「つまり、彼はまだホロウの中ってことか!?」
震える声が辺りに響く。
柳たちから聞かされたのは、自分が意識を失っていた間に起きた全ての出来事だった。
謎の傭兵集団の襲撃。
パールマンの行方。
自身が危険な状態に陥っていたこと。
そして――。
自分を守るため最後まで残った知能構造体が、未だホロウから帰還していないという事実。
「すぐに助けに……!」
『ダメだよお兄ちゃん! 今のお兄ちゃんはまだ万全とは言えないんだから!』
リンがアキラを止める。慌てるアキラに柳も冷静な口調で続けた。
「心配ありません。現在、課長が再度ホロウへ入り、彼を捜索しています」
「今は彼女に任せて。あなたは休んでいて」
アンビーも静かに言葉を重ねる。
それでもアキラの拳は強く握られたままだった。
爪が食い込むほど力を込めても、胸の奥を締め付ける焦燥感は消えない。
自分のせいだ。
自分を守るために残った。
もしあの時、倒れなければ。
そんな後悔ばかりが頭の中を埋め尽くしていく。
そのタイミングで、再びホロウへ潜っていた雅が戻る。
戦闘の痕跡を残したままの姿。
しかし、その表情を見た瞬間。
アキラは悟ってしまった。
――結果を。
「プロキシ。目を覚ましていたか」
「星見さん!彼は……!見つかったのか!?」
縋るような必死の問いかけ。
だが雅はすぐには答えなかった一瞬だけ視線を伏せる。その沈黙が何よりも残酷だったやがて彼女は静かに口を開く。
「…別れた場所から行けるところまで全て捜索した…
だが……あの者は見つからなかった」
誰も声を出せない。雅は拳を握り締めながら続けた。
「すまない……」
その言葉が落ちた瞬間。
アキラの身体から力が抜けた。
「そんな……」
視界が揺れる。
呼吸が苦しい。
胸の奥が締め付けられる。
「僕のせいで……!」
絞り出すような声だった。
知能構造体は何度も自分を助けてくれた。
危険な場所でも、絶望的な状況でも、文句ひとつ言わず。
それなのに。
最後に助けられたのは自分で。
置き去りにされたのは彼だった。
「僕が……もっと早く……!」
「そんな、店長のせいじゃねえって!」
『ビリーの言う通りだよ!』
ニコも続けるが、店長の表情は晴れない。
その時だった。
無機質な音声が店内に響く
[Fairy]:報告、知能構造体からだと思われる暗号が届きました。
「本当かい!? 彼は今どこに……!?」
真っ先に反応したのはアキラだった。
もし本当に彼からの通信なら――。
数秒、しかし全員には永遠にも感じられる沈黙だった。
やがて。
[Fairy]:解析完了……『上です。』
ニコは眉をひそめながら空を見上げる。
「上なんか見ても誰もいないじゃ――」
言い終わる前だった。
ズシイィィィン!!
轟音とともに大地が揺れた。
近くの巨大な岩へ何かが激突し、衝撃で砂埃が一気に舞い上がる。
「ゴホッ、ゴホッ……!な、なんだっ!?」
視界は茶色一色に染まり、誰も状況を把握できない。
やがて砂埃がゆっくりと晴れていく。
その中心にいたのは――。
仰向けで大の字になって倒れている、一体の知能構造体だった。
「…はぁ、いてぇ……」
ゆっくりと上体を起こしたその瞬間。
アキラが勢いよく飛びついた。
状況が理解できない。
落下の衝撃でまだ頭がぼんやりしているところへ、突然抱き締められたのだ。
知能構造体の思考回路は一瞬で疑問符に埋め尽くされる。
「……?」
完全停止である。
しかしアキラは離れない。むしろ力が強くなっている気さえし、知能構造体は助けを求めるように周囲へ視線を向けた。
だが――
「よく戻ってきたぜぇ!!」
今度はビリーが全力で飛び込んできた。
二人分の重量が追加された。
『……ごめん。10分は続くと思った方がいいかも……』
「離れてくれ……。」
結局20分ほど離れてくれなかった。
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「わかった。今のところの処遇は保留ってことでいいんだな……?」
「そう思ってもらって構いません」
柳は小さく頷いた。
ようやく二人から解放された知能構造体は、自分がいない間に何が話し合われていたのかを聞き出す。
結果として、今回の処遇は保留。
捕らえた傭兵集団への尋問も行われたが、有益な情報は一切得られなかったらしい。
「もし嘘をついている可能性があるなら録音して俺に共有しろ。俺のAIを通せば声紋認証で虚偽判定ができる」
さらりと言ったその言葉に、ニコが呆れたように目を見開く。
「あんたのAIって本当に何でもありね……って、それより!」
ニコは勢いよく知能構造体を指差した。
「喋れるなら最初から喋りなさいよ!!」
次の瞬間、拳が飛んだ。
ゴッ!!
見事に知能構造体の頬へ命中――したはずだった。
しかし本人は微動だにしない。
デッドエンドブッチャーの猛攻すら耐え抜いた装甲だ。人間の拳程度でどうにかなるわけがない。
「っっっっ!!?」
逆にダメージを受けたのはニコの方だった。
真っ赤になった手を押さえ、その場で飛び跳ねる。
「痛ぁぁぁぁぁっ!? 石!? あんた石なの!?」
「違うが…」
騒がしくなるその光景を見ながら、悠真が苦笑を浮かべた。
「それはそうと、一つ聞いてもいいかな? 君、どうして空から落ちてきたんだい?」
当然の疑問だった。
全員の視線が知能構造体へ集まる。
すると本人は特に隠す様子もなく、淡々と答えた。
「あぁ……
上空10000mから戦って落ちた。」
(・∇・)