アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
啖呵を切ったザリュース。転移の門で帰還していくナザリックの勢力が完全に消え、アインズの魔法の効果により凍りついた沼地も元に戻った後ザリュースが真っ先にしたのは
「すまなかった。あんな勝手な真似をして……」
「ちょっ!?ザリュースなにしてんの!?」
他の族長達に頭を下げ、誠心誠意謝罪することだった。
『俺もだ……ついカッとなっちまった。』
「部族の未来を考えれば、俺も止めるべきだった。代表として赴いておきながらこんな結果になってしまったこと、皆に申し訳が立たない」
「クローズドラゴン、それにシャースリューまで……」
アウラは慌てるが、続けてクローズドラゴン、そして直接彼らにあれこれ言ったわけではないシャースリューまで頭を下げる姿に呆然とする。
「もっと良い条件で降ることが出来たかもしれない。それこそ彼らの第一の属国として、彼らのもとで栄える様な道が」
だがザリュース達はそれを蹴った。上位者の降伏勧告に対して無礼で返したのだ。それ相応に相手の攻撃も、こちらに勝利した後の対応も苛烈になることは間違いない。
「どうして?あの場で殺されたとしてもおかしくなかったのに?」
なぜそこまでするのかとクルシュは問いかける。なにせザリュースが立ち上がり、アインズの物言いに反抗した時、ギラついた殺意を感じたのだ。〈支配の呪言〉で押さえつけられている時などいつその首が落とされるのかと心臓が締め付けられる思いで見ていたのだ。
「そうだな。そうなってもおかしくなかった。だがそれでも俺は奴らに蜥蜴人の未来を任せたくなかったんだ。」
「みらい……?」
その言葉にキュクーは首を傾げる。随分と抽象的な話だ。
「そう未来だ。きっとここで戦って負けても民達が生き残る未来はある。」
それがどういうものかは分からない。もしかしたら奴隷か家畜のような扱いを強いられるかもしれない。だが支配すると言った以上、少なくとも皆殺しにされることはないはずだ
「彼らの優れた魔道の叡智があれば今よりも豊かな生活が送れるかもしれない。かつての様な内乱も飢えもない世界が与えられるかもしれない」
そうして彼らは豊かになった世界に感謝する民達に笑いかけるのだ『豊かになってよかったな
「こちらを見下すのは彼らの自由だ。彼らにはそれだけの力がある。だが俺たちの歩んで来た道を顧みず、暴力による征服を繰り返す連中に従ったところで、彼らの手による発展はあれどそれ以上はない」
蜥蜴人には蜥蜴人の歴史がある。族長の選択を過ちだとして部族間で争うことになった事を苦しみ続けたクルシュの涙も強さを求め旅人として部族を離れ、最終的にその部族の頂点に立ったゼンベルの奮闘も、部族の生き残る道を探すために一度多くのものを捨てたザリュースの旅路も、全て愚かな歴史と一緒くたにされ『どうでもいいもの』として扱われてしまう。ザリュースはそれがどうしても我慢できなかった。
「だからこれは、俺の我儘だ。惚れた雌にそんな未来を生きて欲しくないといつ俺の。その責任は取るつもりだ」
それはつまり、総大将として死地に赴くという事だ。
「戦士階級の者はすべて動員する」
「俺らも付き合わせろよ、そのワガママって奴に」
シャースリューもゼンベルも、それに付き合い活路の薄い戦いに赴く覚悟を決める。
「それらのまとめ役として、この場にいる……」
「ろくにんで……いい?ほんとう、に……?」
だがそこに待ったをかける者が居た。キュクーだ。その意図をザリュースは受け取った。これが最後のチャンスだと
「……そうだな、もし俺たちが負けた時の為に誰か部族を纏める者が必要だ」
「正論ですね」
スーキュが同意を示す。ただ問題はそれを誰にするかだ。ゼンベルはまず譲らないだろう。シャースリューもここまで総大将を務め続けてた以上、戦いに赴く義務がある。
キュクーはどうだろうか。蜥蜴人四大至宝の一つ、装備すれば知性を奪われる
「私かクルシュ殿……ということになりますね」
「そんな!?私も一緒に戦うわ!!」
スーキュの言葉にクルシュは立ち上がって声を上げる
「族長としての経験なら私よりもスーキュさんの方が遥かに上よ」
「一方で、クルシュはこの中でただ一人正式な族長ではない族長代理だ」
クルシュの言葉にシャースリューが返す。これは決してクルシュが彼らの隣に立つに釣り合わないという訳ではない。正式な族長じゃない族長代理であれば、残っていたとしても危険視され、処刑されるような可能性も薄いという訳だ。
「ザリュース、お前はどう思う?」
シャースリューの問いは、まるで決定権を委ねてくるようだった。
「私は戦うわ。ザリュースも彼らの支配を認められないんでしょう?だったら私だってそんな世界で生きるのはごめんよ!」
「あぁ……そうだな……」
そうだ、ザリュースが否定した世界だ。どこかでは理解している。自分たちははるかに蒔ける可能性が大きい。そんな世界に惚れた女を一人残せと言うのか、そんな残酷なことはないだろう。
「俺は……」
だが、それでも
「クルシュが適任だと思う」
「そんな!?ザリュース!!」
彼女に、俺と一緒に死んでくれなどと、言うことは出来なかった。そんなザリュースにクルシュは面と向かって声を上げる
「ザリュース、お前が説得しろ」
その様子を見たシャースリューはそういう。もし彼女が納得しない場合はスーキュが部族をまとめるために残るという形になる
『アウラ、俺たちも行こうぜ』
「クローズドラゴン?でも……」
『こういうのは二人で話し合うべきだ。俺たちがなにを言っても邪魔になる』
「……分かった」
族長たちが出て行った後、クローズドラゴンに連れられてアウラも出ていき、ザリュースとクルシュの二人だけが残った。
「一体どう言うつもりなの!?部族の損得ではなくて貴方の我儘だって言うなら私も一緒に……」
「クルシュ……どうか分かって欲しい」
「分かるわけないじゃない!そもそも負けるとは決まってないわ!私達全員で挑めば可能性は……」
キャッスルハードスマッシュは高い火力と防御力を両立したハードスマッシュの中でも強力な個体だ。それに変身できるクルシュを失うと言うのは戦力的にも痛手ではある
「そうだ。勝つためならばお前を残すのは合理的な選択ではない」
「だったら……!」
「だからこれは俺の我儘だ。ザリュース・シャシャとしてお前が歩んで来た道を否定されたくない様に、雄として、惚れた雌を死なせたくない」
「〜〜〜〜ッ!!」
どこまでまっすぐに、このリザードマンは思いをぶつける。そんな姿に惚れたのだ。そう言われては返す言葉もない
「頼むクルシュ、酷い話なのは承知している。それでも……どうかこの愚かな
「ずるいわよ……一人だけ命懸けの舞台の最前線にいって、私は……」
「…………すまん」
ザリュースの言葉と覚悟に、クルシュは何も言えない。そしてそんなクルシュが絞り出す責めるような哀しみの言葉に、ザリュースも返す言葉を持たない。啜り泣くクルシュを優しく抱き寄せるザリュース。そうして時が流れていった。もう一度考えさせてほしい。そんな会話で二人が離れるその時まで
「ねぇ……クローズドラゴン」
『あん?』
「クローズドラゴンも仮面ライダーのアイテムなんだよね?
そうだな。と頷くクローズドラゴン。彼は紛れもなく仮面ライダーのアイテムだ。
「じゃあどうしてザリュースに使われなかったの?
だが、前回の戦いではアウラの側に居た戦闘に加わることはなかったアウラはそれがどうしてかと気になったのだ
『あー……いや、一応ツインブレイカーにセットすりゃ使えるんだがな……』
本来はドライバーを使って返信するアイテムだと彼は言う
「それってもしかして……」
『ビルドドライバーだ。俺はスクラッシュドライバーには対応してねぇ』
「ビルドと同じドライバー……」
弟の仇。そしてかつては、このクローズドラゴンの使い手が一緒に戦っていた戦士
「ねぇ……あんたの知ってるビルドって、どんな奴だったの?」
『俺の知ってる……そっか、やっぱ俺の知ってるそいつと今ビルドに変身してる奴は違うんだな……』
アウラの言葉にそれを再認識する。そうだ、ブラッドスターク曰くビルドは300年前の戦士、エルフならともかく人間がそんなに長い間生きていられるはずがない。
『なんとなく分かるぜ、お前の弟はハザードにやられたんだろ?』
「ってことは、その人も……」
『あぁ。そん時俺とアイツ、それからカズ……グリスの変身者は別の国の人間同士でな、戦争していたんだ』
そうしてクローズドラゴンは語り出した。元々一つの国だったものが突如出現した高い壁『スカイウォール』により隔てられ、三国に分かれた国同士で戦争をしていたという歴史を
『その頃のグリスは俺らよりも強くて、俺はとにかく敵をブッ倒さねぇとと焦っててよ……政府が提案した、グリス達を罠にかけてその間に敵の国を攻めるって作戦に乗っかったんだ』
「ビルドは……反対したの?」
『…………そうだ』
それがアウラには理解できなかった。攻められたなら攻め返せばいい。じゃないとずっと攻められ続ける。守るための選択として、何も間違っていないはずだ
『そうだよな、みんなそう思うよな。でもそいつは違ったんだ。だってそいつは……』
ライダーシステムを作った男なのだから。その言葉にアウラは驚く
「ライダーシステムって、ビルドとかグリスとかの……その人が全部作ったの!?」
『大元はそいつの親父さんらしいけどな。それを今の形に持ってったのはアイツだ。
だから嫌だったんだよ。誰かを守るために作ったライダーシステムが誰かを傷付けるために使われるのが』
誰かを守る。それは今のビルド……ニニャも言っていたことだ。誰かを、パーティーの仲間達を助けるために彼女は立ち上がった。
「それで……作戦はどうなったの?」
『ビルドに気づかれないように、俺だけで秘密裏に実行することになった。でもそいつはそれに気づいて止めに来たんだ』
さらにグリスと行動を共にしていたキャッスル、スタッグ、オウルの3体のハードスマッシュも合流して乱戦になった。
『その頃の俺は、そんなあいつのやり方をむしろ臆病者だと思ってたんだ。誰かを守るんなら、傷つけようとする大元をブッ倒すのが1番手っ取り早い。あいつがやらねぇなら俺が、俺だけがそれをできるんだってな』
でも違った。そう言うクローズドラゴンの言葉にますます首を傾げる。自分の生み出した大切なものが戦争の道具にされる。それが嫌と言う話はまだなんとなく分かる気がするのだが
「どうして?倒しちゃえば無くなるでしょ。そうすれば終わるじゃん」
『敵が一人ならな。あの時は違った』
国が敵だった。正確にはその戦争を影で動かしていた黒幕が居たがその時は国全体を敵として見做していた
『その国の施設に攻めいるまでに多くのものを潰さなくちゃいけない。それこそ本気で自分達の土地を守ろうとしてる奴とかをな』
戦争とはそれを全て正義の名の下に踏み潰すことを言う。それをクローズドラゴン、否同時の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は理解していなかった
『アイツは、俺がそうやって"誰かの為に"って誰かを踏み潰そうとしてるのを止めようとしてくれたんだ。その結果、アイツにハザードトリガーを使わせちまった』
当時の彼はスパークリングよりも強かった。その結果その身をかけてでも止めようとして
「ハザードが暴走した……」
『あいつは敵をぶっ潰した。俺がやろうとしてたみたいにな』
犠牲になったのはスタッグ……シャースリューが今使っているボトルの使い手だと言う。
『そいつはグリスの腕の中で息耐えた。思い知ったよ、俺がやろうとしていたことがどういうことだったのか』
ざまぁみろとか当然の報いだとか、そんな感情は浮かんでこなかった。むしろ自分が犯した過ちの重さに暫くはまともに戦うことも出来なかった。半端な覚悟で戻ってくるなと、グリスの変身者に張り倒されたと語るクローズドラゴン
『だから少しは分かるんだよ、お前の考えてることが』
「え?」
クローズドラゴンの言葉に表情を翳らせて来たアウラは、その言葉に驚いて顔を向ける
『苦しんでるんだろ、今まで自分のやってきたことに』
「…………」
告げられたその言葉に、アウラは黙って頷くだけだった。ビルドに弟を殺され、その弟が引き起こした惨状を目にして、ザリュース達と出会い、彼らへのナザリックの態度を見て、アウラの心の中はさらに掻き乱された
『分かるぜ、どんだけ長い間大切にしてたものでも、壊れるのは一瞬なんだ』
「ナザリックを出て、ザリュース達にあって分かったよ。自分の足で歩くのって、こんなにしんどかったんだ……」
それでとザリュースは歩き続けるんだと言っていた。口で言うのは簡単だ。だかまだまだ子供のアウラにはその一歩一歩が重かった。
『本当に苦しいんなら、立ち止まったって全然いいぞ』
クローズドラゴンは、そんなアウラの顔の位置まで飛び、声をかける
『歩き続けてたら疲れちまう。誰だってずっと歩き続けてる訳じゃねぇ。悩んで、思い詰めて、そしたら立ち止まっちゃなんねぇなんて嘘だ』
立ち止まってもいいんだと、休んでもいいんだと
「でも、そんな時間は……」
『そうだな、どんな考え方でも腹を決める必要はある』
ナザリックに味方するのか敵対するのかそれとも、全部放り捨ててまた逃げるのか
「そんなこと……」
『ザリュースはずっとこれをリザードマンの問題だって言い続けてた。お前は関係ねぇ、ここが攻められたのはお前が悪い訳じゃねぇって』
実際その通りだった。自分のためなどよりも遥かに身勝手な理由でリザードマン達は攻められた。
『じゃあ……これやるよ。』
「これって……」
ごとり、と音を立てて置かれたのはスクラッシュドライバーとは異なるハンドルのついた黒ベースのドライバー
「ビルドドライバー!?あったの!?」
『おう。
そう言うクローズドラゴンからビルドドライバーを手に取る
「なんで私に?」
『悩んで困ってるお前の力になりたかったんだ。ほら、指出せ』
そう言うクローズドラゴンに指を出そうとして、まだ引っ込める
「本当に……いいの?私がもしナザリックについたりしたら」
『止めねぇよ。お前が決めた事だ。俺はそれを尊重する』
クローズドラゴンは、その口から変身に必要なエネルギーを注入した人間の精神とリンクする機能があると解説する。リンクした本人が誰かを強く守りたいと願えば、変身することが可能になるんだと。
『逆に言えばそう思ってくんねぇと力になりたくても出来ねぇんだけどな。とにかく、お前が本気で誰かを守りたいって思うんなら、俺が味方になってやる』
だから今は悩めとクローズドラゴンは言う。悩んで、決めて、そうして踏み出せと。
「……ありがとう、クローズドラゴン」
その言葉にアウラは改めて指を差し出した。ネビュラガスの影響を受け、ナザリックのNPCから人としての精神を抱くようになったアウラ。特筆すべきはただ人間種のそれらが持つ精神に近いものとなった事だけではない。彼女は絶対上で年齢まで定められた正真正銘子供のNPCなのだ。
賢くあれ、忠実であれ。そう定められたように幼くあれと定められた彼女はそれに引っ張られまだ未成熟の精神を宿した。それが想いに反応するハザードレベルを得てどのように成長するか、まだ誰にもわからない。
『これは……なんという強力な……ここから更に上があるのか?』
『あるにはある。いいか?けど絶対に使うなよ』
あの日、まだ蜥蜴人が生き残る為の方法を探していた時、かの山脈のドラゴンが得たと言う強大なマジックアイテムクローズドラゴンが探し求めていたものだと言うそれに手を伸ばし、仮面ライダーグリスへと変身したあの日、手に入れたアイテムの強大さはスクラッシュドライバーなどと比べても群を抜いていた。だがその上でクローズドラゴンは警告した
『ハザードレベルが上がれば上がるほど身体にかかる負荷が増える。お前がどの程度のレベルまで耐えられるかも分かんねぇ以上ハザードレベルを一気に上げるそれを使えば……』
最悪死ぬ。そう脅され以前の戦いにも持ち込まなかった虎の子だ。だがいざとなれば……そう覚悟を決めようとしていた時だった
「ザリュース、起きてるかしら?」
「クルシュか」
入り口のかけ布を分けて入って来たのは、キャッスルロストフルボトルを持ったクルシュだった。
「それを持って来たと言うことは……決めたんだな」
「えぇ、決めたわ、私は……」
こうして二人のやりとりを最後に夜が明ける。蜥蜴人にとっては絶望にも似た、ナザリックの第二次侵攻が始まる
よう、相変わらず俺のいない場所で大変な事になってるみたいだな。タイトルにもいるはずなのにここ十話以上出番がないエボルトだ。
前回のアンケートはありがとな。180以上も票が集まるなんざ驚いたぜ。今回、今回こそはミスなく仕上げたはずのアンケートのお時間だ。
今回はずばり、クルシュの選択。持って来たキャッスルのフルボトルをどうするかだ道は二つある。コイツを使ってザリュースと一緒に立ち向かうか、ザリュースを信じてコイツを渡し帰りを待つかだ。
なにやらアウラとクローズドラゴンの方もわちゃわちゃしてるがどっちの選択をするかで物語の展開が180度変わる。因みに作者曰く、俺もその変化に関わるらしい、楽しみだな。だから一つだけ忠告しておいてやる。今回のルート選択はいつも以上にシビアだ。だがもしルート選択を誤れば……お前達は死人を出す事になる。慎重に選択しろよ?じゃあな。チャオ♪
クルシュの選択は? この結果次第でストーリー展開が180度変わります
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ザリュースを信じ、帰りを待つ
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ザリュースと一緒に戦いに赴く