ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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145.海外の夜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、これでやっと落ち着ける」

 

 

 

 

 自分の荷物を整理して一息つく。

 あのあと目が覚めたと同時にもう一波乱あったのだが、何とか隣の部屋を借りることができた。

 

 さすがに年頃の男女が同じ部屋に、しかもハネムーン仕様のベッドで寝るわけにはいかないと猛抗議したのが功を奏した。

 他メンバー……というより同じ部屋で泊まるつもりだった穂乃果はムスッとしていたが、岡崎拓哉自身がそれを許すはずもない。どちらかというと下心あるのは穂乃果のほうなのは黙っておくとする。

 

 

「初日から部屋間違われたり海未に蹴られるとか前途多難じゃないかこれ……」

 

 蹴られた頬の痛みはもうないが、ついつい頬に手を当てる。何よりも頬に踵で蹴られて気絶はしてもケガ自体はしていないのがちょっとした異常なのだが、そこはもうやられすぎて頑丈になった拓哉がおかしいだけである。

 

 とりあえず自分の部屋をちゃんと確保できたのは幸いだった。

 これでひとまず夜に変なトラブルは起きないと思うので安全だと思う。普通ならこんな心配しないのが平常のはずなのに、何故だかそんな心配が出てきちゃうのが割とトラブル体質の少年の悩みの一つだろう。

 

 

「拓哉君~、そろそろ晩ご飯行くで~」

 

「ああ、分かった。すぐ行くよ」

 

 気付けば時間も夜に近くなっている。

 確かホテルの近くにレストランがあったから今日はそこで夕食をとると言っていたはずだ。

 

 寒いというわけでもないが暑いということもなく、軽く上着を羽織って部屋を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、あの鉛筆みたいなビルに上りたーい!」

 

「ここに何しに来たと思ってるんですか……」

 

 さっそく席に通され10人でテーブルを囲う。

 メニューのどこを見ても英語しか書かれておらず、無意識に口角がヒクついてしまう拓哉。一応分かる単語も結構あるが、日本語が一切書かれていないので謎の違和感が凄い。

 

 

「何だっけ~?」

 

「ライブです!」

 

「分かってるよ~」

 

「大切なライブがあるのです。観光などしている暇はありません!」

 

「ええ~!」

 

「幸い、ホテルのジムにはスタジオも併設されているようです。そこで練習しましょう。外には出ずに!」

 

「いやそれアメリカ来た意味あんのかよ」

 

 あんな目に遭ったから言いたいことは分かるが、外にも出ないでスタジオで練習なら音ノ木坂の屋上で練習している時とさほど変わらない。

 海未の意見に他のメンバーからもさすがに不満が出てしまう。

 

 

「えー!」

 

「わざわざ来たのに?」

 

「よっぽど怖かったのね」

 

「大丈夫大丈夫! 街の人、みんな優しそうだったよ!」

 

「穂乃果の言うことは一切信じませんっ」

 

「う、うう……」

 

 めちゃくちゃ根に持っていた。

 それはもう根っこが何十メートルもあるような勢いで根に持たれちゃっていた。そこまで言われると穂乃果も黙るしかなくなってしまう。

 

 

「確かにラブライブ優勝者としても、このライブ中継は疎かにできないわ」

 

「その通りです!」

 

「でも、歌う場所と内容に関してはμ'sからも希望を出してくれって言われてるんだろ。この街のどこで歌えばμ'sらしく見えるか。街を廻って考えてみる必要もあるんじゃないのか?」

 

「そ、それは……」

 

「そうだよそうだよ!」

 

 海未には悪いが、これもμ'sが依頼された内容をちゃんとこなすための必要な手段だ。

 

 

「だから、朝は早起きしてちゃんと練習。そのあとは、歌いたい場所を探しに出かけるというのはどう?」

 

「それ良いと思う!」

 

「こ、ことり……」

 

「賛成の人ー」

 

 海未が何か言う前ににこの言葉で海未以外の全員が手を挙げる。

 9対1という絶対的な民主主義に清々しいほどの惨敗を見せる悲しき少女ここに極まれりだった。

 

 

「決まりだな」

 

「よぉーし、そうと決まればご飯にしよー!」

 

 決まってしまえばもう頷くしか手段はなく、項垂れる海未。

 それをよそに穂乃果は通常運転だった。幼馴染の遠慮のなさはお互い様らしい。

 

 

「あのぉ、だったら私頼みたい物あるんだけど、いいかな?」

 

「一人で食べられそうにないのか?」

 

「どうせならみんなと一緒に食べたいなって思って、ダメかな?」

 

「よろしい頼みなさいお父さんことりの頼みなら喜んで聞いちゃう」

 

「アンタお父さんじゃないでしょうが図に乗るな」

 

 にこからありがたいツッコミをいただいたがそこは触れない。

 発言がどうであろうが許可を貰ったことりは喜んで店員を呼んで簡単な英語だけを並べて注文をした。

 

 ことりの一人で食べられない発言のおかげで各々好きな注文があまりできる状況ではなく、とりあえずことりの注文した品が到着するのを待つ。

 意外にもそれは早く来た。そして、予想外というか、案の定のモノがやってきた。

 

 

「何これ!?」

 

「でかっ!」

 

「チーズケーキだよっ。こっちに来たら食べるって楽しみにしてたんだ~♪」

 

「普通のレストランでホールごとケーキを売ってる店とかあんのか……」

 

 そういえばアメリカは偏食家が多いと聞いたことがある。

 中にはこういうケーキでさえホール丸ごと好んで食べる人もいるのだろうか。甘い物は割と好きな拓哉だが、さすがに1切れで充分だと思う。

 

 

「これが夕食なのですか……?」

 

「さすが自由の国やねえ」

 

「それ関係ある?」

 

「これを10人分に分けたら丁度よさそうね……。あとは各自食べたいもの頼めばいいかしら?」

 

「そうだな。チーズケーキはデザートにとっておけるし、それでいこう」

 

 どんなメニューがあってどう見ればいいのか四苦八苦しながらも、何とか無事夕食を終えた少年達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホテルのシャワーだからって舐めてた……。そこいらの家にある風呂よりも豪華って何なんだこの国は……」

 

 タオルで頭をわしゃわしゃ拭きながら呟く男1人岡崎拓哉。

 そういえばこのホテルに泊まれているのはテレビ局が色々やってくれたからだと思い出す。やはりこの国は何をやるにもでかいと痛感した。

 

 黒のシャツにグレーのスウェットという、いかにも男子高校生らしい寝巻きで冷蔵庫から炭酸ジュースを取り出して外の景色を見る。

 

 

「夜になっても活動的なんだな。この街は」

 

 日本も夜でも明るい街はあるが、アメリカに関してはそんな規模の話ではない。

 一つの巨大な都市がまるで一日中活動しているかのような雰囲気を感じさせる。騒がしいというわけではなく、賑わっているかのような感覚。

 

 そんな高校生らしくもない考えをしていると、ピンポーンと部屋のインターホンが鳴らされた。

 出ると、そこには同じく寝巻き姿の海未とことりがいた。

 

 

「はいはいどうし……た……?」

 

「あのね、たっ……く……」

 

 聞こうとして黙り、言おうとして黙る男女がいた。

 どちらも同じ思春期の高校生。

 

 幼馴染とはいえ、お互いの寝巻き姿を見るとどうしても見てしまうものがあるのだ。

 ことりのいかにも女の子らしい、しかしそこはやはり服飾に興味がある分、寝巻き姿さえオシャレを感じるほどの大人っぽさがある。ちなみに海未は上下にジャージという防御力万全装備だった。

 

 

「海未が海未のままで安心したよ」

 

「よく分かりませんが今侮辱された気がします」

 

 そう言う海未の顔も若干赤い。

 風呂上がり直後だからか、拓哉の髪は完全に乾いていなくていつものツンツン頭が少し垂れている状態になっており、寝巻きだからこそ少し緩みのある黒のシャツの隙間からわずかに胸元が見えそうな、男の色気というやつがムンムンしている(あくまでことりと海未視点)。

 

 

「で、結局どうしたんだよ」

 

「う、うん、それがね、海未ちゃんが……」

 

「海未が?」

 

「拓哉君、ババ抜きで勝負ですッ!!」

 

「……、」

 

「ちょ、まっ、黙ってドアを閉めようとしないでください! いいじゃないですかババ抜きくらい!」

 

「良いわけあるか! お前ババ抜きで勝ったことないくせに何自信満々で挑んできてんだ身の程を弁えろ!! 大体お前勝つまでやるとか言って時間になるまで延々とやらせるだろ! 付き合うこっちの身にもなれってんだバーカ!!」

 

「言いましたねえ!? そう言うならこっちにも考えがあります!! まずはドアをこじ開けてから拓哉君の両腕をもぎ取ってしまえばトランプを持つことすらできないので私の不戦勝になりますから覚悟しなさい!」

 

「発想がサイコパスじゃねえかおぞましいわ!!」

 

 ババ抜き一つやる前に死闘を繰り広げるのは多分世界でもこの2人だけだろうと苦笑いしながらことりは思う。

 とはいえいつまでもホテルの部屋の前で騒いでいると他の客の迷惑になってしまう。

 

 そういうわけでいつもの切り札が岡崎拓哉を襲う。

 

 

「たっくん……おねがぁいっ!」

 

「よろしい存分にババ抜きを興じようじゃな―――、」

 

「力を抜いたが最後です喰らいなさい園田流鳩尾キック!!!!!!」

 

「それただのキッごばぶゅうえッ!?」

 

 ついでに物理的にも岡崎拓哉が襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

 ある者は偶然ノートを見付け。

 

 ある者はそれを好きでやっているからと言って。

 

 ある者は未知の土地を見て不思議な気持ちになり。

 

 ある者は少し寂しくなったり。

 

 ある者はアイドルたるものと自分を磨き。

 

 ある者はみんなをまとめようと予定を確認し。

 

 ある者はいつもと変わらないようすで。

 

 

 

 

 

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、いったいいつまでやるんだよこれ。まだ21時だけどそろそろ自分の部屋帰ったらどうだ? これで34連敗だぞ」

 

「ぅ、うぅ……まだです……まだ勝てるはずです!!」

 

「ヘルプミーことり」

 

「ネバーギブアップだよたっくん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 またある者達は、ババ抜き無限ループに悩まされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長い夜は、まだまだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


何とか自分の部屋を確保した岡崎でした。
ラッキースケベなんてさせないんだから!!!(フラグ)
何故岡崎と海未は毎回夫婦漫才(死闘)をするのか。仲睦まじいですね。
次回もまだ夜の続きとなりますが、どうかお楽しみください。


いつもご感想高評価(☆10)ありがとうございます!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!






次回は9人の女の子が夜の部屋に集まってガールズトーク……?
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