まあ先週コラボ回含めて2回投稿したから大目にということで。
今回からいよいよ物語の終盤に入っていきますね。
キャッチフレーズ編とでも名付けましょうか。
「やっぱ最近の歌合戦はマンネリ化してきてんな~。やはり笑ってはならぬ12時間が年末に相応しくなってきてるのかね」
「ぅ~ん……むにゃむにゃ……」
独り言のように呟いた結果、返ってきたのは女の子の発する寝息のみだった。
ここは穂乃果の家である。何故年末になってもうあと少しで年を越すのに、隣で俺の肩に頭を預けながら呑気に寝ているこのお気楽バカの家にいるのかというとだ。
理由は単純。
桐穂さんが張り切って年越しそばを作りすぎたから助けに来てと連絡してきたからだ。
かといって家族全員でお邪魔するわけにもいかず、母さんと親父は家に残ってのんびり年を越すからアンタらだけお世話になってきなさいという、大変ありがたいちょっとした追い出しをいただいたのである。
そんなわけで年越しそばを頂いて、こうして今はこたつでぬくぬくしながら海未達が来るまでのんびりしている。ちなみに海未達とはあとで初詣に行くという約束をしたのだ。時間的にもうすぐ来ると思う。
……それにしても、平和だな~と思う。
やるべき事はもうほとんどしてきた。最終予選が終わってからはもう特にやることもなく、ただ冬休みを待って宿題を少しやりつつそれなりに満喫している。
いや、違う。実はクリスマスの時、いきなり幼馴染組が各自弁当を作ってきて家に押しかけてきたのである。そういや過去に弁当作ってくるとか言ってたような気もするが、こちらとしてはよく覚えていたものだなと思った。
全然忘れてたし、何なら3人分が作ってきた弁当を食わされるこっちの身にもなってほしい。あの時はマジで腹が爆発すると思った。目の前で雪穂と仲良さそうに眠っている唯にすら全部食えと言われたほどだ。いくら男でも限界というものがある。
クリスマスに特にリア充イベントもなく、ただ幼馴染達の弁当によってちょっとした臨死体験するとかこんなの世界中で俺1人だけの自信があるぞ。今までの人生の中で1番命の危険を感じたクリスマスだった。
「んにゃんにゃ……」
「……、」
横を向けば目と鼻の先に元凶の1人がグースカ寝ている。女の子特有の甘い匂いみたいなのが鼻をくすぐってくるが、それよりも穂乃果の表情を見てしまう。……バカみたいな顔で寝てんなオイ。ヨダレ垂れてんぞ。
「おーい、そろそろ起きろよ穂乃果ー」
「ん~……」
声をかけるともぞもぞしながら俺の方へ余計すり寄ってくる。こ、こいつ、普段は犬みたいなのに今は猫みたいに顔を擦り付けてくるだと……。
いかん、これ以上は何かいけないような気がする。何というか、無駄に可愛すぎて俺まで擦り寄ってしまいたくなる。それだけはダメだ。
「穂乃果、穂乃果起きろ。番組終わったぞ」
「ん……ぅ~……えっ!? 見逃した! どっち勝った!? 赤、白!?」
「白だよ。残念だったな。これで賭けは俺の勝ち。飲み物奢るのは穂乃果だ」
「うあー! そんなぁー!」
バカめ、こういうのは出演者をちゃんと調べて誰が出るのかを把握さえすればおおよその見当はつくんだよ。神社で屋台があったら甘酒でも奢らせるか。
と、そんなことを考えていたらタイミングも良きかな、桐穂さんがやってきた。
「穂乃果、拓哉君、海未ちゃん達来たわよ」
「了解でーす」
軽い返事をして穂乃果と共に玄関へ向かう。
こたつから出たせいか凄く寒く感じる。玄関行くだけで苦行だぞこれ……。
「あけましておめでとー!」
「まだ明けてないよ……」
「はあ……拓哉君、どういうことですか。あなたがいながら穂乃果が今年最後まで余すことなくボケるのですが」
「俺がいたら普段ボケないみたいに言うな。ついさっきまで寝てたから寝ぼけてんだろ。いくら穂乃果でも普段ならそれくらい分かるはずだし」
俺も開口一番既に年越し気分なボケかますとは思ってなかったんだ。
「2人共バカにしすぎだよー! じゃああれでしょ、良いお年を!」
「それは別れの挨拶です」
「それより穂乃果ちゃん、その格好で初詣に行くの?」
俺はいつでも外に出られる私服だからいいが、穂乃果は完全に部屋着+羽織を着ている。家の中ならまだしも、これで外に出るというのは女の子としてどうかと思う。
「あーごめんごめん! ちょっと待っててー! すぐ着替えてくるからー!! うわっととっ!」
テレビ見てる時にあれだけ先に着替えておけと言ったのに、歌合戦見てる途中だからーとか言ってたせいだぞ。というか寒いからこたつに戻りたいのですがダメですかねダメですよね。
「やっぱり、今年も最後まで穂乃果は穂乃果でしたね……」
「きっと来年も穂乃果ちゃんは穂乃果ちゃんだと思うよ」
何だろう。このだからお前はいつまでたっても新八なんだよみたいな銀魂的なコメント。2人共穂乃果のことさりげなく超ディスってるように聞こえるんですが。まあむしろ穂乃果はあれでこそ穂乃果みたいなとこはあるけど。
「あ、年が明けちゃった」
「……このタイミングで明けるとは、やっぱ穂乃果は穂乃果だな……」
自業自得というか何というか、いつもはこのタイミングの悪さなんて常に発揮してるけど、ここぞという大事な時には逆に大成功を収めるから高坂穂乃果という少女は侮れなかったりする。普段はバカだけど。
「さて、俺はもう一度こたつに戻りま―――、」
「さっさとコート羽織って来なさい」
「うぃっす」
やっぱ寒いから行きたくないという俺の遠回しな申し出は、海未の冬にも負けないドライボイスによって凍り付かされたのであった。
――――――――――――――――――
「うぅ~、着替え中に年が明けちゃうなんて……」
「ちゃんと出かける準備をしておかないからです」
「俺があんだけ言ったのにずっとテレビ見てたお前が悪い」
「新年早々怒らないでー!」
そんなわけで初詣のため外出なうな俺達。
真冬の深夜というのはとんでもない寒さを誇っている。大事な日だったとはいえ、よく最終予選の日に学ランマフラーだけで走って行けたなとあの時の自分を褒めてあげたくなる。
「あ、みんな!」
「おお、花陽ちゃん凛ちゃん!」
いつもの階段付近へ行くと、待ち合わせ場所にしておいたこともあってか既に花陽と凛がいた。
「あけましておめでとうっ」
「おめでとうにゃ!」
「今年もよろしくねー!」
さっきまでウトウト寝てたヤツがもうテンション上がってるな。
さすがに新年迎えたからそうなるのも普通か。
「あ、凛ちゃんその服可愛い!」
「そーおっ? クリスマスに買ってもらったんだー!」
ことりの観察眼、というわけでもなさそうだが、さすが服飾に興味ある女の子。凛の服装にいち早く気付いたらしい。
いいな、俺はクリスマスにのんびり過ごすこともできず、ホームであるはずの家で満腹死しそうになったのに。聖夜の夜とかロマンなんてなかったぞ。
「似合ってるよ、凛ちゃん」
「ありがとー!」
凛の服装をよく見てみる。まず私服の凛を見ること自体が新鮮だったりするのだが、私服でスカート履いてる凛というのは、何かこう、珍しいのもあるが……うん、より女の子らしく見える。
「ど、どうかな……たくや君? 凛、似合ってるかな? 可愛い?」
「えっ……あー、うん……そう、だな。似合ってる。似合ってるぞ。新鮮味もあるけど、やっぱそういう格好してる方がらしいと思うぞ」
「……むー」
何だかご不満な様子。おかしい、俺的にはできるだけ普通に褒めたつもりだったんだが。褒めるポイントが違ったのだろうか。
やめろ、やれやれみたいな目で俺を見るな貴様ら。あの穂乃果にまでそんな目で見られたら俺は男としてまるでダメなヤツに見えちゃうだろうが。やめろ、いややめて。
「か・わ・い・い?」
「……お、おう……? か、可愛い、と思う、ぞ?」
「思う……?」
「可愛い! 超可愛いぞ凛! 実に女の子らしいお前にピッタリだ! 世界一可愛いよ!!」
「……んふ~、ありがとー!」
危ない、どうやらこれで満足したみたいである。女の子というのは時にめんどくさいとマンガやラノベに書いてあるが本当かもしれない。
でもまあ、凛も自信がついて私服でもスカートは履けるようになったのは良い事だと思う。口に出すのは多少恥ずかしいが可愛いのは本当だし。
「あれ、そういや真姫ちゃんは?」
「さっきまでいたんだけど……」
「恥ずかしいからって向こうに行っちゃったにゃ」
「恥ずかしいって、別にあいつは恥じらうとこなんてどこにも」
ないだろ、と言おうとしていた。だが、それは真姫の登場によって彼方へ吹っ飛ばされた。
この中でたった1人だけ、着物姿をしていたのだ。
「真姫ちゃんビューチフォー!」
「可愛い~!」
「わ、私は別に普通の格好でいいって言ったのに、ママが着て行きなさいって……! それと……パパが拓哉にも見てもらいなさいとか言ってくるから……」
「……、」
……いや、え?
どうコメントしろと?
あんの親バカエリートめ、小癪な真似をしやがる。真姫も嫌ならちゃんと断りなさいよ。それじゃまるで本当に俺に見てもらうために着てきたみたいじゃないか。ちくしょう着物姿の女子高生とか眼福に決まってんだろグッジョブ親バカ。
「で、どう、拓哉」
「……何が?」
「私の着物姿に決まってるでしょ! 凛にも同じこと聞かれたのに今更はぐらかすんじゃないわよ!」
「別にはぐらかしてねえよ! 似合ってるし可愛い!! それでいいだろ! むしろお前みたいな女の子が似合わないわけねえだろ言わせんな恥ずかしい!」
「ふんっ! 最初からそう言えばいいのよ」
何だこいつ。いつの間にこんな度胸ついたんだ。ツンデレのツンはどこいった。別にデレてもないけど最近ツン要素少なくないか? キャラ付け大丈夫?
「ていうか何で誰も着てこないのよ!」
「何でと言われましても」
「そんな約束してたっけ?」
「別にしてないけど……!」
まず着物なんて自分の家にそうそうあるものでもないだろう。レンタルならあるかもだけど。いや、海未の家は元々『和』を重んじているし、穂乃果の家の場合は和菓子だったりあの大輔さんのことだ、もしかしたらあるかもしれない。ことりは……むしろ自分で作りは……しないか。
「1人だけ舞い上がって恥ずかしいみたいな感じだな」
「アンタの人生はここまでよ」
「元旦から人の人生終わらせないでくんない!?」
何てこと言うんだこの小娘。普通に怖いです。
小話もここまでにしておいて階段を上ろうとしたら、後ろから裾を掴まれた。
「ねえねえたくちゃん」
「何だよ」
振り返ると穂乃果を含む幼馴染達がこちらを見つめていた。
「私達は、似合ってるかな……?」
「はっ! 愚問だな。お前らなんて何着ても可愛いに決まってんだろ。顔も整ってるし体型も細い。そこいらの下手なアイドルよりも断然似合うに決まってる。伊達に小さい頃一緒にいたわけじゃねえ。幼馴染舐めんなバカヤロウ。さっさと初詣済まして希達のとこに行くぞ」
「貶されてるのか褒められてるのかよく分かんない言い方だね……」
何を言ってくるのかと思えば、分かりきったことを聞いてくるなんて何なのだろうか。
なんて問い詰めようものならきっと海未からメガトンパンチが飛んでくるからしない。拓哉賢い子。
「あら?」
「あなた達……」
「ん?」
階段の方から聞いたことのある声をかけられ見ると、元王者がいた。
「やっぱり、偶然ね」
「明けましておめでとうございます!」
「おめでとう」
A-RISEの全員が揃っている。いくら私服とはいえバレないのだろうか。高校生だからそういうところはファンの人達もちゃんと理解して話しかけないのか。そこんところはまだよく分かっていないな。
「拓哉君も、おめでとう」
「あけおめことよろ」
「随分と軽いわね」
「気にすんな、いつものことだ」
何度も同じ挨拶するのは面倒だし、こういう時こそ略語を使うのが楽なのだ。A-RISE相手にとは思わられるかもしれないが、大体俺はこいつらでもさほど態度を変えた覚えはないので大丈夫、なはず。
「初詣?」
「はい、A-RISEの皆さんも?」
「ええ、地元の神社だしね」
「ですよね」
「……、」
……何この空気。険悪ではないけど何で誰も喋らないの。ほら、階段でずっと立ち止まってると誰か来たら邪魔になっちゃうよ?
「拓哉君」
「うぇ? おう、いきなり何だ?」
「最終予選の時、初めて私をツバサって名前で呼んでくれたのは何故かしら?」
「あれ、そうだっけ。まあ悲しきかな、いつも周りに女の子がいてほぼ全員を名前で呼んでるしいいかなって思ったんじゃね」
「あら、それは嬉しいわ。これからもそう呼んでね?」
「お前がいいならいいけ―――ッ!?」
普段感じることは絶対にない。平和な日常を過ごしていく中であり得るはずのないものを背後から感じた。
これは、殺意だ。
「たくちゃ~ん……?」
「お、おう……? あ、あの……穂乃果さん? それに海未さんやことりさんまで……いや他の皆さん……? 一体全体何をそんなに怒っていらしてあられるのでしょうか……?」
「新年早々、拓哉君は平常運転ですかそうですか。なら私達もいつも通り
「海未さん? 何か字面というかルビがおかしくありませんこと……? 平常運転が何か物騒な言葉に変わっていませんかねえ!?」
「じゃあ、私達は行くわね」
「ハッ!? 謀ったな貴様ぁ!!」
叫ぶ俺を無視して階段を下りていくツバサ達。追いかけようとして海未にヘッドロックされる俺。動けない俺に何故かマジックペンを所持して顔に落書きしてくる穂乃果とことり。神聖な神社で元旦から何をしているんだろうか俺達は。
「ふぅ、スッキリしたー!」
「何がスッキリだ。こちとら首ちょっと痛いし顔に落書きされるわでモヤモヤなんだが!!」
「似合ってるよ、たっくん♪」
「さっき純粋に褒めた俺の言葉で言わないで! というかどんな顔になってんだよ!」
誰も何も言ってくれない悲しさ。高校生男子が高校生女子にイジメられる光景は一体どうなんだろうか。普段なら秘密裏にライバルと親密になってんなと海未から鉄拳貰うから、今回は優しいと捉えた方がいいのだろうか。最近自分の感覚が麻痺していると思っている自分です。
「ねえ」
そんな時、ツバサからまた声をかけられる。
今までふざけていた俺達ですら、素に戻って振り返ってしまう程度なトーンだった。
「優勝しなさいよ。ラブライブ」
最終予選が行われたあの日。
μ'sやA-RISE、他の出場グループもいた中で勝ち残れるのはたった1グループ。
そう、μ'sは勝ち残った。
あのA-RISEを上回る投票数を獲得し、勝つことができた。
スクールアイドルを始めた時から格上の存在だと思っていたグループよりも、僅差ではあるがファンの心を多く掴み取ることができたのだ。
これによって世間に知れ渡ったのは、王者の陥落。そして、女神の勝利。
だからだろうか。
さっきまで階段の上にいて見上げていたはずのA-RISEが、今は階段の下にいて俺達が見下ろしている様子は、まるで勝者と敗者が入れ替わったかのような錯覚に思えるのは。
もしそうだとして、A-RISEの表情からは曇りなど一切見えなかった。
いっそ清々しいほどの表情をして笑顔で言っている。
自分達が負けても、後を託すような言葉を本気で言えるのは凄いことだと思う。
やっぱどこまでもA-RISEらしい。王者の風格は今でも健在なようだ。
なら、こちらもその思いを背負う覚悟はできてる。
それは穂乃果達も分かってるようで、全員がツバサの言葉に対して言い切った。
「「「「「「はい!!」」」」」」
A-RISEを超える事ができたμ'sなら、きっと優勝だってできるはずだ。
そんな確信も根拠もない空虚な幻想だって、今なら断言できる。
そのためには、まずは勝利祈願だ。
「ぶふっ」
「おい今俺見て笑ったなツバサこの野郎」
この落書き消えるかな……。
さて、いかがでしたでしょうか?
久々に何気ない日常からのスタートです。
ちなみにクリスマスの弁当の件は本編内では書いていません。本編以外でも彼らはいつもの日常を過ごしているとお考えください(笑)
スノハレ回からμ's達も岡崎に対してちょっと積極的になってたりなかったり、岡崎自身にも少し変化があったりなかったり……という感じです。
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
久し振りに高評価(☆10)いただきました!
トエルウル・ノンタンさん
sironeko0さん
計2名の方からいただきました。
最近少なかったのでとても嬉しいです……!!ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!
前回のコラボ回では意外と重要な事も書いてるかもしれないので、読んでない方は是非。