死んだと思われていた転生者、帰還したら弟子たちが世界を救うための犠牲となっていた 作:かえってきたぞー
俺は最強になりたかった。
なんでかっていえば単純な理由で、他にすることがなかったからだ。
ここは異世界、転生した俺にとっては娯楽が少なすぎる。
だから強くなることを娯楽にしただけの、薄っぺらい人間。
それが俺だ。
だっていうのに、俺には弟子がいた。
それも一人ではない、六人も。
俺のことを慕ってくれる、優秀な弟子たち。
俺には勿体ない存在である。
彼らが一人前になったと判断した後、俺は修行の場所を変えることにした。
すでに俺の強さは頭打ちとなっており、これ以上を求めるならどうしたって”何か”を変えるしかない。
そこで選んだのが異次元という場所だった。
名前の通りこの世界とは異なる次元で、そこにはこの世界に存在しないような魔物が無数にいるそうだ。
帰ってこれる保証はない。
時間の流れがこちらと同じかすらわからない。
それでも俺に、やらないという選択肢はなかった。
弟子たちは、惜しみながら俺を送り出してくれた。
ありがたいことに、後のことは任せてください、と。
任せるも何も俺は一介の武人でしかないわけだから、任せるものはないわけだけど。
彼らには彼らのやりたいことがある、きっと頑張ってくれることだろう。
そう思って、異次元に身を投じたわけだ。
――それから、時間の概念がなくなるくらい、俺は異次元をさまよった。
正直、人生で一番楽しい時間だったと思う。
ただただ、本能のまま闘争に明け暮れる日々。
強くなることだけに意識を傾けたその瞬間は、俺にとって最も充実した瞬間だったと言える。
もともと前世はつまらない人間だったのだ。
こうして誇れる何かを手に、それを誇示し続けるのはただただ楽しかった。
しかし――――それが終わって元の世界に帰還した時。
すべてが、変わっていた。
○
「――六英傑?」
「そう、この世界を救ってくださった伝説の英傑ですじゃ」
旅の途中に立ち寄った茶屋で、俺は一人の老人からそんな話を聞いた。
俺がいた時代から千年も時間が流れていると、飯の美味さもだいぶマシになっているようだ。
特に調味料として普通に醤油が使われているってのがありがたいな。
このだんごも、甘じょっぱい感じが実に美味である。
「今から八百年ほど前、世界に災厄が訪れた。七大災厄と呼ばれるその災厄は、またたく間に世界を滅ぼさんと襲いかかってきたのじゃ」
「災厄が七つも? それは恐ろしい」
八百年ともなると、俺の弟子達も亡くなっている頃だろう。
いや、何人かは長命だから生き残ってるかもしれないな。
「それに立ち向かったのが六人の英傑。それぞれが六属性のエキスパートで、火英、水英などと呼ばれておる」
「へえ、エキスパート。ちなみに誰が一番強いんだ?」
「おそらくは、
「…………ん?」
ルオスフォッグ……?
なんか、聞いたことある名前だな?
先祖の名前を継いだとかかな?
「
「――――へ、へぇ」
見に覚えのある名前が、二つも出てきた。
他の名前を聞くのが怖い。
そうだよ、あいつらそれぞれ一つの属性に特化してたじゃん。
まさか……二百年生きのたのか? どうやって?
いや、寿命を伸ばすくらいならなんとかなるか?
「世界は、彼らが犠牲になってくださったおかげで、こうして今も存続しておるのですじゃ」
――――――――は?
「……犠牲?」
「はい、彼らは災厄を前に戦い抜き、最後にはその身を犠牲にすることで災厄を封じたのですじゃ。そのことは今も伝説として語り継がれており――」
「…………すまない、爺さん。少し用事ができた。団子おいしかったよ。お代はこいつで頼む」
「はて? あ、ちょいと待ちなされ旅の方! まだ話は――」
千年、千年は長すぎる時間だった。
彼らはすでに彼らの人生を終えていたと思っていたくらいには。
でも、犠牲?
犠牲ってなんだ?
なんでそんなことしなくちゃならない?
わけがわからん。
急いで、ことと次第を”長老”に問いたださないと――
○
「ああ、言ってしもうた……まだ話は終わってないんじゃがのう。英傑には、7つ目の災厄を未然に防いだ名もしれぬ七人目の英傑がいた、とか」
いってしまった旅人に、老人は頬を掻きながらなんだったのかと息を吐く。
そして――
「それにしてもこの銅貨……どこかで見たことがあるような………………千年前の聖王国の銅貨ではないかの?」
とてもではないが
こんなものはもらえないと、老人は慌てて駆け出すのだが――老人が旅人に追いつくことはついぞなかった。