4人で改めて決意した。
スクールアイドルになると。決めたのなら即行動。
という事でさっそく俺達は生徒会室に部活申請書を出しに行った。
「……これは?」
そう言ったのはこの音ノ木坂学院の現生徒会長、絢瀬絵里会長である。
どうも苦手なんだよなぁこの人……。
「アイドル部、新設の申請書です!」
対して答えたのは、我がスクールアイドルの代表になるであろう、高坂穂乃果だ。性格が真逆そうな2人がどうぶつかるか……。拓哉さんはハラハラしてますよ!
「それは見れば分かります」
ですよね。
「では、認めていただけますね!」
「いいえ、部活は同好会でも、最低5人は必要なの」
なるほど。今の俺達は4人しかいない。だから認められないわけか。
「ですが、校内には部員が5人以下の所もたくさんあるって聞いてます!」
海未がすかさず反論するが、それは反論にすらならないだろう。
「設立した時は、みんな5人以上いたはずよ」
そう、設立した時に5人以上いれば、あとは誰かが辞めても活動はしていける。とりあえずは今は人数確保が最優先か。
すると今までずっと黙っていた東條がようやく口を開いた。
「あと1人やね」
あと1人……それなら誰かに名前だけでも貸してもらえれば何とかできそうだな。
「あと1人……分かりました。行こう」
「待ちなさい」
去ろうとする俺達を絢瀬会長が呼び止めてくる。その顔は何か気に食わないような、そんな顔をしていた。
「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの? あなた達二年生でしょう?」
この時期。廃校を告げられてから何故、こんな部活を立ち上げようとするのか。そう聞きたいのだろう。
「廃校を何とか阻止したくて、スクールアイドルって今凄い人気があるんですよ! だから――」
「だったら、例え5人集めてきても、認める訳にはいかないわね」
……何?
「ど、どうして……!?」
「部活は生徒を集めるためにやるものじゃない。思い付きで行動した所で、状況は変えられないわ。変な事考えてないで、残り2年自分のために何をするべきか、よく考えるべきよ」
そう言って絢瀬会長は部活申請書を突き返してくる。出直して来い、ではなく、もう申請書を出してくるなという意味だろう。
「……っ、戻ろう……」
穂乃果も何も言い返せないようだ。表情から見て取れる。
生徒会室を出て行こうとする穂乃果達に対し、俺はそこから動かないでいた。
「たくちゃん……?」
「……悪い、少し先に行っててくれ」
「え……?」
俺の応じる声に海未は意図が読めないようで疑問を返してくる。
「……いこっ。海未ちゃん、ことりちゃん」
「穂乃果……」
「穂乃果ちゃん……うん」
穂乃果は何か分かってくれたらしく、海未達と一緒に出て行ってくれた。それをしっかりと見てから、絢瀬会長に向き直る。
同時に絢瀬会長もこちらを強く見てくる。
「どうしてあなたは残っているの?」
「言いたい事があるからだ」
「……一応言っておくけど、私は三年生よ」
「ああ、知ってる」
「……なら何故敬語を使わないのかしら?」
「敬語が苦手ってのもある。でも、今はそれを必要と思わなかったからだ」
「何ですって……?」
一気に会長の顔が険しくなる。そりゃそうだ。仮にも後輩に敬語をする必要がないと言われれば、誰だってバカにでもされてると思って腹が立つだろう。
でも、今はそんな話をするつもりはない。
「話を戻すぞ会長。なんでアンタは穂乃果達の行動を認めない?」
俺の質問でようやくここに残った理由が分かったのか、会長が先程と同じ事を言ってくる。
「だから言ったでしょ。部活は生徒を集めるためにやるものじゃない。思い付きでやっても何も変わらないの。だから、あの子達が何かをした所で何も変わりはしないわ」
「何でそんな事が言い切れる? アンタも分かってんだろ? このままじゃ本当に廃校になっちまう。だから何とかここを残したいって思うあいつらの気持ち位、アンタも同じ気持ちなんだろ?」
昨日会長はことりにわざわざ理事長が何か言ってなかったか聞いてきた。
という事は会長も廃校を阻止したいと思ってるはずだ。
「だからよ……」
「……は?」
何がだからなんだ?
思わず素っ頓狂な声が出てしまう。
「私も廃校を阻止したいわ。でもあの子達のやってる事はリスクが高すぎる。それにあんな思い付きでスクールアイドル、ダンスをやっても上手くいくはずないし、人気なんて夢のまた夢よ。わざわざマイナスになるような事はやってもらってほしくないの」
……ああ、この人もさっきの俺と同じ気持ちだったのか。少なくとも、いや、十分に会長の気持ちは分かる。あんなほとんど賭けにすらならなさそうな事、普通なら誰だってやらないだろう。
でも、それでも、穂乃果はやると言った。誰もが絶望を抱く中で、穂乃果だけが、それでもやると言ったんだ。なら、それに賭けたっていいじゃないか。
「確かにそうかもしれない。アンタの言った通り上手くいかないかもしれない」
「でしょ? なら――」
「でも、何かやらないと何も変わりすらしないんじゃないのか」
「……っ」
会長の顔が一瞬強張った。と同時に、視界の隅で東條の口角が上がったように見えた。
「アンタの言う通り、穂乃果達がスクールアイドルをやっても何も変わらないのかもしれない。でも、それはあくまでやらないと誰にも分からない事なんだ。俺もアンタも未来が見える訳じゃない。何もやらずに何も変えられないより、何かをやって、ほんの少しの可能性に賭けて、何かを変える事に意味があるんじゃないのか」
「でも、でもそれで良い方向に変わるとは限らないわ。今のあの子達に何かやらせても、きっとマイナスのイメージにしかならない……!」
「可能性としては最も大きいけど、それも絶対的な確率じゃない。やってみないと分からない事もあるんだよ。先入観で決めつけるとこの先もアイデアは出ないままだぞ。それに、元々廃校が決まってるんなら、これ以上マイナスになる事もないだろ。なら俺達が何をやってもこれ以上の悪い影響は出ないはずだ」
俺の言いたい事は言い終えた。後は会長の答えを待つだけ。
なのだが、
「……それでも、あなた達のやる事は、認められないわ……」
両手で拳を強く組みながら、会長は言った。そこには何か、俺の知りえないような何かを隠しているかのように。
「そうか……。それじゃ、失礼しました」
そう言って退室しようとすると、
「岡崎君」
今までずっと黙って聞いていた東條に呼び止められた。
「何だ? 東條」
「……頑張ってな」
……あれ、聖母かな?
「ああ、ありがとう」
言って生徒会室を出る。
ちょっと長く話し過ぎたかもな。少し走るか。
――――――――――――――
拓哉が生徒会室を出た方をずっと見ていると、絵里が少し恨めし気にこちらを見ている事に気付く。
「どうしたん?」
と、微笑みながら聞くと、絵里はぷいっとまるで拗ねた子供のようにそっぽを向いてしまう。
「……別に、ただ希はどっちの味方なのよって思っただけ」
そう正直に答えてくる辺り、希が拓哉の応援をしたのが気に食わないようだ。
「もちろんウチはエリチの味方やで。でも、あの子達の応援もしたい気持ちはあるかなー」
「何よそれ……」
「それにしても、さっきの思い付きがどうのこうの言ってたけど、誰かさんに聞かせてやりたいセリフやったなぁ」
「ッ! いちいち一言多いのよ、希は……」
そう、さっき絵里が穂乃果達に言った言葉は、絵里自身が理事長に言われた事なのだ。俗に言うブーメラン発言である。
「ふふっ、それが副会長の務めやしぃ。……で、結局理事長の受け売りは岡崎君にはあっさりと言い返されたけど、どうするん?」
それは自分は理事長に言われて何も返せなかった。でもあの少年だけは返してきた。そういうちょっとした皮肉も入ってるかもしれない希の言い回しに、多少こめかみをピクンッと動かしながらも考える。結論はさっきと同じだった。
「言い返されたのは驚いたわ。私が言えなかった事を彼は私の思いつかない方法で言ってのけた。でも、それでもやっぱり認める訳にはいかない。私にも“私なりの理由”があるの」
それを聞いて希は内心前途多難やなあ……と、思いながら苦笑いする。
「さあ、希。私達は他のアイデアを探すわよ」
「はいはい、思いつくかなあ」
そう言って、音ノ木坂学院の生徒会長と副会長は、2人で思案するのであった。
――――――――――――――
走っていると、穂乃果達が下駄箱で待っているのを見つけた。
「悪い、待たせたな」
言うと、3人共決して明るくはない顔ではあるが反応してくれた。
「大丈夫だよ。じゃあ行こっ」
穂乃果のセリフを皮切りに帰路につく。
歩く3人の背中は暗かった。さっき会長に言われた事が頭から離れないのだろう。
歩いてると、ことりが穂乃果に話しかけた。
「ガッカリしないで。穂乃果ちゃんが悪い訳じゃないんだから」
それと同時に全員の足が止まる。そう、穂乃果は何も悪くない。ただ廃校をどうにか阻止したいと思っている生徒なだけだ。
「生徒会長だって、気持ちは分かってくれてるはずです」
「気持ちは分かってても、やり方に対して、方法に対して反対してる節があるな。あの会長」
何かに執着してるような、スクールアイドルの何かに執着しているような気がする。
「でも、部活として認められなければ、講堂は借りられないし、部室もありません。何もしようがないです……!」
「そうだよね……これからどうすればいいんだろう……」
「どうすれば……」
神妙な面持ちで海未とことりが悩む中、穂乃果だけがずっと黙っていた。こいつはもうやるべき事を分かってるのだろう。
「さっきと変わらねえよ。お前らはスクールアイドルをやる。さっきそう決めたばかりだろ?」
「ですが、部活じゃなければ何も……」
「出来ないわけじゃない」
「え……?」
そう言い切る俺に海未が訳の分からなさそうな顔をする。
「それに、1人は諦めるっていうこと自体頭にないみたいだぞ。そうだろ? 穂乃果」
そこには、もうさっきの暗い背中はなかった。決意は出来たみたいだ。
「うん、そうだよっ。生徒会長に言われた事は仕方ないと思う。でも、それが諦める理由にはならない。だって、ほんの少しでも可能性を感じたんだもん。見つけられたんだもん。だったらそれに向かって進みたいんだ! 何もせずに後悔したくないよ!!」
自然と口角が上がるのを感じた。分かってるじゃねぇか……。
「そうだ。このまま何もせずに後悔だけを残したくないだろ? なら進むしかねえじゃねえか。何も変えられないより、何かを変えるために進むんだ。誰かに言われたから諦めるくらいの覚悟なら、俺が喝を入れてやる。誰にも見られもしなかったら、俺が見ててやる。誰かに傷つけられたなら、俺が救ってやる。だから、お前らは何も気にせず前に進めばいい」
「穂乃果……拓哉君……分かりました。私も尽力します」
「うん……私も諦めない! 頑張るよ!」
さあ、覚悟は出来た。
後は行動に移すのみ。
「ところで拓哉君、さっき言ってた部活じゃなくても何も出来ない訳じゃない……というのは?」
決心も済み、道を歩いてると海未が問いかけてきた。そういえばまだ言ってなかったな。
「ああ、それはだな――」
――――――――――――
翌日の朝。
「朝から何……?」
生徒会長の疑問の声が聞こえる事から察するに、俺達は登校してすぐに生徒会室に訪れていた。
机に置かれているのは講堂使用許可申請書である。
「講堂の使用許可を頂きたいと思いまして!」
「部活動に関係なく、生徒は自由に講堂を使用できると生徒手帳に書いてありましたので」
そう、俺が昨日海未からの質問に答えたのがまさに今、海未が言った事だった。音ノ木に来た時、一応事前に生徒手帳を見ていたから何となく覚えていたのだ。部活じゃなくても生徒は講堂を使えるという事を!!
ていうか海未さん、俺が言おうとしてたのにさも自分が見つけましたー的な感じで言いやがってますね。これじゃ俺が着いてきた意味ないじゃん。俺空気じゃん。一番後ろであくびしても誰にも気づかれないまである。
「新入生歓迎会の日の放課後やなあ」
「何をするつもり?」
「それは……」
痛い所を突かれたという感じの顔の海未。何を言いよどんでるんだよ?
ったく、しゃあねえなー、俺が言ってやんよ!
「もちろんラ」
「ライブです!」
「……、」
もう帰っていいかな俺……。
「3人でスクールアイドルを結成したので、その初ライブを講堂でやる事にしたんです」
「穂乃果っ……!」
「まだ出来るかどうかは分からないよ……」
「ええー! やるよおー!」
……あ、あー、そういや講堂でライブするといってもまだ何も始めてなかったなあ。
うん、今気付いた。どうしよう、やばいっす。
「待ってください。まだステージに立つとは――!」
「出来るの? そんな状態で……」
見かねたのか、会長がいかにも怪しいといった感じの目で見てくる。
うぅ、目が痛い。痛いよぉ!
「だ、大丈夫です……!」
俺も意気揚々とライブですって言おうとしてたけど、言わなくて正解だったみたい。やったね! 冷たい目で見られなくて済むよ! そんな場合じゃないでしょう。
「新入生歓迎会は遊びではないのよ」
ごもっともです、はい。これについては何も言い返せませんです。さーせん。
「4人は講堂の使用許可を取りに来たんやろ? 部活でもないのに生徒会が内容までとやかく言う権利はないはずやん?」
「そ、それは……」
東條が助け舟を出してくれた。会長がたじろいでるぞ! いいぞ、もっとやれ! 結婚しよう!
「それと、3人がスクールアイドルをやるのは分かったけど、岡崎君は何するつもりなん?」
おぉふ……急な質問キタコレ。
東條にはちゃんと俺が見えていたみたいだ。思わず涙が出ないぜ……。出ないのかよっ。
「俺は3人のサポート。マネージャーみたいには有能じゃねぇから、せいぜいしてやれるのはお手伝いさん位かな」
俺はこいつらを出来るだけ手伝ってやる事になっている。マネージャーみたいに何をどうすればいいかとか、何を準備をすればいいとか、そんな難しい事は素人の俺にはまだ無理なのでお手伝いさんだ。ちゃんと勉強していくつもりだが、今はこれで妥協という事で。
「ふふっ、頼りになりそうなお手伝いさんやね。それじゃ、許可はしたからもう帰ってもええよー」
「おう、そんじゃ失礼しましたー」
俺の後に穂乃果達も礼をしてから退室して教室に戻った。
休み時間。
中庭に移動し、穂乃果に海未からの説教が始まろうとしていた。
「ちゃんと話したじゃないですか! アイドルの事は伏せておいて、借りるだけ借りておこうと! 拓哉君も何か言ってやってください!」
……あっれー? そ、そうだったっけ……? ちょっと待って記憶の引き出し探しても出てこない。確かに昨日、多人数で電話で話せる機能を使って4人で喋ってたのは思い出せる。色々話し合ってたけど……あ、そういや俺は買ったマンガ読んでて曖昧に返事してたからその時かな?
っべー、これっべーわ。ホントに俺が言わなくて正解だったわ。言ってたら海未にヤバイ事されるに違いなかった。何がヤバイってまじヤバイ。
「お、おう。な、ないわー穂乃果あれはないわー。まじ有り得ない。まじ借りパクリのアリエッティーなんですけど」
「何ですかその変な口調……」
「気にしたら負けだぞ海未。今は穂乃果を見るんだ俺を見るんじゃない」
変な汗かいてると怪しまれるからね!
そう言って穂乃果を見ると、
「ほぁんでー?」
は? 何言ってんのこいつ? と思ったらパン食ってた。まだ昼休みじゃねえぞ。
「またパンですか?」
「うち和菓子屋だから、パンが珍しいの知ってるでしょー?」
知ってるけどそんなにパンばっか食ってたら腹がパンパンになるぞ。え? 面白くない? はい、黙ります。
「……お昼前に太りますよ?」
「そうだよねー」
と言いながらもかぶりつく。おい誰か没収しろよ。
「お三方ー!!」
不意に声が聞こえた。
見るとそこにはいつもの3人がいた。
「出たなヒフミトリオ」
「そろそろそれについての決着をつけようか……」
目からバチバチと電気を飛ばす俺とヒデコ。もちろん現実に電気は出ていません。俺はどこぞの学園都市第三位ではない故。
「今そんな話をしにきた訳じゃないでしょ?」
フミコが苦笑いしながらも宥めてきた。この子はトリオの中でもポイント高い。ていうか空気読めるからポイント高い。
「仕方ねえ。今はフミコに免じて許してやる」
「何も許してほしい事なんてないわ!!」
「ところで、掲示板見たよー」
もうやり取りを無視された。フミコェ……。
ん? 掲示板? 何だそれ?
「スクールアイドル始めるんだって?」
「「え?」」
海未と声が重なる。
「海未ちゃんがやるなんて思わなかったあー」
何を言ってるんだこいつらは……?
そして穂乃果は何知ってそうな顔してんだ?
「掲示板に何か貼ったのですか!?」
「うんっ! ライブのお知らせを!」
「うぇ……!?」
こ、こいつ……。勝手に何しでかしてくれてんの?
まだ何も始めれてない状態で宣伝してどうすんだよ!? 気が早いってレベルじゃないぞ!
「勝手すぎます!」
廊下に海未の声が響き渡る。無理もない。
こうも勝手に動かれると一緒にやってる身としては対処がしづらい。
「あと一ヵ月しかないんですよ? まだ何一つ出来てもいないのに、見通しが甘すぎます!」
「そうだぞ穂乃果。いくら俺が気にせず前に進めって言っても、せめて相談してくれねえと何も言ってやれないだろ? 何事も計画性、報連相が大事なんだ」
「ホウレン草は好きだよ?」
「……ちょっと歯ぁ喰いしばろうか……?」
「気持ちは分かりますが落ち着いて下さい拓哉君。それと穂乃果。報告、連絡、相談。これを報連相と呼ぶのです」
拳を握る俺に海未は宥めてから、代わりに説明してくれた。
「そうなんだー! もうっ! 略さずに言ってよたくちゃん!!」
「……………………………………………、」
「拓哉君、落ち着いて下さい。顔が鬼になってますよ」
なんと、俺は今そんな顔になっているのか。ザケル連呼でもしたら電撃出るかな? まず魔物いなかったわ。
これまた海未が色々言ってると、穂乃果がぶーたれていた。
「ぶー、でもことりちゃんは良いって言ってたよお?」
なに? ことりが良いと言っていただと……?
なら仕方ない。マイラブリーエンジェルが言うならそれは正義だ。
教室に戻ると、ことりは何かを紙に描いていた。
「ことり……?」
「何描いてんだことり?」
「……うんっ、こんなもんかなあっ! 見て、ステージ衣装を考えてみたの!」
そう言ってことりは俺達にも見えるようにイラストをこちらに向けてきた。
ふむふむ、なるほど、これはこれは。
「おお!! 可愛いー!」
穂乃果が絶賛する中、俺も、
「うん、これは確かに良いかもな。アイドルの衣装って感じがして」
「本当!? ここのカーブのラインが難しいんだけど、何とか作ってみようかなって」
「うんうんうん!」
「え、何? ことり衣装作れんの?」
「裁縫は元々好きだったから、挑戦してみるよ!」
これは驚いた。スクールアイドルをやる上で絶対に欠かせない衣装を作れるというのは非常にありがたい事だ。さすがマイラブリーエンジェル。
「ことり……?」
すると今まで見ていただけの海未がようやく口を開いた。
「海未ちゃんはどう?」
「えっ……と……」
「可愛いよね? 可愛いよね!?」
笑顔で聞くことりと穂乃果と違って、海未の表情は困惑していた。
おそらく多分、いや、確信をもって言うと恥ずかしいのだろう。
「こ、ここの、スーッと伸びているものは……?」
イラストのある1点を指し質問を投げかけてくるが、それは質問の意味を成していないような……。
「足だよ♪」
ことりが当然のように答える。むしろ足以外の何に見えるのか。
「……素足にこの短いスカートって事でしょうか?」
「アイドルだもん♪」
せやな。アイドルやもんな。短いスカートはアイドルの特徴と言っても過言ではないもんな。
それを受けて海未は頻りに自分の足をモジモジさせ始めた。おいやめろ。嫌でも視線が足に移っちゃうだろ。素晴らしい太ももしてんじゃねえよ。
「大丈夫だよ! 海未ちゃんそんなに足太くないよお」
穂乃果が海未のフォロー的な事を言ってるけど、男である俺の前でそういう事言っちゃいけないような気がするんだけど。
「ひ、人の事言えるのですか!?」
「えぁ、うーん。……ふん、ふんふんふん……」
海未に反論され今度は穂乃果が自分の足を触ったりして確認? している。
だから男の前でそういうのするのやめなさい。ガン見しちゃうでしょうが。
「……よしっ! ダイエットだ!!」
「2人共大丈夫だと思うけど……」
ことりの言った通り、俺から見ても穂乃果と海未は太いわけじゃない。むしろ細いくらいだ。何をそんなに気にする事があるのだろうか。女の子ってのはよく分からん。
「ああー、他にも決めておかなきゃいけない事がたくさんあるよねー」
確かに、これから活動するにあたって決めなきゃならない事は山程ある。早めに決めて活動し始めないとな。
「サインでしょ? 町歩く時の変装の方法でしょ?」
「いらねえよんなの……」
「そんな必要ありません!」
おいこいつ何も分かってねえぞお!
大事な事が抜け落ちすぎて妄想が先を行き過ぎてる。先を行き過ぎてもはや未来視してるまである。
もっと大事な、スクールアイドルを始めるのに最も大事な事を決めなければならない事があるだろ?曲をどう作るかとか、歌詞はどうするとかさ。
「それよりぃ……」
ことりが少し言いにくそうにしていたが、数秒置いて、意を決したように言って見せた。
「グループの名前……決めてないしぃ……」
あ。
「「「おぉ……!!」」」
それは忘れてたぜ!!
てへぺろ☆
どうでもいいですけど4月入りましたねー。
次の誕生日は真姫ちゃんの誕生日か……、何も思い付かなくてやばい。何がやばいってまじやばい。