルゴスが答える。
「恐らくは新たに開発したアイテムを彼らに届けることが目的かと」
「アイテム……だと?」
「はい、彼の国で不遜にも黄金などと称えられていたラナーという女のことを覚えておいででしょうか」
デミウルゴスの言葉に自分の記憶を振り返るアインズ
「お前が近づこうとして断念したという、王国の姫だったか?」
「はい、彼女を抑えることが出来れば王国を内部から崩すことが出来る計画でした。しかし、既に彼女にはブラッドスタークの息が掛かっていたようで……」
一度は暗殺も打診されたが、その時はまだマーレが殺される前で奴隷制を差し止めたという善良な女の子を殺すことは憚られた為却下したのだが
「いや待て、確か彼女は頭脳に長けた政治家だろう?アイテムの作成に関連するスキルでも持っていたのか?」
「いえ、それがあれらのアイテムの作成法は鍛治でもマジックアイテムなどの作成でも薬品の調合でもなく、科学という全く未知の技術のようで……」
「科学……だと?」
その言葉にアインズは耳を疑った
「科学……仮面ライダーのアイテムは科学で出来ているというのか?」
「ご存じなのですか?」
アインズの口ぶりから科学を知っているのかと問いかけるデミウルゴスに今のは失言だったかとアインズは冷や汗を流す
「(どう答えればいい?いや、ナザリックの外に出てないNPC達は
自分は異世界から来ました、と白状するのではなく、ユグドラシルの世界の経験としてフェイクを混ぜればボロは出ないはず、とアインズは語る
「科学とは簡単に言えば
「廉価版……といいますと?」
「シズなどの自動人形に使われている魔道工学、即ち魔力をエネルギーに機械を動かすのではなく別の原理で機械を動かすのが科学だ」
それを聞いてしばらく考え込む。賢くあれと定められたデミウルゴスだ。アインズのこの説明だけで科学とは如何なるものか、そのおおまかな概要を理解した。
「しかしアインズ様、それではあまりに非効率では?」
「その通りだ。例えば空を飛ぶこと一つとっても魔法ならば第三位界の魔法で事足りるが科学であれば大型の鉄製のと膨大な燃料を消費することを求められる」
何より悍ましい技術だと、かつて鈴木悟として生きた世界を振り返りながら言う。
「科学は発展の代償に破壊をもたらす。ナザリックの外で私達はそうして科学に汚された世界を見てきたのだ」
かつて自分が鈴木悟として生きた世界は科学により発展し、それを作り出した先駆者たちが富と権力を得た代償に、自分のような貧困家庭に生まれたものは上等な教育を受けることすら許されず、外の空気はマスクがなければまともに吸うことすら叶わない。
「(あいつは何を考えているんだ。せっかく魔法で発展したこの世界にそんな毒みたいな技術を持ち込むだなんて)」
あの世界において楽しみといえばこうした仮想世界にしかなかったアインズからすれば、科学はとても良いものには当たらない。それをどこから、どのようにして持ち込んだのかは分からないが、この時点で最底辺だったアインズの中のブラッド・スタークの評価はさらに低迷した。
「話を逸らしてしまったな。コキュートス、リザードマンの仮面ライダー、奴らの戦力をどう見る」
「ステータスハ王国ノ仮面ライダー、ビルドノ漆黒ノフォーム、アノフォームト互角……中身ヲ考エレバヤヤ劣ル、トイッタ所デショウカ」
今回は傍観に徹し、敵の戦力を測ることを第一に考えろ、その指令のもと分析したザリュース達の戦闘力をコキュートスはそう分析する。
「デスガ、奴ラニハビルドノ様ナ、コチラノスキルヲ無視シテダメージヲ与エル能力ガ見ラレマセンデシタ。中身ガ歴戦ノ戦士デアルコトヲ考エテモ、総合的ニハ王国デ戦ッタ仮面ライダーヨリ些カ劣ル、ト考エマス」
「なら、このナザリックの戦力で十分に蹂躙できるのだな?」
「ソノ前ニ……アインズ様ニオ伺イシタイ事ガゴザイマス」
質問を遮るいきなりの提案に首を傾げるアインズ。
「コキュートス、アインズ様が質問なさっているのよ、まずは……」
「よい、アルベド。なんだコキュートス。発言を許可する」
「アリガトウゴザイマス」
深々と頭を下げたコキュートスは質問を投げつけるここにきてから暴走したシャルティアとアインズの戦いやビルドとアウラの代表戦など、多くの戦いを見てきたからこその質問を
「アウラハ……本当ニ洗脳サレ我ラヲ裏切ッタノデショウカ」
「(…………は?)」
その質問に一瞬思考がフリーズした。それはずっと考えない様にしてきたもしや
「シャルティアガ洗脳サレテイタ時、彼女ハ自発的ニ動クコトハセズ、攻撃サレタ場合ニノミ反応シ動キ出シマシタ。
ソレト比ベルト、アウラノ様子ハ余リニモ異ナッテイマス」
「コキュートス、それはつまりこう言いたいのかな?アウラは洗脳などされていない。自分の意思で仮面ライダーに付いているのだと」
それこそあり得ない。仮面ライダービルドはマーレの仇だ。そんな相手に自ら協力するなど正気の沙汰ではない。そう反論するデミウルゴス。だがコキュートスからすれば疑問なのだ
「ソノ点ナノダガ……ビルドトグリス。2人ノ仮面ライダーハ本当ニ同ジ一味ナノカ?」
「……なんだって?」
「ブラッド・スタークハ、確カニアノ大森林ヘト足ヲ運ンデイル。ダガ、リザードマンノ沼地ニ奴ガ現レルノヲ確認シタ者ハ居ナイハズダ」
密かに王国に潜り込ませ監視しているモンスターも、リザードマンの集落を偵察していたコキュートス達も、誰もだ
「なるほど……つまりあの仮面ライダーはブラッドスタークとは完全に別口。だからアウラも協力している。何のためにだい?」
「…………リザードマン達ヲ滅ボサレタク無イノダロウ」
「コキュートス、それが何を意味しているか分かってるの?」
彼の吐き出す冬気より、遥かに冷たい声でアルベドが問いかける
「あんな下等生物を、仮にもナザリックの階層守護者だった者が、自分の意思でアインズ様に弓を引いてまで守るというの?」
それこそ普通ならあり得ない自体だ。彼らはナザリックに仕えることこそが存在意義であり、ナザリック以上に大切な存在などありはしない筈だ。それこそ本当に、ナザリックを裏切ったと言うのなら話は別だが……
「腕時計……」
縋るように、アインズはそう呟く
「アインズ様?」
「ぶくぶく茶釜さんの腕時計を、アウラはまだ付けている」
完全にその心がナザリックから離れた訳ではないはずだと、それを根拠に言う。
「(そうだ、NPCの皆んながナザリックを……アインズ・ウール・ゴウンを離れるはずがない。ここは彼らが生まれた家なんだから)」
だが、喉に刺さった魚の小骨のように疑念がつっかえて考えが纏まらない。
「では、一度様子を見に行くのは如何でしょうか?」
そこで提案したのはアルベドだ
「様子を見に行く?」
「はい、リザードマン達に降伏を勧告しに行くのです」
その言葉に周囲がざわつく
「どういうことでありんす?リザードマンは滅ぼせというのがアインズ様のご命令でしょう」
「えぇ、しかしこれ以上強力なアンデッドを召喚するなりでアインズ様のお手を煩わせずとも、強大な軍団を見せつけて力の差を思い知らせれば、愚かにも我々と戦う気でいるリザードマンも考えを改めるやもしれません」
「なるほど、仮面ライダーのアイテムを、彼らの手で我々に差し出させる訳か」
デミウルゴスはアルベドの提案にいち早く気付いた
「如何でしょうアインズ様、うまく行った暁にはあのリザードマン達をナザリックの記念すべき第一の支配種族とする、というのは」
「ふむ、滅ぼすだけではなく支配の実験をする……ということか」
今後のことを考えれば必要になってくる要素だとアインズは少し考え込み
「いいだろう、ならば出向こうじゃないか。リザードマンの集落へ」
こうしてリザードマンの集落へ絶望の第二波、その先触れが迫るのだった
ここから会談→決戦という流れでリザードマン編は終わると思われます。長いことお待たせしてしまって申し訳ありませんが次回も楽しみにお待ちいただければ幸いです。
次回は一週間以内に投稿できると……いいなぁ……