「あ、は、はい……いえ~す……」
「ああっ、ちょっと花陽! 鞄!」
「え、嘘、俺助手席? アメリカに来ていきなり未知の世界に座らないといけないの?」
いや、でも確かアメリカでは助手席は乗客席って呼ばれてるんだっけか。
そんなことはどうでもいい。日本語がうまく通じないのに客とはいえ隣に座るだけで何か色々怖いんですが!
さて、アメリカに着いた瞬間にさっそく1人ピンチに陥ったわたくしですが、よくよく思い出してみればここには我らのクォーター美人絢瀬絵里ちゅわんがいる。
絵里がいれば英語もうまく乗り越えられるんじゃないか?
「そんなこと思っていそうだけど残念なお知らせよ拓哉。英語とロシア語は違うのよ」
「まあそんなことだろうと思ってたし何となくちょっと期待してただけですよちくしょぉー!」
あとそんな顔に出てましたっけ俺。やだ、顔に出すぎ系男子としてモテちゃうかしら。多分永劫それはない。
「絵里!」
「ん?」
「あの、だ、大丈夫なのですか?」
「平気よ。そのメモ、運転手さんに渡して」
「諦めろ海未。お互い未知の世界で不安もあるだろうけど、きっと大丈夫だ。そう、メイビー」
そういやホテルの場所の名前は既にメモに書いてたからそれを渡すだけで大丈夫なのか。
日本のタクシーだとたまに話しかけてくる運転手もいるけど、こっちはどうなんだろう。もし話しかけられたら俺は寝たフリする。心に決めた。君に決めた。
「しかし―――、」
「海未ちゃん、次の人待ってるから!」
「乗るにゃー!」
天使とネコ娘に連れられて行く海未。
こういうときの海未は弱気も弱気になるのであの凛でさえことりのフォローに加わる必要があるのだ。心を強く持て、海未。
「さて、んじゃ出発だな」
こうして、俺達を乗せたタクシーは動き出す。
「今頃海未は文句言ってそうだな」
「海未ちゃんってこういうとき一番ダメになるからね~」
「絶対変な所に連れていかれたりしないかって言ってるぞ。俺には分かる」
「正規のタクシーなら心配ないってさっきも話したばかりなんだけどね」
到着までに時間がかかるため、車内ではやはりトークに華を咲かせるしか暇つぶしはない。
幸い運転手も話しかけてくる感じもなさそうだし、俺の安全は守られそうだ。
「あいつは弱気になったらとことんネガティブ要素出してくるからな。何で海外でライブする必要あるのかとか大前提分かってて否定してそうだもん」
「あれ、そういえば何で海外でライブやるんだっけ?」
「穂乃果ちゃん……さすがにそれは……」
「諦めろ花陽。バカは死んでも直らないって言うしな」
「諦め早すぎない!?」
出発前にあんだけ言っといて現地来たら忘れるって何だよ。
バカ通り越してカバか。カバなのかお前は。カバのほうが賢いぞ多分。
「はあ……理事長が言ってたでしょ? こっちのテレビ局がスクールアイドルを紹介したいから音ノ木坂にオファーがあったって」
「ラブライブ優勝したと思ったら今度は海外って、スケールがとうとう世界にいっちゃったもんな」
「秋葉ドームの収容人数は第二回決勝会場のおよそ10倍」
「10倍!? そんなに大きいんだ……」
「ラブライブに人気があるとはいえ、今の実績だけでは会場を押さえることは難しいんです」
「そこでこの中継でさらに火を点けて」
「ドーム大会での実績を作ろうってわけだ」
海外メディアもどうやってスクールアイドルを嗅ぎつけたのかはこの際どうだっていい。
大きいのは抜擢されたのがμ'sだということ。
優勝者ってのは分かるけど、それなら前回優勝者のA-RISEにオファーがあっても不思議ではないのだ。
なのにμ'sが選ばれたってことはとても光栄だし、メディアにとってはμ'sが一番輝いていたように見えたってのもあるんだろう。
ちなみにμ'sにオファーがあったため、海外までの交通費やホテル、その他諸々の費用はこっちのテレビ局が出してくれるようになっている。もしやと危惧していたが、手伝いの俺にもちゃんとその費用は入れられているらしく、自腹を切る必要もなかったわけだ。
まあちょっとした観光も含められているからそういうのは個人の持ち金で、というのが俺達の決めたことになった。
「っと、見えてきたぞ」
トンネルを抜けた瞬間、晴れた空の下には大量のビル群が見えた。
何というか、実際に見ると実感がすごく湧いてくる。俺達はやってきたのだと。日本という島国から、世界の代表国と言っても過言ではない、アメリカへ。
「うわー! ビルがたくさんあるよ!」
「ほんとだ!」
「あの橋、本で見たことある!」
おうおう、あの絵里さんも少女が如くはしゃいでおられる。
あの〇〇本で見たことあるって初めて現実で聞いたわ。しかも卒業済みの高校3年生が。
「あ、見て見て! おっきいトラック!」
「危ねえからあんま車から顔出すなよ~」
はしゃぐ気持ちも分かるがタクシーの運転手もいるんだしもうちょっと恥じらいを持て。ほんとは俺もはしゃぎたいの我慢してんだから。
「……ん?」
何となくサイドミラーを見ると、後ろにいたタクシーが曲がって行った。
確かあれって海未達が乗ってたタクシーのはず。近道とか見つけて曲がったのか?
まあ、メモ渡したんだし大丈夫か。
どっちみち英語が喋れない俺には運転手に話しかけても通じないし。
「わあー! 大きなホテル~!」
「これに俺達が泊まるのか。てか泊まっていいのかこんなホテルに俺達が……」
恐るべしアメリカ。
ただの高校生がこんなリッチなホテルに泊まれるなんて、テレビ局様様だぜ。
「おっきなロビー! 見てみてたくちゃん! シャシャシャシャシャンデリアだよ! 一般市民には縁のないシャンデリアがあるよ! 周りの人も英語しか喋ってないよ!」
「お、おおおおお落ち着けって。まずはチェックインするためのシミュレーションをだな……」
「ロボットダンスの何がシミュレーションなのよ」
あれ、アメリカといえばロボットダンスからコミュニケーションとるのが普通だろ。あ、それはターミネーターか。
……ターミネーターのほうがクネクネ動いてたしそもそもあいつらコミュニケーションとらずに銃ぶっぱしてたな。
「とりあえず、これであとは海未達が到着すれば全員ね。ちゃんと場所は教えたの?」
「そういやまだ来てないな海未達」
さっき曲がって行ったのは近道があったからじゃないのか?
渋滞に巻き込まれてたりするのか?
「任せて。穂乃果がメモ渡してあるから」
「ちょっと待て」
間髪入れずに絵里と穂乃果のあいだに割って入る。
そうだ。俺ももっと早く気付くべきだった。絵里が直接メモを海未に渡していたら、きっと海未も疑問を持つことなく聞いてくることはなかったんじゃないかって。
穂乃果に手渡されたメモだなんて、俺も不安すぎてタクシー乗るの憚れるわ。
そして極め付きはさっき曲がって行った海未達のタクシー。あれは近道でも遠回りでもない。ただ行き先が違うだけだった。
もしそうなら……結構ヤバイんじゃないか?
「なあ穂乃果」
「なに?」
「今すぐお前が書いておいたメモの文字を海未に渡したまんまもう一度書いてみろ」
「別にいいけど」
ノートの切れ端を千切って穂乃果にペンを渡すと、意外にも穂乃果は迷わず書いていく。
もしかしたら実は間違っていない可能性があるんじゃ……?
「はいできた!」
「思い切りスペルミスしてんじゃねえかこの大バカ野郎がぁーッ!!」
「あいだぁっ!? ええ、ウソっ!?」
そんな可能性は微粒子レベルでも存在していなかった。
やはり穂乃果は穂乃果なのである。せんせー! バカのせいで犠牲者が3名になりましたー!
「ったく仕方ねえ、海未に電話するか。一番ダメージでかそうだしな……」
さっそく携帯を取り出し海未へ電話。
するとワンコールもしないうちに繋がった。早いなおい。
「もしもし、海―――、」
『だぐやぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううううぅぅぅううううううううううんっ!!』
ああ、これはもう瀕死状態だな……
さて、いかがでしたでしょうか?
とうとうやってきました海外へ!
けれどやはり初めてのことばかりで上手くいくはずもなく。まあ穂乃果だから←
電話先で泣きじゃくってる海未の姿を思い浮かべれば、可愛いかもしれません。
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最近感想が少なく感じていたり……。
2月はとくに終わるのが早いと感じる。