「ブリンガー長官が…!?」
『うん、六課の人たちが今探してるけど、もう演説会場にはにいないみたいなの!』
「ひとまずホロウを出るぞ。エーテリアスも近付いてきてる」
レイヴントが雅を背負いながら、無事に4人ともデッドエンドホロウを抜ける。
「雅は私に任せてください。彼女を1番近い医療拠点へ連れて行きます!
行ってください、店長さん!黒幕を頼みました!」
『わかった。そっちも気をつけ――』
そこでプツッと通信が切れ、イアスがその場に倒れる。
「店長さん!?」
レイヴントがイアスを抱えあげ、体をスキャンする。
「まずい…予想だが雅との戦いの時にどっかの内部モジュールが壊れた。仕方ねぇからこいつは俺が持っていく、雅は任せた。」
「分かりました……レイヴントさん、お願いです…ブリンガー長官を、絶対逃がさないでください…!」
「その
そうしてレイヴントはイアスを抱えながら走り出し、演説会場まで来ると、会場の近くにある車両が全て破壊されており炎が燃え上がっていた。
そこで近くにいた六課の3人を見つけ、合流する。
「レイヴント、ご無事で何よりです。」
そこで3人がレイヴントの腕に抱えているイアスに気付く。
「ねぇレイヴント…プロキシ、だいじょうぶなの?」
「あぁ心配ねぇ。ちょっと色々あって接続が切れただけだ。それよりなにがあった?この大騒ぎは…」
そこで柳から電話が鳴り、出るとアキラの声が聞こえた。
『柳さん…聞こえるかい?』
「もしもし?プロキシさんですか!私たちはまだ演説会場にいます。」
白祇重工の資料の中にあったヴィジョンとブリンガーの関係を知らしめる重要な証拠があったらしく、それをパールマンとクレタで見つけ出したらしい。
「白祇重工がブリンガーの重証を監察官に引き渡してくれたので、彼は直ちに停職処分を受け、治安総局への出頭を命じられました。」
近くの全ての車両に炎が燃え盛っていたのは、ブリンガーの部下が故意に引き起こしたせいだった。
柳たちはなんとか状況を収集した時には、既にブリンガーはなかった。
「捕まえられませんでしたが、ちょうどそこでレイヴントと貴方のボンプと合流しました。」
『…!イアスは……うちのボンプは大丈夫なのか!?』
その問いに、レイヴントは柳へ軽く視線を送り、小さく頷く。
「柳、スピーカーにしてくれ」
「はい」
柳が操作すると、通信はスピーカーへ切り替わる。
レイヴントは落ち着いた口調で告げた。
「心配するな、アキラ。内部モジュールが多少損傷しているだけだ。この程度なら、異常が残ることもなく修理できる」
一瞬の沈黙のあと、アキラは安堵の息を漏らした。
『……良かった。本当にありがとう、レイヴント』
レイヴントは「気にするな」と短く返す。
続いて柳は、集めた情報を伝えた。
ブリンガーは、ポート・エルピスへ向かった可能性があるらしく、市街地の辺縁部に位置し、ホロウに飲み込まれた貨物輸送用の古い追悼があった
ヴィジョン・コーポレーション名義で、多数の物資や特殊なエーテル部品が運び込まれていた形跡も確認されているらしい。
レイヴントは腕を組み、低く呟いた。
「……隠れ場所としては、これ以上ないな」
『わかった。こちらも準備ができ次第、ポート・エルピスへ向かう』
「承知しました。私たちも現地へ急行します。どうか、お気を付けて」
柳がそう言い終えると、通信は静かに途切れた。
「私たちも急いで向かいましょう!レイヴント、車に乗ってください。」
「わかった。」
4人は車に乗り込みポート・エルピスにむかった。
向かってる最中の車内、レイヴントはイアスの修理をはしめる。
レイヴントは収納ケースから小型の精密工具を取り出すと、迷いのない手つきで外装パネルの固定ネジを外していく。
外装を外すと、露わになった内部には断線しかけたケーブルと、衝撃でずれた制御ユニットが見えた。レイヴントは一本一本の配線を丁寧に指でなぞり、導通を確認する。
「やはりここか……。」
「レイヴント…このボンプ本当に大丈夫なの?」
「あぁ、問題ない」
小さく呟くと、切れかけたケーブルを切除し、新しい配線へと交換する。接続部を精密溶接で固定し、絶縁材を巻き付けて補強。続いて歪んだフレームを専用ツールで慎重に矯正し、関節部には高耐久グリスを流し込んで可動域を元に戻していく。車が大きく揺れるたび工具の先端がぶれそうになるが、レイヴントの手は一切狂わない。
そうして再度起動して見ると
「ン、ンナ…?」(あれ、ぼくはなにを…?)
「お目覚めか?」
「ンナ!ンナ……ワタンナ?」(そうだ、僕…急に倒れてちゃって…レイヴントが助けてくれたの?)
「あぁ、体に異常は?」
「ンナァ!ンナンナ!」(全くないよ!ありがとう!)
その言葉と同時に、イアスは嬉しさを抑えきれず、レイヴントの胸へ勢いよく飛びついた。
「おっと…そんなに元気なら大丈夫そうだな」
不意を突かれながらも、レイヴントは自然と片腕でイアスを受け止めながら撫でる
「ンナァ」(なにこれぇ…気持ちいぃ…)
「邪兎屋の猫ちゃんの時もそうだったけど、レイくんって動物とかボンプの扱い上手いよねぇ」
「まぁな、結構動物には好かれやすいからな……
……レイくん?」
悠真の呼び方に固まるレイヴント。
「あ、ダメだった?レイヴントってちょっと長いし……僕はは、このくらいのほうがしっくりくるかなって思ったんだけど」
レイヴントは一瞬だけ目を丸くした。
だがすぐに表情を和らげ、マスク越しでは見えないが小さく口元を緩める。
「……好きに呼べばいい。」
「なら、そう呼ばせてもらうよ。」
そんな会話をしているうちにポート・エルピスに着いた一行は車を降り、アキラたちの合流を待つ。
「イアス……俺の肩に乗るのは構わないが、バランスだけは崩すなよ」
「ンナァ!」(分かってるよ!)
元気よく返事をしたイアスは、器用にレイヴントの肩へ腰を落ち着けた。
「おーい! こっちだ!」
弾むような声とともに、大きく手を振りながら駆け寄ってきたのはアキラだった。その後ろには、静かに佇む青衣の姿も見える。レイヴントは三人の姿を確認すると、小さく頷きながら口を開いた。
「道中は問題なかったようだな」
短い問いかけに、アキラは軽く肩をすくめ、気楽な笑みを浮かべる。
「あぁ、何事もなく着いたよ」
「ンナァ!」(アキラぁ!)
レイヴントの肩にちょこんと乗っていたイアスが、元気いっぱいに鳴き声を上げる。
その愛らしい様子に、リンは思わず口元を押さえて笑みをこぼした。
「ふふっ。イアス、すっかりレイヴントの肩が定位置になっちゃったね」
イアスは誇らしげに胸を張るようにもう一度「ンナァ!」と鳴き、レイヴントの肩へさらに身を寄せる。
「そろそろ本題に移ろう、柳。」
「はい。分かりました。」
青衣が事前に連絡していた潜入捜査官が、密輸業者の「連絡係」に成りすまして、ブリンガーをホロウ内の支店地点におびき寄せたとのこと。
「今回は私たちが主導権を握っています…
今や彼はどこにも行けません。」
「どーですかねぇ…ブリンガーがブツを密輸にここを選んだのには理由があるような気もしますけど…」
楽観視できない――そう言いたげな声音だった。
その意見に頷いた柳も、真剣な表情で言葉を続ける。
「浅羽隊員の言う通りです。今回の作戦は、これまで以上に慎重を期する必要があります」
そして視線をプロキシへ向ける。
「プロキシさん。貴方がたのナビボンプはまだ正常に作動していますか?」
「あぁ、さっきモジュールをチェックしたけど、レイヴントの修理もあって万全な状態だ。」
「僕はどちらかと言うと、レイくんの方が少し心配ですね。」
不意に悠真から話を振られ、レイヴントは自分を指差しながら小さく首をかしげた。
「……? 俺はなんともない。まだ戦える」
だが、悠真は心配そうな表情を崩さない。
「そうは言っても、今日だけでも三回以上は激しい戦闘をしてるでしょ? 聞いた話だと、課長を探していた時も戦っていたみたいだし……本当に体は大丈夫なのかい?」
その問いには、仲間としての純粋な気遣いが込められていた。
「いけるさ、それに…今回はこれを使う。」
レイヴントは手から"ベルト"と"バックル"のような物を取り出す。
「それは?」
「簡潔に言うと、俺専用の強化アイテムみたいなものだ。これを使えば故障で動けなくなることはない。」
「分かりました。ですが、決して無理だけはなさらないでください」
そう念を押すと、柳は通信へと向き直った。
「では、プロキシさん。これより突撃を開始します。ホロウ内のナビゲートをお願いします!」
「分かった。すぐに向かおう!」
その声を合図に、一行はホロウへと向かった。
何故か僕のスマホって"じんい"や"あおい"って打っても変換出てこないから毎回「青い」に「衣(ころも)」って打ってるんだよね。
次回とうとう変身します。