ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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135.ラストライブ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幸い、朝の日差しは温かく、起きることにさほど憂鬱さは感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、こんなもんかね」

 

 

 

 

 

 既に布団を片付け、長テーブルとイスを元の位置に戻していつもの部室の状態に戻っていた上には、人数分の朝食が用意されていた。

 昨日の買い出しで買った余り物……というよりも元から朝食分も買っていたのだろう。卵やらベーコンやらがあったので適当に調理しておいたのだ。

 

 時間はμ'sが起きるよりも30分前に起きて着替えて準備していたからスムーズに事が進められた。

 おかげでもう穂乃果達も起きる時間になるだろう。

 

 

「いい天気ー!」

 

 ふと、向こうの部屋から穂乃果の声が聞こえた。

 どうやらアラームが鳴る前に目が覚めたらしい。穂乃果にしては珍しいと思う。

 

 

「起っきろー!」

 

 こっちの部屋にいてもはっきりと穂乃果が聞こえるということは、海未達からすれば十分な目覚ましボイスに早変わりしているだろう。

 朝食もできたしちょうど良いと思い穂乃果達のいる部屋のドアを開ける。

 

 

「朝だよ! ラブライブだよ!」

 

「そうだぞ。朝だしラブライブだ。だからしっかり飯は朝から食っとかないとな。そんなわけで朝食タイムだ」

 

「おお、良い匂い!」

 

 

 

 元気な穂乃果とは打って変わって眠気に襲われながらのそりのそりと移動を始める女神達。

 何気ない朝の始まりのようにも見えるが、今日に限っては違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、今日はラブライブ本選の日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある意味においては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 μ's、最後の日である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇―――135話『ラストライブ』―――◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、会場……」

 

「おっきいね~!」

 

「ネットで見るのとリアルで見るのとじゃ全然違うな」

 

 

 朝食を済ませ諸々の準備も終えた拓哉達はさっそくラブライブ本選が行われる会場にまで来ていた。

 感心したように見ている穂乃果達と、全員分の衣装や道具入れという割とシャレにならない大荷物を1人で持っている拓哉。ここまでくるともう慣れちゃっていた。

 

 

「さすが本選のスケールは違うわねえ」

 

「こんなとこで歌えるなんてぇ」

 

「トップアイドル並に注目浴びているのよ! ラブライブは!」

 

「……そうだよね!」

 

 これだけの規模で高校生の女の子達が歌うとなると、確かにスクールアイドルの甲子園と言われるのも頷ける。

 全国のスクールアイドル達が目指しているのが、まさにこのステージだと再認識する。

 

 

「注目されてるんだ……私達」

 

「そりゃあな。こんなこと言っちゃなんだが、A-RISEを負かしたハンデはとても大きいんだ。μ'sの注目度は一番と思ってもいいだろ」

 

 ラブライブ第一回王者だったA-RISE。

 そのグループに勝ったとならば自然と優勝候補は見えてくるものだ。激戦区だった東京地区で本選に来たのはA-RISEではなくμ's。番狂わせもいいとこだろうと思う。

 

 

「凄い照明ですねえ」

 

「眩しいくらいだね~」

 

「これなら俺が手伝うこともなさそうだな」

 

 ステージ付近を見れば数十人ものスタッフがいて、入念に話し合いながら機材の調整や確認をしている。

 これでは拓哉の出番がなくなってしまうのだが、先程にこが言っていた通り、ラブライブはもう全国に認知され人気になっている。

 

 ともすれば本選では本格的に運営側も力を入れるのは当たり前のことなのだろう。

 それほど目の前にあるステージの規模が違う。圧倒的に。

 

 

「たくさんのチームが出場するわけやから、設備も豪華やね」

 

「気が引き締められるわね」

 

「引き締めすぎるのも良くはないけどな。何より……あ」

 

 脊髄反射のように口を開いた拓哉だったが、相手が絵里だと気付いて口をまた閉じる。

 

 

「? どうしたの、拓哉?」

 

「……あー、いや、別に、何でもない、ぞ?」

 

 昨夜の出来事のせいで思春期健全男子代表はどうも朝から絵里と話しづらいと思っているのだ。何せ学校でしかも夜で布団に潜り込んできたのだから無理はない。

 対して絵里は特に何も思っていないようで普通に接してきている。これが1年先輩の余裕なのだろうか。

 

 

「……ふふっ、昨日はありがとね」

 

「なッ」

 

 微かに頬を染めながら言ってきた絵里。さすがに彼女でも一時的とはいえ一緒の布団にいたことは恥ずかしかったのだろうかと思っている拓哉とは裏腹に、絵里はもっと別の意味で頬を染めていることには気付かない。例えば、寝ている時に頬へキスされたこととか。

 

 

「ここで歌うんだ……。ここで歌えるんだよ! 私達!」

 

「そうねっ」

 

 こちらが変に照れているあいだに穂乃果の方へ行った絵里を見て何だか負けた気持ちになるが、今はそんなこと考えている場合ではない。

 本番までまだ時間はあるが、ミーティングと軽いリハーサルはやっておかなければならない。機材運びだけが手伝いの役割ではないのだ。

 

 

「一通り見たし、控え室に行くぞ。これだけのステージなんだ。μ'sの魅力を最大限に発揮できるようにしないとな」

 

「そうだね! みんな行こう!」

 

 穂乃果が率先してみんなを連れて行く。

 それを後ろから見送ったまま、大荷物に苦戦しながら何とかポケットから自分の携帯を取り出して電話をかける。

 

 

 

 

 

「……もしもし、ああ、俺だ。ちょっと荷物がありすぎて入りきらなかったから頼みたいことがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 信頼できる友人へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよ、ラブライブが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やることをやっていれば時間はあっという間に過ぎていくもので。

 既にラブライブは始まりの目前まで迫っていた。

 

 時間は夜に近い夕刻。

 月がはっきりと見え、ただでさえ光で覆われているステージに自然の月明りが足されている。

 

 そこへ、ラブライブを見ようと色んな人達が集っていく。

 

 

「すごーい!」

 

「こんな大きい看板がでてる!」

 

「綺麗だねー!」

 

 岡崎唯。高坂雪穂。絢瀬亜里沙。

 音ノ木坂学院への入学が既に決まっている3人が、姉達の応援へ駆け付けた。

 

 

「唯、雪穂! 写真撮ろ!」

 

「はいはい」

 

「ちゃんと目標は映しとかないとね」

 

「ここを目指す写真!」

 

 来年、自分達もここへ出場するために、ちょっとした誓いを立てていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拓哉君に頼まれた衣装持ってきたけど、あとで渡しに行けばいいのかな」

 

「うへ~、こんな大きな会場で大丈夫かな穂乃果達」

 

「優勝候補とか言われてるし、緊張してるかも」

 

 ヒデコ、フミコ、ミカ。

 正式にμ'sを手伝っている拓哉とはまた違う形でμ'sを支える不可欠な3人もまた、会場にまでやってきていた。

 

 

「大丈夫よ。誰もいない講堂に比べたらどうってことないでしょ」

 

「……そうだね。それに、拓哉君もいるし」

 

「って、それより時間大丈夫!? 各校の応援席って入場時間決まってるんでしょ?」

 

「ほんとだ! 拓哉君にはあとで連絡入れればいっか!」

 

 急いで応援席に向かう。

 そういえば拓哉が関係者登録にヒデコ達の名前も書いていたから特別焦る必要もないし、何だったら特等席もあるのだが、すっかり言い忘れている少年へ怒りの鉄拳が飛ぶのはまた後日の話になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのー」

 

「?」

 

 高校生の女の子達が出るということは、その家族も当然応援しに来るわけで。

 

 

「使います? これ」

 

 南ことりの母親、南陽菜が高坂穂乃果の母親、高坂桐穂へサイリウムを片手に声をかけた。

 

 

「……ご心配なく! こちらも準備は万端ですので! ねっ、春奈!」

 

「ええ、うちの旦那がお店で無駄に大量購入してきたので、何ならもっと入りますか!」

 

「無駄にとか言わないでくれない? うちの息子が穂乃果ちゃん達を手伝っているので、これは全力で応援しないとと思いましてね」

 

「あら、では私にもそれを貸していただけませんか?」

 

「おお、千尋さんもなんて珍しい!」

 

 岡崎春奈。岡崎冬哉。μ'sを手伝っている岡崎拓哉の両親は腰にまでサイリウムを装備していたのだ。

 無駄な重装備を見つけたのか、はたまた見知った人物が数人いたからか、園田海未の母親、園田千尋もやってきた。

 

 

 ここで何気に、幼馴染達の両親が揃ったのである。

 

 

 

 娘達の晴れ舞台を見るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いなあ、穂乃果先輩達。ここまでやってきたんだ~」

 

 

 

 少し離れたところで、桜井夏美は感心したようにラブライブの看板を見上げていた。

 

 

 

「あたしが言うのもなんだけど、色んなことがあったのに成長したもんだよねえ」

 

 μ'sの1年組と仲がいい夏美は、よく花陽達とグループトークをしている。

 だからμ'sで何かあったら真姫が愚痴っぽく言ったり凛がぶっちゃけたり花陽がフォローしたりと、望まなくとも色々分かっちゃうのだった。

 

 

「先輩のとこに行って弄っちゃうのもいいけど、どうせ関係者以外は入れないだろうし、今日は素直に応援でもしますかね~」

 

 

 

 

 

 そう言って、あざとい称号を持つ後輩は人混みへと容赦なく突っ込んでいく。

 目の前で精一杯応援するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歓声が外から聞こえてくる。

 ラブライブはもう始まっていて、どれだけ緊張していても必ず出番はやってくるのであって、次が大トリのμ'sの出番。

 

 

「たくちゃーん!」

 

「来たか」

 

 控え室で穂乃果達は衣装に着替えていたため、拓哉は通路で1人待っていた。

 穂乃果の声で壁にもたれ掛かっていた背中を離す。

 

 

「どう、たくちゃん! ことりちゃんの作った衣装可愛くない!?」

 

「今までで一番可愛くしようと思って頑張っちゃった!」

 

「……、」

 

「どうしたのですか?」

 

 思わず硬直してしまっていたらしい。

 海未の声でようやく正気に戻る。

 

 

「……あ、わ、悪い……。正直、お前ら全員に、見惚れちまってた……。うん、最高に似合ってるよ」

 

 拓哉からの思わぬ素直な発言に、出番直前でμ'sの顔が沸騰した。

 ことりの気合いが入った衣装はもちろんだが、元の素材がいい穂乃果達が可愛い衣装を着るとより魅力的に見えてしまう。

 

 

「こ、こういうときは素直なんだから~もうたくちゃんは~!」

 

「やかましい! 俺だって素直に褒めるときくらいあるわ! 何ならいつも素直だわ!」

 

 それはない、と拓哉以外の全員が心で思っているとは少年も想像していないだろう。

 

 

「ったく、それよりほら、聞こえてるだろ。客の声が」

 

 言われて、耳を澄ますことなく歓声は響いていた。

 おそらくこれまでやってきたライブの中で、一番観客が多いライブになることは間違いない。

 

 そう思うと、色んな気持ちが込み上げてくる。

 

 

「お客さん、凄い数なんだろうなあ」

 

「楽しみですよね」

 

「「え?」」

 

 海未の言葉に、幼馴染の穂乃果とことりがいち早く反応した。

 

 

「もうすっかり癖になりました。たくさんの人の前で歌う楽しさが!」

 

「海未ちゃん……」

 

「言うようになったな、海未」

 

 μ'sを始めた当初のことを思い出す。

 チラシ配りでさえあれほど恥ずかしがって塞ぎ込んでいたのに、今ではもうその影も見えない。衣装も堂々と着ている。

 

 

「大丈夫かな……ほんとに可愛いかな……」

 

「大丈夫にゃ! たくや君も言ってたんだしすっごく可愛いよ! 凛はどうっ?」

 

「凛ちゃんは可愛いよ!」

 

「そうだぞ。俺が素直に言ったんだ。可愛いに決まってるさ」

 

 花陽もすぐに不安をなくし、凛も今となってはリーダーとして自信もついている。

 

 

「今日のウチは遠慮しないで前に出るから、覚悟しといてね!」

 

「希ちゃんが?」

 

「なら、私もセンターのつもりで目立ちまくるわよ。最後のステージなんだから!」

 

「面白いやん!」

 

 普段から裏で支えてきた希も、みんなのまとめ役として一歩引いたところから支えてきた絵里も、今日に限っては遠慮をなくすつもりでいくらしい。

 彼女達にとっては、今日が最後のステージだと分かっているから。

 

 

「おお、やる気にゃー! 真姫ちゃん、負けないようにしないと!」

 

「分かってるわよ。3年生だからって、ぼやぼやしていると置いて行くわよ。宇宙ナンバーワンアイドルさん?」

 

「ふふん、面白いこと言ってくれるじゃない。私を本気にさせたらどうなるか、覚悟しなさいよ!」

 

 真姫の挑発にノリよくにこが反応する。

 そこに緊張は一切見えない。いつものμ'sと変わらないようにも見えるが、それこそが大事なんだと思う。

 

 いつものように、存分に楽しんでいくだけ。

 

 

「……さあ、そろそろ時間だ。穂乃果」

 

「うん」

 

 輪の外から拓哉が声をかける。

 穂乃果は軽く頷くだけ。だが、それでいい。それだけで、意志疎通はこなせる。

 

 

「みんな、全部ぶつけよう。今までの気持ちと、想いと、ありがとうを、全部乗せて歌おう!」

 

 リーダーの本領が発揮された。

 言葉一つ一つでメンバーの心に火を点ける。

 

 そして、いつも通り。

 9人の手が輪っかを形作る。

 

 

「……、」

 

「どうしたのですか?」

 

 いつもなら何か言う穂乃果なのに、何も言わないことを疑問に思った海未が声をかける。

 

 

「何て言ったらいいか、分からないんだ」

 

「え?」

 

「何よそれ?」

 

「だって、本当にないんだもん。もう全部伝わってる。もう気持ちは一つだよ。もうみんな、感じていることも、考えていることも同じ。そうでしょ!」

 

 何も言う必要はない。

 それほどに、気持ちが一体化していると確信できる。

 

 不確かだけど、確かにそう思っている。

 それは少年も同じだった。

 

 なので、何も言わない。

 言わなくても分かる。

 

 

 

 

 だから、あとは鼓舞だけでもいい。

 

 

 

「……μ'sラストライブ。全力で飛ばしていこう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 岡崎拓哉は静かに思っていた。

 

 

 

 

 

「1!」

 

 

 

 

 

 これまで自分は幾度となく手伝いという役割を主としていて、決してメンバーというわけではない。

 

 

 

 

 

「2!」

 

 

 

 

 

 自分の立場を弁えて、一歩引いて、ずっと穂乃果達から誘われていたのに拒否を続けてきた。

 

 

 

 

 

「3!」

 

 

 

 

 

 そうじゃなければ9人のμ'sの意味がないと、異物は入るべきではないと否定してきた。

 

 

 

 

 

「4!」

 

 

 

 

 

 だけど、崩壊しかけていたあの事件から考えが少しずつ変わっていった。

 

 

 

 

 

「5!」

 

 

 

 

 

 自分は異物なんかではない。もし異物なのだとしても、彼女達は決して拒みはしなかった。

 

 

 

 

 

「6!」

 

 

 

 

 

 いつしか、少年はその輪に入ってみたいと密かに、無自覚に思っていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

「7!」

 

 

 

 

 

 女神を守るためにヒーローとして、堂々と自分はμ'sの仲間なんだと名乗れるための自信がほしかったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「8!」

 

 

 

 

 

 μ'sと一緒に過ごしてきて、色んな壁を一緒に乗り越え、共に進んできた今だから、もう、みんなは認めてくれるだろうか?

 

 

 

 

 

「9!」

 

 

 

 

 

 誰も、その輪に入ったとても、迎えてくれるだろうか。もしかすると拒まれるだろうか。そんな不安はないと言えば嘘になる。

 それでも、これが最後だから、許されてもいいのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 最後くらいは、その輪に入っても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……10」

 

 

 

 

 

 少年の築いてきた道は、奇跡だったはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「……っ!?」」」」」」」」」

 

 小声で言ったつもりなのに、女神達にはハッキリと聞こえたらしく、全員がこちらへ振り向いた。

 数秒間の沈黙が支配する。

 

 思わず目を逸らしていた少年が恐る恐るμ'sの方へ視線をやると。

 

 

「ッ」

 

 全員が、微笑んでくれていた。

 まるで最初からあなたはその輪の中にいるんだよと、そう心に訴えかけてくれるかのように。

 

 もう一度女神達は輪の中へと視線を戻す。

 気持ちは9人から10人へと変わる。

 

 

 

 

 

 

 最後の1ピースが、ようやく揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「μ's! ミュージック、スタート!!」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Music:KiRa KiRa Sensation!/μ's

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思えば、優勝候補と言われていた時から、見ている観客は分かっていたのかもしれない。

 それは岡崎拓哉も一緒で、自信がなかったわけでもない。

 

 むしろ自信しかなかったと言っても過言ではなかっただろう。

 でも、だからこそ、誰もが文句のない結果になったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 μ'sは、優勝した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり」

 

 

 

 

 

 舞台裏で待っていると、穂乃果達が涙を溜めながら戻ってきた。

 一度は諦めていたはずの、念願の目標が達成されたのだ。

 

 

「ただいま……たくちゃん……!」

 

 みんなが抱き合いながら満面の笑みを零している。

 無理もない。だから今はこの時間を思う存分噛み締めてもらおう。

 

 

 

 とは、言えない状況だった。

 

 

「喜びたい気持ちも分かる。泣きたい気持ちも分かる。だけどその前にさ、耳、傾けてみろよ」

 

「え……?」

 

 耳を澄ませば、それは聞こえてきた。

 

 

 

「アンコール! アンコール!」

 

「アンコール! アンコール!」

 

「アンコール! アンコール!」

 

「アンコール! アンコール!」

 

「アンコール! アンコール!」

 

 

 

 駆け付けて来てくれた妹達。

 

 応援してくれる仲間。

 

 競い合ってきたライバル。

 

 支えてくれた両親。

 

 精一杯声を張り上げてくれる後輩。

 

 

 

 

 そして。

 

 そして。

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 観客のみんなが、μ'sの舞台をもう一度見たいと思ってくれている。

 

 

 

 

 

「……、」

 

 これほど、求められたことがあっただろうか。

 これほど、応援してくれる人達がいただろうか。

 

 いつかのファーストライブを思い出す。

 

 

 

『このまま誰も見向きをしてくれないかもしれない。応援なんて全然もらえないかもしれない……。でも、一生懸命頑張って、私達がとにかく頑張って届けたい! 今、私達がここにいるこの想いを!!』

 

 

 

 もう、涙を堪えきれるはずもなかった。

 流したくなくても、自然とそれは溢れてしまう。

 

 

「これが、これこそが、お前達が勝ち取ったものだ」

 

 隣で少年が言う。

 

 

「誰もいない講堂から全てが始まって、誰かが気付いてくれる。応援してくれる。そんな願いを込めてここまでやってきたμ'sだからこそ、こうして誰もがお前達を見たいと思ってくれているんだ」

 

 ずっと見守ってきた。

 支えてきた。

 

 だから分かる。

 穂乃果達が秘めていた願いがどれほどのものかを。

 

 そんな純粋な願いだから、ここまで頑張ってこれたのだと。

 積み上げてきたものは決して無駄ではなかった。

 

 その結果がこの声援だ。

 

 

「行ってやれよ。もう一度、観客が見たいと思ってるμ'sを見せてやれ。準備は整ってる」

 

 先日、拓哉がラブライブのルールを確認している時、サイトにはこう書かれていた。

 優勝したチームは、アンコールがあればもう一曲披露していいと。

 

 だから、あの時拓哉は最後の練習に提案した。

 

 もしもの時のために。

 

 

「あるだろ。本当は第一回ラブライブに出場した時のために用意していた曲が。それが、結局は出場できなくて輝くことのできなかったそんな曲が、今こうして優勝してキラキラ輝きながら披露できるんだ」

 

「……うん、うん……ッ!」

 

 拓哉の背後からヒデコ達が衣装を手に持って走ってきている。

 ずっと披露することができなかった曲。

 

 第二回ラブライブで使うこともできたが、どうにもそういう気分ではなくて眠っていた曲があった。

 

 

 

 

 でも今は、今日この時のために温存されていたんだとさえ思ってしまう。

 

 

 

 

 

「行ってこいよ。μ's」

 

 

 

 

 

 最後の背中を、ヒーローが押す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女神の歌ってやつを、輝きを……存分に披露してこい!!」

 

 

 

 

「「「「「「「「「……はい!!」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Music:僕らは今のなかで/μ's

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奇跡は、確かにこの場で起きていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二回ラブライブ優勝者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

μ's。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年に見守られながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

9人の女神は、ステージでキラキラと輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 さて、いかがでしたでしょうか?


 これにて最終章・破。
 ――完――。

 最後のライブくらいは、ずっと支えてきた少年も入れてあげて10人の声があるのもいいかなと。
 そのためにずっと少年は立場を弁え拒み続けてきたのです。
 アンコールに関してはアニメじゃちょっと不明瞭なとこがあったので、こちらの解釈で補わせていただきました。
 次回、最終章・急。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!


では、新たに高評価(☆10)を入れて下さった


スピリチュアルなカリスマさん


一名の方からいただきました。ここで高評価を入れて下さるとはありがたすぎる……本当にありがとうございました!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!




『悲劇と喜劇の物語』の最新話更新できなくてすいません。
先日発売された地球防衛軍5が面白すぎるのが悪いんだ!!
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