戦いが終わった後、レイヴントたちは白祇重工、ヴィクトリア家政、カリュドーンの一同と合流する。
『良かった、皆無事だったんだ――』
「は"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!!」
皆が一斉に奇声の先を見るとレイヴントの姿を食い入るように見つめているグレースがいた
「な、なんだいこの構造……! この装甲、どうなってるの!? 動力系統は? 変身機構は? まさかこれ、全部一瞬で――」
「いや…ちょっ――」
グレースの目が完全にイッている。戦いの疲れなどどこへやら。彼女はレイヴントへと一歩、また一歩と近づいていく。
迫力に押され、助けを求めるように皆のほうを見るが、一斉に別の方向を向く。
[BT-7274]:レイヴント、ご無事ですka――
遅れてやってきたBTにレイヴントは藁にも縋る思いで助けを目で訴える。が……BTはグレースを見た瞬間、無情にも目を逸らされた。
前もこうやって見捨てられたような――
「このベルトかい?これを使って変身するのかい!?」
「おい、勝手に触れるな――」
グレースがバックルに触れる瞬間…プシュゥゥゥ――!
「……は?」
ブーストバックルから、突然大量の煙が噴き出し、さらにその煙の奥から赤々とした炎まで噴き上がる。
「やべ――」
レイヴントが慌てて手を伸ばした、その瞬間だった。
ガキィンッ!
ブーストバックルが、まるで意思を持ったミサイルのように勢いよく飛び出した。不規則な軌道を描きながら宙を舞うバックル。
そして――ゴッ!!
「ぐおっ…!」
バックルがレイヴントの顎を見事に捉え、強烈なアッパーを叩き込むと、何事もなかったかのように、彼方へ飛び去っていった。
やがて地面に転がったレイヴントが、ゆっくりと顔を上げる。
「……なんで俺は殴られたんだ。」
直後、今度はレイヴントの腰に装着されたドライバーから、けたたましい警告音が鳴り響く。
《WARNING WARNING WARNING WARNING――》
《SYSTEM ERROR》
ガシャッ!
強制的に変身を解除され、装甲が一瞬で消え去り、戦闘モードすら解除された。
整った顔立ちの青年。
赤いメッシュの入った髪
淡い紅色の瞳。
残ったのは――完全にレイヴントの素顔
その場にいた全員の視線が彼へ集まり、レイヴントはそっと自分の顔を触り、状況を理解した。
「最悪だ…」
戦闘状態↓
強制解除の状態↓
普段の状態
_______________________
「疲れた…」
ポート・エルピスに戻ると、質問責めに合った。
中には喋れることやそもそも名前すら知らない人がほとんどだったため、延々と説明させられそうになったところをなんとか終わらせたとこだった。
「レイヴント、早速私と修行をするぞ」
「また今度な。」
特に雅、戦いが終わったばかりだと言うのにもう戦う気満々だった。
レイヴントはあの時の斬撃を見てからというものの、少々勝てるビジョンが浮かばないため、本当にやめてほしいと思っていた。
そんなやり取りをしていると、ニコがふと思い出したように口を開く。
「そういえばあんた、あの形態に名前ってあんのかしら?」
レイヴントは少し考え込む。
「」いや……完成してすぐだったから、まだ何も付けてないが……」
「じゃあ私たちが付けてあげるわ!」
「は?」
その一言を皮切りに、なぜかその場は突然、命名大会のような空気になった。
だが――
「レイヴント・ブレイザー」
「レイヴント・ゼロ」
「レイヴント・アルティメット」
「レイヴント・ファントム」
「……」
ニコを中心に集まった面々は、片っ端から口にしていくが次々と出してくる名前を聞きながら、レイヴントは無言になった。
名前を考えてくれること自体は嬉しい。
自分のために頭を悩ませてくれているのだから、文句を言うつもりもない。
――しかし。
(……どれもこれも、壊滅的にセンスがない……)
レイヴント自身、名前を付けるせんすがないため決めかねていた。
そして、これ以上聞いていると本当に取り返しのつかない名前を付けられそうだと判断したため、とうとう口を開く。
「……待ってくれ」
「何よ?」
「名前に『レイヴント』って入れてくるの、やめてくれないか……」
レイヴントの切実な訴えに、ニコはきょとんとしながら本気でなにが悪いのか分かっていない顔をしていた。
そこで先程まであまり興味無さそうだった悠真が輪に入り、
「それならさ、狐のマスクから取ってギーツってのはどう?」
今まで出てきた名前とは、明らかに違う。
短く、呼びやすい。
そして何より――自分の名前が入っていない。
「……ギーツ、か」
全ての動物の中でも上位に入るほど好きな動物だから――そんな理由でマスクを狐にしたが、不思議と耳に馴染む。
しばらく考えた末、レイヴントは小さく頷いた。
「うん。悪くない」
「でしょ〜?」
悠真が当たり前という顔をしながら頷く。
すると、それまで様子を窺っていたニコの表情が、ぱっと明るくなった。
「いいじゃない! ギーツ!」
「さっきまでの名前との落差がすごいな……ん?」
無事に名前も決まり、ひとまず落ち着いた――そう思った、その時だった。
ふと視線を向けると、少し離れたところでアキラとリンがホロウの方へ向かっているのが見えた。
「すまん、急ぎの用事が出来た。」
「ちょ、ちょっと、こいつはどうするのよ。」
ニコがBTを指差す。
「あぁ、それなら心配ない」
なにかのデバイスを操作すると空中から轟音が鳴り響き、姿を現したのは、軍用輸送機にも似た大型の機体だった。
無骨な装甲に覆われ、複数の大型機体が左右に展開している。そのままBTの頭上を通過して、ゆっくりと下降すると、BTの機体を格納していく。
「うわ……何あれ……」
「こいつは持ち運ぶだけでも一苦労だからな。専用の輸送機を作ったんだ」
格納を確認すると、男はデバイスをしまった。
「これでよし。あとは任せてくれ」
「任せてって……」
「じゃあ、俺は先に戻ってる。何かあったら連絡してくれ」
そうして帰るフリをして、2人の後を追って裂け目を通ると、倒したはずのブリンガーとなにかを喋っていた。
「答えて!あんたたちは…先生をどこへやったの!?」
何かを確かめるように、ブリンガーへ視線を向ける。
【先生……?貴様ら…】
「カローレ・アルナ…旧都陥落の日、白い腕が彼女を攫った!」
その言葉を聞き、ブリンガーは不気味に笑う。
低く、愉しげな声…そして――。
「そうか、なんだ貴様ら……あれの教え子か……ならば……始まりの主よ、再創を…!」
ブリンガーは最後の力を解き放ち、凄まじい閃光とともに2人を巻き込んで大爆発する。
「なっ…!?」
炎と衝撃波が周囲を激しく焼き尽くす。
やがて煙が晴れると、焼け焦げた地面の中心に、二人を包む球体があった。
レイヴントが自らを球状に変形させ、二人を守り切っていた。
「貴様――」
ブリンガーがなにか言おうとしたのを遮るように鎌で細切れにし、消滅した。
「…終わりだ、2人とも無事か――」
振り返ったその時、2人の目が黄色に光り輝いていたのが一瞬だけ見えた。