一撃の浪漫   作:コンテンダーは良いぞおじさん

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アンチ・ヘイトと独自設定です




狂犬と猟犬

 

 

そんなこんなでようやく来ましたアビドス高校。

 

あちこちに銃痕が残る校舎…建築時に相当良いものを使ったのか、弾丸がめり込んでる部分は見当たらない。

 

所々に残る古い銃痕を見るにマトモに整備するだけの余裕は無いが、清掃は欠かさずに行っていたであろうことが垣間見えた。

 

…こう言うの、あんま見たくなかったんだよなぁ。

 

此処でアビドスの連中が抗っていたであろう姿が想像できてしまう。

 

そんなものを意識してしまうと後々やり辛くなるから。

 

 

そんな事を考えながら合流したアビドスの連中と軽く話した後。

 

「…で、なんで私も?」

 

無駄に情が湧く前にさっさとヘルメット共を引き渡してさよならする予定だったのに、何故か教室まで引っ張り込まれた間抜け…それが私だった。

 

用事は済んだしさっさとブラックマーケットに行きたいんだけどな…

 

「まぁまぁ〜慌てても良いことないよぉ〜?」

 

そう言う桃髪…小鳥遊ホシノと名乗ったアビドスの首領の目は笑ってない…どうするか思案している様にも見える。

 

警戒されてるな…私、何もしてないんだけど。

…何もしてないからか。納得したわ。

 

「ほら、先生と相良ちゃんも座って座って」

 

先生とヘルメット団A…相良何某も何故か同じテーブルに着かされている。

 

他のヘルメット団はまだ目を覚ましてないから適当に…と言っても引き渡された悪党一味にしては丁重に寝かせたままだが。

 

まぁ窮地に現れて手助けしてくれた相手の身内ならこう言う感じにもなるか。

 

想像通り拘留するための施設なんてもうないみたいだし。

 

「まずはお礼を…先生、相良さん。先ほどはありがとうございました」

 

深々と頭を下げる眼鏡…奥空アヤネが礼を述べると

 

「フン!別に私たちだけでもどうにかなったんだから!」

 

ツン、とそっぽを向く黒髪…黒見セリカが刺々しく返す。

 

「セリカちゃん、そう言うのは良くないですよ☆」

 

ベシ、とデコピンしながら嗜めるデカいヒト…十六夜ノノミ。

 

「ん。礼は欠かすべからず」

 

砂狼シロコは相変わらずのぺーっとした感じで読めない。

 

「いや、私は…」

 

居心地が悪そうに口籠る相良。

 

「何したのかは聞いたし、それはダメな事だけど…助けに来てくれたのは間違いないでしょ?」

 

"そのとおりだよ、相良"

 

先生と黒見セリカの言葉になんとも言えない顔になる相良。

 

その後は和気藹々と…とはいかないものの徐々に話に参加している様で、先生もにこやかに見守っている。

 

…それにしてもこれで全員か?

実働部隊がこの五人だけだとしても、この校舎にアビドス高校の全生徒を集めてる訳じゃないにしても静かすぎる。

 

この部屋以外にヒトが居る気配がしない。

 

此処まで来る間に通った廊下も、他の教室も無人だった。

所々に積もった砂の量を見るに必要最低限以外の所は封鎖している可能性が高い。

 

…これは思ってた以上に限界学区か?と考えていたプラン(対トリニティ用防壁)を破棄しつつ別の案を考え始めた辺りで私の方に話が向いてきた。

 

 

「…で、一先ずお礼が済んだ所で聞きたいんだけど」

 

正面に座った小鳥遊ホシノが私を見つめながら口を開く。

 

「トリニティのお姫様は一体何の用だったのかな?」

 

…まさかこんな破綻しかけの学校で、私の事を知ってる奴がいるとは思わなかった。

 

桐藤ナギサに妹が居ると言う事を知ってる奴が居てもおかしくはないが、顔まで知ってる奴は限られてくる。

 

それに今はトリニティの制服を着ていないから容姿から判別するのも難しいはずなんだけど…と警戒を深めながら答える。

 

「それが理由で引き止めたのか…」

 

溜息を一つ。

絶対面倒くさいことになるわ。

 

「いや〜だって気になるじゃない?」

 

態々こんな所まで足を伸ばした理由がさ、と続ける小鳥遊ホシノに

 

「私はもうトリニティじゃない」

 

昨日付けで退学届を提出済みだ。と答えるが

 

「桐藤ナギサはそうは思ってないみたいだけど?」

 

テーブルの上に1枚の紙を滑らせてくる。

 

「トリニティの校章…」

 

既に先回りされていたとは…たかが生徒一人の去就にそこまでやるのか!?と叫びたいレベルの周到さである。

 

覚悟決まりすぎだろ姉様…これ、失敗したら降ろされるレベルの暴挙じゃないか?

 

チラリと見えた部分にティーパーティーの正式な印が押されている…トリニティが正式に発行したものだと言う証拠だ。

 

こんなもの、失敗したら失点どころじゃすまないだろうに。

 

これ幸いと姉様の足を引っ張りたい連中がこぞってその座から引きずり落としに掛かるだろう。

 

そこまでする価値はないだろうに…と呆れてしまう。

仮にトリニティに引きずり戻されても同じ事を繰り返すだけだと優秀な姉様に分からない訳がない。

 

意固地になってる可能性があるなぁ…と独白する。

 

まぁ何にせよ難易度が一気に跳ね上がった。このままゲヘナに向かっても門前払いを食らう羽目になりそうだ。

 

流石のゲヘナでも二重学籍は認めてないし…

 

「それなら私に聞く意味はないじゃん」

 

トリニティのトップの言葉と、一般人の私じゃ言葉の重さが違う。

此処で私が幾ら弁明しても姉様の一言で全てひっくり返されてしまうのだから。

 

漏れそうになる恨み言を噛み締めて漏らすまいと口を閉じる。

 

「悪いね〜」

 

ウチは零細だからさ、と頭を掻く小鳥遊ホシノ。

 

「全く…」

 

こんな所で足踏みするべきじゃなかった。

 

心配そうな顔で私を見る先生と目が合う。

 

…そもそもこの大人に出会わなければ、アビドス高校の存在を知ることもなく素通り出来たのに。

 

八つ当たりと分かっていても睨みつけたくなる心を抑えつけて溜息を一つ。

 

今更考えても仕方がない事だな、と頭を振る。

 

そんな私に話しかけてくる先生。

 

"…やっぱり、ちゃんと話をするべきだと思うよ"

 

何も言わずに出ていったなら心配されるのは当たり前だ。と続ける先生。

 

合流する前に私の事情を聞いたのか知った様な口を叩く。

 

その言葉を聞いて無意識に少し肩を落としてしまった。

 

「まぁ…そうなるよね」

 

先生が皆の味方なら。

まぁそこまで期待してなかったけど。

 

「一番角が立たない方に着く。今の連邦生徒会らしい、日和見な先生らしい意見だ」

 

でもね、先生。

私にとってはどうでも良い、他人が吐く言葉には重さがないんだ。

 

どうでも良い奴に何を言われても私の意思は覆らない。

 

他人の、そんな毒にも薬にもならない意見は考慮にも値しない。

 

意識を切り替える。

この場にいるのは全員、私の敵で。

 

私は既に罠に嵌っている獲物であると。

 

「…今はアンタの意見は聞いてない。黙ってろよ、先生」

 

部外者が家庭の事に口を挟むな、と先生を睨んでから目の前のコピー用紙を読んでいく。

 

…簡易的な文言、誤解も誤用も許さないカッチリした文章。

 

姉様が考えたんだろうそれは、私のアビドス学区内での捜索への協力及び発見、捕縛時の引き渡しについて書かれている。

 

…まだトリニティに所属してると明言されてるから退学届は握り潰された可能性が高いか。

 

三大派閥以外の連中にも送りつけたはずなんだけど…日和やがったなアイツら。

 

やっぱりシスターフッド辺りを経由してセイアさん辺りに差し込んで置くべきだったか。

 

今更な後悔と共にこの状況からどうするかと頭を悩ませていると

 

「ちょっとアンタ…!」

 

黒見セリカが私に食ってかかろうとするが

 

「下っ端は黙ってろ。今はコイツと…小鳥遊ホシノと話してる」

 

コイツより偉いのかお前は?

 

ピシャリと言い放つと空気が張り詰めていく。

 

全て読み終えて手のなかにあるモノは複製ではあるものの、本物である事を確認してから小鳥遊ホシノへと向き直る。

 

「…で、姉様はなんて?」

 

こんな紙切れ一枚で、破綻寸前とは言え一つの学区を動かせる訳がない。

 

これ以外に伝えられた事が…何かこいつらの得になる事、もしくは無視した時に損になるものがあるはずだ。

 

「そうピリピリしないでよ」

 

可愛い後輩が怖がっちゃう。と軽口を叩く小鳥遊ホシノ。

 

この狸め…どの口が言うんだか。

 

「はは、笑える」

 

この場を用意したのはアンタだろうが。

 

「これに関して話すだけなら私とアンタだけで良かったはずだ」

 

問答無用で捕らえる場合も然り。

お前なら一対一で私を抑えられるだけの力が有るだろうが。

 

なら、そうしなかった理由は?

 

アビドスの意思決定機関が結論を下すまでの時間稼ぎ?

トリニティからの応援待ち?

 

違うだろ…これは、この状況は。

 

「…相当舐められてるな、私は」

 

ガリ、と奥歯を噛み締める。

 

この女は、私程度ならどうとでも抑え込めると判断したからこうして後輩の目の前で話してる。

 

要は適度な教材として、先輩から後輩へ教える対外講習に使ってる訳だ。

 

「次の言葉は慎重に選べよ、小鳥遊ホシノ」

 

私は下らない政治ゲームに付き合うつもりはない。

 

読み終えた紙を握りつぶしながら目の前の強敵を睨みつけた。

 

 

 

 

 

「別に直ぐにどうこうしようって訳じゃないよ」

 

緩やかな口調を崩さずに答えるが、内心でこれはちょっとミスったかも…と冷や汗を流す。

 

桐藤ナギサ…トリニティからの要求はシンプルなモノで。

 

要は重要参考人である桐藤ハルの発見時報告と、仮に捕縛に成功した場合の引き渡しがメイン。

 

見返りは物資の救援とちょっとした便宜を図る程度だけど、あのトリニティに貸しを作れるなら聞くだけの価値があり、噂に聞く桐藤ナギサは穏健派であるからその妹もそれに類するだろう…と思っていたらコレだ。

 

まるで狂犬…トリニティよりゲヘナに近い気質。

 

気に食わないなら誰が相手だろうと容赦なく牙を剥くその有様は過去を彷彿とさせてきて不愉快だ。

 

深呼吸を一つ。

私が感情的になるわけには行かないのだから。

 

ミスった分はこれから挽回しなければならない。

 

…今までに見かけた各学園の化物達を彷彿とさせるこの少女は、いずれそのレベルに手が届くだろうことは想像に難くない。

 

コイツの相手は、今の後輩達には少し手に余る。

 

「へぇ…じゃあどういう了見で?」

 

上着を払いながら問いかけてくる下級生。

 

肩から吊るしたホルスターから覗く大口径の拳銃が顔を覗かせた。

 

…全員の視線がそちらに向いたタイミングで脱出経路を探る強かさもある、と。

 

既に臨戦態勢に入った目の前の少女に思わずため息が出そうになる。

 

…私もそうだけどキヴォトスには時折こう言う輩が現れるからたまったもんじゃない。

 

何故か分からないけどやけに強い。

 

技術や経験を力技でひっくり返せる怪物がいる。

それでも今はまだ勝てる…とは思う。

 

これがまだ一年生で良かった…後一年経験を積んでたらどう転ぶか分かったもんじゃない。

 

「さっきも言った通りウチは零細だからね…何事も全員で決めることにしてるんだよ」

 

此処にいるのがアビドス高校の在校生、その全てだから。

そう言うと軽く目を見開く桐藤ナギサの妹。

 

うん、まぁそう言う反応になるよね…

 

「…五人で全員?嘘でしょ…?」

 

破綻寸前どころかほぼ確定じゃないか、と呆然とした表情で呟く。

 

傍から見れば限界だもんねウチ…まぁ実際その通りではあるんだけど、諦める訳には行かないんだよ。

 

先輩が居た痕跡を消すわけには行かないんだから。

…こんな末期の学校に入ってきてくれた皆のためにも。

 

「…〜!アンタねぇ…!」

 

「セリカ、ストップ」

 

食ってかかろうとしたセリカちゃんをシロコちゃんが止める。

 

「だから絶賛生徒募集中。ハルもどう?」

 

トリニティを辞めたんなら丁度良い。と頷くシロコちゃん。

 

いや…流石に無理だよ?

 

桐藤ナギサが態々名指しで要請してくるくらいに執着してる相手を勝手に生徒にしましたなんて言ったら全面戦争になりかねないし…

 

そもそもコイツがそれを望むとは思えないもの。

 

「遠慮しとく」

 

沈みそうな船に乗る趣味は無い。とキッパリ断られたシロコちゃんは少し残念そうに

 

「ん、しょうがない」

 

そう呟くと再び私の方を見て

 

「それで、どうするのホシノ先輩」

 

トリニティに引き渡す?と自身の銃を手に取りながら聞いてきた。

 

うーん…裏表が無いのは美点だけど今はちょっと止めて欲しかったかも…

 

「トリニティに貸しを作れるのは魅力的」

 

先生が来たから物資は何とかなったけど。と続けるシロコちゃん。

 

「成る程ね…私は交換券か」

 

賞金首にでも成った気分だ。と嘯く桐藤ハルの目から温度が消えていく。

 

「ん。悪いね?」

 

「いや、分かりやすくて助かるわ」

 

要は全員ぶっ飛ばしてけば良いわけだし。

 

ホルスターに手を伸ばす桐藤ハルに

 

「…止めておいた方が良いよ?」

 

おじさん、こう見えて強いから。

側に立てかけた盾をチラリと見て続けるが

 

「私は言葉を選べと言ったはずだ」

 

それが例えアンタの本意とは違っても、私に銃口を向けるのなら容赦はしない。

 

そう言うと同時に拳銃を引き抜いた。

咄嗟に身構える後輩達を制止する。

 

この狂犬を相手にするにはまだ荷が重い。

守りながらやり合える相手とも思えない。

 

「勝ち目が薄ければ私からは仕掛けないだろうとでも思ったのか?」

 

バカが、と吐き捨てるのを見て思う。

 

あぁ、良くわかるとも。

相入れないと、理不尽だと。

そう思ったのなら勝ち目がなくとも退けない時はある。

 

「勝率で喧嘩売る相手を選ぶものかよ」

 

拳銃の撃鉄を引き起こしたのを見て

 

「先輩!?」

 

「此処でやる気!?」

 

「ホシノ先輩!」

 

「ん、戦闘開始」

 

騒然とする皆を落ち着かせる様に言い聞かせる。

 

「落ち着いて、皆」

 

事此処に至っては闘争以外の決着が無くなった。

出来れば話し合いで解決…最良は自分からトリニティに帰ってもらう事だったけど仕方がない。

 

 

「私が勝ったら従うって事で良い?」

 

盾と銃を手にしながら問いかけると

 

「アンタが負けた時にこいつらも含めて二度と私に手を出さないと確約するなら」

 

手にした拳銃はそのままに、空いた手に弾丸を握り込みながら答えた。

 

互いに睨み合いながら席を立つ。

 

「オッケー、それで行こうか」

 

着いてきて、と校庭に向かう。

 

取り敢えず続きは一回大人しくさせてからだ。

 

 







アンチ・ヘイトと独自設定です(重要なので2回目)。



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