実はこのお盆期間、四国の方へ行っていました。川がとても冷たかったです。
そして本編も冷たい冬へ突入。
いよいよ始まる。
『最終予選編』
ある冬の日の朝。
暖房を点けていても冬の冷気というものは部屋の中へと侵入してくる。
ベッドの布団から体を出したくない気持ちしかないのだが、それを今日の予定が許してはくれず、仕方なく寒さで震える体に鞭を打ち上体を起こす。
ふと視界にゆらゆらと落ちていく影があった。
それを見るために窓へ視線を移すと、珍しいと言えば珍しい、だがそんなに珍しいかと言われれば意外と毎年降っているモノが曇り空と共に視界に現れる。
雪。
いよいよ冬の風物詩というか定番ともいえる雪が降っていれば、嫌でも気分的に余計寒く感じる。
基本寒がりな少年は、少しでも体感する寒さを短縮するためにさっさと着替えを済まし、自分の部屋よりもっと暖かいであろう1階のリビングへ目指す。
1階のリビングまでに降りる階段でさえもはや白い息が出る始末の中、少年にしては珍しく目は冴えている方だろう。
「あ、おはようお兄ちゃん! もう朝ご飯できるからね」
「おはよ。コーヒー置いてるから飲んで温まりなさい」
「おはよ。サンキュー」
制服を着込みながらテーブルに座りコーヒーを一口啜る。
苦味が余計に意識を覚醒させ、冷え始めている体の内部に熱いコーヒーが染みていくのが分かる。リビングも暖かいからここは天国かと思ってしまうほどだ。
「今日は穂乃果ちゃん達とは別行動なんだよね?」
「ああ。学校の説明会があるから生徒会は学校で仕事。それが終わってから会場に来るらしい。いつもの雑事はこき使ってくるのに、こういう時は頼ってこないからなーあいつら。と、いただきます」
「あーあ、お兄ちゃんが生徒会のお手伝いするなら一緒に学校行けるのになー」
妹と母に作ってくれた朝食が前に出され、食パンを頬張る。
土曜日の今日、念願叶って廃校を免れた音ノ木坂学院は、来年の生徒のために説明会を行うそうだ。それにはもちろん、生徒会役員である穂乃果、海未、ことりの3名は仕事がある。
いつもなら無茶苦茶な理由を言われて拓哉も強制で誘われるのだが、今日はある意味大事な日なので生徒会だけでやると言われて別行動となった。
拓哉としては元々手伝うつもりもなかったが、いつもだから手伝わされるのかーと思っていた矢先の事だから言われた最初は呆気に取られたのも無理はない。
ちなみに唯は当然音ノ木坂学院を受験する予定だから学校説明会にも行くとのこと。
『今日の東京は数年振りに雪が積もり、また風も強いので外出する人はくれぐれも足元に気を付けて―――、』
ニュースのアナウンスが聞こえた。
どうやら今日は雪や風が強いらしい。外ではすでに雪が積もり、もしかしたら交通状況にも影響が出るかもしれない。
(今日に限って……いや、よそう。こういう時こそ前向きに考えるんだ。雪が降ってるなら、あいつらの歌が最高に発揮されるはず)
早めに朝食を全部平らげる。
学ランの上にコートを羽織り、マフラーを首にかけて防寒対策をしっかりとって玄関へと向かう。
「じゃあお兄ちゃん、私達も説明会が終わったらそのまま会場に着くようにするから」
「その頃には雪がどうなってるか分からないから、終わったらできるだけ早めに来た方がいいぞ」
「大丈夫っ。そこはお父さんがどうにかしてくれるよきっと!」
「親父なら本当にどうにかしそうだから否定できないんだよな……」
冬哉ならどれだけ吹雪いて雪が積もっていても間に合わせそうなのが容易に想像できてしまう。謎の説得力を発揮する父親は現在休日ということもありまだ寝ているが、そろそろ母に蹴り起こされるだろう。
「行ってらっしゃい、お兄ちゃん」
「おう、行ってきます」
玄関のドアを開ければ視界には積もり気味の雪、まだそんなに強いわけではないが風もある。何より雪のせいもあってか空模様も含め全体的に白い。
いよいよ冬を全身でもって体感する。
それと同時に、今日という日がどれほど重要な日なのかも。
ラブライブ最終予選。
その相手には、あのA-RISEもいる。言ってしまえば、この最終予選が1番の鬼門になるだろう。
だから気を引き締める。
自分が歌うこともなければ踊るわけでもない。それでも、μ'sの手伝いとして思うことはある。
「さてと、行くか」
――――――――――――――――――
ほぼ同時刻。
ある道にて。
「エリチったら、さっきまで緊張してたらしいんよ~」
「へえ、絵里でもやっぱ緊張とかするのね」
「もう、希っ。それはもう大丈夫だからって言ったでしょ?」
また、違う道にて。
「真姫ちゃんのお母さんのカツサンド早く食べたいにゃー」
「ちゃんとみんなが揃ってからじゃないとダメよ」
「真姫ちゃんのお父さんも来るんだっけ?」
「……まあね。病院の仕事早く終わらせるって言ってたわ」
「ホントつくづく娘好きなパパさんだにゃ」
そして音ノ木坂学院では。
「わあー、こんな天気なのにたくさん来てくれてる!」
「うん!」
穂乃果、海未、ことりの3人が生徒会室から外を眺めていた。
窓を開けて見ていたせいか、冷たい風が容赦なく中へやってくる。
「うわー! 寒いー! 雪は嬉しいけど寒いのは嫌だよー!」
「雪が降ったら寒いのは当たり前です。それより、そろそろ講堂へ向かいましょ」
「うん!」
「そうだね」
ラブライブの最終予選ももちろん大事だが、苦労の末に廃校を免れて得た入学希望者の印象をより良くするためにも、学校説明会の力も入れなければならない。やる時はやる穂乃果だからこそ、今回は拓哉の力も借りなかったのだから成功させたい。
「挨拶ビシッと決めて、ライブに弾みをつけるよ!」
―――――――――――――――――――
「おーす」
「あ、拓哉君おはようさん」
「おはよう拓哉」
現地の集合場所に来てみれば、そこには既に6人全員が揃っていた。
「俺が最後か」
「そうだにゃ! こんな寒い中女の子を待たせるなんてひどいよー!」
「時間内には来てるんだから別にいいだろ? そんなに寒いんなら足晒すんじゃなくて花陽とかみたいにもっとニーソなり黒タイツとか穿いて防寒しろ。ちなみに拓哉さん的にはどっちも眼福だからあしからず」
「引くわ」
「ちょっと希さん? いつもの似非関西弁はどうした。めちゃくちゃナチュラルな声で言ったなそれ。普通に傷付くぞ。いや確かに今のは俺が悪かったけども」
合流するやいなやボケとツッコミを始めるいつもの拓哉と希。
さっきまで気を引き締めるとか思っておいて何だが、こういう時こそいつもみたいにするのも意外と大事だったりする。
「ほら、茶番はそこまでにしなさい。みんな揃ったのなら向かわないとでしょ?」
「うーい」
絵里が向かうと言ったのはもちろん最終予選が行われる会場である。その隣にあるビルで出場者や関係者は待機など、また始まるまでに簡単な打ち合わせやリハなどを話し合うことになっている。
「ところで穂乃果ちゃん達は今頃どうしてるのかな?」
「この時間帯ならもう来校してきた人達を案内してる頃じゃないか?」
花陽の疑問に拓哉が答える。
順調に事が進んでいればそれで合っているはずだが。
「だけど今日は結構雪も降ってるし、昼は晴れるって言ってたけどこの雲行きじゃどうもね~」
にこが言った通り、空を見れば家を出た時よりも雪の降り具合が強くなってる気がする。
あくまで天気予報は予報である。
「そういや拓哉、あなた傘さしてないじゃない。軽く頭に雪積もってるわよ」
「ん? まあニット帽被ってるから大丈夫だろ。少し掃えば落ちるし」
そう言ってササッと頭上の雪を払う。傘を持ってきてないのは単純に持ってくるのが面倒くさかったからだ。
「それより行こうぜ。いつまでも寒い外にいたくない」
「ほんとそういうとこは素直ね……。それじゃ行きま……あら、穂乃果から電話?」
絵里が立ち止まって電話に出る。
拓哉は咄嗟に自分の携帯を取り出し見ると、穂乃果から着信が入っていた。どうやら気付かなかったらしい。
(順調ならもう案内も終わって準備しているはずだから、何かあったとしか思えないよなあ)
絵里が穂乃果と話しているが、その表情はあまりよろしくない。
多分この雪が影響して何かトラブルでも起きているのだろう。
「……分かったわ。私から事情を話して、とりあえず6人で進めておくわね」
「穂乃果は何だって?」
「ええ、それが……」
どうやら、雪が予想以上に降っているせいでまだ学校に到着できていない人達がいるらしい。
そのせいで説明会が1時間遅れての開始になるそうだ。
「仕方ない事とはいえ、幸先は不安だな」
「だけど私達は今できる事をするしかない、でしょ?」
「……だな」
この雪だ。交通状況に支障が出てしまうのも仕方ないし、起こってしまったことを今どう思おうが何も変わらない。
なら穂乃果達と離れている自分達にできるのは、いつも通りにしている事ぐらいである。
「うわ~!!」
控え室に向かおうとしたところで、突如にこが叫び声を上げた。
周りを考えないほどのボリュームで叫ぶにこへ近づくのを躊躇うが、仕方なく近づく。
「にこ?」
「いきなり大声出してんじゃねえよ。もう最終予選見に待機してる人もいるんだぞ。出場者のお前なんて一瞬でバレ―――、」
声が、止まった。
「凄い……ここが、最終予選のステージ……!」
今日、μ'sが踊るであろうステージが目の前にある。
だが、それはあまりにも、過去にやってきたステージとは異なっていた。
自分達で用意してきたステージとは比べ物にならないほどのスケール、UTX学院でA-RISEと共にやった屋上でのステージとも違う。どこまでも予算が使われ、もはやスクールアイドルがやるには勿体ないとさえ思ってしまうほどの豪華なステージがあった。
「ごめんなさい……今、会場の前に着いたとこなんだけど……」
隣で絵里が穂乃果に電話を入れて色々説明している。
「大きいにゃ……」
「あ、当たり前でしょ。ラブライブの最終予選なんだから……何ビビッてんのよ」
そう言ったにこも足が震えている。
ステージを見て実感したのだろう。最終予選がどんなものであるかを。
「凄い人の数になりそうね」
「これは9人揃ってじゃないと……」
「6人でどうにかなるスケールじゃないな」
9人揃ってこそのパフォーマンスでありμ'sなのだが、むしろそうじゃないとこのステージを活かせるかは甚だ疑問である。
「とにかく、終わり次第こっちに急いで」
絵里が電話を切る。穂乃果も了承したようだ。
「ったく、どこまでも想像以上をいってくれるな。ラブライブってのは……」
まさしく圧巻。
おそらくこんなステージで踊るのはA-RISEくらいでしか慣れていなさそうだが、第一回ラブライブでも最終予選はこういうステージだったのだろうか。
「控え室に行きましょう。この後のことも、ちゃんと話し合わないといけないしね」
絵里の言葉にメンバーも着いて行く。
こういう時にまとめ役がいるのは助かる、と拓哉は思った。
大勢ほどではないが、小さい頃にバレエで鍛えられた舞台度胸は確実にここで役立っている。
6人の背中を見るが、先程までの威勢はあまり感じられなかった。
「……、」
最終予選へ勝ち進んできたμ'sでさえ、圧巻されるほどの舞台。いや、最終予選へ勝ち進んできたからこその重圧があると言ったほうが正しいか。
ともかく、穂乃果達が遅れるかもしれない状況下でこの追い打ち。どう考えても問題ない、とは言えない状況だ。
「つくづくそう簡単には上手くいかせてくれねえな。この現実は」
全体的に視界が白い中。
そんなボヤキが少年から吐き出された。
さて、いかがでしたでしょうか?
いよいよスノハレ回ですよ!
アニメ2期の数ある神回の1つです。何回見たことか……。
もちろん問題なく事が進むはずもなく、トラブル続出ですぜい。
いやー、スノハレ回もこの作品を書き始めてからずっと書きたかったストーリーの1つなのでとても書いていて楽しいです(笑)
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!
【告知】
自分と同じくハーメルンで『ラブライブ!』の小説を執筆されている薮椿さんの作品『ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~』との2回目のコラボが決定しました!
日程は9月8日(金)の予定です。
本編はちゃんと火曜に更新するのでご心配なく!!
お楽しみに!!
最近高評価もなくてヤバイと思い始めている。
ラブライブの作品をもっと盛り上げねば。
感想も増えてほしい(切実)