どうも、昨日は少し熱が出てたので投稿できませんでした!
「よし、このページのは全部合ってる」
「うぅ~、疲れた~……」
その日の夜。
夕飯や風呂など諸々を済ませた俺は最愛の妹、唯に頼まれ受験勉強を手伝っていた。
「ちょっとだけ休憩~」
「何言ってんだ。今日決めた分のページもあと1ページだろ。もうひと踏ん張りだ」
妹に頼まれればそれに全力で従ってやるのが兄の役割だ。なのにこの妹ときたら、最後の最後で休憩とか抜かしおる。
愛でるだけが兄じゃない。時に優しく、時に厳しくするのも兄の大事な役目でもあるのだ。心を鬼にするべし。
「ちょっとだけだよ~。ねっ? お兄ちゃん」
「しょうがねえな3時間だけだぞ」
「いやそれは日付変わっちゃうよ」
時に厳しくするのも大事だが、他所は他所、ウチはウチなので甘やかす。誰が何と言おうが甘やかす。心を鬼とか何それウケる。鬼じゃなくて心をお兄ちゃんにが正しいに決まってんだろ。
「10分でいいよ休憩は」
「あいあい」
何故か唯が直々に時間を決めて休憩に入る。
と言っても特にすることもないのでソファにでかでかと座りこむくらいだ。
元からテーブルに置いていたお茶を一口飲んでからスマホを適当に弄るが、結局は何もすることがないので思う存分ソファに体重を預けて天井を見つめる。
すると、途端に俺の足へ余計な重みが加わった。
「……何してんだ」
「えへへ~見ての通り、お兄ちゃんに膝枕してもらってますっ」
「してもらってるも何も、許可した覚えはないんだけどな。それにそういうのは女の子の柔らかい太ももだから価値があるわけで、男の俺なんかの太ももじゃ柔らかくもないしむしろ心地悪いと思うぞ」
「お兄ちゃんだから私的には全然オッケーだよ~ん」
さいですか……とだけ言って諦める。どうやら退く気が更々ないらしい。
下に視線を移せば唯がにへらとこっちを見て笑うし、変に気恥ずかしくてまた天井を見つめる。
だからだろうか。
ふと疑問をぶつけてみたいと思ったのは。
「なあ唯」
「なぁに?」
「唯から見てμ'sってどう思う?」
「ふむふむ、そうだな~」
こうして急な質問にも動じず真面目に答えようとしてくれる妹は多分メンタル強いに違いないとか思いつつ、どんな返答がくるか待つ。
普段μ'sの近くにいる俺じゃなく、誰が見ても客観的に考えられる位置にいる唯ならどう答えるのか。
「心配、とか」
「分からなくもない」
「あとはー、危なっかしい、頼りない、ハラハラする」
「ボロクソ言うな。一応地区代表だぞ」
この妹、中々に毒舌でござった。
だが言いたいことも分かる。あいつら俺がいなかったらいつ無茶しでかすか分からないからな。以前ならまだしも今はもう大丈夫そうに見えるが、穂乃果がリーダーやってる間は俺も見ていてやらなくちゃいけない気がする。
「正直に答えてるだけだもーん。何か心配になっちゃうんだよね」
「なるほどな……じゃあ何で勝てたと思う?」
「さあ?」
「あのな……」
太ももの上で首を傾げる唯。
真面目に答えてるってのは分かるが、もう少し言い方を考えられないのかこいつは。
「ただ、応援しなきゃって気持ちには不思議となるんだよね。どんなグループよりも。それは穂乃果ちゃん達だから、地元だからとかは関係なくね」
「……俺が穂乃果達を手伝ってるからってのは?」
「それはあるかもしれないしないかもしれない」
こいつわざと言葉濁したな。
「冗談だよ。お兄ちゃんが何もしてなくても、私はきっと穂乃果ちゃん達を応援したと思う。必死に、でも楽しそうに歌うμ'sを見てたら、そんな気持ちに、曲に惹かれちゃうんだ」
「そっか。そりゃ良いこと聞いた」
「あうっ」
個人的に満足のいく返答を貰えたから強制的に唯を優しくどかせてソファから離れる。
もちろん、自分の部屋に行くためだ。
「あー! 何で行くの! 勉強教えてくれるんでしょー!」
「あと1ページくらい自分でできるだろ。それに見てたけどもうそんだけで出来てれば凡ミスしない限り必ず受かる。ったく、全部1人で解けるくせに俺に勉強手伝えって何の目的だよ」
「お兄ちゃんと少しでも一緒にいたいから」
「はいはい可愛い可愛い。んじゃな、頑張れよ」
最近唯があざとい言葉を使うようになったのは気のせいだろうか。それとも桜井が原因で唯は純粋に言ってるのに俺がそう捉えてしまうようになっているのだろうか。何にしろ桜井許すまじ。唯可愛い。
「ねえお兄ちゃん」
「何だ、勉強なら教えることないぞ」
リビングを出るまであと一歩のとこで呼び止められる。
「
「……、」
さすが俺の妹だ。
こういうとこ鋭いのはお互い親譲りらしい。
「さて、どうだろうな」
これだけ言ってリビングを後にする。
俺の中の答えが合っているのか確信できていなかったが、唯の言葉を聞いてようやくできた。
確かに、これは当事者の穂乃果達じゃ出しにくい答えなはずだ。
自分達をどれだけ客観的に見れるかが重要になってくるんだしな。
答えも定まったことだし今日は早めに寝ようかと思った矢先、携帯が鳴った。
見ると穂乃果からのメッセージだった。
『明日の14時、私の家に集合ね!』
―――――――――――――――――――
「で、何で俺は餅つきに付き合わされてるんだろうか」
「そりゃたくちゃんじゃないともしもがあったら危ないでしょ?」
翌日の14時を過ぎてちょっと。
俺とμ'sメンバーは連絡通り穂乃果の家にやってきた。そして何をするかと思えば餅つきするとのことだ。どうしてそうなった。
「それなら普通男の俺が餅つく方じゃないのか」
「そうしたら意味ないでしょ。μ'sの私がやることに意味があるっ!」
なら何でサポートするのはμ'sじゃなく俺なんだろう、という愚直な質問はしないでおく。もしケガなんてものをしたら大惨事だからな。
手伝いという名目上、俺の役割は間違っていないが何だろう。何か犠牲的な意味でも含まれてそうだなおい。
「ちゃんとできるの穂乃果?」
「お父さんに教わったもん! いっくよー!」
「はいはい」
穂乃果が餅をつき、俺がサポートを繰り返していく。
小学生の頃はよく大輔さんに教わりながら手伝っていたから苦労する心配もない。
リズム良くついている内にご飯だった見た目から餅になっていく。
と、ここで穂乃果が一旦動きを止めた。
「凛ちゃんやってみる?」
「やるにゃー!」
「真姫ちゃんも!」
「いいわよ。それより何で急に餅つきなの」
「在庫処分?」
「違うよ。何か考えてみたら学校のみんなに何のお礼もしてないなって」
なるほど、そういうことか。
「お礼?」
「最終予選突破できたのって、みんなのおかげでしょ? でも、あのまま冬休み入っちゃってお正月になって」
「だからってお餅にする必要ないじゃない」
「だって他に浮かばなかったんだもん!」
お礼なら穂むら饅頭配るとかじゃダメだったのか。
というか餅ならもうみんな正月に食べてそうなんだけど大丈夫なんだろうか。
「それに、学校のみんなに会えばキャッチフレーズが思い付きそうだなって」
「思い付く?」
「お餅つきだけに!」
「にこちゃん寒いにゃ……」
「にこ、それはないわ」
「悪かったわよ! ついよつい!」
危うく俺もそれ言いそうになったけど言わなくてよかった。おかげでにこが犠牲になってくれた。
俺が言ったら多分罵詈雑言の嵐だったぞ。
「よし、たくや君いっくよー!」
「おう、こい」
凛が構えて振り下ろそうとした。
その瞬間だった。
「危なーい!」
「うおッ!?」
絵里の妹、亜里沙が突然俺を庇うように飛び込んできた。
どこから湧いてきたんだこの子。
「拓哉さんはμ'sにいなくちゃいけない人なのに拓哉さんがケガしたら大変!」
「いや、何なら不意に飛び込んできた亜里沙のせいで危うくケガしそうになったんだけどな……」
「亜里沙……」
「叩こうとしたわけじゃないにゃー」
そうだぞ。こいつらはいざとなったら容赦なくぶん殴ってくるからこんな柔なもんじゃない。
大体海未のせい。そして原因は俺のせい。
「それより亜里沙、悪いけど早めにどいてくれると拓哉さん助かるなあ。外でこの態勢は色々とヤバイので……」
「え? よく分からないけど分かりました!」
どんだけ純粋なんだこの乙女。男女が押し倒し押し倒されの姿勢だったら普通事案案件ものだぞ。
俺がビンタされてもおかしくないレベル。
「お餅……スライム?」
「食べてみて、頬っぺた落ちるから」
とりあえず餅を完成させたのでさっそく亜里沙に渡すとこんな反応だった。
もしかして餅食べたことないのか。正月に食べてもいないらしい。
「美味しーい!」
「私とたくちゃんがついたお餅だからね。美味しいのは当然だよ!」
「そこまで言うとこか?」
「よーし、じゃあ第二ラウンドやってくよたくちゃん!」
「え、まだ作んのか?」
「当然! 学校のみんなも呼んだしこれだけじゃ足りないでしょ!」
確かに、この量じゃ精々10人分ってところか。
生徒数自体は少ないけど、さすがにこれじゃ人数分は足りない。まず何人ぐらい来るのかすら把握してないのに作りすぎて余ったらどうするんだろうか。
「お、本格的ねー」
「へいらっしゃい!」
言ってるそばからヒフミトリオがやってきた。
「精が出るねえ拓哉君」
「おかげで体が温まって寒く感じないのは助かる。雑用にも程があるな俺」
「まあまあ、手伝いの宿命みたいなもんだよ。頑張んな!」
ヒデコがニカッと笑いながら背中を叩いてくる。
意外と力強いから痛いんだよなこいつの。
「さあ、もっと作っちゃってよ。私達がまたみんなを呼び出したからほぼ全校生徒来るはずだし!」
「お前らの顔の広さ異常すぎやしませんかね……」
そんなツッコミをしているあいだに、気付けば音ノ木坂の生徒がぞろぞろと来ていた。
……餅足りるのかこれ。
「はい、どうぞ」
「みんなの分もありますからねー!」
「お醤油ときな粉どっちがいい?」
「並んで並んでー! お餅は逃げないからー!」
「せーの、にっこにっこにー!」
「これがきな粉……きな臭い?」
「かよちんは太っちゃうからダメ!」
「お餅ー!!」
「はいたくちゃん餅つき交代! あとは任せた!」
「あ、てめっ、疲れたからって逃げるなこら!」
各々が自由に餅を食べ、写真を撮り、賞を見せてもらって声を上げ、好きに過ごしている。
かくいう俺は強制的に餅をつく方に交代させられさっきからずっとついているのだが、意外や意外。この生徒共、やたら餅を食べるのである。
女の子は餅食べたら体重増えるからあまり食べないのが普通じゃないのか。めっちゃ食うじゃん。1人で5個食ってる子いたぞ。花陽ならもっと食べそうだけど絶対太るから押さえるのを凛に任せている。
ちなみに俺はずっと餅を作る方に集中しているからいまだ食べれていない。おかしい、ちゃんと働いてる俺に何も報酬がないのは間違っている。ちくしょう、真冬だってのにどんどん暑くなってきたぞ。
「はいお兄ちゃん、さっきからお餅食べれてないでしょ? あーん」
「唯……やはりお前は世界一の妹だ」
いつの間にか来ていた唯が俺の口へ餅を入れてくれた。
うん、美味い。さすが俺がついた餅だ。いや、唯が食べさせてくれた餅だから実質宇宙一の美味さになってる説ある。
「みんな来てくれて良かったですね」
「冬休み中なのに随分集まったわね」
「みんなそんなにお餅好きだったのかなー」
「好きだよ~お餅だもん」
お礼という名目上で行われた餅つき大会は無事終了した。
先ほどまでは賑やかだった穂むらの周辺にはもう俺達以外の生徒は誰一人いなくなっていた。
「きっと、みんな一緒だからだよ」
「え?」
「みんながいて、私達がいて、だからだと思う」
「何か分かるような」
「分からないような……」
他のメンバーはまだピンと来てないようだけど、俺は多分分かってると思う。
ただ穂乃果がそれに達しているかは分からないが。
「それが、キャッチフレーズ?」
「うーん……ここまで出てる……!」
と、喉に指を当てている穂乃果。
こいつなら本当にそこまで出てきていそうだから凄い。こういう時の穂乃果のセンスはピカイチなのだ。
「……本当なのですか?」
「本当だよ! もうちょっとなの! もうちょっとでそうだってなる気がするんだけど~……」
「だったらやるしかないだろ」
「たっくん? やるしかないって、どういうこと?」
みんなの視線が集まる中、あと少しで答えが出そうな穂乃果を見て言う。
「答えを見つけにだよ」
さて、いかがでしたでしょうか?
唯との絡みは書いていてとても楽しいです。
どちらも重度のシスコンブラコンですが、ドライな時はドライな態度だったり甘やかす時は存分に甘やかす関係っていいですよね。
次回でキャッチフレーズ編ラスト!
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
では、新たに高評価(☆10)を入れてくださった
そら@さん
みなさんの評価コメントにとても励まされてます。本当にありがとうございました!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!
何だかんだこの作品も終わりが見えてきた。