「さあというわけで~イェイ! 今日から始まりました秋葉ハロウィンフェスタ! テレビの前のみんな、はっちゃけてるかーい!?」
わあーと歓声が鳴り響くここはと言うと、秋葉ハロウィンフェスタの会場である。
何故ここまでやってきたのかは分かると思うが、当然出演するスクールアイドルとして穂乃果達がインタビューを受けるためだ。
にしてもあのレポーターテンションすげえな。もはやインパクトの塊じゃねえか。秋葉だけあってみんなのノリもいいし。そりゃハイにもなるか。ステージに立ってる穂乃果を見ると顔が引き攣っている。インパクトインパクト言いながらレポーターの方がインパクトあるもんな。
「ご覧のとおりイベントは大盛り上がり! 仮装を楽しんでる人もたくさーん! みんなもまだ間に合うよっ!」
もしあんな人が友達で終始あのテンションだったら絶対うざいだろうな……。いや、まあ仕事中だからってのもあるんだろうけど。くそ、みくにゃんみたいな声しやがって、思わずプロデュースしそうになったぞ。魚投げつけてやろうか。
「そしてなんとなんと! イベントの最終日には、スクールアイドルがライブをしてくれるんだ~!! やっほーはっちゃけてる!?」
「あ、ああ……」
「ライブにかけての意気込みをどーぞ!」
「せ、精一杯頑張ります……」
おお、あの穂乃果が気圧されている。レポーターのあまりのインパクトっぷりに目的を忘れてるなあいつ。早くうしろの凛とにこにフォローしてほしいところだが。
と、その前に。
何故μ's全員ではなく穂乃果、にこ、凛の3バカを選んだのかという理由を説明したいと思う。
まず全員という選択肢は即刻なしになった。何故なら全員いれば人数分でインパクトはあるかもしれないが、所詮はそこ止まりになってしまうからだ。人数が多ければ多いほどごちゃごちゃになってしまう。
そして何故真面目な海未や絵里みたいなメンバーが入らなかったのか。それも簡単、確かにインタビューを受けるなら真面目に受け答えできる絵里や海未が最適解だと思われるが、まず海未は恥ずかしがりな時点でここには立てない。かといって絵里を入れても真面目すぎて面白味がなく印象に残る可能性は薄い。
言ってしまえば、真面目な印象というものは良い意味で捉われることが多いが、スクールアイドルや人の前に立つ者としては悪くなってしまうのだ。あくまで目立たなければならない場で普通に受け答えをしてると、一般人のインタビューと何も変わらない。
だからこの人選。
あえて3バカというμ'sのムードメーカーを入れることで、インタビューにおける視聴者への印象を少しでも強く残すことができると思ったからだ。
予想外なのはレポーターのキャラが強すぎて穂乃果のキャラが潰されそうになっている事だが、まだ穂乃果の他にバカは2人残っている。
「よーし、そこの君にも聞いちゃうぞ!」
「ライブ頑張るにゃんっ!」
「わっ、かーわーいーいー!」
よし、よくやったぞ凛。やはりお前のキャラは強い! その容姿も相まって効果はでかいはずだ。それに最近の謎の女子力アップのおかげでネコの語尾の言い方も可愛くなってやがる。そばにいたら思わず頭を撫でてしまいそうになるぜ。
「あ、私も! にっこにっこ―――、」
「さあ、というわけで音ノ木坂学院スクールアイドルでしたー」
いいぞにこ。その場のノリで自分もやろうとした時に何故かスルーされるその感じ。バラエティーじゃ美味しい展開だ。お前の犠牲は無駄にはしない。多分。
「そしてそして~」
レポーターの人が視線を促した先にあったのはテレビ。真っ暗だったモニターに映ったのは、予想通りA-RISEだった。
「なーんと!! A-RISEもライブに参戦だー!!」
たったその一言で観客のボルテージは最高潮に達した。
まるでそれこそが1番のメインだと思っているかのように。ステージにいる穂乃果達3人がただポツンと立っている事だけしかできない雰囲気を意図的に作っているように。
それを知ってか知らずか、モニター越しの覇者は明るく口を開く。
『私達は常日頃、新しいものを取り入れて進化していきたいと考えています。このハロウィンイベントでも、自分達のイメージを良い意味で壊したいですね』
進化、という言葉に反応する。
今の穂乃果達が目指しているのは進化とはまた違うかもしれないが、インパクトを取り入れる。つまり綺羅の言っている
ただでさえ覇者だというのに、向こうも同じことを考えている以上、こちらもそれ以上のものを取り入れないと差を埋めることなどできないかもしれないのだ。
『ハッピーハロウィーン!』
綺羅が投げキッスをすると同時に会場では大量の紙吹雪が舞い散り、それはもうハロウィンらしく魔法使いが起こしたかのような現象にも思ってしまいそうになった。
「お、おおー! 何ということでしょう! さすがA-RISE、素晴らしいインパクトー!!」
先程最高潮だと思われた会場の歓声がそれ以上に大きくなった。
限界なんてない、そんなものを軽々と超えていくようなA-RISEの偉大さを、周りの観客が痛いほど分からせてくれた。
「このハロウィンイベントー! 目が離せないぞー!!」
レポーターのその一言で、インタビューは終了。
前哨戦の前哨戦は、μ'sの完全敗北という形で終わる事となった。
―――――――――――――――――
「もぉ~、A-RISEに完全に持ってかれたじゃない!」
「にこちゃんがにこにーやろうとするから~!」
「やれてないし!」
「そうだにゃ~」
「何で帰ってきて早々口喧嘩になるんだテメェらは」
穂乃果宅。
今日はインタビューがあったために練習はなし。明日にまたミーティングを含めたハロウィンイベントに向けての模索をしていく事になった。
そんなわけで穂乃果宅には俺と3バカの4人のみ。
「だってたくちゃん、にこちゃんのにこにーが原因なはずなんだよ!」
「だからやれてないっての! アンタだって本来の目的忘れて普通に答えてただけじゃない!」
「ええい小賢しい! そういうのはいいんだっつの! 穂乃果はともかく、凛もにこもちゃんとやってくれた。もし穂乃果がちゃんとやってたとしても、A-RISEのあのクオリティーじゃどっちみち敗北は変わらなかったはずだ」
「だにゃ~」
今思い返したってあそこでA-RISE以上のインパクトを残せたとは到底思えない。そう、何をどうしたって大量の紙吹雪を舞い散らすほどの予算はないし、映像技術があるわけでもない。
「大事なのはここからの切り替えだ。敗北は敗北としてどう捉えるかだ。今回は何も敗北して何かを失うわけじゃない。逆に考えればいい。敗北のあとに何を獲得するのか」
「獲得?」
「ああ、俺達は俺達なりに考えて挑んだ結果、敗北した。ならあの手段はダメだったっていう結果情報を獲得したという事になる。いわば消去法だよ。試せる手段を全部試して失敗するたびに他の成功する方法を考える」
「その結果さっきは負けたけどね」
それを言われると痛いが、今更嘆いていては仕方ない。次にやれる方法を考えていかなくては何も進まないのだから。
「あれだけの実績を残しながら現状に満足せず努力をしている。そんなA-RISEよりもインパクトを残せる方法を考えないと、でしょ?」
「ああ、ここでさっきの事を後悔していてももう遅い。そのあいだにもA-RISEは次の段階へと進めているかもしれないからな。とにかく今日はもう解散しよう。慣れないテレビのインタビューで精神的にも疲れたろ? 明日のミーティングでみんなで考えよう」
「そのとおりにゃ~」
「……おい、こんな時に一体このネコもどきは何をしていやがるんだ」
「なーに呑気にマンガ読んでるのよ!!」
俺だってのんびりマンガ読みたい欲を必死に我慢して考えてるというのにこいつというヤツは……。乙女っぽくなったりバカになったりと忙しいなちくしょう。
とりあえず今日はもう解散という事で落ち着いたから帰ろうとした時、ちょうど穂乃果の部屋がノックされた。
「お姉ちゃん入るよー。あ、たく兄もう帰るの? ちょうど良いや、唯も帰るらしいから一緒に帰りなよ」
「あれ、唯も来てたのか?」
「一緒に受験勉強してたからね」
なるほど、道理で静かだったわけだ。しかし唯が近くにいるにも関わらず気付かなかったのはお兄ちゃんとしてはまだまだだな、妹センサーを常に張り巡らせておかないと。
「んじゃ俺は帰るわ。愛しのマイシスターを待たせるわけにはいかない」
「相変わらずのシスコンっぷりね。うちのこころとここあにも色目線送らないように警戒しとかなきゃ」
「俺にシスコンなんて褒め言葉だぜにこ。それとその発言はたまにお前の家に行ってる事がバレるから言うなって言ってるだろ」
「たくちゃん何て……?」
「さらば友よ! 俺は唯のためならば例え悪魔からでも逃げ切ってみせるッ!!」
誰かの言葉を待つ間もなく俺は部屋を飛び出す。
部屋の方から穂乃果のギャーギャーした声が聞こえるが、きっとにこか雪穂あたりが止めてくれてるんだろうと思いながら階段を下りていく。
「あ、お兄ちゃん」
「ああやはりここにいてくれたか天シスターよ! さあ帰ろうすぐ帰ろうマッハで帰ろう!!」
「天シスターって何……ってひゃあ!?」
「お邪魔しました桐穂さん! また!」
「またね~拓哉君唯ちゃん」
唯の手を引っ張って急いで店を出る。
元々穂乃果の家から俺の家まで距離がないから外に出ればもう安心だ。というわけで唯のために徒歩。
「何かいきなりすぎてあれだけど、何であんなに急いでたの?」
「穂乃果の逆鱗に触れたような気がした」
「……あー」
聞くとすぐに納得したような声で納得する唯。ちょっと? 何でそこで普通に納得できるの?
「まあお兄ちゃんの事だから慣れてるけどね~。いい加減お兄ちゃんも気付くべきなんだろうけど」
「慣れるな。毎回命の危険に晒される俺としては1番慣れちゃいけないやつ」
「ははっ、だね」
ふむ、やっぱ唯の笑顔はいいものだ。心が浄化される。何だかんだ最後には妹に落ち着くんだよなあ。
「あ、そうだ。お兄ちゃん達は穂乃果ちゃんの部屋で何してたの? 部活関係?」
「ん? ああ、そうだよ。と言っても今日はミーティングとインタビューくらいだったけど」
「そういえば明日インタビューって昨日言ってたね。で、どうだったの? インタビュー」
「結果はA-RISEに惨敗。演出から発言からして何もかもが向こうの上だったよ。敵ながらあっぱれだ」
実際問題、文句なしの敗北をまさかインタビューで味わうとは思わなかった。何が違うかと問われれば、まず規模が違う。俺達のやれる事と、向こうのやれる事、つまり手札の多さが桁違いなのだ。
こっちは必死に考えた手札を出したにも関わらず、向こうはありとあらゆる手札を持ちながらあのイベントに対しての最適解を切り出した。その結果の惨敗。
「でも、
分かりきったような表情で唯が笑う。
「ああ、ここからだ。今は負けてたっていい。あいつらの成長幅は俺が1番よく知ってるからな。成長さえすればレベルが一気に4つも5つも増えるのがμ'sだ。差は開かせない。逆に詰めていく」
「ふふっ、やっぱりお兄ちゃんに心配は必要ないみたいだね」
「心配くらいはしてほしいけどな……」
「だーいじょうぶ。私はお兄ちゃんに何があってもいいように、いつもお兄ちゃんセンサー張ってるからっ」
なん……だと……!?
この妹、俺の妹センサーと同等の事をしている……!! やはり兄妹は似ているということか。可愛いやつめ!
「俺だって妹センサー張り巡らせてるから。世界一のセンサーだから」
「はいはい」
うっそだろオイ。そこでドライとかアメとムチすぎでは?
「何はともあれ頑張ってね。ハロウィンイベントって結構大掛かりなんだし、準備とかあるならお兄ちゃんも結構大変そうだし」
「そこは大丈夫だ。むしろここでこそ手伝いである俺が力仕事しねえとどうするってんだ」
「楽しみにしてるからねっ。その時は受験勉強の息抜きに雪穂と亜里沙と見に行くから」
「おう、来い来い。μ'sが人々の心に残るようなライブをしてやるからな」
そうだ。今は負けていたって、最終的に客の心に強く残るようなライブパフォーマンスをすればいいんだから。
今のあいつらなら、それだけの実力は絶対にある。
空を見る。
日も短くなり始めた最近はもうこの時間帯になるとオレンジが空一面に広がる。
ハロウィンイベント本番まで、あと2日。
さて、いかがでしたでしょうか?
色んなμ'sが見られるのは次回になります。
何気に久々登場の唯、やはり癒し。
さあ、敗北から何を得て、何を生み出すのか。
次回は波乱間違いなし!!
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
では、新たに高評価(☆10)を入れてくださった
積怨正寶さん
邪竜さん
煉獄騎士さん
計3名の方からいただきました。本当にありがとうございます!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!
今週から少し鳥取島根の方に行くので来週の更新は遅れるかもです。
皆様もGWを楽しんでください。変わらず働く人はどうか少しでもこの作品が癒しになる事を願っています。
モチベ大事に。