アインズ様が「エボルトォオオオオ!」と叫ぶ話 作:月光舞詐称者姫
時間もかなり明けてしまって申し訳ない。どうしてもここはアンケートで決めたかったので……次からもこういう期間があると思います。楽しみにしていただけると幸いです。
現地人ライダー化のタグを追加しました
「スタークさん、速く!」
「じゃあまずはアンタから……!」
焦るペテル達の声に、クレマンティーヌはこの場の要であろうスタークを狙う。
「(しめた……!)」
そして、一見最善にみえたその悪手に、スタークは活路を見出した!自分達の前にいるペテル達を飛び越えこちらに迫るクレマンティーヌ。スタークは迎撃に左腕のスティングヴァイパーを振るうが、クレマンティーヌな片手でそれを掴み、滑り込む様にこちらに迫る。
「そこだっ!」
「んなっ!?」
そしてこちらのアーマーのバイザーの上を狙って突き立てんと迫ったクレマンティーヌのエストック。それを握る手を掴んでみせた。
「お近づきの印に……どうぞ!」
「ぬぅっ!?」
そしてそのまま体が空中で無防備なクレマンティーヌをもう1人、クレマンティーヌがガジッちゃんと呼んでいた老人に向かって投げつけた。すると地面を突き破り骨と腐肉で形成された手が受け止める。その隙に
「一旦ズラからぞ!俺から離れるなよ!」
そう言ってトランスチームガンのトリガーを引けば、漆黒の剣の面々が煙に包まれる。
「させるかぁ!」
コケにされたクレマンティーヌが突っ込んでいくが、煙が晴れた瞬間、そこにスターク達は居なかった。
「クソッ!マジックアイテムかよ!」
腹立たしげに近くにあった椅子を蹴るクレマンティーヌ。だが、その直後
「……あらぁ?」
そこに見つけたものに、歪んだ笑みを浮かべるのだった。
煙が晴れた時、ペテル達が居たのは、ほのかに埃の香りのする暗い部屋だった。
「ここは……」
「隠れ家だよ。いざって時のためのな」
高級感のあるソファに腰掛け、スタークが言う。蝋燭に灯を灯せば、部屋の全貌が明らかになった.
「おいおい、こりゃ……」
高級感のあるシックな調度品、受付の様なカウンター。奥に続く扉を開ければ、部屋が複数ある廊下が伸びている。部屋の広さからして、寝室だと察せられる部屋が複数。一見すると宿の様にも見えるがこの空気の湿り方、半地下、あるいは地下だ.地下に伸びる高級そうな宿、間違いなく
「娼館じゃぁねぇのか?」
それも金持ち向け、即ち闇娼館だ。借金の形……ならまだいい方だろう。各地から連れて来られた女性を食い物にする酷い場所だ。
女好きのルクルットも、この場所で女を抱こうとはまず思わないだろう。なにせここの商売女達は人間扱いされていない。そう言う場所だ。
「あぁ、
「なんと……一体どれ程のお金をつかったのであるか?」
しれっと言うスタークに、戦慄したダインが問い掛ければ、スタークは遠くを見る様に顔を上げて言う。
「高い買い物だったよ」
「…………」
そんな様子のスタークに、ニニャはちらりと自分の座る椅子の端についている、拭き取り損ねたであろう小さな血痕に目を向ける。
貴族向けの娼館、そのフロントにしてはやけに調度品の数が少ない。本当に高い買い物だったのだろう。何せこう言う場所には凄腕の用心棒がいることがあると聞く。一体どれ程の鉄拳を支払うことになったのか……
「しかし、集団を転移させるなんて、スタークさんはすごいマジックアイテムをお持ちなんですね……ンフィーレアさんもそう思いませんか?」
話題を変えようとペテルが会話をンフィーレアに投げようとするが、そこにきて気づく。
「ンフィーレアさん?」
ンフィーレアが居ないのだ。
「スタークさん!ンフィーレアさんが!」
「なんだと!?」
今の今まで気づかなかった。クレマンティーヌが、唯一奴の攻撃を対処できる自分に来てくれた。もしペテル達に迫るのならばスタークは容赦なく彼らを見捨てて
ンフィーレアはあの一瞬、スタークを信じられなかったのだ。彼はカルネ村で、アインズ=モモンという結論を導き出してしまい、直接それをモモンに問いかけ、肯定された。
彼はンフィーレアが別に自分の技術を悪用することも無いと知って快く許し、2人の間には信頼関係が生まれていた。そんなモモンがナーベと2人きりになった瞬間に森の中に入って行ったスターク。さらにその後帰ってきた2人には、若干スタークに対して警戒する様な空気感があった。
スタークが何かしてしまったのかと聞かれてもモモン達はなんでも無いと口をつぐむだけ。そんな様子にスタークもまたモモンに近づこうとしたのかと、彼を怪しむのは当然だった。
「(そういうことか……クソ、あん時ンフィーレアとの距離感が少し妙だとは思ったが……)」
その結果スタークが出した煙にンフィーレアは怯え、警戒し、咄嗟に煙の中から出てしまったのだ。勿論背景事情などエボルトは知らないが、起きた事実からどう言うことが起きたのか、動機程度は導き出せる。ンフィーレアの身体よりもアインズのチェックを優先した自分の失態だ。
「つまり、ンフィーレアさんは敵の手の中……であるか……!?」
「そんな!アイツら、なんかヤベェマジックアイテムを使わせるんだろ!?」
「助けないと……!」
「出来んのか?お前らが。」
「「「「ッ!!」」」」
スタークの指摘が、義憤で立ち上がった漆黒の剣の面々に冷や水をぶっかける。
「スタークさん……僕らでは……無理ですか?」
縋るように、ペテルが問いかける。連携すれば、隙をつけば、何かしらの勝ちの目があるのでは無いかと、今まで自分達を導いてきてくれた彼ならと、しかし
「今のお前らじゃ、無理だ。」
エボルトは一度、その言葉を突き放す。
「だったら……ギルドに行こうぜ。もしかしたらまだ」
「そうだ!モモンさんがいるかもしれない!」
「あぁ、モモン氏であれば……!」
絞り出すように言ったルクルットの提案に、ペテル達は飛びつく。そうだ、モモンとスタークがいるじゃ無いか。彼らならば……そう顔を輝かせている
「それで?人任せにして逃げんのか?」
その空気に、またしても冷や水をばら撒いた。
「なっ!?アンタが無理って言ったんじゃねぇか!」
「あぁ、無理だ。今のお前達の力だけならな。」
そう言いながらエボルトは、とあるものを取り出して机に置いた。
「これは……」
それについている持ち手は、武器の柄というよりは粉挽なんかに使ったりする機材の持ち手に似ている。
黒と赤、あと目立つ白に近いクリアなパーツなど、色も奇妙だ。武器には見えない。なんらかのマジックアイテムかと、全員の視線がそれにいく。
「スタークさん、これは……」
「ビルドドライバー。300年前、俺の故郷を救った伝説のヒーロー、仮面ライダーが使ったアイテムだ。」
「仮面……ライダー?」
その問いに頷く。
「お前らが将来的に英雄の位階に届くかどうかは分からん。だが、これから時間をかけて研鑽を積めばそれなりのことは出来るようになるだろう。
お前らが集めたがってる漆黒の剣に御目通りすることだってあるかもな。」
だが、とスタークは言葉を続ける。
「ここで諦めれば、それは挫折になるぞ。」
いつもよりも重く、そして厳しい言葉だった。
「命あっての物種だ。死なないようにってマージン取んのはまぁ、間違いじゃ無い。
だがこの先命を賭ければギリギリ踏破できるような状況になっても、今日人任せにした、逃げた、自分達の手で救えなかったっつう記憶は、ずっと足を引っ張る羽目になるぞ。」
だから、挑戦するための足がかりをやると、スタークはこのビルドドライバーを取り出したのだ。
「これがあれば、チャンスがあるんですね。」
その質問にスタークは頷く。
「あぁ、だが、コイツを使うにはある程度資質がいるがな。」
そう言ってスタークは、ニニャを指差す。
「そしてその資質があるのはニニャ、お前だ。」
「ぼ、僕ですか!?」
その言葉にスタークは頷く。
「コイツを使えるようになるのは、この中じゃニニャだけだ。」
「おい待てよ、ニニャは……」
「そうです、彼女は魔法詠唱者ですよ、仮面ライダーというのは、魔法詠唱者だったんですか?」
「いや、どっちかといえば、得意なのは徒手空拳の肉弾戦だな。」
「適性を無視して、あの英雄級の御仁と渡り合えるのであるか!?」
3人がニニャを庇うように口々に言う。当然だ、彼らはニニャを大切に思っている。自分達のようにただ冒険がしたいと言うだけでなく、救いたい人が居るのだ。その使命の為に必死で頑張る彼女は、彼らにとって特別大切な仲間なのだ。いざという時は、自分の命を投げ出してもいいというくらいには。
そんな彼女を、スタークは一番危険な局面に放り込めと言う。
「まぁ、可能性はあるな。確実とはいえないが。」
「なら……私は反対である!ニニャ氏を、そのような危険な目には合わせられないのである、私たちが着いているならまだしも……」
仮面ライダーになれるのは1人だけ。つまり自分達が隣に立っても足手纏いになってしまうだけだ。
「ニニャ、なにもお前が体張ることねぇって!モモンさんに協力を求めようぜ、奴らが何するか分かんねだけど、一緒に立ち向かうだけでも挫折にはならねぇって!」
ルクルットは半ば自分に言い聞かせるようにニニャに言う。だが、スタークは分かる。先ほどの話をした以上、ニニャさんな言葉で諦められない。
3人とは違い使命と呼べるほど強い思いのある、ニニャは。
「スタークさん、申し訳ありませんがこの申し出は……」
「受けます!」
「ニニャ!?」
ペテルが断ろうとした時、ニニャが机に置かれたビルドドライバーを掴んだ。
「スタークさんの言うとおり……ここで諦めたら、本当に取り戻さなきゃいけない物を取り戻したい時に逃げちゃうかもしれない……ううん、思えば僕は、ずっと逃げてきたんです。
貴族には敵いっこないって、ずっと、あの貴族に顔を合わせにいくどころか、屋敷まで近づくことすら、今の今までして来なかった……」
だからもう逃げたくありませんと、ニニャはドライバーを握りしめて言う。強大な敵に、無理だと屈服するのはもう嫌だと。その言葉に、エボルトは内心でほくそ笑んだ。
「よく言った、なら、俺もやれるだけの力は貸してやる。」
そう言ってポンと肩を叩く。
「お、おい待ってくれよスタークさん!」
ルクルットはまだ不満そうだったが、その肩を抑えたのはダインだ。
「ルクルット、よすである……」
「ダイン、お前だって……!」
「だからこそ、である!」
悔しさを絞り出すように、ダインは言う。
「ルクルット、お前なら、分かってるだろ?」
「ペテル……お前こんな時に……!」
あえて何とは言わなかった。サラシで潰し、髪を短くし、化粧を辞めて ゆったりとした服装で隠しているニニャの秘密。
『女がいるとパーティー内で揉めたりするって言うしな。』
そんな雑談に、ビクリと肩を跳ねさせる姿。何より、いつも彼女は1人部屋だ。分かっているし、それは彼女の優しさだと今の今まで触れずにいた。
だが彼女は今思えば、逃げていたのかもしれない。ありのままの自分を曝け出せば、そこでパーティーが壊れてしまうのではないかという恐れから。
何より、自分達よりも辛く悔しい経験をしてきた彼女が、逃げたくないと言ってるのだ。
「だったら、一緒に行くのが
「〜〜〜ッ!分かったよ!やってやる、やってやろうじゃねぇか畜生!」
ペテルの言葉に、ルクルットは吠えた。
「俺たちで戦ってやるよ!バケモノみたいな強さを持つ奴らを相手にな!」
そしてスタークに詰め寄る
「代わりにニニャのこと、何がなんでも守ってやれよ!」
「あぁ、俺としても、せっかく見つけた仮面ライダーの候補に死なれちゃぁ困るんでね。」
そう言ってスタークはビルドドライバーを持つニニャに、5つのボトル、フルボトルを渡す。
「これは?」
「フルボトル、コイツも、仮面ライダーが使うアイテムだな。」
こちらに来た時は、自分の扱うコブラ、それからラビット、タンク、ダイヤモンドと、かつての宿敵戦兎が最初に持っていたボトルの4つしかなかった。だが新に、ここの娼館に殴り込んだ際に闇取引の材料にするのか、タカとゴリラのボトルを見つけたのだ。この5つがあれば、奴らと戦えないことはないだろう。
後は……
「(ハザードレベルは2.4のまま。口ではあぁ言っちゃいるが、まだまだ縛られてるねぇ。」
ニニャの心持ち次第だ。
「これは……」
「アンデットの大群……まさか
「知ってんのか、ニニャ」
「はい、書物で見たことがあります。確か、第7位界の魔法だと。」
「だっ!?」
普通の人間に扱える最高位で第3位界、英雄と呼ばれる選ばれしもので第5位界といわれている。つまるところ第7なんて位階を使えるのはもはや人間じゃないか、御伽話に出てくるようなとんでもないマジックアイテムかの二択だからだ。
「探す手間は省けましたね……」
あとはンフィーレアの
「とはいえ、このアンデットの大群を倒していくのは骨が折れるであるな……」
墓地は地獄になっていた。埋め尽くすスケルトンの群れ、その奥から迫るゾンビやグール。挙げ句の果てに空中にはレイスなどもうようよと湧いている。
「なんだお前ら、ビビってんのか?」
「そりゃビビるだろ!相手はこの大量のアンデットだぞ!?」
その言葉に、そりゃそうだと頷いたスタークは、左手でニニャの肩を掴み、右手でトランスチームライフルの照準を向ける
「ちょっ!?スタークさん何を……」
「お前らに最後の課題だ。俺が教えた技術で、門を這い上がってくるスケルトンを叩き落として街を守れ。」
「なっ!?この数をですか?」
驚くペテルに心配するな、と優しく言う
「既に王国軍とギルドに顔を出してきた.すぐ増援が来るだろうよ。」
「それまで持ち堪えろ……ということですか。」
「難題であるな……」
ごくり、と唾を飲み込むダイン。
「で、スタークさんはどうするんだよ。」
「コイツと一緒に親玉を殴りにいく。斬首作戦ってやつさ。」
「……俺たちは、足手纏いか?」
ルクルットが最後に問いかけると、スタークはフッと笑って首を振った。
「いや?けど俺とニニャが親玉を倒す間、ここを抑えて街を守る奴が必要だ。お前達は、お前達の守るべき人を守れ。」
「俺たちが……守るべき人……」
ペテルがその言葉を反芻する。
「ところで、僕たちはどうやって親玉の元まで……」
「黙ってろ、舌を噛むぞ!」
「え?」
そういうと片手でニニャを抱き寄せ反対の手でトランスチームライフルを構える
「ちょっ!?スタークさん何を……」
「コイツでカッ飛ぶ!捕まってろよ!」
「カッ飛ぶ!?カッ飛ぶってなんですか!?」
その問いに対する答えの代わりにコブラフルボトルを装填する
「こう言うことだ!」
「うわああぁあああああ!?」
引き金を引けば、煙に包まれた2人はロケットのように斜め上の方向へと打ち上げられて吹っ飛んでいった。
普段からスタークの高笑いが響くであろうところに、ニニャの悲鳴を残して……
「なんか、しまらねぇな……」
「ルクルット……!」
今回ばかりは気持ちはわかる、と言うようにペテルが非難する
「しかし、俺たちが守るべき物を守れ……か。」
「うむ、金言であるな。」
「スタークさんにあぁ言われて、やってやる!ってなっても結局俺たちじゃンフィーレアは救ってやれない、か……」
「だが、スターク氏もまた、親玉を倒しにいく以上アンデットの群れから民を守れないのである。」
彼らは彼らに出来ることを、スターク達は、スターク達に出来ることを、お互いその為に死線に立つのだ。スタークの言ったように誰かに任せっきりにしている気も、逃げた気も全くしない。
「それじゃあルクルット、ダイン、いつもみたいに援護を頼む!」
「おう!ニニャがいなくてもやれるってこと見せてやろうぜ!」
「彼らの背中を、我々で守るのである!」
物量に任せて壁を這いあがろうとするスケルトンの群れ。各々の武器を構え、門を守る衛兵達の参列に、漆黒の剣は冒険者の中では一番乗りで加わるのだった。
ガジット・デイル・バダンテールは、この世界では最高位に値する魔法詠唱者である。ガジット・デイル・バダンテールは理性を持つアンデットや死霊系の魔法詠唱者達で固めららた死を追い求める秘密結社、ズーラーノーンの最高幹部である。ガジット・デイル・バーダンテールは死を覆す方法を追い求め、高位のアンデットに当たることこそその最適解と見出し、そらを追い求めてきた物である。
今、その儀式が完成しようとしている。
アンデットが集まる場所には、より高位のアンデットが生まれる。そして高位のアンデットが集まればさらに高位のアンデットが生まれる。その連鎖を利用してこの街を死者の都へと変貌させ、自らを高位のアンデットにしようというのがガジットの計画だ。
「(いいぞ、このまま行けば高位のアンデットが生まれるのは時間の問題だ。)」
弟子と共に呪文を唱えながらガジットはそうほくそ笑む。だが、その笑みは
「あぁあああああああ!?」
情けない悲鳴によってかき消された.目を開ければ、煙の塊がこちらの方へ突っ込んでくる。そしてそのままチュドォン!と音を立ててガジット達の前に着弾した。
「おいおい、舌噛むから黙ってろって言ったろ?」
衝撃を防ぐ骨と腐肉の壁を解除し、煙が晴れた先を見れば、中性的なあどけない顔立ちの魔法詠唱者が四つん這いになって肩で息をし、それを呆れたように赤いアーマーの男が眺めている。
「貴様ら……」
あの時取り逃した連中だ。
「よう、ガジっちゃん。ちょいと忘れ物をしたんでな。取りに来たぜ。」
その赤いアーマーの男、スタークの物言いに忌々しい顔をして、周りを取り巻く自身の弟子達に目配せをする。
そうすれば、彼らは頷いて各々の獲物を構え、ガジットを守るように前に出た。するとスタークは、トランスチームライフルを構え、弟子達……ではなく、その奥の無縁仏を纏めて入れる堂にむけて銃弾を放つ。
「あら、よく分かったねぇ。」
当たらなかったようだが、堂の中から声がする。現れたのはクレマンティーヌ。狂気的な笑みを浮かべる強敵の登場に、ニニャはごくりと唾を飲み込んだ。
「あれぇ?他のお仲間はどうしたの?」
「あぁ、置いてきた.この場所じゃ足手纏いにしかならなさそうなんでな。」
「へぇ?面白いこというねぇ。そっちの子も足手纏いにしかならなさそうだけど……あっ、もしかして私に殺される為に戻ってきてくれたとか?
嬉しいなぁ、あの中じゃ一番唆ったのよね。アンタ。」
「ぼ、僕が……ですか?」
「そ、折角だからさぁ、コレクションに加えてあげようかって!」
恍惚とした表情で体をくねらせるクレマンティーヌは、顔を歪めて体を包んでいたローブを大きく広げる。
「ヒッ……!」
「あぁいいねその顔、恐怖を我慢しているその顔!最っ高に唆るよぉ!」
一見すれば、露出度の高い単なるビキニアーマーにもにた軽装鎧。だが、鱗鎧の装飾に見えるそれは、全て
「冒険者の……プレート?」
銅、鉄、銀、中には金や白金もある。一見すれば鱗鎧にも見えるほどの夥しい数のプレート。それはつまり、それだけ多くの冒険者を屠ってきたことを意味する。
「そ、殺した後に、
そうやって触れていくのは、ビキニアーマーである以上必然的に局部に近い場所になる。狙ってやっているのか妖艶にも見えるそれは、同時にどこまでも悍ましい。
「ど、どうしてそんなことを……」
「どうして?そ・れ・は・ねぇ……愛しているからよ!」
高らかに手を広げて、そう宣言する。何を、ニニャがそう聞く前にクレマンティーヌは捲し立てる
「私はね、人を殺すのが大好きで、愛していて、恋してさえいるの。勿論拷問も大好きだよ?」
唆る、というのは当然拷問の意味合いだ.
「周りから庇われて愛されて、そんな貴方を苦しめて痛めつけた時に、どんな悲鳴が聞こえるのかな?楽しみだなぁ、聞きたいなぁ。」
そう言いながら近づいてくるクレマンティーヌ。
「そうやって……多くの人の命を奪ってきたんですか?」
それに、ニニャがそう問いかける。
「そうだよ?そして、アンタも今からその列に加わるの。」
「ンフィーレアさんも……拷問したんですか?」
「うん!」
恐る恐る聞けば、クレマンティーヌは笑顔で頷いた
「まず逃げられないように足を潰すでしょ。あ、潰すってのは踏みつぶすってことね?本当は足の腱を切るだけのつもりだったんだけどさぁ、右足の腱切ったら面白いくらいに悲鳴を上げたもんで……つい楽しくなっちゃってさぁ、左足を思いっきりグシャって!
次に逃げられないように目も潰すでしょ?え?足潰したら逃げられないでしょって?這って逃げるかもしれないじゃん。だからゆっくりゆっくり、逃げられないようにコイツで目をくりぬいて恐怖を刻んであげるのよぉ。」
ぺらぺらと、聞かれても居ない言葉を楽しそうに語るクレマンティーヌ。悲鳴を上げるンフィーレアを想像してしまったのか、ニニャは奥歯をかみしめる
「あたしはズーラーノーンの目的とか割とどうでもいいんだけどさ、こういうことしても怒られないどころか褒められるから最高だよねぇ。特に最高なのが……その顔!」
ビシッと指をさして今のニニャの顔を前にゆがんだ笑みを浮かべる。
「よくも仲間を……!って怒るその顔をぐちゃぐちゃにして、絶望に染めて、踏みにじるのが最高なの!」
「そんなこと……させない!」
その言葉に、ニニャは表情を怒りに染めマントの下からビルドドライバーを取り出した。
「……へぇ?出来んの、アンタが」
「あなたを止める。そして……貴方に理不尽に命を奪われてきた人たちの、敵を討ちます!」
そういって取り出したドライバーを腰元に充てる。自分の狂気的な性癖を嬉々として語る目の前の女が、見初めた姉を持って行った貴族に重なって見えた。ドライバーから現れたベルトがニニャの腰元で一周し、ドライバーが装着される。次に、取り出した青と赤のボトルを振ってから、ドライバーに差し込んだ
「変し……」
しかし、直後、迸る電流と激痛が、ニニャを地面に倒れこませた。
「あぐぅ!?」
「……は?」
何が起こるのかとワクワクした目で見ていたクレマンティーヌはその様子に白けたように笑みを消した。
「な……なんで……?」
「いやこっちのセリフ。一体どんな切り札かと思えば、碌に使いこなせても居ないわけ?」
腹立たし気に歩いて近づいていく。
「そんなモン持って、こんな場所までわざわざ来てんじゃねぇよ!」
腹立たし気にエストックを抜いて近づく。そしかし、それをスタークがライフルを分離したスチームブレードで受け止めた。
「す、スタークさん……」
「失敗したか、ニニャ。」
「チッ、邪魔だ!」
クレマンティーヌの怒涛の連撃を受け止めながら、スタークはニニャに話しかける。
「失敗したのは、どうしてだと思う?」
「えっと……」
「それは、お前が復讐心で動いてるからだ。ぐっ!?」
「呑気に説教?舐められたモンだよねぇ!このアタシを相手にさぁ!」
クレマンティーヌは、こう見えてこの世界でもトップクラスの実力者、それもスピードに特化したタイプだ。高速移動を使えば流石にスタークの方が上回るとはいえ、体力を使う上、ニニャを覚醒させなければいけない以上、その拓は出来るだけ取りたくない。
「復讐……心……」
「そうだ!そのアイテムは怒りや憎悪といった負の感情では使いこなせない!」
トランスチームガンを乱射して牽制するが、クレマンティーヌのスピードはそれを上回る。
「どこ見てんだよぉ!」
「本当に厄介だなお前は! いいかニニャ!お前が冒険者になった理由を考えろ、大切な人のことを考えろ!」
「大切な……人……姉さん……」
「お前はそいつを助けたいんだろ!その思いがカギに……」
「できないんです!」
絞り出すような、そんな悲鳴が響いた。
「できないんですよ……大切な人のこと、姉さんのこと……でも、姉さんのことを思い出すと、一番最初に浮かんでくるのは、攫われた姉さんの、あの顔なんです。」
そして、あの時何もできなかった自分、一人ぼっちの自分、なにより、姉がつらい目にあっている中で、自分だけ仲間と一緒に冒険をして、チームに漆黒の剣なんて名前まで付けて旅を楽しんでいる自分。そんな自分を攻める気持ちが浮かんでくる
「楽しい思い出も、一緒だった年月も、あの瞬間よりずっとずっと長いはずなのに、そういう辛い思いが湧き上がってくる!自分や奪っていった貴族を憎まずにはいられない!」
それが、ニニャのハザードレベルが上がらない理由だった。負の感情が渦巻いているのは、姉に関する記憶そのものなのだ。
盲点だった、それほどニニャを縛る鎖が深いとは。それに気を取られた結果だった。
「隙ありィ!」
「しまった!」
クレマンティーヌの一撃を手に受けて、トランスチームガンを奪われてしまったのだ。彼女のエストックではスタークの防御は突破しずらい。だが、
「これなら流石に通るよねぇ!」
「く、このっ!」
地面を転がり銃弾を交わす。墓標や石畳に、クレマンティーヌが乱射することによる火花が散る。スティングヴァイパーやスチームブレードで対抗するが、高速移動を使えないスタークではクレマンティーヌを捉えきれない。段々とスタークの顔に焦りが浮かぶ。
「しぶといなぁ……じゃあ、」
「ッ!まずい……!」
しびれを切らしたクレマンティーヌは、照準をスタークからうずくまるニニャへと向ける。
「まずはコイツからかなぁ!」
高笑いしながら、この場に場違いな小娘を排除するために、クレマンティーヌの凶弾が放たれた
「ぐっ……!」
「え……?」
それを、とっさにニニャを抱え込み背中で受けたのはスタークだった。
「アッハハハハハ!仲間を守るって?泣かせてくれるじゃん!」
その様子をあざ笑いながら、クレマンティーヌはさらにトランスチームガンを乱射する。
「スタークさん!やめてください!そんなことをしても、僕は仮面ライダーには……!」
「いいから隠れてろ!」
姉の鎖は深い。その思いが根底にあるのでは、彼女は仮面ライダーになれない。なら久々に、ちょっとクサい演技をする必要がありそうだ。
トランスチームガンがあっても、フルボトルをセットしての必殺技でない以上、行動不能になるほどの大ダメージはくらわない。だが
「ぐ……お……」
あえて、倒れこむ。ニニャにその様子を刻むために。
「スタークさん!」
「ニニャ……いいか、よく聞け……お前の気持ちはよくわかった。そんなに辛いんなら……いったんその気持ちはしまっとけ……」
「しまう…………」
「そうだ!姉を失った過去のことでも、姉を取り戻したい未来のことでもない!今を考えろ、今お前が何をしたいのかを!」
ありがたいことに、クレマンティーヌはこちらを待ってくれているようだ。自分が完全に倒れてから、改めてニニャを甚振るつもりなのだろう。都合がいい、ニニャに気持ちをつける時間を与えられる。エボルトは心の中でこっそりガッツポーズをした
「お前はさっきこいつに殺された奴の敵を討つといったな?お前がしたいのはそんなことか?違うだろう……よく考えろ、そして振り返れ!」
そういわれて、ニニャが後ろに目をやる。遠く、アンデットの埋め尽くす地平線の上に見える、門を。漆黒の剣の仲間たちが戦う門を。
「僕の、やりたいこと、僕の、なすべきこと、それは……」
「言ってみろ、なんだ?お前のなすべきことは、なんだ?」
「守ることです。仲間を、仲間の守ってる、町の人たちを!」
そうだとスタークは笑顔を浮かべて、ニニャの肩をたたく、
「ハザードレベル2.5……2.6……2.7! ハハッ!今まで抑え込んでた分上がるねぇ!」
だが、ビルドドライバーが使えるようになる3.0にはまだ届かない。
「あ、終わったぁ?」
「守る……為に、ペテルさんを、ルクルットさんを、ダインさんを……」
「それじゃあ次は、アンタで遊ぼうかなぁ、まずはどこを狙おうか、とりあえず……」
地面に散らばったフルボトルを握り、もう一度降ってドライバーにセットする
「皆を守るために、僕は……!」
そういいながら、ドライバーについた持ち手、否ハンドルを回せば、何かが組みあがっていくような軽快な音と共に、ニニャの正面と背後に、赤と青のフレームのようなものが組みあがっていく
「足りない分は、俺が手助けしてやるよ。」
スタークの持ったスチームブレードから、人を仮面ライダーや怪人へと変貌させる成分、ネビュラガスが吹き出し、フレームの間にいるニニャにまとわりつく。
「うっ……くっ……!」
肉体にガスが浸透し、体が改造されていく痛みに一瞬もだえるが
そのベルトからの問いかけに応えるべく、ニニャは叫ぶ
その瞬間、両側から組みあがったフレームがニニャを挟み込み、青と赤の二色の生態装甲を持つ戦士、仮面ライダーへと変貌させる
目の前で発生した珍事に悲鳴を上げるクレマンティーヌ。だが、逆にスタークはくつくつと笑った。
「仮面ライダービルド。作る、形成するっつう意味でビルドだ。」
そういいながらニニャの肩をたたき、ハザードレベルを確認する。
「(ハザードレベル3.2、いい具合に覚醒したみたいだな。)」
そして、唖然とするクレマンティーヌに告げる。
「今日この街を守る、ヒーローだよ。」
「ふざけろぉ!」
立ち上がったスタークの言葉に激高したクレマンティーヌ。しかし、向かってくるクレマンティーヌとスタークの間に、ニニャが割り込んで見せた。
「なっ!?」
そのままエストックを防御する。たかだか第二位階が使える魔法詠唱者では考えられない力量。
「これが……仮面ライダー……!」
仮面ライダーと英雄級の殺人者、この墓地で、二人の戦いの火ぶたが今切られる
仮面ライダーを育成するために発破をかける系ラスボスことエボルト。というわけで、全員を逃がす、がニニャルートでした。前回の解説でニニャにはつらい経験が云々かんぬんと言っていましたが、仲間があぁいう意見を出した上でスタークに止められたからこそモモンやスタークにすがるという結論を出しませんでしたが、もし仲間が死んでゾンビになっていたりすれば、ニニャは心が折れて縋っていたことでしょう。
そうなった場合、こちらのルートではエボルトが手を掴むことで確実に逃がしていたンフィーレアが、アイテムを扱えるようになるタレントを生かして仮面ライダー担っていました。
今回のルートであくまで仮面ライダーになるのがどちらか、漆黒の剣の面々の生死が分かれましたが、もしンフィーレアが仮面ライダーになる道を選んでいると……ここまではあまり変わりませんが、今後の展開が大きく変わっていました。
スタークはどうする?※注意!このアンケートの結果でストーリーが分岐します 分岐によっては取り返しのつかない結末に至るのでご注意くだ
-
ニニャとンフィーレアだけを確実に逃す
-
一か八か、全員を逃す