ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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119.積もる思いは何よりも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あとは遅れて来られる方への案内ですね」

 

「うん!」

 

 

 

 今来ている人達への案内は終わった。

 大方は来ているが、まだ来ていない人達がいるのも事実。ましてやいつ来るかも不明。不安要素しかないが、だからといって何もしないわけにはいかない。

 

 

(たくちゃんはここにはいない。でも、そうやっていつもたくちゃんに頼っているだけじゃ意味がないんだ。やれる事をしなくちゃ!)

 

 いつも頼れる少年は今絵里達のところにいる。つまり、頼ろうにも頼れない。いや、ハナから頼るつもりもない。

 

 

「遅れて来た人達が通りやすいようにヒデコ達を手伝おう!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 外ではヒデコ達が雪かきをしてくれている。生徒会でもないのに、今も自主的にボランティアをしてくれているのだ。

 決めるとすぐに外へ出る。

 

 

「おーい!」

 

「穂乃果?」

 

「手伝うよ!」

 

「どこからやればいい?」

 

「なーに言ってんの!」

 

「……え?」

 

 せっかく手伝うと言ったそばから何故か叱咤を受けてしまった。

 

 

「そうよ。あなた達今日何の日だと思ってるの?」

 

「最終予選よ、最終予選! 忘れたの!?」

 

「いや、それは……」

 

 フミコにミカも参戦し、海未でさえ正論を言われてたじろぐ。

 

 

「だったら尚更、こんなところで体力使っちゃダメでしょ。さっ、行った行った!」

 

「でも私達、生徒会だし―――、」

 

「だからダメなの!」

 

「ええ!?」

 

「しかもそんな格好で雪かきできるわけないでしょ。風邪でもひきたいわけ?」

 

 ヒデコ達が学校指定用のウインドブレーカーを着ているの対し、穂乃果達はいつもと変わらない制服を着ているだけ。正直今こうして喋っているあいだも雪の勢いは収まることなく、その寒さの暴力を存分に奮っている。

 

 

「穂乃果達は学校のためにラブライブに出て、生徒会もやって、音ノ木坂のために働いてきたんでしょ?」

 

 雪かきの作業へ戻りながら話すその背中は語る。

 

 

「だから今日は私達が助ける番っ」

 

 その仲間も。

 

 

「私達も協力したいから!」

 

 そして。

 

 

「私達だけじゃない」

 

 視線は真っ直ぐ、まだいる仲間へと向けられる。

 

 

「みんなもだよ」

 

 おそらく10人はいる。その全員が、遅れて来るであろう人達のために雪かきをしている。

 誰1人サボることもなく、むしろ友人と楽しそうに話しながらでも作業を続けていた。

 

 

「ここは私達に任せて」

 

「穂乃果達は説明会の挨拶と予選のことだけ考えてて、ねっ」

 

「みんな……」

 

「誰かに頼っちゃいけないなんてルールはない。頼ってほしい時はね、頼っていいんだよ、私達に。ここに拓哉君はいないから誰にも頼らない。そんなこと、拓哉君本人が聞いたら何て言ってくるか、分かるよね」

 

「……、」

 

 ヒデコの言いたいことはすぐに理解できた。

 自分だけの問題でない以上、誰も頼りにしないのはただの強がりにすぎない。頼れるなら頼る。それで一番最高な結末を迎えられるなら、その方がいい。あの少年なら必ずこう言うだろう。

 

 認識を切り替える。

 適材適所があるように、自分達には自分達が今できる事をする。やり慣れてもいない事をするより、ホーム感さえ感じさせるステージのために。

 

 

「……お願いね、ヒデコ、フミコ、ミカ!」

 

 学校を救うべく、それを結果として残した少女に言われて、それを支えてきた3人の少女達もまた、最初から返す言葉は決まっていた。

 

 

 

 

 

「「「任せなさい」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わあー……!」

 

「凄い……今からここで歌うんだなんて……」

 

「綺麗だにゃ……」

 

 控え室のベランダからステージを見る。

 さっきまで何も点いていなかったLEDの光が次々と点灯されていき、青と白の光がどんどんと光量の範囲を広げていく。

 

 

「本当にここがいっぱいになるの? この天気だし」

 

「きっと大丈夫よ」

 

「天気は悪いけど、それ以上にこの最終予選の期待値が上回ってるはずだし、その点は心配いらないと思うぞ」

 

 天気はいつまでたっても晴れない。むしろ先ほどよりも空は灰色が強くなっていて悪化しているようにも見える。

 寒いのにも関わらず心配そうに空を眺める凛達を見ていると、背後から声をかけられた。

 

 

「ビッシリ埋まるのは間違いないわ」

 

「……綺羅」

 

「ふふっ、ハロウィンイベント以来ね。拓哉君」

 

 A-RISEの3人が来たことによって、メンバー全員の意識がステージと空から強制的に切り替えさせられる。

 

 

「完全にフルハウス。最終予選にふさわしいステージになりそうね」

 

「完全にフルハウスって何だ。藪からスティック系ならもう古いぞ優木」

 

「もうっ、そういうのは気にしなくていいの!」

 

「自分でこういうのも何だけど、A-RISEの私達に対して強気でそう言ってくるのはあなただけよ拓哉君……」

 

「悪いな。ボケられるとついツッコミ入れちまう」

 

「ボケたつもりはないのに……」

 

 1人シュンとなっているあんじゅをよそに、基本A-RISEに強い憧れを持っている花陽は思う。何故この少年は平然としていられるんだろうかと。理由は簡単、ただの怖いもの知らずであり、いつもそばにいる幼馴染が強烈すぎて大抵の事じゃ驚きはしなくなっているからだ。

 

 

「あ、A-RISE……」

 

「ダメよ。もう対等、ライバルなんだから」

 

 だから畏怖する事も、恐れる事もないと、遠回しに真姫は言って聞かせる。

 

 

「どうやら全員揃ってないようだが」

 

「え、ええ、穂乃果達は学校の用事があって遅れています。本番までには何とか」

 

「……そう。じゃあ穂乃果さん達にも伝えて。今日のライブでこの先の運命は決まる。互いにベストを尽くしましょ」

 

 雰囲気が変わる。

 学生から、王者だった者へと。

 

 

「でも、私達は負けない」

 

「ッ……!」

 

 言葉の重圧はこれほどまで圧し掛かってくるのか、と絵里は思った。

 ラブライブの元王者が言ったその一言。たった一言だけなのに、それだけで伝わってくる。

 

 元王者としての威厳が。

 覚悟が。

 まるで力の籠った何かのように。

 

 すると、突如3人の足が止まった。

 

 

「あら、今回は珍しく何も言ってこないのね、拓哉君」

 

 μ'sメンバーではなく、その手伝いに向けられた言葉。拓哉とはまだ数回しか会ったことのないツバサだが、それでも分かることがある。こういう時、必ず少年は何かを言ってくる。

 なのに、何も言ってこないのはおかしい。

 

 そう思って自分から少年へ問いかける。

 すれ違ったことにより自然と背中を向けていた1人の少年は、かけられた言葉に答えるべく元王者へと向き合う。

 

 そして、あっけからかんとこう言った。

 

 

 

 

「ああ。本番はもうすぐだし、結果を出すのはステージに立つこいつらだ。だからもう俺がアンタらに何か言う必要もない」

 

「……、」

 

 当たり前のことを言うように、少年は言い放った。

 物怖じもせず、元王者に向かって。

 

 だから、綺羅ツバサは笑う。

 

 

「……ぷっ、はははっ! そうね、ええそうよ。……やっぱり私達にそんな事を言ってくるのはあなただけ。だから興味をもった」

 

 元王者の貫禄はなく、ただの少女は無邪気に笑いながら背を向け歩を進んでいく。

 

 

「私の目に狂いはなかった。面白いわね、μ'sも、拓哉君も」

 

「面白くしてるつもりはねえよ」

 

「さっきのあんじゅのお返しよ。じゃあ、またね」

 

 A-RISEがいなくなって、場は静寂に包まれる。

 一気に気を引き締められた感じがした。

 

 

 

 

「ここにいても冷える。控え室に戻ろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから何分たっただろうか。

 

 

 

「雪、止まないね」

 

「晴れるって言ってたのに」

 

 未だに雪の勢いは止まるどころか、明らかに悪化している。

 まだ激しくないとはいえ雪は荒れ、吹雪にも近い現象にまでなっていた。

 

 

(穂乃果達の説明会はもう終わってるはず。だけど、この吹雪で交通状況が安定してるとは思えない)

 

 黙って外を見つめる拓哉は絵里へと視線を移す。

 時間を見計らって絵里が穂乃果に電話をかけたのだ。

 

 

「で、穂乃果達は?」

 

 にこも同じことを思っていたようで、素直に口に出した瞬間だった。

 

 

「ええ!? 動けない!?」

 

「……、」

 

「そんな……間に合うの……?」

 

 会話を聞いている限り、事態は恐らく最悪の展開になっている。

 やはりこの吹雪じゃ交通機関がまともに動けるはずもないのは薄々分かってはいた。

 

 

「来れないの?」

 

 真姫が珍しく困ったような声を出す。

 絵里も電話が終わったようで携帯を仕舞うが、表情は明るくない。

 

 

「電車も動いていなくて、穂乃果のお父さまに車を出してもらおうとしたけど、それもダメだったって……」

 

「そんな……」

 

「どうすれば……」

 

 事態も状況も最悪。

 これじゃ最終予選に穂乃果達は間に合わず、6人で出たとしても、満足のいく結果になるとは思えない。最終予選に限ってこんな残念な結末になるなんて、岡崎拓哉は認めない。

 

 

「分かった」

 

「……え?」

 

「拓哉、いきなりどうしたの。マフラーなんて巻いて……」

 

 拓哉が立ち上がりマフラーを巻いている姿に、疑問をぶつける真姫と絵里。

 だが、拓哉が何をしようとしているかをいち早く察知したのは、希だった。

 

 

「……まさか、拓哉君」

 

「ああ」

 

 時計を確認する。

 まだ決して間に合わない時間じゃない。

 

 

「俺が穂乃果達を迎えにいく」

 

「なっ」

 

「む、無茶よ! 外はこの吹雪よ!? こっちはまだそんなに荒れていなくても、穂乃果達のいるところはもっと酷くなってるはず……。そんな中を、走っていくなんて……!」

 

「だからだよ」

 

 絵里の言葉を聞いても、拓哉は準備を止めない。

 むしろ少しでも早く迎えに行くために準備運動までしている。

 

 

「穂乃果達は動けない。お前達も動けない。だけど、ここにはいつでも動ける便利な人材が残ってんだろ。幸いここから学校までの近道も知ってるし、体力にも自信があるんでね」

 

「でも!」

 

「大丈夫だ。お前らがここまで積んできた道のりは絶対無駄になんかしない」

 

 苦労なら散々してきた。

 最終予選に来るまで色んなことがあった。

 

 間違いなく彼女達の頑張りがあってこそだった。

 なら、それをこんなところで終わりにしていいはずがない。

 

 

「多少雪が積もってもそれが何だ。走んのにちょっと支障が出るだけだろうが。そんなくだらねえもんよりな、こちとらここまで色んなもん積んできたんだよ。こんな吹雪で終われない、よっぽど大事なものなんだ。それを、ここで無駄にしてたまるか」

 

 ここまで言う少年は、もう誰にも止められない。

 言っても無駄なんてことは、ここにいる少女達なら全員が理解している。

 

 

 こういう時の岡崎拓哉は、必ず何とかしてくれると。

 

 

 

「今まで色んな思いも込めて積んできたモノを、吹雪のせいで全員集まれないから終わりだなんて、そんなクソ喰らえな悲劇にはさせやしねえぞ」

 

 

 

 もう誰も何も反論はしない。

 できない。

 

 

 少女達の中にあるモノは、何も根拠のない、確証もない、ちっぽけな信頼のみ。

 だけど、それで充分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っててくれ。穂乃果達は、必ず俺が連れてくる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





さて、いかがでしたでしょうか?


完全にフルハウス、ツッコミたくてしょうがなかったです。
スノハレ編よりも最終予選編の方がしっくりくるので、変更させていただきました。
そんなこんなで最終予選編もあと2話です。
適材適所はしっかりと。みんなで何かをやり遂げるからこそ、頼っちゃいけないなんて独りよがりな思考はダメ。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
久しぶりに高評価貰いましたよ!!


koudorayakiさん

醍醐りあんさん


計2名の方から高評価をいただきました。良くも悪くも評価はモチベに関わるもの。大変ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!



【告知】

自分と同じくハーメルンで『ラブライブ!』の小説を執筆されている薮椿さんの作品『ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~』との2回目のコラボが決定しました!
日程は9月8日(金)の予定です。
本編はちゃんと火曜に更新するのでご心配なく!!

お楽しみに!!




まあ実際吹雪の時に外へ出るのは大変危険なので、良い子の人は真似しないように。
真似していいのはバカでお人好しなヒーローだけだよ!!あと社会人!!

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