アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
『聞いてた通りのトンでもねぇ力だな……』
「魔法1発でこの沼地を丸ごと凍てつかせるとは……」
〈破滅の王〉を中心としたアンデッドの軍団を打ち破った翌日、徐に現れたのは王国を取り囲んだのと同じアンデッドの軍団。その中心に立ったアインズは、大規模な魔法を用いてリザードマン達が武器としていた拠点を取り囲む巨大な沼地を凍り付かせて見せた。
その後背後から現れたゴーレムの投げた岩が鎮座し、その巨大な岩の塊へと膝跨いだアンデッド達で築かれた階段で登り、用意された玉座に座してアウラとリザードマンの代表を呼びつける
『アウラ……』
「大丈夫……うん、大丈夫だから……」
口ではそう言うがアウラの表情も真っ青だ。裏切り者として初めて自分の主人と邂逅する。恐れていた時が来てしまったのだ。
「恐ろしいなら逃げてもいい。責めるつもりはない」
「ううん、ありがとザリュース……でも……」
あたしが向き合わなきゃいけないことだから。そう言って震える足で立ち上がる
「兄者……」
「あぁ、それが良いだろうな」
ザリュースの言葉にシャースリューが頷く。この中で代表として赴くのならばリザードマン最強の戦士であるザリュースと、族長達の代理としてその兄であるシャースリューが行くのが適任だ。
「ドライバーは持っておけよ」
「分かっている。だが万が一の時は……」
「安心しろ。その時はお前と一緒に戦ってやる」
また自分が囮になるからその間に逃げてくれたでも言おうものなら、そうはさせないと言うシャースリューの言葉にザリュースは苦笑する。そうして凍りついた沼地をゆっくりと歩いていく
「対談のために参った!"
「ザリュース・シャシャ。同じく対談のために来た。問わせてもらう、そちらの目的は一体なんなのか?なんの目的があってこちらを……」
「〈その口を閉じたまえ〉」
続いてザリュースが名乗りを上げたところでデミウルゴスが自身のスキル〈支配の呪言〉を発動する。
レベル100のマーレを倒したおかげで英雄の領域に到達し弾いたニニャとは違い、倒したのがレベル70代の召喚NPCであるザリュースはまだその領域に達せていない。
その結果喋っている途中の口が勢いよく閉じられ、勢いよく舌を噛むハメになってしまう
「ぐっ!?」
「ザリュース!?」
「アウラ」
そんな様子を見て慌てて駆け寄ろうとするアウラ。だがその動きがアルベドの一声で思わず硬直する
「優先順位が違うでしょう?権限は凍結されているとはいえ階層守護者なら、アインズ様の御前に呼び出された時何をするべきか、理解してるわよね」
「で、でもザリュースが怪我して」
「
狼狽えるアウラに、攻め立てるようにそう言い放つ。ちらりと口元を抑えるザリュースを見れば、シャースリューに支えられながらも俺のことはいいと言わんばかりにふるふると首を横に振る。その光景になぜか心が締め付けられた。
拳を握り、跪いてその手を地面に当てる。石の土台の上に建てられた玉座に座るアインズとその両脇に控える守護者たちに向かって深々と頭を下げる。
「元ナザリック第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ、御身の前に。アインズ様」
「役職に元など付ける必要はないぞ。今でも私はお前のことを大切な仲間の一人だと思っているからな」
まるで猫でも撫でる時の様な甘い声でそう言うアインズの姿に、なぜか心が締め付けられる。それに自分は……
「アインズ様……あの書き置きをご覧になっていないのですか……?」
「書き置き?いや、しっかり見せてもらったよ。すまなかったな、知らず知らずの間にお前を思い詰めさせてしまったらしい。
だがあんなふうにいきなり居なくなってはお前の大切な仲間達を心配させてしまうだろう?もうこんなことをしてはいけないぞ?」
その言い方はまるで家出した子供に言い聞かせる好好爺のようで
「リザードマンの集落で仮面ライダーのアイテムと同行していたアウラを見て、彼らに操られているのではないかと心配していたんだが……こうして受け答えができている以上、シャルティアを洗脳した力の様なものは使われていないと確認できた。」
「それでは……我らに攻めかかったのは勘違いだったからだとでもいうのか!?」
抗議をするかのようにシャースリューが声を上げる。アインズはそこでずっとアウラに向けていた顔を不機嫌そうにシャースリューの方に向けた。その光景に忌々しそうに舌打ちするアルベド
「下等生物風情が……アインズ様がお話ししている最中でしょう!デミウルゴス!!」
「〈平伏したまえ!〉」
「ぐっ!?」
「ッ!!」
再びデミウルゴスの支配の呪言が、今度はシャースリューとザリュースを捉え地面に這いつくばらせる
「ッ!!」
思わず駆け寄りたくなるアウラだが、アルベドの視線がそれを許さない
「あ、アインズ様……」
「なんだい?アウラ」
だがその光景に、思わず問いかけずにはいられない
「私が……私がナザリックを出る前からここを攻める計画は進められていましたよね?
ここの人たちを見ました。みんな、みんな優しかったです。王国で攻めた八本指みたいな悪党には見えませんでした。閉鎖的な部族でアインズ様に敵対的な行為を働いた様子も見えません。
どうしてアインズ様はここの攻撃をお命じになられたのですか?」
「そうか……アウラは知らなかったな」
その質問にまた文句を言おうとしたアルベドを静止しながらアインズは言う
「正に、閉鎖的だったからさ」
「……え?」
態々ナザリックが、主人が攻める理由がないと思っていた根拠の一つを挙げられ、アウラは硬直する
「小規模な部族だが、合わせればそれなりの数になる。田舎の閉塞的な空間でひっそりと暮らしていて他部族との交流もない。妙な横槍や妨害が入ることなく、今後の戦いに向けてコキュートスに"将"としての経験を積ませるのに丁度いい相手だったからだ」
そんな相手が、メインで散策していたトブの大森林の奥地に偶々いたのだ。だから選んだのだと。それはつまり
「実験台として……丁度良かったから……?」
「そうだ」
ただそれだけがリザードマン達の攻められた理由だった。思わず翼を広げて飛び出そうとしたクローズドラゴンを必死に抑えながら言葉を絞り出す
「で、でしたらアインズ様!彼らは私を保護し、助けてくれました!だから何卒滅ぼすのだけは」
「おぉ、そうだったな。その話をしようと思っていた所だ」
アウラの請願に、安心しろと言わんばかりに未だに這いつくばるザリュース達の方へと顔を向ける
「さて、リザードマン諸君。今回は我々の実験の手伝いをしてくれたことに感謝の意を示そう」
どこまでも見下した物言いだ。だが同時に彼らには自分達にそれを通すだけの力がある
「話の本題だが……力の差はこれで理解してくれたと思う。私の支配下に入れ」
命令だった。どこまでも下等生物に対する上位存在からの命令だった。
「そしてその暁には服従の証として君らが使っていたドライバーだったか?そのアイテムを渡してもらう」
「なっ!?」
そこで悟る。今まで将軍すら見せてこなかった相手の親玉が出てきた理由を
「(狙いはスクラッシュドライバーか……!)」
自分たちのような存在でも神話の上位存在に立ち向かえる代物だ。渡してしまえばどうなるか。しかしこの圧倒的戦力差の前では……そう思った時だった
『ふざけんじゃねぇ!』
「駄目!抑えてクローズドラゴン!!お願いだから!?」
しかしその言葉にザリュース達が返す前に声が響く。見ればアウラが今にも飛び出そうとするクローズドラゴンの口元あたりを必死に抑えていた。
『いいや……もう我慢できねぇ!』
「あっ!?」
しかしアウラの手を離れ、クローズドラゴンは翼を広げて足の台座の上にいるアインズ様の元まで飛んでいく
「なんだね?このオモチャは」
「アウラ。普段からペットの躾はしっかりするようにと」
『俺はオモチャでも無ければペットでもねぇ!クローズドラゴンだ!!』
デミウルゴスとアルベドの言葉にそう怒鳴り返す
「しかしアインズ様の御前まで愚かしくも飛んでくるとは礼儀がなっていませんね。〈地に伏せたまえ〉!」
しかし、ザリュース達とは違いクローズドラゴンにはその言葉の隷属が届かない
「なに?」
『どうやら俺にそいつは効かねぇみてぇだな……というか礼儀知らずはお前の方だろうがよ!』
「なんだと?」
クローズドラゴンのその物言いに眉を寄せるデミウルゴス
『さっきからたまえだの何だのと偉そうにしやがって。いきなり攻めてきやがったと思ったら沼地は凍らせる岩は降らせる挙げ句の果てにはその上から見下ろして命令してきやがって!何様のつもりなんだよ!?』
「なんと無礼な!アインズ様の前では当然の礼節です!」
『そんなの俺らには知ったこっちゃねぇんだよ!』
うるせぇ知るかとクローズドラゴンはアルベドの言葉を一蹴する。あまりの無礼にアルベドも開いた口が塞がらない。
「おい、私の臣下への暴言はその辺りに」
『お前もお前でなんで止めねぇんだよ!こんなの普通おかしいって分かるだろ!?』
「いいや、おかしいのは君の方だとも。」
アインズにも噛み付くクローズドラゴンをデミウルゴスが遮る
「力の差は十分に理解しているだろう。アインズ様こそ、いずれこの世界の全てを征服されるお方。偉大なるナザリックの主人であらせられるぞ!」
『だったら偉そうな態度取るのは征服してからにしやがれ!』
デミウルゴスは困惑した、コイツは本物の愚か者なのだろうかと。ナザリックとリザードマンの戦力差は圧倒的だ。どんな賢者だってこの戦力差を打ち破る策は考えつきようがない。であれば取るべき択はいかに好待遇での降伏を勝ち取るかだ。間違ってもそういうことは勝ってから言えなどと言う挑発じみた発言をすることではない。
「(何故だ……今までにもこの手の連中は腐る程いただろう……)」
笑い飛ばそうとした。今までの身の程知らずな奴らのように。皆自分達の方がこちらより強いと思い込み、調子に乗った言動を繰り返す阿呆ばかり。そう言った連中はこちらが力を見せてやれば格の違いを理解する前に消し飛ぶか、震えて命乞いを繰り返すかのどちらかだった。
目の前のこれも同じだと、笑い飛ばしてやればいいと理性が言う。だが出来なかった。
「確かに、一度勝っているというのに降伏しろなどというのは」
『そんなんじゃねぇ!お前みたいな奴の支配が受け入れられるかって言ってんだこのガイコツ頭!!』
「」
至高の御方に向けられているとは思えないアルティメット不敬にアウラが顔面を蒼白にする。アインズすら、この姿でそんな言葉をぶつけられるなどと思ってもいなかったのか言葉を失ってしまう
『それにお前、さっきあんなにアウラに向けて優しそうに話してたじゃねぇか!だってのにこのザリュースへの仕打ちはなんだ!?
なんであんなに優しくできるのに、他の奴にその優しさを分けてやろうって気持ちにならねぇんだ!?』
彼は怒っているのだ。たとえ強大な敵だろうと怒らずにはいられないのだ。自分の強さに酔っているから噛み付くのではない。誰かの為を思い真っ直ぐにそれをぶつけにいける愚直なバカ野郎だからこそ、時に策を巡らせる賢者をも黙らせることがある。
「何故……?彼らはナザリックの者ではないだろう?」
『んなっ!?』
その言葉に今度はクローズドラゴンが絶句する版だった。アインズのその物言いに、どこまでもナザリックとそれ以外で別れた下等生物とこちらを見下す者たちの親玉の、その人間をやめつつある思考回路に
「(せっかく彼らが俺を立ててくれているんだ。それを否定したら可哀想じゃないか)」
アインズはそんなことを考えながら黙ったままのクローズドラゴンを見据える
「どうした?話は終わりか?なら私は彼らとの会話に戻りたいのだが……」
「いや……今の話でよく理解できた」
アインズの言葉をまたしても誰かが遮る
「嘘……」
「馬鹿な……!?」
ザリュースだった。デミウルゴスにより口を封じられ地面に押し付けられていたザリュースが、その力に抗うように立ちあがろうとしていた
「何故!?先程までは、いやまさか……」
デミウルゴスは気づく。段々と彼が呪言の支配を打ち破りつつあるカラクリ
「成長しているというのか?今この瞬間も……いや、戦闘もして居ないのだ、そんなことはあり得ない!〈平伏したまえ!〉」
「ぐうっ……!?」
二人口に魔力を込めて呪言を放つ。その圧に表情を曇らせるザリュースだが
「〈這いつくばれ!〉〈立ち上がるな!〉〈抵抗するな!!〉」
矢継ぎ早に放たれる呪言。しかしそれに抗うように目を見開いたザリュースは叫ぶ
「断るッ!!」
バチン!とまるで鎖か何かが切れるような、見えない支配を打ち破る音が聞こえた気がした。
思わず気押される気押されるデミウルゴスを前に、腰元に装着したスクラッシュドライバーにスクラッシュゼリーをセット。
「変身」
拳銃のように構えた右手を発砲するジェスチャーと共にレバーを倒す
ゼリーが凝固し形造る装甲に身を包む。仮面ライダーグリスへと変身を果たしたザリュースは、岩の台座の上に座すアインズよりも先にアウラとクローズドラゴンへと目を向ける
「二人ともすまなかった。本来俺が言うべきことを言わせてしまったな」
「ザリュース!!でも支配の呪言をなんで……」
『……ハザードレベルか!?』
クローズドラゴンはそのカラクリに気付いたようだ。ハザードレベルは強い想いに呼応して上昇する。二人の行動を胸に、このままでは居られないと奮起する想いがハザードレベルを引き上げ、土壇場でデミウルゴスの支配を弾き返したのだ
「その姿に変身したというのなら、答えは決まっているということか?」
「そうだ、アインズ・ウール・ゴウン殿、我々リザードマンは貴方の要求には従えない」
その質問に周囲から殺気が登る。これから支配下に置く下等生物ではなく無礼な敵としてザリュース達のことを認識する目だ
「そうか。ならば再び攻撃を仕掛けよう。明日、次は私の側近が攻め手となる」
「来い……受けて立つ」
アインズの言葉に、ザリュースは面と向かって啖呵を切った
正直ここら辺のエピソード書くために本編見返してたら憤死しそうになりました。やっぱ俺デミウルゴス嫌いだ。
次回、コキュートスVSリザードマンですお楽しみに