崩れかけた建物を通り、2つの影が駆け抜ける。
星見雅は先頭で駆ける。
「フッ――ハァッ!!」
鋭い踏み込み。
次の瞬間、銀閃が走る。行く手を塞ぐファールバウンティの胴体が斜めに断ち切られ、コアごと崩壊した。
さらに横合いから飛び出したエーテリアスの首を返す刀で刎ね飛ばし、その勢いのまま前進を続ける。
立ち止まる時間は一秒たりともない。
その時だった。
雅のサングラス越しに複数の赤いシルエットが浮かび上がる。
壁の向こう側、待ち伏せしている反応だ。
【壁面の向こうにファールバウンティを確認。】
淡々とした報告。
雅は僅かに口角を上げた。
「優秀だな、お前が造るものたちは。」
「そりゃあありがとさん――っと!」
知能構造体が肩から装甲がスライドし、内蔵されたミサイルポッドが露出。
次の瞬間。
ドドドドドドッ!!
小型誘導弾が一斉発射された。
壁を迂回するような軌道を描きながら飛翔し、待ち伏せしていたエーテリアスへ直撃する。
爆炎。衝撃。壁の向こうから断末魔が響いた。
爆煙の中から飛び出してきた個体には追撃のガトリング砲。
高速回転する銃身が火花を散らし、放たれた弾丸が正確無比にコアを撃ち抜いていく。
敵は反撃する暇すら与えられない。
だがアキラの侵蝕は確実に進行している。
「プロキシがホロウに滞在できる時間は残り十五分だ。急ぐぞ。」
雅の声が飛ぶ。
その声音には焦りこそないが、状況の深刻さは十分伝わってくる。
【BT】:付近にアーマーハティの反応を複数検知。現在こちらへ接近中。
一瞬。
その場の空気が重くなる。
知能構造体が小さく舌打ちした。
「このクソ忙しいときに……」
直後。
遠方から獣の咆哮が響いた。
グォォォォオオオオッ――!!
重装甲を纏ったアーマーハティの群れが、獲物を見つけた肉食獣のようにこちらへ向かって突進してくる。
物陰に身を潜めたまま、二人は息を殺していた。
エーテリアスの群れが通り過ぎるのを待つ。
――だが、状況は好転しなかった。
一体去れば二体現れる。
裂け目へ向かう道は完全に塞がれつつある。
「埒があかねぇ……急に増えやがって……」
重苦しい沈黙の後、雅が静かに口を開く。
「ここは私が囮となって敵の気を引く。その間にお前は――「いや、俺が囮になる」……なに?」
即座に遮られた言葉に、雅の目がわずかに見開かれる。
知能構造体は壁にもたれたまま淡々と続けた。
「俺が囮になった方が効率的だろう?」
そう言いながら、倒れているアキラへ視線を向ける。
「さっきニコ達に座標を送った。裂け目から出たら、すぐ合流できるはずだ」
「アキラも言ってただろう。『君を無事脱出させるのが僕の仕事だ』ってな…だがこいつは倒れちまった…今、脱出経路が分かるのは俺だけだ。つまり、この仕事は俺に引き継がれたようなもんだ」
雅は思わず唇を噛む。
「それだと、お前は……」
言葉が続かなかった。
残される者の結末など考えたくもない。
すると知能構造体は、どこか呆れたように笑った。
「……よく俺みたいなやつにそんなこと考えられるな」
敵同士だった。
つい先程まで殺し合い、空中から叩き落とし、肋骨を折った相手。そんな存在の心配をしている。
知能構造体は立ち上がる。
傷だらけの身体が軋んだ。
それでも、その足は揺るがない。
「安心しろ、必ず追いつく、それに俺は虚狩りのお前と互角に戦ったやつだぞ?こんなとこで死なねぇよ」
その言葉に根拠などない。
だが不思議と嘘にも聞こえなかった。
雅はしばらく黙り込む。
そして静かに目を閉じた。
「……わかった、信じよう」
「そうこなくっちゃな」
知能構造体は軽く肩を回しながら即席の作戦を説明する。
「お前に二十秒だけステルスモードをそのサングラスを通して姿を消させる。その間に俺がエーテリアスを引き付ける、その隙にアキラを連れて全力疾走で裂け目へ向かえ。いいな?」
「承知した」
短い返答。
互いに余計な言葉はなかった。
知能構造体は指を鳴らす。
――パチン。
雅の身体が揺らぎ始めた。
抱えているアキラごと輪郭が歪み、空気に溶け込むように姿を消していく。
数秒後には完全に見えなくなっていた。
そこにいるはずなのに、気配すら感じない。
知能構造体は満足そうに頷く。
「プロキシを任せた」
知能構造体はゆっくりと物陰から歩み出た。
目の前には無数のエーテリアス。
唸り声を上げながら徘徊する異形の群れ。
普通なら逃げ出したくなる光景だった。
知能構造体は腕部装甲を展開する。
内部機構が唸りを上げた。
次の瞬間――。
ドォンッ!!
上空に向かって大量の花火弾が撃ち出される。
赤。青。金。
無数の閃光が天井を照らし、轟音がホロウ全体へ響き渡り、静寂は一瞬で吹き飛ぶ。
エーテリアス達の首が一斉に上がった。
無数の赤い眼が光る。
そして――。
標的を見つけた獣のように。
全ての視線が、たった一人の知能構造体へ集中し、襲いかかる
ガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!
「…引っかかったな。」
ドガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ン゙
自動設置型地雷が甲高い警告音と共に起動し、次の瞬間――轟音が戦場を揺らした。
爆炎と土煙が吹き荒れ、先頭を走っていたエーテリアス達がまとめて吹き飛ぶ。
だが、それでもなお生き残ったゴブリンが咆哮を上げながら突進してきた。
「しぶてぇな」
知能構造体は一気に間合いを詰める。
懐へ潜り込むと同時に拳を叩き込んだ。
腹部、顎、脇腹。
重い拳撃が連続して炸裂し、ゴブリンの身体が大きく仰け反る。さらに体勢を崩した瞬間を見逃さず、
「でぇりやあぁ!」
頭部のコアを蹴り上げ、砕けかけたところに向けて脚からのジェット噴射で倒す。
ティルヴィング達が包囲網を形成し始めている。
だが知能構造体は落ち着いていた。
拳を軽く構え、足を細かく動かしまるで熟練のボクサーのような構えをする。
「シュッ!」
鋭いジャブが顔面を打ち抜く。
「ハッ!」
続くストレートで一体の首を捻じ曲げ、
「ッラァ!」
回り込むようなフックで別の個体を吹き飛ばした。
無駄のない連撃。
軽快なフットワーク。
ボンペイ戦で見たライトの戦闘データを密かにスキャンしていた成果だった。
完全な再現ではない。
だが知能構造体なりに最適化されたそのスタイルは予想以上に身体へ馴染んでいた。
「なかなかいいな、このスタイル……」
口元に僅かな笑みが浮かぶ。
しかし、その余裕は長く続かなかった。
[BT]:音に引き付けられた敵が多数接近
ファールバウンティが3体
デュラハン2体
タナトス一体
アーマーハティ4体
その他下級エーテリアスが接近中
「……世紀末もいいところだぜ。」
思わず苦笑が漏れる。
「BT、援護を頼む。」
[BT]:了解、殲滅モードへ移行します。
直後、BTは再びドローン形態へ変形した。
装甲が展開し、内部から大型機関銃がせり出す。
さらにミサイルポッド、対エーテリアス用榴弾ランチャー、レーザー照準器が次々と展開された。
「はぁ……囮となったのは言いものの、いざこうやって群れがくると嫌でも思い出す…」
何かに浸るように目をつぶる
それもほんの数秒だった。
静かに目を開く。
赤い瞳が再び光を宿した。
「ま、……終わったことだ」
そう呟くと両手から金属質の音を響かせながら鋭い鉤爪が展開される。
ボクシングの機動力。
鉤爪による近接殺傷能力。
即興の組み合わせだったが、悪くないはずだ。
「この戦い方と合うといいんだが……」
「まぁ、やってみれば分かるか」
背部スラスターが低く唸り始める。
敵群との距離は残り数百メートル。
そして静かに息を吐く。
「……ふぅ、任務開始だ」
次の瞬間。
地面を砕くほどの勢いで踏み込み、紅い残光を引きながらエーテリアスの大群へ突撃した。
この章終わったら知能構造体の顔ChatGPTで作ろうかな…
この章で顔出すか決めてないけど
追記:話が多くなりすぎたので話数分けます
今まで書いたやつ、改めてリメイクしなおしてもいいですか?
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良い
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別に