どうも、後書きの方に3周年記念告知みたいなもの書いてますので、ぜひご一読を。
「あ、絵里ちゃん」
「やっぱここにいたのか」
「穂乃果、拓哉も」
目的地の生徒会室のドアを開けば、そこにいたのは絵里だった。
何となく絵里が行きそうな場所はここなんじゃないかと思っていた拓哉の予想も大当たりである。
「どうしたの、希ちゃん探してたよ?」
「別に用があったわけじゃないんだけど、何となく足が向いて」
「元生徒会長だもんな」
自分がひたすら頑張って学校のために動いていた時期を思い出すと、生徒会長だった時の記憶が今でも鮮明に思い出される。
良くも悪くも忙しい日々だった。だけど、それも今となっては良い思い出に変換されている。
「式の準備は万全?」
「うーん……万全ってほどじゃないけど、大丈夫! 素敵な式にするから楽しみにしててね! ねっ、たくちゃん!」
「ん、まあ音ノ木坂だからこそできる卒業式にはなるかもな」
「そうだよそうだよー!」
拓哉の言葉に小さな疑問が出てくるが、それよりも先に口から言葉が出てきた。
「ありがと……」
「……心配事?」
お礼を言う絵里の表情にほんの陰りがあるような気がした穂乃果。
けれど絵里はすぐに首を横に振る。
「ううん。ただ、ちょっとだけ……昨日アルバムを整理してたら生徒会長だった頃のことを思い出してね。私、あの頃何かに追われているような感じで全然余裕がなくて、意地ばかり張って……」
「絵里ちゃん……」
「……、」
「振り返ってみると私、みんなに助けられてばっかりだったなあって……」
懐かしむように生徒会室全体を見る絵里。
本当に廃校を何とかしようと色々奮闘してきたが、どれも上手くいかず余裕なんてどこにもなかった。
自分が何とかしなければならないという思考に捉われ、解決策なんていくら出しても何もならなかった。
そんな中で穂乃果達と出会い、ぶつかり、仲間になって、共に廃校を阻止することができたのは一番の功績だっただろう。
酸いも甘いも噛み締めてきた。
そんな思い出が詰まったここには、特別な思いがあったからだ。
絵里のそういう気持ちを、全てではないが現生徒会長の穂乃果も分かっているつもりである。
だから、そっと絵里を抱きしめた。
「ほ、穂乃果っ?」
「絵里ちゃん、私達がラブライブに間に合わないかもしれない時、こうやって受け止めてくれたよね。私達も同じだよ。生徒会長になって、ここにいて、絵里ちゃんが残していったものをたくさん見た……。絵里ちゃんがこの学校を愛しているということ、そして、みんなを大事に思っているということ。絵里ちゃんの思いは、この部屋にたくさん詰まっていたから、私は生徒会長を続けてこられたんだと思う」
手を差し伸べる。
確かに生徒会長をやっていて色んな苦労の方が多かったかもしれない。余裕なんてどこにもなく、ずっと何かに追われていたような感覚ばかり感じていて楽しさなんて感じることも上手くできていなかったかもしれない。
それでも、それだけの思いはちゃんとここに残されている。
絢瀬絵里という少女が頑張って紡ごうとしてきたものは、しっかり後輩へと受け継がれ、ずっと続いていく。
「本当にありがとう」
「っ……もう、式の前に泣かさないでよ……」
握手という形で差し出された手を取る。
ほんのりと涙を浮かべる絵里とは対照的に穂乃果は笑う。笑って送り出すために。
「へへ、じゃあ行くね。……あ、希ちゃん!」
さっさと生徒会室を出たところに希が待ち伏せていたかのように壁にもたれかかっていた。
「やっぱりここやったんやね」
「お前も分かってたんじゃねえか」
「また後でねー」
さりげないツッコミは華麗にスルーされ、ヒデコ達を待たせている穂乃果だけが走り去っていく。
少年を残して。
「そんじゃ、後ほどな」
「あら、拓哉は何か言ってくれないの?」
「あん?」
怪訝な顔で振り向くも、絵里と希のあまりにも優しい表情にすぐ毒を抜かれてしまった。
こちらをからかうような言いぶりでいて、ほんの少しの期待と緊張を持ち合わせたような顔の2人。
正直、さっき穂乃果の言っていたことが全てだったのだ。
だから拓哉からは特に何も言うことはないというか、言っても穂乃果とだだ被りしてしまうので格好もつかなかったりする。
「……あー、まあ、その、何だ……」
だけど、それでも。
今まで生徒会としてもμ'sとしても頑張ってきたこの2人にかける言葉があるとするならば。
軽く息を吐いて力を抜く。
そして改めて絵里と希の方へ顔を向けて言い放つ。
去る者への感謝と受け継ぐための本音を。
「お疲れさま」
「「ッ……!」」
たった一言。
されど一言。
何気ないようなそのちんけな言葉が、正しい意味を持って見守ってきた少年から2人の少女へ向けられた。
感謝を求めていたわけではない。労いを求めていたわけでもない。
ただがむしゃらに目の前のできることを必死にやってきただけなのだ。ちっぽけな少女達が無謀な挑戦をやってのけようとした、そんなある種の青春の1コマのようなものだった。
他の生徒が誰かとお喋りしながら弁当を食べたり、一緒に帰りながらどこか寄っていったり、そんな当たり前の日常さえ犠牲にして色々なことを考えていた。
様々なことが起こりすぎて思考がそこまで向いていなかっただけかもしれない。
だからこそ。
少年から放たれたたった一言の労いが、2人の元生徒会代表だった少女達の心に深く突き刺さった。
岡崎拓哉はもう体育館へ向かったためここにはいない。
生徒会室の前に取り残された絵里と希は、再び流れそうになってしまう雫を拭い、穂乃果と拓哉が去った方を見る。
「……大きくなったわね」
「そうやね……。もう……立派な生徒会長に、立派なヒーローやね……」
―――――――――――――――――――――
卒業生が入場してきた。
それを在学生と保護者達が拍手でもって迎え入れる。
「音ノ木坂学院は、皆さんのおかげで来年度も新入生を迎えることができます。心よりお礼と感謝を述べると共に、卒業生の皆さんが輝かしい未来に向けて羽ばたくことを祝福し、挨拶とさせていただきます。おめでとう」
「続きまして、送辞」
理事長の挨拶が終わっていよいよ、ある意味全校生徒にとってのメインイベントが始まる。
「在校生代表、高坂穂乃果」
「はい!」
現生徒会長の穂乃果が立ちあがる。
舞台に行こうとしたところで、隣にいた拓哉から小声で声を掛けられた。
「しっかりな」
「……うん」
とても短いやり取り。
だけど、深い繋がりがある2人だからこそ、真意は伝わった。
「送辞。在校生代表、高坂穂乃果」
決して多くはないが少なくもない人数を前にして、臆すことなく高坂穂乃果は堂々と舞台へ立つ。
「先輩方、ご卒業おめでとうございます。実は、つい一週間前までここで何を話そうかずっと悩んでいました……。どうしても今思っている気持ちや、届けたい感謝の気持ちが言葉にならなくて……何度書き直してもうまく書けなくて……。それで気付きました! 私、そういうの苦手だったんだって!」
突然のカミングアウトだった。
「……ほ、穂乃果?」
「ぶふっ」
困惑している絵里に、知ってはいたが思わず吹き出す拓哉。
これじゃ送辞ではなく自己紹介じゃないかというツッコミは一週間前にやった。
「子供の頃から言葉より先に行動しちゃう方で、時々周りに迷惑かけたりもして……自分を上手く表現することが本当に苦手で……不器用で……」
それでも卒業生の誰もが黙って聞いているのは、この学校を救った代表が穂乃果だから、きっと何か意味があると思っているからだ。
それに、在校生は穂乃果が何をしようとしているのか予行練習ですでに知っているから黙っているというのもある。
「でもそんな時、私は歌と出会いました! 歌は気持ちを素直に伝えられます。歌うことで、みんなと同じ気持ちになれます。歌うことで、心が通じ合えます。私は、そんな歌が好きです。歌うことが大好きです!!」
「(ほんと、送辞って感じじゃないよなあ)」
「(ですが、それを穂乃果らしいと言ったのは拓哉君ですよ)」
「(……ああ。そうだな。あいつだからこそ思い付けたんだ。ならやっぱり、あれが
小声で会話をする拓哉と海未。
生徒会役員とその手伝いである2人は事前に穂乃果から何をやるか聞いていた。だから全てを知ってはいるが、やはり思ってしまうものは思ってしまうのだ。
「先輩、皆様方への感謝と、皆様のこれからのご活躍をお祈りし、これを送ります」
突然、ピアノにスポットライトが当てられ、そこにμ'sの作曲を担当している西木野真姫が座る。
それを意味しているのは、これから歌が始まるということ。
言ってしまえば、送辞と卒業ソングを兼ねたものだった。
Music:愛してるばんざーい!/μ's、音ノ木坂学院全校生徒
曰く、音ノ木坂学院は元々音楽学校という側面を持っていた。
曰く、それ故にアーティストを目指していた生徒も多数いたという。
曰く、卒業式では卒業生へ送る伝統のある歌があった。
曰く、いつしか音ノ木坂学院は衰退し、音楽学校という側面もなくなり、伝統の歌でさえ歌うことはなくなったらしい。
ずっと眠ることしかできなくなっていた音ノ木坂学院の伝統ある歴史が今、ここに蘇った。
穂乃果や真姫の後に次々と歌いだしていくμ'sメンバー、それに続くように予行練習でやった順番通りに音ノ木坂の生徒達が歌を紡いでいく。
いつしか全校生徒がそれを歌い、スクリーンには教室の風景や講堂、中庭に校庭の写真が映し出されている。
これが穂乃果と拓哉が考えていた卒業生へのサプライズだった。
どこの学校でも聞いたことあるような送辞ではなく、音ノ木坂学院だからこそできるような事。
眠っていた伝統を歌うことで廃校から救い上げた今だからこそ蘇らせる事。
生徒全員が歌っているということは、当然男1人だけの岡崎拓哉も歌っている。
一生に一度しかない高校の卒業式。
しんみりするのも決して悪くはないんだろうが、どうせなら明るく歌で見送ってやりたい気持ちがあったっていいはずだ。
そんなちょっぴり優しくて、伝統に触れて、先輩思いの後輩達の最高の贈り物ができた。
卒業式は、終わりを迎える。
さて、いかがでしたでしょうか?
とうとう卒業式です。
アニメでは直前まで送辞の言葉が浮かばなくて歌を歌う選択をした穂乃果でしたが、少し不自然ぽかったのでこちらで勝手に都合合わせして一週間前にできた感じにしました。
愛ばんに関しては元々伝統のある歌として音ノ木坂にあった風にして、それなら本編序盤で真姫が1人ピアノ演奏してたのも納得いくかなと。
アニメと展開は同じでも、過程や都合を変えてみて一味違った音ノ木坂学院ならではの送辞と卒業式にしましたがいかがだったでしょうか。
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
では、新たに高評価(☆10)を入れて下さった
t.kuranさん
ぴんころさん
計2名の方からいただきました。
本当にありがたいコメントをいただけて感無量です。ありがとうございました!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!
【告知】
1月11日をもちまして、『奇跡と軌跡の物語』がめでたく3周年を迎えることができました!!
飽き性な自分が3年もの間、ほぼ1週間更新を続けてこられたのも、いつも読んで下さる皆様と、ご感想高評価(☆10)をくださる皆様方のおかげです。
1周年目はコラボしましたが、2周年目は何もなし。ですが物語も終盤を迎え、せっかく3周年を迎えたので何かやろうかなと思っていた時に、感想やTwitterで多くの質問をいただいたのです。
Q.劇場版の物語はやらないんですか?
と。
自分も結構前からずっと劇場版の話をやるかやらないか迷っていたんですけど、結構劇場版の話を望まれている方も多数いたので、じゃあいっそ吹っ切ってやろうという結論になりました。
そんなわけで!
『劇場版ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~』
やります!!!!
あと劇場版が終われば番外編もちょくちょく書くかもです!!
どうせやるならちょっと目標も欲しいなと思い、今感想数がもうすぐ800件に高評価(☆10)が150件に到達しそうなので、せっかくならキリの良い感想数1000件と高評価(☆10)200件は目指したいと思います!
ですのでこれから感想も高評価もドシドシいただければなと。
一緒に目標達成目指しましょう!
ということで、今年も『奇跡と軌跡の物語』をよろしくお願いします!!
もうちっとだけ続くんじゃ。