どうも、最近何故か水曜投稿が定着してしまってますね。
来週こそは……。
非常に困った。
暗い雨を見ながら最初にそう思った。
先ほど山田博子から拓哉達に告げられたのは、台風の接近とこの大雨強風のせいで飛行機がしばらく飛べないということ。つまり、東京へ帰る事ができないのだ。
普通であればそれも仕方ないから妥協するのだが、拓哉達、正確には穂乃果達には依頼されたイベントが待っている。言ってしまえばそのイベントに確実に間に合わないという点である。
(どうにかして向こうに帰る事は……できないか)
まだ本島なら新幹線や車でどうにかなったかもしれない。だけどここは沖縄。大前提からして無理な話だった。
そもそもただの高校生である岡崎拓哉にはどうこうできる問題の話ではない。台風なんてもってのほかだ。自然現象が立ちふさがっている中で無理に動こうとすればかえって事故が起きてしまう。
(真姫に頼む……のも確定ではないし危ないよなあ)
お嬢様で別荘があるくらいだからもしかしてジェット機くらいあるのではと思った拓哉だったがすぐにその案を捨てる。もしそれが当たっていたとしてもさっきと同じだ。ジェット機を飛ばしたところで台風にやられてしまえば命の危険にも関わる。
(そうだ。帰る事はできなくても、電話で何かサポートするくらいならできるはず。今から伝えておく事とかなかったっけか)
まず拓哉がここまで深く考えるのには1つ理由がある。
何しろこの『依頼』を見付けて請け負ったのは自分だから。
普段力仕事ばかりしていたからたまには手伝いらしい手伝いをやろうと思ってやった矢先にこれだ。つくづく自分の運のなさを呪うしかない。ともあれ決まってしまったものは仕方ない。
「……くちゃんっ」
(と言っても何か伝える事とかあるのか? 大体の事は絵里にも言ってあるし、それこそ伝える事なんてイベントに間に合わないくらいしか……)
「たくちゃんっ!」
「おわっ! 何だ穂乃果か。どうした?」
「どうしたも何も、ずっと呼んでるのにたくちゃんが反応しないからだよ~!」
「あ、そ、そうか、悪かったな」
穂乃果の顔を見れば自分がどれだけ深刻な顔をしていたか分かる。自分が受けてしまった依頼である以上、責任は自分にあるものと思っているのだ。深く考えてしまうのも無理はない。
「もぉ……ほら、絵里ちゃんと今電話してるんだけど、たくちゃんに代わってって。はい」
穂乃果に渡され携帯を手に取る。穂乃果が絵里と電話していた事すら気付かなかったことと、目の前では海未が何やらトランプタワー作りに挑戦しているのを一瞥してから携帯を耳に当てる。
「もしもし」
『もしかしなくても帰ってこれないことを気にしてたんじゃないかしら。ごきげんよう、拓哉』
いきなりズバッと言い当てられてドキリとしてしまうが、それをすぐ認めると何だか負けた気分になるのでとりあえず何か言い返すことにした。
「俺と会えない事が実は寂しいだけなんだろ? ははっ、可愛いやつめ」
『そういうのいいから』
「はい」
昨夜の真姫と同じような冷たい返事が返ってきた。どうやら効果はないらしい。それと穂乃果とトランプタワー作りに集中していた海未、ことりの視線が同時にこちらに振り向き何故か軽い悪寒が襲ってきた感覚に襲われる。
電話越しに絵里の溜め息が聞こえてくるが、きっと呆れられているのではないと信じたい。
『まあいいわ。その様子だと私と穂乃果の話も聞いてなかったようね。正しくは穂乃果の反応ってとこだけど』
「どういうことだ?」
『じゃあもう一度説明するわね。こっちにも拓哉達が帰ってこれないって連絡は先程あったわ。それをメンバーにも伝えたのよ』
「ああ」
それは当然のことだろう。イベントに出ないといけない穂乃果達2年が出れなくなってしまったのだから。イベントには残っている6人で出てもらうしかなくなる。しかし、問題はそれだけではない。
『そしてセンターは花陽でいく事になったわ』
「……花陽が?」
ここで少し疑問がでた。
確か今のμ'sのリーダーは暫定的でも凛がやっているはずだ。
だとしたら普通はセンターは凛がやるはずなのだ。リーダーの穂乃果がいつもセンターをやっているように。なのに、センターは凛ではなく花陽がやると絵里は言った。それへの疑問。
『どうかしたの? 拓哉まで穂乃果と同じ反応しちゃって』
「……いや、何でもないよ。とにかく悪いな。依頼を受けたのは俺なのに、帰れなくて全部そっちに任せてしまって。もし向こうから何か言われたら責任は俺が全部受けるから」
この疑問は多分絵里にぶつけるべきではないと判断する。疑問と確認はまたあとにすればいい。とにかく今は色々やってくれている絵里に謝っておくのが先決だろう。本来なら全部自分がやるべきなのに。
『こーらっ、そういうこと言うのは禁止よ』
「だけど―――、」
『だけどじゃないの。台風なんだから仕方ないでしょ。これについては運営の人も了承してくれてるわ。だからあとは私達6人がステージで良いパフォーマンスを見せるだけ。拓哉が謝る必要なんてどこにもないわ』
「……そうか」
本当にできた元生徒会長だと思う。こちらの心配事も既に対処してくれている。これではもう絵里の言う事を認めてしまうしかないではないか。
『こっちの事は私達で全て何とかしとくから、拓哉達は修学旅行に集中してちょうだい。イベントの事考えてせっかくの修学旅行が楽しめなくちゃ意味ないからね』
「雨でどうしようもない状況だけどな」
『いいじゃない。休みの日に自分の部屋にいっぱなしの拓哉なら室内でできる遊びなんてマンガやゲーム以外にも見つけられるでしょ?』
「そりゃ無茶な話だぜ……。あったらとっくにやってるさ」
『ふふっ、とにかくそっちはそっちで楽しんでちょうだい。私達もやりきってみせるから』
それを聞いて、何となく、頼もしいと思えた。
元から絵里は頼もしかったが、今の発言にはもっと違う“何か”があると感じた。
『あなたがこのイベントの依頼を取ってきてくれたから、きっと私達はまた
まるで全部見透かされているような感覚がした。
それと共に何故か安心感さえ湧いてくる。
「ずるいな、お前」
『あなたには言われたくないわよ。……ありがとね、拓哉』
依頼を取ってきたことに対しての言葉なのか、それとももっと別な意味が含まれているのかは、絢瀬絵里という少女にしか分からない。
だけど、その言葉は素直に取っておくべきだと思った。
「……ああ、じゃあ、またな」
『ええ、良いお土産を待っているわ』
そっと電話を切る。
ふと視線を変えてみれば、トランプタワーを作るのに失敗した海未がことりに慰められていた。
「ねえ、たくちゃん」
隣を見ると穂乃果が柔らかい笑みを浮かべながらこちらを見ていた。携帯を返しながら目線で続きを促してみる。
「悩みは晴れた?」
あまりにも直球な質問だったが、それもこの少女なら納得してしまう。
どうやら穂乃果には自分の焦りを見抜かれていたらしい。相手が直球なら、当然こちらも直球で返すしかない。
「おう」
その言葉に穂乃果は満足そうな顔をしたと同時に真剣な表情へと切り替える。
「じゃあさっそくなんだけど、絵里ちゃんから聞いたよね。凛ちゃんの事なん―――、」
言葉は最後まで続かなかった。
拓哉の手が穂乃果の頭にポンと置かれたから。そこから岡崎拓哉は言う。不敵な笑みを隠さずに。
「悪いな穂乃果。その件については俺に任せてくれないか?」
焦りは見えない。いつだって変わらない表情が目の前にある。何とかしてくれるという、そんな絶対的安心感を覚えさせる雰囲気を纏っていた。
だから。
「……うんっ」
迷いなく高坂穂乃果はμ'sの手伝いを担う少年へ全てを任せられる。
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少女はある種の憧れを抱いていた。
いや、言ってしまえば元からずっと憧れていたのかもしれない。
自分も他の女の子のように可愛いスカートを穿いて外に出かけたり、オシャレしながらショッピングなどしたいと。あわよくば、好きな人ができればその人とデートなども、と。
そんな女の子なら誰もが
理由は言わずもがな、自分には似合わないと本気で思っているから。
謙遜でもなく、嫌味でもない、紛れもない本音。
自分に可愛いものは似合わない。似合うはずがない。女の子らしい服を着たって笑われる、バカにされるに決まっている。
過去にそんな経験があったからこそ確信をもって言える。言えてしまう。
そこから一切私服でスカートを穿いた事はなく、可愛い服など着たことがない。
だから、今回のイベントでセンター、ましてや1人だけとびきりの衣装を着るなんてもってのほかだった。
憧れはあっても。
心ではどれだけ着たいと思っても。
星空凛は、いつもと同じように自分の気持ちを押し殺す。
さて、いかがでしたでしょうか?
凛メイン回なのにほとんど主人公視点だって?
わざとに決まってるでしょう……?ふへへ。
凛推しの方は微妙と感じてしまっているかもと思いますが、そりゃ凛メイン回ですから。最後にはちゃんともってってもらいますよ!
ウィンガベー編は次回でラストです。
ちなみにウィンガベー編は『成長』をテーマにしています。この意味を分かる方は果たしてどれくらいいるやら。
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
新たに高評価(☆10)を入れてくださった
ことちりゃん推し変態紳士さん
1名の方からいただきました。変態ではなく変態紳士ならセーフ。紳士なら!
大変ありがとうございます!
これからもご感想高評価お待ちしております!!
感想へ~いかも~ん。