ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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125.元王者と勝者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自販機で買ったコーヒーを一口含む。

 真冬の夕方にはその温かさが程よく体に染み渡っていくのを感じながら、ベンチにもたれかかった。

 

 

 

 

 

「ごめんなさいね。でも、どうしてもリーダー同士、それにそんなリーダーをも支える拓哉君と3人で話したくて」

 

「いえ、海未ちゃんもことりちゃんも分かっていると思いますから」

 

「というか何で俺がいる必要あるんだよ。こういうのはリーダー同士だけでってのが定石じゃないのか」

 

「あなたは私達とは違ってμ'sにしかいないお手伝いさんじゃない? だからあなたにも話を聞きたくてね。あとはSP的な意味で」

 

 最後のが本音じゃありませんよね。俺に話聞いても意味があるとは思えないんだけどな。まあ、元王者の綺羅ツバサとA-RISEを負かしたμ'sの高坂穂乃果が2人でいれば目立つかもしれないし、何より奢ってもらったコーヒーが美味いから許す。

 

 

「練習は頑張ってる?」

 

「はい。本選ではA-RISEに恥ずかしくないライブにしなきゃってみんな気合い入ってます!」

 

「そう」

 

 A-RISEに勝っておいてみっともない姿晒すのはどちらも嫌に決まっている。

 自信がないわけではないが、今よりももっと自分達の実力を磨いておいて損は絶対にないだろう。

 

 

「あの、A-RISEは……」

 

「心配しないで。ちゃんと練習してるわ。ラブライブって目標がなくなって、どうなるかって思ったけど。やっぱり私達、歌うのが大好きなのよ」

 

「よかった……」

 

 スクールアイドルの大きな目標としての一つがラブライブ。それはスクールアイドルをしているグループのほぼ全てが目指している高みなのだろう。今じゃ全国的に流行しているラブライブでも、優勝できるのはたった1グループ。

 

 それに敗られ目標が失われれば、きっと喪失感や虚無感に襲われに違いない。

 来年があればまた来年頑張ればいいと思ってもいいけれど、もし3年生だったなら、もう何も残すことはできないに等しいかもしれない。

 

 それでも、A-RISEは歌うことを続けた。

 来年がなくとも、ラブライブに出ることはもう叶わなくても、歌うことが大好きだから。そんな単純な理由で、だからこそ貫きたい思い。

 

 圧倒的な王者だったから、その思いだってきっと人一倍あったんだろう。

 やっぱ凄えな、このグループは。

 

 

「ただ、やっぱり、どうしてもちゃんと聞いておきたくて」

 

「?」

 

「私達は最終予選で全てをぶつけて歌った。そして潔く負けた。そのことに、何のわだかまりもない。と、思っていたんだけどね」

 

「珍しいな。お前がそんなこと言うなんて」

 

「あら、私だって普通の女の子よ。分からない事もあれば、疑問に思うことだってちゃんとあるわ」

 

「……違いねえ」

 

 いつもはA-RISEとしてのツバサと話すことが多かったからか、ついそんなことを言ってしまった。元王者とか、トップスクールアイドルとかの前に、こいつは俺より一つ年上の普通の女の子に過ぎないのに。

 

 

「ちょっとだけ引っかかったの。何で負けたんだろって」

 

「……そう、なんですか」

 

「理由が分からないのよ。確かにあの時、μ'sは私達よりファンの心を掴んでいたし、パフォーマンスも素晴らしいライブだった。結果が出る前に、私達は確信したわ。……でも、何故それができたの?」

 

「え?」

 

「確かに努力はしたんだろうし、練習を積んできたのも分かる。チームワークだっていい。でもそれは、私達も一緒。むしろ私達は、あなた達よりも強くあろうとしてきた。それがA-RISEの誇り、スタイル。だから負けるはずがない。そう思ってた……。でも負けた。その理由を知りたいの」

 

 多分、その答えを俺は知っているかもしれないし、違うのかもしれない。

 だけど、もし知っていたとしても、その答えを俺が言うのは間違っているのは確かだ。これは俺ではなく、μ'sとしての穂乃果が答えなくては意味がない。

 

 

「μ'sを突き動かしているものって何? あなた達を支えているもの、原動力となる思い。それは何なの?」

 

「えっ……」

 

「それを聞いておきたくて」

 

「……え、えっと、ぁ……う……」

 

「やめろ。助けてくださいみたいな目線をこっちに送ってくるな……」

 

 子犬みたいな顔しやがって、思わず助けたくなっちゃうだろうが。という気持ちを必死に抑え込む。

 これは俺が答えるべきではない。目を逸らすと穂乃果も一応考えているようだが、表情からするに何も出てきていないのが分かる。

 

 

「……ごめんなさい! 私よく分からなくて……」

 

「……そう。じゃあもし何か分かったら教えてちょうだい。拓哉君にも聞こうと思ったけど、その様子じゃ教えてくれなさそうだし」

 

「リーダー同士の会話に俺が口挟む方が野暮ってもんだろ」

 

「そういうとこは徹底してるのね」

 

 そう言うとツバサはベンチから腰を浮かせた。

 どうやら本当にそれだけを聞きに来たらしい。

 

 

「今日はありがとね」

 

「ごめんなさい、ちゃんと答えられなくて……」

 

「気にしないで」

 

「でも、A-RISEがいてくれたからここまで来られた気がします!」

 

 実際間違っちゃいない。A-RISEがいなければ廃校を救うための手立ては見付けられなかったし、A-RISEという超えるべき目標がなかったら高みを目指そうとも思えなかった。少し皮肉に聞こえるかもしれないが、あれが穂乃果の本心だし、ツバサのことだ。きっとそれも理解してるだろ。

 

 

「拓哉君は気付いてるんでしょ?」

 

「……さあな。おおよその見当はついてるが、それが合っているかも確信したわけじゃない。それにこういうのは俺じゃなくて穂乃果が言わないと意味がないだろ」

 

「それもそうね。……あ、そうだ、穂乃果さん」

 

「はい?」

 

 いよいよ別れようとした寸前でツバサが穂乃果に声をかけた。

 まだ何か用件残ってたのか。

 

 

「スクールアイドルとしての勝負は負けちゃったけど、()()()()()()()()()()()()()()()()。ライバルとしてねっ」

 

「ッ……。はいっ! 私だって当然負けません!」

 

「あん?」

 

 女の子としての勝負って何だ。こいつら密かに料理バトルでもしてんのか?

 スクールアイドルしてんのに料理でも勝負とか何だよ。食戟か、食戟なのか。美味かったら服弾ける系のあれか。それなら俺も見たいであります。

 

 

「では! 行こう、たくちゃん!」

 

「ふふっ、またね」

 

「おう、またなー」

 

 軽く手を振ってお互い反対方向へ歩き出す。

 唯には少しだけ遅くなると連絡しておいたから問題はない。というか何でこいつはわざわざ俺の手を引っ張ってるんだろうか。

 

 

「なあおい、何で手引っ張ってんだよ歩きづらいんだが。てか最後のツバサとしてた会話何? 料理バトルなら俺が審査員してやろうか。料理マンガもそれなりに読んでるし食レポには多少の自信はあるぞ」

 

「どんな脳みそしてたらツバサさんと料理バトルするなんて発想になるの! いつもの脳内妄想も大概にした方がいいよたくちゃん」

 

 穂乃果に頭の心配されるとか俺もそろそろ末期かもしれない。このバカに言われると軽く泣きたくなってくる。

 料理じゃないなら何なんだよ。女の子といえば他に何がある。

 

 ……オシャレ対決?

 

 

「穂乃果、やめとけ。お前じゃツバサには敵わん。UTX学院なんてボンボンが行くような学校に通ってるヤツだぞ。そんなオシャレ要素しか持ち合わせてないツバサに家でちゃんちゃんこ着てこたつでミカン食ってるようなお前が勝てるわけないだろ現実見ろ」

 

「だからどうして発想がそんな方向へ行くの!? それに余計なお世話だよ! 冬にこたつでミカンなんてド定番だよ! ちゃんちゃんこだってあったかいし!」

 

 む、これも違ったか。

 料理でもオシャレでもないなら何だ。女の子といえばなんて男の俺が考えても分かるわけがないかもだけど……いや待て。

 

 これはもしや……恋?

 ははっ、いやいや、そんなまさか。

 

 

「認めん。恋なんて俺は認めんぞ穂乃果ァ!! 貴様どこの男に現を抜かしやがった!! それ絶対騙されてるからやめときなさい! お前を選ぶようなバカにお前を任せられるわけないだろぶっ飛ばすぞゴルァ!! どこのどいつだ言ってみろ大輔さんと一緒に顔面潰れるまでぶん殴ってやる!!」

 

「うわぁ何か一気に核心突いてきたと思ったらやっぱり予想の斜め上だった! というか酷くない!? 騙されてるとか私を選ぶバカとかそれ完全に私のことバカにしてるよね!?」

 

「何言ってんだ当たり前だろ」

 

「喰らえ海未ちゃん直伝たくちゃん殺し拳(ヒーローブレイカー)ッ!!」

 

「うおぉッ!?」

 

 あ、危ねえいきなり何て攻撃してきやがるんだこいつは! 片方の手繋がれてるからギリギリだったじゃねえか! つうか海未直伝で怖すぎるんですが!?

 

 

「チッ」

 

「あの、穂乃果さん? 仮にも最終予選突破したスクールアイドルのリーダーがするような舌打ちではありませんことよ」

 

「失礼なたくちゃんが悪いっ。私だって女の子なんだから、そういうこと言われるとさすがに傷付くんだよ」

 

 またも先ほどのように子犬のような顔でシュンと落ち込んでしまった。

 ちくしょう、そんな顔されたら120%俺が悪いみたいになってしまうだろ。いや完全に俺が悪いんだけど。

 

 しかし、確かに穂乃果も一応は年頃の女の子だ。

 こういうことには多少デリケートになりつつあるのかもしれない。しゃーない、謝ってやるか。

 

 

「悪かったよ。変に決めつけてバカにしちまって。詫びに恋の相談でもしてやろうか? ラブコメマンガなら腐るほど読んでるから任せろ」

 

「どうせ宛てにならないからいいもん……」

 

 おぉふ、意外とダメージ入ってんなこれ。一向に手を離してくれない。これじゃまたいつ拳が飛んでるか分かったもんじゃない。俺の命の危険がすぐそこにあるの怖すぎじゃね。

 

 

「でも……」

 

「……でも?」

 

「別れるまで普通に手を繋いでくれたら許してあげる」

 

「……、」

 

 いや、あの……落ち込んでるからか知らないけどちょっと顔赤らめて泣きそうな感じで言われると罪悪感で死にそうなんだが。そんな顔で言うのはいくら何でも反則だろ……。

 

 

「お、おう……」

 

 物理攻撃がない分、こちらの罰の方が断然いいので了承する。

 すると、穂乃果の表情も少し明るくなり握っていた手をまた強く力を入れてきた。

 

 力を入れてもそこはやはり女の子。

 俺の包まれている手は柔らかい女の子のそれであって、寒い冬の中、ただその温もりだけがお互いの手から体温を感じ取っていた。

 

 

 

 

「えへへ……何か、まるで恋人みたいだねっ」

 

「……兄妹くらいが妥当なんじゃねえの」

 

「ぶぅ~、そんなことないもん!」

 

「ほら、さっさと帰るぞ。早く帰って家で温もりたい」

 

 

 

 

 

 

 2人でやいのやいの言いながら手を繋いで帰る。

 多分、恐らく傍から見れば俺達は恋人に見えるようなことをしているのかもしれない。

 

 だけど、それを認めてはいけない気がする。

 認めてしまったら、決定的に何かが変わってしまうとか、そんな深い理由とかじゃない。

 

 

 

 ただ単に。

 

 

 

 

 

 

 俺がそう見られると恥ずかしいだけヘタレに過ぎない。

 

 

 

 

 

 

 

 でも、まあ、うん。

 せっかくの幼馴染だ。

 

 

 

 

 こんな帰り道も悪くないだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 そう思って俺は、隣で柔らかい笑みを浮かべながら話す穂乃果を見て、ほんの少しだけ握っていた手の力を強くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 さて、いかがでしたでしょうか?


 せっかくのリーダー同士の会話なのですから、岡崎は護衛兼ちょくちょく話す程度にさせました。
 鈍感じゃないけど鈍感。鋭いのは鋭いが恋愛対象にまず自分を入れる事すらしないのが岡崎という人間でありまして。
 自分を卑下しすぎというか、まるでみんなが笑顔の輪の中にいるのを外から見守るのが自分の役割と思っているヤツなのですよ。めんどくせえなこいつ。
 最後の穂乃果との帰り道、ほのかわいい。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!

では、新たに高評価(☆10)を入れてくださった


紅葉さん

Nインパクトさん

とんぽんさん

杉並3世さん


計4名の方からいただきました。失踪しない理由が増えていく。ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!




とある魔術の禁書目録3期が公式発表されてようやっとこの時が来たかと静かに燃えています。
アニメで動く上条さん早く見たい。
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