ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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159.サイン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、μ'sの大ファンなんです!」

 

「ファン?」

 

 

 

 

 

 あのあと、俺の誰もが許してしまうであろう華麗なる土下座が炸裂し何とか穂乃果達の機嫌を取り戻すことに成功。どんな土下座かって? 公共の場だぞ言わせんな恥ずかしい。

 穂乃果達が不機嫌になった理由としては、まあ最後の最後でメンバー本人達よりも俺がサインねだられたら不機嫌にもなるわなと俺の中で勝手に納得した。

 

 俺としてはこの壮絶な一連の流れを見ても動じずにファンだと言い張るこの女の子のメンタルが凄いと思います。

 よくもまあ平然と言えますね君。普通の人なら『あ、やっぱいいです』とか言って去っていくと思うんだけど。男の全力土下座を見たらまずドン引きするのが世の常じゃないのか。

 

 

「私も!」

 

「私も大好きです! 何なら愛してます!」

 

「「「お願いします!!」」」

 

 便乗というか後ろでスタンバってたらしい同じ制服の女の子が2人追加された。

 というか何か一人告白してない? あの茶髪の髪の長い女の子完全に頬染めてるんだけどガチ告白じゃないよね。有名人見かけたらついつい興奮して顔赤くなる的なやつだよね。そうだと言ってよバーニィ。

 

 

「わ、私達もサインお願いしてもいいですか!?」

 

「え?」

 

「あの、私も!!」

 

「はい?」

 

「私達もお願いします!!」

 

「おぉふ」

 

 気付けば周囲にはちょっとした女子高生の群れができていた。あ、何人か男性もいるな。そりゃアイドルだから男性もファンになってて当然か。

 もちろん目的はμ's、穂乃果達にサインを貰うためだろう。

 

 わざわざ俺達が空港に着くまで待ってたとか無駄に健気すぎやしないだろうか。

 空港まで出待ちとかいよいよ芸能人と変わらない扱いになってるのでは。こちら10人に対してファンの数はおよそ40人近く。空港は広いがずっと立ち止まってては他の人の迷惑なってしまう。

 

 受けるも断るも穂乃果達次第だが、こんな大勢の人数がサインを一斉に求めてきたらまず断るのは難しい。ましてやプロの芸能人ならともかく穂乃果達はあくまで女子高生の域だ。そこら辺の知識は皆無に近い。

 まさに数の暴力と言っていいだろう。

 

 仕方ない、か。

 

 

「じゃあサイン書くんでいったん端に寄ってくださーい! できるだけ他の人の迷惑にならないように並ぶようにお願いします!」

 

「たくちゃん!? 何か勝手に決めてない!?」

 

「ええい文句言うな! さすがにこんだけ人が集まっちゃ収集つかなくなっちまうだろ! だったらできるだけ早くまとめて済ますしか手段はない。それに何より、こんだけの人がお前達のために集まってくれたんだから断る理由なんてないだろ」

 

「確かにそうかも……ってもう列を作り始めちゃってる!?」

 

 いちいち答えなんて聞かなくても分かるから勝手に進めさせてもらってますよーだ。

 さすがファン、サインが貰えると分かったらすぐに言うことを聞いてくれる。物分かりのいいファンは大切にしていきたいねまったく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、さっそくサインを書いてもらっているわけだが。

 

 

「それにしても、これはいったい……」

 

「さあ……言われるがままにやってるけど……」

 

「ねえ、何で俺までサイン書いてんの? 何で俺の前にも列ができてんの? 何で君らちょっと俺に距離置いてんの?」

 

 ちょっとしたサイン会を開くや否や、何故か横で待機していた俺の前にまで列ができていたのだ。

 さっき来た女の子は先に言ってたからまだ分かるけど、何でμ's目的の子達まで俺のところへ来るんだ。というか何で俺を知ってるんだ。

 

 

「ふーんだ。たくちゃんなんか拙いサイン書いて笑われちゃえばいいんだよっ」

 

「おいやめろ。お前らならまだしもサイン書くなんて一生ないと思ってたから何も考えてなくてただそれっぽく書いた俺の悪口言うのやめろ」

 

 いっそ漢字で書いてしまおうかと思ったけど、目の前の女の子のキラキラした目を見るとさすがに……ね。ほら、これでも一応期待してくれてるみたいだし、背くわけにはいかないでしょうよ。この子も俺がアイドルじゃないのくらい知ってるでしょうに。

 

 もしやこれは夢ではなかろうか。

 

 

「岡崎拓哉さん、ですよね!?」

 

「え、あ、う、うん、そうだけど」

 

 次の子が元気よく声をかけてきたおかげでこれは夢じゃないことは分かった。

 見りゃ分かるでしょ。俺が岡崎拓哉じゃなかったら俺は誰なんだ。田中太郎とかじゃないぞ。

 

 っと、そうだ。

 良い機会だし聞いてみるか。

 

 

「そういや何で俺のこと知ってるんだ? 穂乃果達はμ'sだからってのは知ってるけど、俺は別にスクールアイドルやってるわけじゃないし、気になってさ」

 

「そ、そういえばそうでしたね! でもμ'sのファンならみんな岡崎さんのことは知ってると思いますよ!」

 

「え」

 

 もしかしてファンの誰かにストーカーされてたりする? 穂乃果達に手を出そうなら夜道に気を付けなきゃいけない的な? むしろ手を出されてるのは基本俺ですけどね。もちろん物理(制裁)で!!

 

 

「だって岡崎さん、μ'sの音ノ木坂でのライブで映ってたじゃないですか? 解散疑惑とか出て不安だった中でのあの最高のライブを見たら印象にも残ると思います!」

 

「……あー」

 

 そういえばそうだった。

 俺基本表には出ないようにしてるのにあの時のライブだけは思いっきり表に出てたんだった。正確に言えば出されただけど。

 全然知られてたわ。全力で全国に中継されてたわ。逃げ場も何もなかったわ。

 

 確かA-RISEのツバサもあのライブで俺の存在知ったって言ってたもんな。すっかり忘れてた。

 いや、だからって俺にサイン求めるほどか?

 

 

「ファンの間じゃあのライブは伝説のライブだって一部囁かれてますからね!」

 

「え、何で?」

 

「μ'sの皆さんが制服で踊ってるってのもありますけど、もちろん岡崎さんが映ってるからっていうのもあるからです!」

 

 うん、なるほど。ちょっと何言ってるか分からないや。

 何だこの子の会話レベル。俺には高度すぎて理解に追いつかないんだけど。俺映ってたから伝説って、それじゃ俺が伝説みたいじゃん。伝説ポケモン並みのレアみたいじゃん。メタルキング出現レベルじゃん。

 

 

「今でこそμ'sは第二回ラブライブ優勝者ですけど、その道は険しくなかったのも今なら分かります」

 

 何か語り始めちゃったぞこの子。

 一応後ろにも並んでる人とかいるんですけど。自分で何言ってんだろう俺恥ずかしい。

 

 

「ですがそのμ'sを陰から支えてきた人が岡崎さんなんだってあのライブで分かったって人が多いからこそ! こうしてμ'sだけではなく岡崎さんに会えたことがとても嬉しいんです!!」

 

「お、おう……。そりゃこ、光栄、かな……」

 

 この子の熱が凄すぎる件についてってラノベ出したらアニメ化なるレベルで熱いぞこの子。

 というか俺ってファンの中でそんなふうに思われてんの。初めて知ったぞおい。ちょっと映像で映っただけで色々察し良すぎだろ現代の子の想像力が怖いです。

 

 

「海外でのライブもとても素敵でした! もう100回以上は聴いてます!」

 

「おーけーおーけー。とても励みになる言葉をありがとな。悪いけど後ろにも並んでる人がいるからここまでってことで」

 

「お話できて光栄です! ではまた!!」

 

 元気よく走り去っていく女の子。一人で来たのか。ほんとにファンなんだな。

 またって言われたけど多分もう会わないでしょこれ。偶然に偶然重ならないと会えないでしょこれ。

 

 

「もしや廃校から夢!?」

 

「長い夢だにゃー!」

 

「さすがにそれは……」

 

 向こうでは穂乃果達がサインを書きながら騒いでいる。

 廃校から夢って長すぎだろ。冷凍保存されてるレベルの夢の長さだぞそれ。どうやら穂乃果は現実逃避までしているらしい。うん、俺もさっきまで夢だと思ってた。

 

 さて、パッパッと終わらせるか。

 俺も早く家で一息つきたいし、次はさっきの子みたいに長く喋る必要ないだ―――。

 

 

「……、」

 

「どうしたよ。早くサイン書いてくれ」

 

 おかしい。俺の見間違いか、もしくは俺が幻でも見てるのかこれ。長旅で疲れてるか我が体よ。

 

 

「何で男が目の前にいるんださては貴様今流行りの男装女子かッ!!」

 

「いや普通に男だし。さっさとサイン書いてくんない」

 

 普通の男……だと……。いやそれこそ謎だろうが。

 何でよりによって男子が俺のとこにサイン貰いにくるんだ。罰ゲームか何かですか。

 

 

「……一応聞くけど、何で俺のところにも来たんだ?」

 

「ついで」

 

「はーいあなたには拓哉さんの極上適当達筆サイン差し上げまーす!」

 

 右利きなのに左手で書いてやったわ。さっさと帰んなあんちくしょー!

 さっきの子があまりにも良い子だったからこやつの適当さにさすがの俺も張り切ってしまった。ふぅ、久々に男見た気がするのは何故だろうか。

 

 

「頑張れよ。色々と」

 

「あん?」

 

 何故かそれだけ言って去っていく男子。

 あれでもμ'sのファンなんだろうし、一応労いでもくれたってことか?

 

 それにしてもさっきから俺のところにくる人個性ありすぎだろ。

 μ'sも個性の塊だから似たような人が集まってくるとかそんな感じだろうか。

 

 

「ああ~!!」

 

「いきなり大声出すな何だいきなり! 自分のサイン書き間違えたとかそんな感じだろ絶対。さっさと手を動かせ」

 

「動かしてるよたくちゃんも動かしなよ!! じゃなくてあれ見てたくちゃん!」

 

「めっちゃ動かしてるわ! ただでさえこんなことになって驚いてんだ。今更もう何が起きたって俺は驚か……まじか」

 

 穂乃果の促したほうを見ると、そこにはμ'sが先日アメリカで披露したライブの模様が映し出されていた。

 おぉふ、まじか。まじでか。普通空港のテレビに映し出されるものなのかこれ。

 

 いや待て。よく考えろ。

 今俺達は割と目立つ場所でサインを書いている。そして今すぐそこのテレビでは穂乃果達のライブ映像が映っている。

 

 目立つということは人の目を引くということ。今でこそまだそんなに見られてはいないが、もし誰かが今の穂乃果達を見てテレビに映ってる人だと騒げばどうなるだろうか。

 答えは一目瞭然。注目が集まれば人だかりは今以上に大きくなっていよいよ収集がつかなくなる。

 

 現場はパニック状態になり、帰れるものも帰れない。

 何よりあまり寝れなくてさっさと帰ってひと眠りしたい俺としては何としてもそれだけは回避しなければならない。

 

 ということで作戦実行。

 

 

「全員、作戦SS。発動!!」

 

「「「「「「「「「ラジャー」」」」」」」」」

 

 返答した途端、穂乃果達のサインを書くスピードが異様に早くなった。

 かくいう俺もまだ慣れはしないができるだけ早く書いては人を捌く。

 

 作戦SSとは、文字通りSS(速攻書いて速攻帰る)である。特に捻りはない。

 正直穂乃果達に何故通じたのかは、大体アイコンタクトのおかげだ。俺の言葉は大して意味を成してないと言っていいだろう。……言わないほうがよかったとか言うな。

 

 元々人を捌けていたのもあって残りの人数はさほど多くはなく、滞りなく終わることができた。

 あとは注目を集める前にここを退散するだけだ。

 

 

「絵里! バスの時間は!?」

 

「タイミングよくもうそろそろ来る時間よ。行きましょう!」

 

「よし、んじゃ全員バス停まで行くぞ。サングラスあるヤツはかけとけよ!」

 

「待ってよたくちゃーん! みんな、ありがとねー!」

 

 穂乃果に続いて他のメンバーもファンの人達に手を振ってお礼を言っている。

 うむ、良いことだ。感謝してこそすれだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、あれってμ'sじゃない?」

 

「ほんとだ!」

 

「たっくん、出口付近にたくさんいるような……」

 

「悪いけどとにかく今は構わずバスに乗ることだけを考えるんだよォー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


オリジナル部分が多めの今回でした。
岡崎って実際ライブ映像に映ってたからファンのあいだでは知名度高いイメージがあるんですよね。ツバサがそうですので。
前回今回と久々に一人称で書きましたが、コメディだとやはりこちらのが書いてて楽しいです(笑)


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!





もう一つの作品『ラブライブ!~悲劇と喜劇の物語~』も最新話を投稿したので、興味がある方はそちらもぜひご一読してみてはいかがでしょうか!
岡崎とμ'sの違う物語です!
そちらは基本感想と評価次第で投稿頻度を変えてるので更新は不定期ですが←
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